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ヒロインが仕掛けた罠
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教室に入ると同時に、始まりの鐘が鳴る。その音に重なって、
「ない! ないわぁ! 私の大事な髪飾りが、なくなってるぅー!」
スカーレットの叫び声が、教室中に響き渡った。
ざわざわとする教室。
ジョシュアが真っ先にスカーレットの側へ行き、少し遅れて、ルカも駆け寄る。
二人の攻略対象者が、口々にスカーレットを慰めた。
「きちんと、探したのかい?」
「もちろんよぅ。机の中も、かばんの中も全部探したけど、ないの……」
スカーレットは、あからさまに、しゅんと肩を落とす。
その様子に、ふと、私は思い出した。
ゲーム内で、あの髪飾りが悪役令嬢に壊されるというイベントがあった。
そんなことを思い出している間も、スカーレットは「ない! ない!」と、大騒ぎしていた。
「ちゃんと、机の上に置いといたのにぃ。大事な髪飾りが、魔法の実技で壊れてしまったら嫌だから」
「それで、戻ってきたら、なくなってたってこと?」
「スカーレットの勘違いではないのかい?」
「ちゃんと、机の上に置いたわ。絶対! 絶対によ!」
「それってさー、つまり、さっきの授業中、誰かが盗んでいったってこと?」
ルカの一言に、一瞬、教室が静かになる。クラスメイトたちも、彼らの話が気になっていたようだ。
「かといって、まったくの部外者が、そう簡単に校内に入って来られるとは思わないけど」
「じゃあ、関係者ってことか? ここの生徒……クラスの誰かとか?」
「でも、でも。さっき、クラスのみんなは、実技の授業で訓練場にいたわけだしぃ」
「あっ! でもさー、一人、いなかったよな?」
ルカが私のところへ来た。それにつられるように、クラスのみんなもこちらを見た。
「なぁ、ロベリア。どうして、さっきの授業、いなかったのさー? サボって、何してたわけ? 具合が悪そうには見えないんだけど?」
クリクリの緑の目は、もう、私を犯人と決めているようだった。
「ちょっと、調べるから、そこ、どいて」
言うなり、ルカは私を押しやり、机の中を覗き込む。そのすぐあとに、ジョシュアもスカーレットとともにやって来て、
「それも調べさせてもらって、いいかい?」
と、カバンを指さした。
クラスのみんなが、興味津々に見ている。こういう時に限って、先生は遅れているようだ。
このままでは、らちがあかない。
そんな中で、頭に浮かんだのは、バーノンのアドバイス。
私には、まったく身に覚えのない、濡れ衣。だったら、そう、堂々としていればいい。
「どうぞ」
私は、自ら、カバンを差し出した。
だけど……。
私の考えは、甘かった。ゲロ甘だった。
ジョシュアにカバンを渡したつもりが、横からスカーレットが割り込んできた。まるでひったくるように、カバンを奪い取られる。
スカーレットが、乱暴にカバンの中へ手を突っ込んだ。かと思ったら、すぐに手を引っこ抜いて。
「あった、あったわぁ! 私の髪飾りよ!」
大声で言いながら、手をつき上げる。その手が掴んでいたのは、ピンクのリボンの髪飾り。まぎれもなく、彼女のもの。
「ロベリア、どうして、髪飾りを盗んだりしたんだ?」
「どうせ、スカーレットのことが、気に食わないんだろ?」
左にジョシュア、右にルカ。その真ん中から、スカーレットがずいっと詰め寄ってきた。
「私、怒ったりないわ。だから、正直に、話してちょうだい。ね?」
彼女は、にんまりと笑った。
その満面の笑顔に気がつく。それこそ、女の勘というやつだ。
これはスカーレットの自作自演。
思い返せば、彼女はカバンの中を見ることも、探ることもせず、いきなり手を突っ込んで髪飾りを取り出した。初めから、髪飾りがそこにあることを知っていたからできたこと。
私は、彼女に、はめられたのだ。
「ない! ないわぁ! 私の大事な髪飾りが、なくなってるぅー!」
スカーレットの叫び声が、教室中に響き渡った。
ざわざわとする教室。
ジョシュアが真っ先にスカーレットの側へ行き、少し遅れて、ルカも駆け寄る。
二人の攻略対象者が、口々にスカーレットを慰めた。
「きちんと、探したのかい?」
「もちろんよぅ。机の中も、かばんの中も全部探したけど、ないの……」
スカーレットは、あからさまに、しゅんと肩を落とす。
その様子に、ふと、私は思い出した。
ゲーム内で、あの髪飾りが悪役令嬢に壊されるというイベントがあった。
そんなことを思い出している間も、スカーレットは「ない! ない!」と、大騒ぎしていた。
「ちゃんと、机の上に置いといたのにぃ。大事な髪飾りが、魔法の実技で壊れてしまったら嫌だから」
「それで、戻ってきたら、なくなってたってこと?」
「スカーレットの勘違いではないのかい?」
「ちゃんと、机の上に置いたわ。絶対! 絶対によ!」
「それってさー、つまり、さっきの授業中、誰かが盗んでいったってこと?」
ルカの一言に、一瞬、教室が静かになる。クラスメイトたちも、彼らの話が気になっていたようだ。
「かといって、まったくの部外者が、そう簡単に校内に入って来られるとは思わないけど」
「じゃあ、関係者ってことか? ここの生徒……クラスの誰かとか?」
「でも、でも。さっき、クラスのみんなは、実技の授業で訓練場にいたわけだしぃ」
「あっ! でもさー、一人、いなかったよな?」
ルカが私のところへ来た。それにつられるように、クラスのみんなもこちらを見た。
「なぁ、ロベリア。どうして、さっきの授業、いなかったのさー? サボって、何してたわけ? 具合が悪そうには見えないんだけど?」
クリクリの緑の目は、もう、私を犯人と決めているようだった。
「ちょっと、調べるから、そこ、どいて」
言うなり、ルカは私を押しやり、机の中を覗き込む。そのすぐあとに、ジョシュアもスカーレットとともにやって来て、
「それも調べさせてもらって、いいかい?」
と、カバンを指さした。
クラスのみんなが、興味津々に見ている。こういう時に限って、先生は遅れているようだ。
このままでは、らちがあかない。
そんな中で、頭に浮かんだのは、バーノンのアドバイス。
私には、まったく身に覚えのない、濡れ衣。だったら、そう、堂々としていればいい。
「どうぞ」
私は、自ら、カバンを差し出した。
だけど……。
私の考えは、甘かった。ゲロ甘だった。
ジョシュアにカバンを渡したつもりが、横からスカーレットが割り込んできた。まるでひったくるように、カバンを奪い取られる。
スカーレットが、乱暴にカバンの中へ手を突っ込んだ。かと思ったら、すぐに手を引っこ抜いて。
「あった、あったわぁ! 私の髪飾りよ!」
大声で言いながら、手をつき上げる。その手が掴んでいたのは、ピンクのリボンの髪飾り。まぎれもなく、彼女のもの。
「ロベリア、どうして、髪飾りを盗んだりしたんだ?」
「どうせ、スカーレットのことが、気に食わないんだろ?」
左にジョシュア、右にルカ。その真ん中から、スカーレットがずいっと詰め寄ってきた。
「私、怒ったりないわ。だから、正直に、話してちょうだい。ね?」
彼女は、にんまりと笑った。
その満面の笑顔に気がつく。それこそ、女の勘というやつだ。
これはスカーレットの自作自演。
思い返せば、彼女はカバンの中を見ることも、探ることもせず、いきなり手を突っ込んで髪飾りを取り出した。初めから、髪飾りがそこにあることを知っていたからできたこと。
私は、彼女に、はめられたのだ。
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