95 / 122
ウインティア王国編
95
しおりを挟む
マイを地下牢に入れてから一週間が経つ。
レイに床に叩きつけられた顔は鼻の骨が折れていたようだが、二度と外には出られないのだからと自然治癒に任せることにした。
簡単な治療だけ施されたマイが目を覚ました時には、地下牢に入れられていた怒りで暴れて怒鳴り散らしていたが、そんな事よりも性病の症状が現実に引き戻したのか、今度は痛みや痒みを訴える。が、それこそ相手をする者などおらず、この一週間のたうち回っているそうだ。
これで反省でもすれば、薬を与えるつもりだったが、マイから出るのは恨み言ばかりで、まったく反省する素振りすら見えない。
もう暫くはこのまま放置でいいだろう。
ここは王族が犯罪を犯した時に幽閉される塔の下に特別に作られた地下牢だ。
王族ならばこの塔に幽閉されても、外に出られないだけで生活に困ることはない場所だがこの地下牢は違う。
天井にある小さな窓から光は射し込むが、円形の部屋になっており、絶望しても天井が高く首を吊ることも出来ない部屋だ。
まあ、死のうと思えば出された食事を食べず餓死を選ぶとか、舌を噛み切るなりすればそれも可能だろうが、マイにはそんな勇気もないだろう。
卒業まであと僅かとなった休日。
婚礼衣装の最終調整のためエリーがランも連れて王宮に来ていた。
もちろんアランとレイも一緒に来ていたが、レイはエリーの衣装合わせの付き添いだ。
いつもなら王宮に着くなりゾルティーと遊びだすランがその日はエリーから離れなかった。
不思議に思いながらもランを好きにさせることにした。
母上が待ち構えている衣装部屋の前まで手を繋いで行ったが俺は入室を拒否された。
何でだ!
俺だってエリーのウエディングドレス姿が見たいんだ!
デザインすら教えてくれないではないか!
部屋の入り口で駄々を捏ねる俺をランが澄まして素通りして入って行く。
中から母上の歓喜の声が聞こえる。
そう、ランをひと目見た時から気に入った母上は今ではゾルティーとランの取り合いになっている。
その様子を微笑ましく見ている女神のようなエリーがもうすぐ俺の妻になるのだ。
俺のために覚悟を決めてくれたエリー。
これから先、辛いことも悲しいこともあるだろうが、俺は必ずエリーを幸せにする。
「ルフィ、衣装は結婚式までのお楽しみよ。衣装合わせが終わったらルフィの執務室に顔を出すからそれまで待っていてね」
「・・・わかった」
かがんでエリーの額にチュッとキスを落とす。
その後ろをエリーを着付けるメイドたちが俺たちから視線を外して部屋に入って行く。
見られたことが恥ずかしかったのか顔を赤くしたエリーが睨んでくるが、その顔だって可愛いだけだぞ。
エリーを部屋に入れて去ろうとした時、ランの唸り声が聞こえたと同時に物が壊れた音がした。
慌てて部屋に入ると一人のメイドを取り押さえたレイと目が合った。
すでに真っ青な顔で震えているメイドを拘束したレイが「このメイドの素性を調べ、裏にいる人物を吐かせて!」とドアの外にいた護衛騎士に身柄を引き渡した。
メイドの怯え方を見る限り、何かしたことは間違いないだろう。
レイお前俺から見てもカッコイイな。
エリーと母上も目をキラキラさせてそんなレイを見ている。
壊れた音の正体は化粧品?
辺りに散らばった物の中からランが1つくわえて俺に持ってきた。
「すぐに調べさせろ」
容器を渡して調べさせている間に、俺の執務室では眉間に皺を寄せたアランと、ランを褒めちぎるゾルティーとグレイにザック。
ガルはレイとエリーの側にいる。
まだ結果は出ていないが、俺たちはランを信用している。
何かしらの結果が出るはずだ。
それにしても、食べるもの、飲むものには毒見が付くが、口紅までは気が回らなかった。
数時間後、口紅に混入されていたのが毒だと判明した。
命までは落とさずとも体に麻痺が残るものだと医師から説明されたが、他国の毒で我が国では使用を禁止された違法薬物だ。
そして、取り調べを受けていたメイドの証言からセルティ嬢の名前が出てきたのだ。
王家の影からは毒の入手など報告にはなかった。
影を欺き、どうやって毒を手に入れた?
「どんな手を使ってもいいメイドからそれも聞き出せ!」
もし今日ランがエリーの側にいなかったら?
たとえエリーに麻痺が残ろうが俺の気持ちが変わることはないが、引け目を感じたエリーが身を引こうとするのは目に見えてる。
何かしてくると予測はしていたが、ここまで愚かだったとは・・・
絶対に許さない。
お前も、お前を止められなかった公爵も、関わったすべて者にも目に物見せてやる!
「ねえルフラン殿下。僕にいい考えがあるんだけど乗ってみない?」
それまで難しい顔で一言も発さなかったアランが、男でも見惚れるような笑顔で提案してきた。
レイに床に叩きつけられた顔は鼻の骨が折れていたようだが、二度と外には出られないのだからと自然治癒に任せることにした。
簡単な治療だけ施されたマイが目を覚ました時には、地下牢に入れられていた怒りで暴れて怒鳴り散らしていたが、そんな事よりも性病の症状が現実に引き戻したのか、今度は痛みや痒みを訴える。が、それこそ相手をする者などおらず、この一週間のたうち回っているそうだ。
これで反省でもすれば、薬を与えるつもりだったが、マイから出るのは恨み言ばかりで、まったく反省する素振りすら見えない。
もう暫くはこのまま放置でいいだろう。
ここは王族が犯罪を犯した時に幽閉される塔の下に特別に作られた地下牢だ。
王族ならばこの塔に幽閉されても、外に出られないだけで生活に困ることはない場所だがこの地下牢は違う。
天井にある小さな窓から光は射し込むが、円形の部屋になっており、絶望しても天井が高く首を吊ることも出来ない部屋だ。
まあ、死のうと思えば出された食事を食べず餓死を選ぶとか、舌を噛み切るなりすればそれも可能だろうが、マイにはそんな勇気もないだろう。
卒業まであと僅かとなった休日。
婚礼衣装の最終調整のためエリーがランも連れて王宮に来ていた。
もちろんアランとレイも一緒に来ていたが、レイはエリーの衣装合わせの付き添いだ。
いつもなら王宮に着くなりゾルティーと遊びだすランがその日はエリーから離れなかった。
不思議に思いながらもランを好きにさせることにした。
母上が待ち構えている衣装部屋の前まで手を繋いで行ったが俺は入室を拒否された。
何でだ!
俺だってエリーのウエディングドレス姿が見たいんだ!
デザインすら教えてくれないではないか!
部屋の入り口で駄々を捏ねる俺をランが澄まして素通りして入って行く。
中から母上の歓喜の声が聞こえる。
そう、ランをひと目見た時から気に入った母上は今ではゾルティーとランの取り合いになっている。
その様子を微笑ましく見ている女神のようなエリーがもうすぐ俺の妻になるのだ。
俺のために覚悟を決めてくれたエリー。
これから先、辛いことも悲しいこともあるだろうが、俺は必ずエリーを幸せにする。
「ルフィ、衣装は結婚式までのお楽しみよ。衣装合わせが終わったらルフィの執務室に顔を出すからそれまで待っていてね」
「・・・わかった」
かがんでエリーの額にチュッとキスを落とす。
その後ろをエリーを着付けるメイドたちが俺たちから視線を外して部屋に入って行く。
見られたことが恥ずかしかったのか顔を赤くしたエリーが睨んでくるが、その顔だって可愛いだけだぞ。
エリーを部屋に入れて去ろうとした時、ランの唸り声が聞こえたと同時に物が壊れた音がした。
慌てて部屋に入ると一人のメイドを取り押さえたレイと目が合った。
すでに真っ青な顔で震えているメイドを拘束したレイが「このメイドの素性を調べ、裏にいる人物を吐かせて!」とドアの外にいた護衛騎士に身柄を引き渡した。
メイドの怯え方を見る限り、何かしたことは間違いないだろう。
レイお前俺から見てもカッコイイな。
エリーと母上も目をキラキラさせてそんなレイを見ている。
壊れた音の正体は化粧品?
辺りに散らばった物の中からランが1つくわえて俺に持ってきた。
「すぐに調べさせろ」
容器を渡して調べさせている間に、俺の執務室では眉間に皺を寄せたアランと、ランを褒めちぎるゾルティーとグレイにザック。
ガルはレイとエリーの側にいる。
まだ結果は出ていないが、俺たちはランを信用している。
何かしらの結果が出るはずだ。
それにしても、食べるもの、飲むものには毒見が付くが、口紅までは気が回らなかった。
数時間後、口紅に混入されていたのが毒だと判明した。
命までは落とさずとも体に麻痺が残るものだと医師から説明されたが、他国の毒で我が国では使用を禁止された違法薬物だ。
そして、取り調べを受けていたメイドの証言からセルティ嬢の名前が出てきたのだ。
王家の影からは毒の入手など報告にはなかった。
影を欺き、どうやって毒を手に入れた?
「どんな手を使ってもいいメイドからそれも聞き出せ!」
もし今日ランがエリーの側にいなかったら?
たとえエリーに麻痺が残ろうが俺の気持ちが変わることはないが、引け目を感じたエリーが身を引こうとするのは目に見えてる。
何かしてくると予測はしていたが、ここまで愚かだったとは・・・
絶対に許さない。
お前も、お前を止められなかった公爵も、関わったすべて者にも目に物見せてやる!
「ねえルフラン殿下。僕にいい考えがあるんだけど乗ってみない?」
それまで難しい顔で一言も発さなかったアランが、男でも見惚れるような笑顔で提案してきた。
460
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
『お前の顔は見飽きた!』内心ガッツポーズで辺境へ
夏乃みのり
恋愛
「リーナ・フォン・アトラス! 貴様との婚約を破棄する!」
華やかな王宮の夜会で、第一王子ジュリアンに突きつけられた非情な宣告。冤罪を被せられ、冷酷な悪役令嬢として追放を言い渡されたリーナだったが、彼女の内心は……「やったーーー! これでやっとトレーニングに専念できるわ!」と歓喜に震えていた!
婚約破棄で、おひとり様になれるはずだったのに!?
パリパリかぷちーの
恋愛
主人公ルシアン・ヴァイオレットは、「悪役令嬢」として振る舞う孤独愛好家の公爵令嬢。念願だった第一王子アランとの婚約破棄を言い渡されると、内心では歓喜し、大都会の喧騒から逃れて森の奥の廃墟同然の別荘へと引きこもる。ルシアンの目的は、誰にも邪魔されない至高の静寂ライフを満喫することだった。
しかし、彼女の理想郷にはすでに先客がいた。それは、無口で無愛想だがハイスペックな謎の男、キース。実は彼は、王国の裏社会を統べる『影の英雄』と呼ばれる辺境伯であり、ルシアンの孤高の姿に心奪われた重度の隠れファンだった。
全てを捨てて消え去ろうとしたのですが…なぜか殿下に執着されています
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のセーラは、1人崖から海を見つめていた。大好きだった父は、2ヶ月前に事故死。愛していた婚約者、ワイアームは、公爵令嬢のレイリスに夢中。
さらにレイリスに酷い事をしたという噂まで流されたセーラは、貴族世界で完全に孤立していた。独りぼっちになってしまった彼女は、絶望の中海を見つめる。
“私さえいなくなれば、皆幸せになれる”
そう強く思ったセーラは、子供の頃から大好きだった歌を口ずさみながら、海に身を投げたのだった。
一方、婚約者でもあるワイアームもまた、一人孤独な戦いをしていた。それもこれも、愛するセーラを守るため。
そんなワイアームの気持ちなど全く知らないセーラは…
龍の血を受け継いだワイアームと、海神の娘の血を受け継いだセーラの恋の物語です。
ご都合主義全開、ファンタジー要素が強め?な作品です。
よろしくお願いいたします。
※カクヨム、小説家になろうでも同時配信しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる