無能チートで冒険者! ~壁魔法も使いよう~

白鯨

文字の大きさ
21 / 48
 1章.無能チート冒険者になる

21.無能チートと魔法発動

しおりを挟む

 ミウちゃんは、絵描き歌が気に入ったらしく、結局、全ての基本的な魔方陣の絵描き歌を、考えるはめになった。

 ミウちゃんは、沢山歌って疲れたのか、今は木陰でお昼寝中だ。歌って案外カロリー消費するっていうしね。
 そして、残された私の足下の地面には、私とミウちゃんの描いた魔方陣が、大量に描かれていた。
 セヨンさんは、集中しているのか、黙々と鎧のパーツに魔方陣を刻み続けている。


「試して……みる?」


 私はぼそりと呟くと、私の描いた水の魔方陣に手をかざした。


「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、我は求め訴えたり……」


 ちょっとそれっぽい事も言って、雰囲気出してみた。
 しかし、魔方陣はうんともすんともいわない。


「トンボ、なに言ってる、魔力流さないと、意味ない」
「セ、セヨンさん、き、聞いてたんですか?」


 なんだか、無性に恥ずかしい。
 人がいないと思って、歌を口ずさんでいたら、見えない所にいた人に、全て聞かれていた時に似ている。


「魔力。魔力ねぇ」


 頬の熱さを誤魔化すように、私は再び魔方陣に手をかざす。
 思い出すのは、薬草採取の時に魔力ポーションを飲んだ時。身体に満ちていった力。
 それを動かして、手から魔方陣に流し入れる感覚。


「水の魔方陣、発動!」


 言葉と共に魔方陣を発動させる!
 魔力を流された魔方陣は、淡い光を発……さない。


「トンボ……」
「ち、違いますよ?! 私は真剣です!」


 なに遊んでるの? って顔で見られても、私だって真剣にやってるんですよ、セヨンさん!


「違う、魔方陣、地面に描いても、駄目。地面でこぼこ、魔方陣歪む。魔方陣刻む、それ計算する、難しい。それに、地面描いて発動する、なら、ミウに教える、許可しない」


 確かに、子どもが描いた魔方陣で魔法が発動したら、危ないなんてもんじゃないからね。


「そうなると、地面に魔方陣描いて、召喚! ってのは無理そうですね」
「召喚の魔方陣、複雑すぎ。描けるの、世界にSランク冒険者のひとりだけ」


 出た、私の中では、すでに人外認定しているSランク冒険者。世界にひとりって、どこの主人公だよ。


「そもそも、トンボ、魔力出てない」
「うぐっ」


 そうなんだよね。ぶっちゃけ、魔力が流れた感覚はなかった。まぁ、身体の中に魔力を感じられたからって、素人がいきなり自在に動かせる訳ないよね。
 そういうのは、世のチート主人公に任せます。


「トンボ、これ、使う」
「なんですこれ、金属の……板?」
「それ、火種の魔道具」


 セヨンさんがマジックバッグの中から、魔方陣が刻まれた金属板を取り出して、私に手渡した。
 火種の魔道具は、私とミウちゃんが描いた、火の基本魔方陣が刻まれた金属板で、魔力込めると火が出るので、薪の下に敷き、火を点けるのに使う道具らしい。
 

「トンボ、壁魔法使う、魔力どうしてる?」
「壁魔法は発動させようとすると、手の先から、勝手に魔力が徴収される感じですね」


 例えるなら、ゲームのシステムに似ているかな。
 『魔法を使う』コマンドを入力し、『なんの魔法』かを選択(壁魔法でいう厚さや形)、最後に『ターゲット』を選択すると、魔力が消費されて、魔法が発動する。
 『なんの魔法』かのイメージが難しく、ターゲットに関しては、手を使わないといまいち安定しない。
 それでも、このセミオートの魔法発動は、有能だと思う。うっかり神のくせにやるじゃない。
 私の魔力量が低くていまいち使えないけどな!


「トンボ、冒険者カード、魔力流せた。直接触れば、魔力流れる?」
「なるほど、やってみます! ん~、せいっ!」


 火種の魔道具の両端を両手で掴み、冒険者カードの登録時みたいに力を込めた。
 魔力が吸われる感覚に、おおっ、と思った瞬間。ライターの火と同じ位の大きさの火が、魔方陣の中心に点った。


「おお! スゲー! セヨンさん、火! 火が点きました! うわー! やったー!」
「……………」


 はじめて火を手にしたクロマニヨン人のように、興奮してはしゃぐ私に、セヨンさんが失望の視線を送ってきた。
 えっ? なに?!


「はぁ、トンボには、がっかり。魔力込めたのに、掛け声違う、ちぇりゃ、聴きたかった」
「ちょ! それ、別に私の決め台詞じゃないし!」


 気に入り過ぎたろセヨンさん。
 そんなに気に入ったなら、セヨンさんにあげますよ。模擬戦でも使ってたし。


「いいの?! なら、貰う! トンボありがとう!」
「えぇ……」


 うっわ、テンション爆上がりじゃないですか。
 キラキラした目を向けられ戸惑う私。
 なにがセヨンさんの琴線に触れたのか。
 私の事を変人みたいに言うけど、セヨンさんも大概変人だよね。

 そんな事を考えていると、親指に熱を感じた。


「っわちゃ!」


 ずっと点けていた火の熱に炙られ、私は思わずカンフー映画の主人公みたいな声を出して、火種の魔道具を落としてしまった。


「トンボ、大丈夫か? 魔道具使う時、注意する。基本の魔方陣でも、使い方ひとつ、とても危ない」
「……火傷はしてないみたいですけど、誰の所為で注意散漫になったと思ってるんですか。もう!」
「むっ、大丈夫なら、よかった。ワタシ、魔方陣刻む仕事、戻る」

 目を逸らせながら、鎧のパーツに手を伸ばし、魔方陣を刻む作業に戻るセヨンさん。
 逃げやがったよこの人。


「ん~? な~に~?」
「あっ、ミウちゃん。うるさくしてゴメンね、起こしちゃった?」
「んーっ! だいじょうぶ。とんぼ、またまほーじんかく?」


 起き上がってきたミウちゃんが、両手を上げて伸びをすると、お尻の尻尾もピンと上を向いた。可愛い!


「じゃあ、また魔方陣の絵描き歌しよっか」
「するー! まーるいおぼんがありましてー」


 早速口ずさみはじめたミウちゃんと一緒に、魔方陣の絵描き歌を歌う。

 今度は少し、真剣に覚えるつもりで。






ーーーーーーーーーー

 Sランク冒険者は、果たして登場することはあるのか? いつか出るのかなー? 設定全然考えてないよ。

 Sランク冒険者7人全員をみると、何故か発狂死するって設定とかどう?
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ
ファンタジー
【短いあらすじ】 普通を勘違いした魔界育ちの少女が、王都に旅立ちうっかり無双してしまう話(前世は病院少女なので、本人は「超健康な身体すごい!!」と無邪気に喜んでます) 【まじめなあらすじ】  主人公のフィアナは、前世では一生を病院で過ごした病弱少女であったが……、 「健康な身体って凄い! 神さま、ありがとう!(ドラゴンをワンパンしながら)」  転生して、超健康な身体(最強!)を手に入れてしまう。  魔界で育ったフィアナには、この世界の普通が分からない。  友達を作るため、王都の学園へと旅立つことになるのだが……、 「なるほど! 王都では、ドラゴンを狩るには許可が必要なんですね!」 「「「違う、そうじゃない!!」」」  これは魔界で育った超健康な少女が、うっかり無双してしまうお話である。 ※他サイトにも投稿中 ※旧タイトル 病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

処理中です...