11 / 48
1章.無能チート冒険者になる
11.無能チートは無能チート
しおりを挟む「これで、私も冒険者……」
「トンボ、おめでとう」
私は自分の冒険者カードを両手で掲げた。セヨンさんの祝福もあり、自然と頬が緩んだ。
「それじゃあ、トンボ、次はこっち」
「おっ! いよいよ初依頼ですね?!」
私はセヨンさんの後を追い、依頼票が貼ってあるボードの方へ向かった。
ボードに貼られた依頼票は、わかりやすくランク別に色分けされていた。Eランク依頼には、街の公共施設での草むしりや荷物運びなど、街の便利屋さんみたいな依頼と、常設依頼と書かれた『薬草採取』や『ゴブリン退治』などギルドからの依頼があった。
進化した壁魔法を編み出した今の私なら、ゴブリン退治ぐらい楽勝なのでは?
「どう思います? セヨンさん」
「トンボ、何してる? 早く来る」
何故か、セヨンさんはボードをスルーして、地下に向かう階段の手前で私を呼んでいた。
「あれ? セヨンさん、依頼を受けるんじゃないんですか?」
私はセヨンさんに駆け寄り、疑問を口にした。
「トンボ、今日は色々あった。疲れてる。依頼はまた明日」
「うっ、確かに異世界来てまだ初日なんですよね。順応している自分にビックリです」
そして、私の体調まで考えてくれる、セヨンさんマジ天使。現在の見た目は190センチの全身鎧だけど。
「じゃあ、どこへ? この階段はどこに繋がってるんですか?」
セヨンさんの後を追い、階段を降りた先には、学校の体育館ぐらいの、何もない空間が広がっていた。
「ここ、ギルドの訓練場。冒険者自由に使える。今誰もいない、丁度いい」
「訓練場ですか? ここで何をするんですか?」
いや、訓練場なんだから訓練か。ナイフの使い方とか教えてくれるのかな?
「ナイフ、まだ早い。今からするの、身の程を知る訓練。トンボ風に言うなら……撲殺する?」
「恐っ?! なんで撲殺されるんですか?!」
そもそも、私風って何? 撲殺するのはセヨンさんなんだから、セヨン風でいいじゃん!
「トンボ、私と戦う。さっきの、『トンボ切り』言うの、使っていい」
「セヨンさんと戦う? でも、蜻蛉切り使ったらセヨンさんが危ないですよ?」
蜻蛉切りの切断力は、自分で言うのもなんだけど、かなりのものだと思う。いくら鎧を身に付けたセヨンさんでも、当たれば大怪我じゃすまないかも知れない。
しかし、当のセヨンさんは、呆れたように首を左右に振って、小さく溜め息を吐いた。
その仕草が妙に癪に障った。
「壁、厚くする、安全。もし当たったら、ワタシの負け、それでいい」
「むっ、確かに厚くすれば切れないか……わかりました。でも、負けても知りませんよ?」
「やっぱり、撲殺する必要、ある」
不穏な台詞を残し、セヨンさんは私から距離を取り、30メートルほどの間隔を空け、立ち止まった。
「始めの合図、トンボ、任せる」
「わかりました。それじゃあ、『始め』の合図をしたら始めま始め! 先手必勝蜻蛉切り!」
母の教え。勝つためなら何でもしろ。の精神に乗っ取り、不意打ちを仕掛ける。
「甘い!」
私必勝の蜻蛉切りを、素早く踏み込み、私に近づくことで避けるセヨンさん。
「嘘っ?!」
私の蜻蛉切りは、私の手から延びている訳ではなく、相手の近くに板状の壁を出現させ、手の動きに合わせて動かす技だ。
まだ私が、壁魔法を使うのに馴れきっておらず、手を動きの起点にしないと使えないことから、そんなやり方をとっている。
つまり、動きを見ていれば避けるのは簡単だということか。
「ならっ!」
私に一直線に接近してくるセヨンさんに対し、進行方向を予測して、タイミングを合わせて蜻蛉切りを仕掛ける。
「見え見え! わかりやすい!」
しかし、セヨンさんは迫る壁魔法に、拳を叩き込んで割ってしまう。
そうか、私の壁魔法は、ゴブリンの一撃すら防げないクソ使用。更に薄くする蜻蛉切りは、平面への衝撃にはひどく弱い。それなりの厚さにしても、今見たとおり、セヨンさんのパンチで割られるレベルだ。
「……ちぇりゃ」
「そんな……」
そのまま、成す術なく接近を許した私に、セヨンさんが軽いチョップをした。
「トンボ、ちょっと調子に乗ってた。そのままだと、直ぐ痛い目みる」
「うっ」
諭すように、私に語りかけるセヨンさん。
「トンボ切り、強力。でも、欠点多い。不意打ちは強い、知られると弱い。トンボより速い人、沢山いる」
「そうですよね。身体能力普通な私は、まともに正面から戦闘なんてしちゃダメですよね。反省です」
「はじめから強いの、ドラゴンぐらい。トンボは、ゆっくり強くなる」
セヨンさんは、私が慢心しないよう、釘を刺してくれたんだ。
うん、確かに私調子に乗ってた。さっきまで普通の女子高生だったんだから、少しずつ冒険者として成長していこう。
「セヨンさん、生意気なこと言っちゃってすいませんでした! これからも、ご指導お願いします!」
「ワタシ、トンボの保護者、教えるのあたりまえ」
頭を下げる私に、そういって、セヨンさんが頭を撫でてきた。
相変わらずゴツゴツの鎧が痛かった。
「トンボ疲れた、今日は帰って休む、ワタシの使ってる宿屋、行く」
「はいっ!」
踵を返し、訓練場の出口に向かう、その大きな背中を私は追う。
鎧だけでなく、冒険者としても大きな、その背中を。
ーーーーーーーーーー
壁魔法が弱いのか、セヨンさんが強いのか。コレガワカラナイ。
10
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~
アトハ
ファンタジー
【短いあらすじ】
普通を勘違いした魔界育ちの少女が、王都に旅立ちうっかり無双してしまう話(前世は病院少女なので、本人は「超健康な身体すごい!!」と無邪気に喜んでます)
【まじめなあらすじ】
主人公のフィアナは、前世では一生を病院で過ごした病弱少女であったが……、
「健康な身体って凄い! 神さま、ありがとう!(ドラゴンをワンパンしながら)」
転生して、超健康な身体(最強!)を手に入れてしまう。
魔界で育ったフィアナには、この世界の普通が分からない。
友達を作るため、王都の学園へと旅立つことになるのだが……、
「なるほど! 王都では、ドラゴンを狩るには許可が必要なんですね!」
「「「違う、そうじゃない!!」」」
これは魔界で育った超健康な少女が、うっかり無双してしまうお話である。
※他サイトにも投稿中
※旧タイトル
病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる