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ウインティア王国編

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レイがマイに話した"ゲームの真実"は俺も聞かされていなかった。

アランとゾルティーを横目で見ると、表情も変えずガラスの向こうの会話を聞いている。

2人共レイから教えてもらっていたんだな。

俺が王位継承権を放棄した?
王族の責務よりもエリーを選んだ?
俺とエリーは幸せになった?

そんなっ!
王子の俺が国や民よりもエリーを?


だが・・・それは今だから言えるのかもしれない。

あの頃は何年もエリーに会えなくて、そのまま学園に入学していたとしても、エリーは俺の数々の暴言を許しただろうか?それよりも俺は素直に謝れたのだろうか?

エリーにはアランしかいないのに、アランまでマイに侍ってしまったら?
さらにマイに嵌められ皆から蔑まされたら?

一人になったエリーは貴族社会も、この国にも嫌気が差して出て行くことを選んだのではないだろうか?

ゲームでは俺がエリーを断罪した・・・
エリーを貴族の据から解き放つためだったのか?
この国から出て行きやすくするために?

生涯エリーに会えないと分かっていながら?

自由になったエリーに許しを乞うて、許されたなら・・・俺の思いをエリーが受け入れてくれたとしたら・・・俺はエリーを選ぶ・・・だろう。



今回ゲームのストーリーが変わったとしたら、エリーが逃げたから?
俺が追い掛けたから?

"ゲームの真実"を知ったエリーが俺の思いを受け入れ共に生きる覚悟を決めてくれたから?

その時、エリーの落ち着いた声が聞こえた。

『私ねルフィを愛しているの。王妃なんて柄でも無いけれど、彼の心を守ってあげたい、彼を幸せにしてあげたい。だから覚悟を決めて帰ってきたの。覚悟を決めたからには少しでも彼の力になれる王妃になるわ。貴女が私を悪役令嬢に仕立て上げたとしても、ルフィなら私を信じてくれると分かっていたから・・・ね』

愛している・・・
俺の心を守るため?
俺を幸せにするため?

今ままでだって充分エリーの気持ちは俺に伝わっていた。

俺が思っていた以上に俺はエリーに愛されていたんだな。

愛しい・・・エリーが愛しすぎて今すぐにでも抱きしめたい。

エリー、俺と共に歩む道を選んでくれてありがとう。

ゾルティーとアランが困った顔をして俺を見ている。
今の俺はどんな顔をしているんだ?
お前たちを困らせるような顔になっているのか?


そうだった、エリーは俺がここで聞いていることを知らないんだな・・・
ここに呼んでくれたアランに感謝しないとな。
きっとエリーは"ゲームの真実"を俺にだけは教えないつもりだったのだろう。
・・・そんな気がする。

だったら俺も知らないフリするよ。
エリーの覚悟を心に刻んで生涯忘れないけどな。




そんな気分を台無しにする話が、レイからマイにされる。

性病・・・
今、学園ではマイと関係を持った男たちの間で密かに噂になっている。

治療をすれば完治するが、症状を打ち明けるにはプライドが邪魔をしたのか、マイとの関係を恥だと思ったのか、医師に相談するまでに時間がかかった奴が多かった。

実際に性病にかかった奴らは俺たちが3学年に上がってからの関係だった為、ガルは免れたが今回の話を聞いた時には血の気の引いた顔になっていたな。
『俺は溜まっても娼館にも絶対に行かない』と断言していた。
そんなガルを面白がって笑っていたのはグレイとザックだ。この2人も大概いい性格をしている。

性病なんてものは、お互いが初めてで生涯その相手だけなら罹ることはないものだ。
外で浮気をするような奴や、娼館通いするような奴が罹るものだ。

俺は一生性病には無縁だな。

"ゲームの真実"でマイが牢で過ごすことになったのは、きっとマイ自身がこの国にとって害でしかなかったからだ。

治療薬があるにも関わらず、マイを閉じ込める判断をしたのは陛下だ。

マイが転移してきた時から王家の影が付いていた。
その影からの報告に、マイの人間性を疑う程の思考、行動、それとつい最近薬品まで手に入れていた。
手に入れたタイミングから、レイに使用するつもりだったのだろう。

王家がマイを閉じ込めなければ、きっとアランがマイを処分する為に手を汚すことになっていたはずだ。
たとえレイに被害がなくてもだ。

誰よりもエリーを近くで見守ってきたアランだからこそ、マイの存在自体が許せないのだろう。
まあ、アランのことだから証拠も残さず上手く処分するだろうがな。


そんなことを考えていたら、マイがレイに飛びかかっていた。

瞬時に反応したレイは容赦なくマイの顔面を床に叩きつけた。
一撃で終わらせたが、アランが部屋から飛び出してしまった。
いやいやアランよ、レイがマイなんかにヤラれる訳がないじゃないか。

強ばった顔のエリー見て俺も無意識のうちに走り出していた。

部屋に入ってエリーの顔を見た途端、あの言葉が脳裏に浮かび愛しさが込み上げてきた。


エリーが何を話しかけてきても声も聞こえているし、理解もしているのに上手く言葉が出てこなかった。

だが!
エリーの『ルフィ私の部屋に行く?』って言葉には直ぐに反応できた。

まだエリーの部屋に入ったことはない!
普段エリーが過ごしている場所だぞ!
どんな部屋か気になるのは仕方がないだろ?

それに・・・王太子妃の部屋もエリーの好みに合わせたものを用意したいからな。(後に分かるが王太子妃の部屋は母上の願望が詰め込まれた部屋がもう用意されていた)


部屋に案内されて2人きりになれば、気持ちが抑えられなくなってしまった。


・・・・・・・・・。

またエリーに拳骨を落とされてしまった・・・。



俺たちの婚姻式まで、あと2ヶ月。

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