無能チートで冒険者! ~壁魔法も使いよう~

白鯨

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 1章.無能チート冒険者になる

11.無能チートは無能チート

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「これで、私も冒険者……」
「トンボ、おめでとう」


 私は自分の冒険者カードを両手で掲げた。セヨンさんの祝福もあり、自然と頬が緩んだ。


「それじゃあ、トンボ、次はこっち」
「おっ! いよいよ初依頼ですね?!」


 私はセヨンさんの後を追い、依頼票が貼ってあるボードの方へ向かった。
 ボードに貼られた依頼票は、わかりやすくランク別に色分けされていた。Eランク依頼には、街の公共施設での草むしりや荷物運びなど、街の便利屋さんみたいな依頼と、常設依頼と書かれた『薬草採取』や『ゴブリン退治』などギルドからの依頼があった。
 進化した壁魔法を編み出した今の私なら、ゴブリン退治ぐらい楽勝なのでは?


「どう思います? セヨンさん」
「トンボ、何してる? 早く来る」


 何故か、セヨンさんはボードをスルーして、地下に向かう階段の手前で私を呼んでいた。


「あれ? セヨンさん、依頼を受けるんじゃないんですか?」


 私はセヨンさんに駆け寄り、疑問を口にした。


「トンボ、今日は色々あった。疲れてる。依頼はまた明日」
「うっ、確かに異世界来てまだ初日なんですよね。順応している自分にビックリです」


 そして、私の体調まで考えてくれる、セヨンさんマジ天使。現在の見た目は190センチの全身鎧だけど。


「じゃあ、どこへ? この階段はどこに繋がってるんですか?」


 セヨンさんの後を追い、階段を降りた先には、学校の体育館ぐらいの、何もない空間が広がっていた。


「ここ、ギルドの訓練場。冒険者自由に使える。今誰もいない、丁度いい」
「訓練場ですか? ここで何をするんですか?」


 いや、訓練場なんだから訓練か。ナイフの使い方とか教えてくれるのかな?


「ナイフ、まだ早い。今からするの、身の程を知る訓練。トンボ風に言うなら……撲殺する?」
「恐っ?! なんで撲殺されるんですか?!」


 そもそも、私風って何? 撲殺するのはセヨンさんなんだから、セヨン風でいいじゃん!


「トンボ、私と戦う。さっきの、『トンボ切り』言うの、使っていい」
「セヨンさんと戦う? でも、蜻蛉切り使ったらセヨンさんが危ないですよ?」


 蜻蛉切りの切断力は、自分で言うのもなんだけど、かなりのものだと思う。いくら鎧を身に付けたセヨンさんでも、当たれば大怪我じゃすまないかも知れない。
 しかし、当のセヨンさんは、呆れたように首を左右に振って、小さく溜め息を吐いた。
 その仕草が妙に癪に障った。


「壁、厚くする、安全。もし当たったら、ワタシの負け、それでいい」
「むっ、確かに厚くすれば切れないか……わかりました。でも、負けても知りませんよ?」
「やっぱり、撲殺する必要、ある」


 不穏な台詞を残し、セヨンさんは私から距離を取り、30メートルほどの間隔を空け、立ち止まった。


「始めの合図、トンボ、任せる」
「わかりました。それじゃあ、『始め』の合図をしたら始めま始め! 先手必勝蜻蛉切り!」


 母の教え。勝つためなら何でもしろ。の精神に乗っ取り、不意打ちを仕掛ける。


「甘い!」


 私必勝の蜻蛉切りを、素早く踏み込み、私に近づくことで避けるセヨンさん。


「嘘っ?!」


 私の蜻蛉切りは、私の手から延びている訳ではなく、相手の近くに板状の壁を出現させ、手の動きに合わせて動かす技だ。
 まだ私が、壁魔法を使うのに馴れきっておらず、手を動きの起点にしないと使えないことから、そんなやり方をとっている。
 つまり、動きを見ていれば避けるのは簡単だということか。


「ならっ!」


 私に一直線に接近してくるセヨンさんに対し、進行方向を予測して、タイミングを合わせて蜻蛉切りを仕掛ける。


「見え見え! わかりやすい!」


 しかし、セヨンさんは迫る壁魔法に、拳を叩き込んで割ってしまう。
 そうか、私の壁魔法は、ゴブリンの一撃すら防げないクソ使用。更に薄くする蜻蛉切りは、平面への衝撃にはひどく弱い。それなりの厚さにしても、今見たとおり、セヨンさんのパンチで割られるレベルだ。


「……ちぇりゃ」
「そんな……」


 そのまま、成す術なく接近を許した私に、セヨンさんが軽いチョップをした。


「トンボ、ちょっと調子に乗ってた。そのままだと、直ぐ痛い目みる」
「うっ」


 諭すように、私に語りかけるセヨンさん。


「トンボ切り、強力。でも、欠点多い。不意打ちは強い、知られると弱い。トンボより速い人、沢山いる」
「そうですよね。身体能力普通な私は、まともに正面から戦闘なんてしちゃダメですよね。反省です」
「はじめから強いの、ドラゴンぐらい。トンボは、ゆっくり強くなる」


 セヨンさんは、私が慢心しないよう、釘を刺してくれたんだ。
 うん、確かに私調子に乗ってた。さっきまで普通の女子高生だったんだから、少しずつ冒険者として成長していこう。


「セヨンさん、生意気なこと言っちゃってすいませんでした! これからも、ご指導お願いします!」
「ワタシ、トンボの保護者、教えるのあたりまえ」


 頭を下げる私に、そういって、セヨンさんが頭を撫でてきた。
 相変わらずゴツゴツの鎧が痛かった。


「トンボ疲れた、今日は帰って休む、ワタシの使ってる宿屋、行く」
「はいっ!」


 踵を返し、訓練場の出口に向かう、その大きな背中を私は追う。
 鎧だけでなく、冒険者としても大きな、その背中を。




ーーーーーーーーーー

 壁魔法が弱いのか、セヨンさんが強いのか。コレガワカラナイ。
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