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第12話:いつからこんなにも、距離があるのか
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それは、ほんの小さなきっかけだった。
あの倉庫の出来事以来、私は、アレスと“目を合わせるのが少し怖くなった”。
「……カノン様、今日は一緒にお勉強を――。」
「ごめん、今日は一人でやるって先生に言われてるから。」
「……そうですか。」
何も言わないアレス。
ただ静かに一歩引いて、席を空ける。
「今日の昼も、リドルたちと先に出てるね。あとで合流するからさ。」
「……はい。」
それだけ。
何一つ問いたださず、責めもせず、ただ――静かに、受け入れていた。
それが、逆に苦しかった。
(なんで……なんで“怒らない”んだよ、アレス。)
彼は、あの時確かに私を閉じ込めた。
笑って、「冗談だ」と言った。
でも、あの時の瞳を、私は忘れられなかった。
だから、少しだけ、距離を置こうと思った。
子供のいたずら、ただそれだけだと、自分に言い聞かせるために。
でも。
「アレス、最近……元気ないよね。」
リンが、ぽつりとつぶやいた。
広場でも、教室でも、アレスはどこにいても“私”の姿を追っていた。
静かに、じっと。
距離を詰めるわけでもなく、かといって遠ざかるでもなく。
「……そう、かもな。」
私は曖昧に答えるしかなかった。
そして、事件は起こった。
「おい、あの……カノン、様……!」
ある日の夕方。使用人が慌てて私を呼びにきた。
アレスが、私の部屋の前で崩れるように座り込んで、動かなくなっていたのだという。
「アレス!」
駆け寄ると、彼はポツリと呟いた。
「……どうして、避けるんですか?」
「えっ……。」
「何かしましたか?僕は、ずっと変わらずカノン様のために――。」
「アレス……!」
私の声に、アレスが顔を上げた。
その目は、いつもと同じ、穏やかで澄んだ紺色。
でも、そこに――確かに涙が滲んでいた。
「怖いんです。……また、誰かのもとへ行ってしまうんじゃないかって。僕を、置いていってしまうんじゃないかって。」
その言葉に、私は息を呑んだ。
「……ごめん。俺……お前のこと、ちょっと……わからなくなってて。でも、ほんとに嫌だったわけじゃなくて……。」
気づけば私は、そっと彼の手を握っていた。
「……アレス。ちゃんと話そう。ちゃんと、気持ちを教えてよ。」
「……はい。」
その日、私たちはようやく少しだけ、言葉を交わした気がした。
カノン・ライエル・フィルディア、3歳と9ヶ月。
すれ違いと涙の末に、初めて本当の意味で“親友”になれた気がした春の夕暮れだった。
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でも。
「アレス、最近……元気ないよね。」
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