14 / 43
第14話:この笑顔を、ずっと守りたいと、皆が願った日
しおりを挟む
「本日はカノン様のお誕生日、誠におめでとうございます!」
王宮の大広間には花が飾られ、色とりどりの装飾が天井を彩っていた。
楽団が静かに奏でる音楽に合わせて、貴族の子どもたちが列をなして次々と挨拶をしてくる。
「カノン様、本当におめでとうございます!今日は私たちからも贈り物が――。」
「俺からは手作りの木の剣!」
「リンはこのあいだ摘んだ幸運草の押し花、つくってきたの!」
「お、おれ……はちょっと遅れちゃったけど……お絵かき、あとで見せる!」
リドル、デニス、リン。それぞれの言葉と贈り物に、私は自然と笑顔になる。
「ありがとう、みんな。本当にうれしいよ。」
そして――
「カノン様。こちらは僕からの贈り物です。」
アレスが差し出したのは、小さな銀のブローチだった。
丸い石には淡い青が浮かび、どこか優しく、どこか寂しげな光を放っていた。
「綺麗……これ、君が選んだの?」
「はい。カノン様の瞳の色に似た石を探しました。……ずっと、傍にいてほしいという想いを込めて。」
その言葉に、場の空気が一瞬だけ静まり返る。
「……ありがとう、大事にするよ。」
私は少し照れくさく笑いながら答えたが、胸の奥で何かがひっかかっていた。
(“傍にいてほしい”……。)
確かに、それは友情の言葉としても受け取れる。
けれど、アレスの目は、それ以上の何かを含んでいるように見えた。
それを――今は、考えないようにした。
誕生日の宴は、夜まで続いた。
甘いケーキ、舞踏会のようなダンス、そして王子である私へのたくさんの祝福。
だが、そんな華やかさの中、ふとひとりになる瞬間があった。
バルコニーに出ると、星空が広がっている。
「カノン様。」
やはり、アレスはすぐに見つけてしまうのだ。
「……あまりにぎやかで、少しだけ逃げたかっただけだよ。」
「わかります。僕も、似たような気持ちでした。」
二人、肩を並べて星を眺める。
「今日、いろんな人が祝ってくれた。俺、ちゃんと王子やってるんだなぁって……思った。」
「……ええ、カノン様は立派です。」
「でも、こうやって静かに星を見てるとさ……やっぱり、普通の子として生きたかったな、って少しだけ思うんだ。」
その言葉に、アレスは黙っていた。
やがて彼は、小さく言った。
「僕にとっては……カノン様が、今ここにいるだけで、世界のすべてです。」
それは――誓いにも、呪いにも、祈りにも聞こえる言葉だった。
カノン・ライエル・フィルディア、4歳。
祝福に包まれたその日、誰もが“彼の幸せ”を願っていた。
ただ一人を除いて。
王宮の大広間には花が飾られ、色とりどりの装飾が天井を彩っていた。
楽団が静かに奏でる音楽に合わせて、貴族の子どもたちが列をなして次々と挨拶をしてくる。
「カノン様、本当におめでとうございます!今日は私たちからも贈り物が――。」
「俺からは手作りの木の剣!」
「リンはこのあいだ摘んだ幸運草の押し花、つくってきたの!」
「お、おれ……はちょっと遅れちゃったけど……お絵かき、あとで見せる!」
リドル、デニス、リン。それぞれの言葉と贈り物に、私は自然と笑顔になる。
「ありがとう、みんな。本当にうれしいよ。」
そして――
「カノン様。こちらは僕からの贈り物です。」
アレスが差し出したのは、小さな銀のブローチだった。
丸い石には淡い青が浮かび、どこか優しく、どこか寂しげな光を放っていた。
「綺麗……これ、君が選んだの?」
「はい。カノン様の瞳の色に似た石を探しました。……ずっと、傍にいてほしいという想いを込めて。」
その言葉に、場の空気が一瞬だけ静まり返る。
「……ありがとう、大事にするよ。」
私は少し照れくさく笑いながら答えたが、胸の奥で何かがひっかかっていた。
(“傍にいてほしい”……。)
確かに、それは友情の言葉としても受け取れる。
けれど、アレスの目は、それ以上の何かを含んでいるように見えた。
それを――今は、考えないようにした。
誕生日の宴は、夜まで続いた。
甘いケーキ、舞踏会のようなダンス、そして王子である私へのたくさんの祝福。
だが、そんな華やかさの中、ふとひとりになる瞬間があった。
バルコニーに出ると、星空が広がっている。
「カノン様。」
やはり、アレスはすぐに見つけてしまうのだ。
「……あまりにぎやかで、少しだけ逃げたかっただけだよ。」
「わかります。僕も、似たような気持ちでした。」
二人、肩を並べて星を眺める。
「今日、いろんな人が祝ってくれた。俺、ちゃんと王子やってるんだなぁって……思った。」
「……ええ、カノン様は立派です。」
「でも、こうやって静かに星を見てるとさ……やっぱり、普通の子として生きたかったな、って少しだけ思うんだ。」
その言葉に、アレスは黙っていた。
やがて彼は、小さく言った。
「僕にとっては……カノン様が、今ここにいるだけで、世界のすべてです。」
それは――誓いにも、呪いにも、祈りにも聞こえる言葉だった。
カノン・ライエル・フィルディア、4歳。
祝福に包まれたその日、誰もが“彼の幸せ”を願っていた。
ただ一人を除いて。
30
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。
黒茶
BL
人気者だけど実は人間嫌いの嘘つき先輩×素直すぎる後輩の
(本人たちは気づいていないが実は乙女ゲームの世界である)
異世界ファンタジーラブコメ。
魔法騎士学院の2年生のクラウスの長所であり短所であるところは、
「なんでも思ったことを口に出してしまうところ。」
そして彼の秘密は、この学院内の特定の人物の個人情報が『ステータス画面』というもので見えてしまうこと。
魔法が存在するこの世界でもそんな魔法は聞いたことがないのでなんとなく秘密にしていた。
ある日、ステータス画面がみえている人物の一人、5年生のヴァルダー先輩をみかける。
彼はいつも人に囲まれていて人気者だが、
そのステータス画面には、『人間嫌い』『息を吐くようにウソをつく』
と書かれていたので、うっかり
「この先輩、人間嫌いとは思えないな」
と口に出してしまったら、それを先輩に気付かれてしまい・・・!?
この作品はこの1作品だけでも読むことができますが、
同じくアルファポリスさんで公開させていただいております、
「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」
「俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。」
とあわせて「乙女ゲー3部作」となっております。(だせぇ名前だ・・・笑)
キャラクターや舞台がクロスオーバーなどしておりますので、
そちらの作品と合わせて読んでいただけたら10倍くらい美味しい設定となっております。
全年齢対象です。
BLに慣れてない方でも読みやすいかと・・・
ぜひよろしくお願いします!
俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。
黒茶
BL
超鈍感すぎる真面目男子×謎多き親友の異世界ファンタジーBL。
※このお話だけでも読める内容ですが、
同じくアルファポリスさんで公開しております
「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」
と合わせて読んでいただけると、
10倍くらい楽しんでいただけると思います。
同じ世界のお話で、登場人物も一部再登場したりします。
魔法と剣で戦う世界のお話。
幼い頃から王太子殿下の専属護衛騎士になるのが夢のラルフだが、
魔法の名門の家系でありながら魔法の才能がイマイチで、
家族にはバカにされるのがイヤで夢のことを言いだせずにいた。
魔法騎士になるために魔法騎士学院に入学して出会ったエルに、
「魔法より剣のほうが才能あるんじゃない?」と言われ、
二人で剣の特訓を始めたが、
その頃から自分の身体(主に心臓あたり)に異変が現れ始め・・・
これは病気か!?
持病があっても騎士団に入団できるのか!?
と不安になるラルフ。
ラルフは無事に専属護衛騎士になれるのか!?
ツッコミどころの多い攻めと、
謎が多いながらもそんなラルフと一緒にいてくれる頼りになる受けの
異世界ラブコメBLです。
健全な全年齢です。笑
マンガに換算したら全一巻くらいの短めのお話なのでさくっと読めると思います。
よろしくお願いします!
【連載版】魔王さまのヒミツ♡ ~バレたら即・下剋上?!クール魔王の素顔は泣き虫チキンな箱入り息子~
黒木 鳴
BL
歴代最年少で魔王の地位に就いたレイには隠し通さなければならない秘密がある。それは……「魔王もうやだぁぁぁ~~!!下剋上こわいよぉぉぉーーー!!!」その実態が泣き虫ポンコツ魔王だということ。バレれば即・下剋上を挑まれることは必至!なので先々代の魔王を父に持ち、悪魔公爵ジェラルドが膝を折ったという2枚看板を武器にクールな魔王を演じている。だけどその実力を疑う者たちも出てきて……?!果たしてレイの運命は……?!溺愛腹黒系悪魔×初心な小悪魔系吸血鬼。お茶目なパパんも大活躍!!短編「魔王さまのヒミツ♡」文字数の関係で削ったシーン・設定などを大幅加筆の連載版となります。
BLゲームの悪役に転生したら攻略対象者が全員ヒロインに洗脳されてた
さ
BL
主人公のレオンは、幼少期に前世の記憶を思い出し、この世界がBLゲームで、自身は断罪される悪役だと気づく。
断罪を回避するため、極力攻略対象者たちと関わらないように生きてきた。
ーーそれなのに。
婚約者に婚約は破棄され、
気づけば断罪寸前の立場に。
しかも理由もわからないまま、
何もしていないはずの攻略対象者達に嫌悪を向けられてーー。
※最終的にハッピーエンド
※愛され悪役令息
【完結】待って、待って!僕が好きなの貴方です!
N2O
BL
脳筋ゆえ不本意な塩対応を只今猛省中、ユキヒョウの獣人
×
箱入りゆえガードが甘い愛され体質な竜人
愛しい幼馴染が有象無象に狙われて、居ても立っても居られなくなっていく余裕のない攻めの話。
(安心してください、想像通り、期待通りの展開です)
Special thanks
illustration by みとし (X:@ibarakiniarazu)
※独自設定かつ、ふんわり設定です。
※素人作品です。
※保険としてR設定にしていますが、基本健全。ほぼない。
もふもふ守護獣と運命の出会い—ある日、青年は異世界で大きな毛玉と恋に落ちた—
なの
BL
事故に巻き込まれ、雪深い森で倒れていた青年・ユナ。
命の危険に晒されていた彼を救ったのは、白銀の毛並みを持つ美しい人狼・ゼルだった。
ゼルは誰よりも優しくて、そして――独占欲がとにかく強い。
気がつけばユナは、もふもふの里へ連れていかれる。
そこでは人狼だけでなく、獣人や精霊、もふもふとした種族たちが仲良く暮らしており、ユナは珍しい「人間」として大歓迎される。
しかし、ゼルだけは露骨にユナを奪われまいとし、
「触るな」「見るな」「近づくな」と嫉妬を隠そうとしない。
もふもふに抱きしめられる日々。
嫉妬と優しさに包まれながら、ユナは少しずつ居場所を取り戻していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる