22 / 48
1章.無能チート冒険者になる
22.無能チートと新型鎧
しおりを挟む鎧製作をはじめて3日目に突入。
「鎧、完成……!」
「おお~! ……早くね?」
「そお? ドワーフ、これ位、普通」
まだ作りはじめて3日ですよ? 改造とかではなく、インゴットから作りはじめて、3日で鎧を作る。私でもこれが異常な事だとわかる。
ドワーフぱねぇ。
「で、どんな鎧ができたんですか?」
「ワタシの新しい鎧、その名も、『ビッグ・セヨン2号』!」
「センス! ネーミングセンス! セヨンさん、センスない!」
「ガーン!」
私のツッコミに、自分で擬音を言ってしまう程、ショックを受けたセヨンさん。
まさかの、作ったものに自分の名前つけちゃう系の人だった。
「そこまで言うなら、トンボ、考える!」
「えぇ……ちょっと文句言っちゃいましたけど、セヨンさんが作ったんだから、ビッグ・セヨンでいいじゃないですか、カッコいいですよ?」
「ビッグ・セヨンじゃない! ビッグ・セヨン“2号”!」
どっちでもいいわっ!
しかし、セヨンさんは余計にヘソを曲げてしまった。
「センスない、言われた。今後、ビッグ・セヨン2号、呼ぶ度、ワタシ、センスない、気にすること、なる。だからトンボ、名前付ける」
不貞腐れ、いじけたセヨンさんは、とても面倒くさかった。
でも、原因は私にあるのだし、セヨンさんが誇れるようなカッコいい名前を付けようじゃないか!
「わかりました! 私がカッコいい名前を付けましょう!」
「ん、格好悪かったら、トンボも、センスない認定、する」
「いいでしょう。先に悪く言ってしまったのは、私ですしね。その位のペナルティは甘んじて受けましょう!」
「じゃあ、鎧、見せる!」
そう言うとセヨンさんは、マジックバッグの中から、ミスリル製の白銀に輝く物体を取り出した。
「えっ、鎧? セヨンさん、これで完成品なんですか?」
現れたのは、巨大な手甲だった。
セヨンさん1人なら、手中に収められる位、巨大な手甲が、右手と左手の2つ分。
そして、同じ様な意匠で、サイズが小さい手甲が2つ。
合計4つの、大小と2種類の手甲だ。
小さい手甲ですら、フィレオのおっちゃんが使いそうなサイズだった。
手甲以外には、スカート状の“草ずり”のような装甲と、胸部を守る装甲、すね当てから下の装甲の3種類のみで、それらは全て生セヨンさんに合わせ、作られているみたいだった。
「これ、どうやって使うんですか?」
それが、正直な感想だった。
実は、セヨンさんは本気を出すと、腕が4本になるとか、そんな事が起きなければ、使う事なんて出来ないと思う。
「ん? 装備して見せる?」
「あっはい、武器防具は装備しないと意味がないぞ! って偉い人も言ってましたもんね」
「そんな人、知らない。けど装備する」
セヨンさんはそう言うと、鎧を身に付けはじめた。
セヨンさんの普段着である、肩から先がないタイプのハイネックインナーに、ポケット沢山の半袖ジャケットと、ショートパンツの作業着のような姿から、ジャケットだけを脱ぎ、胸の装甲を着て、腰から脚を守るように、スカート状の装甲をベルトで腰に固定し、足の装甲を履いて完成だ。
肌の露出というか、今までのセヨンさんの全身鎧姿からすると、随分と装甲が薄い。
防御面積は、どう見ても半分以下になっている。
セヨンさんは最後に、巨大手甲の中から、小さい手甲を身に付けた。
小さいと言っても巨人サイズ。セヨンさんの小柄な体躯からすると、あまりにアンバランスに映った。
某ランドで、マスコットキャラの手を身に付けている、小学校低学年みたいな感じだ。
「うん、カッコいい」
セヨンさんは手をニギニギしたり、足を上げて鎧の着心地を確認すると、確信したように呟いた。
鎧姿だけなら、ゲームやアニメに出てくるドレスみたいな鎧に、見えなくもない。
しかし、剣とかならまだしも、手甲があまりにもアンバランスだ。
おしい! 色々とおしい!
そして、まだ最大の疑問は残ったままだった。
「その残った巨大手甲は、どうするんですか?」
そう、まだ手甲は残っているのだ。
私の疑問に、セヨンさんはニヤリと笑ってみせると、高らかにその名を呼んだ。
「装着! 弐式!」
その言葉に応えるように、弐式と呼ばれた超大型手甲が、紫色の光を帯びて動き出した。
重そうな見た目に反して、軽やかに浮かび上がり、踊るように舞い、最後はゆっくりと、セヨンさんの左右に別れ、付き従い、命令を待つかのように漂っている。
なんと超巨大な手甲は、身に付けず、セヨンさんの『念動』で動かす鎧だったのだ。
そして、弐式と和風な名前を言っているのに、ビッグ・セヨン“2号”と言ってしまう、セヨンさんのセンスよ。でも。
「……凄い」
「ミスリル、魔力流す、その人のマナの色、輝く」
それしか感想が出なかった。
あの手甲は、セヨンさんなりに、防御と攻撃の両立を図った結果なのだろう。
紫に淡く光る装備は、神々しくも映った。
「でも、そんな大きな手を浮かせていて、魔力は切れないんですか?」
「なに言ってる。ワタシ、普段から、全身鎧動かしてる。魔力、毎日鍛えているようなもの。それに、魔力流れやすくなる、魔方陣刻んだ」
そうだった。セヨンさんって歩くのも、走るのも、道具を使うのも、鎧着ていた時は『念動』を使ってるんだった。ごく自然に動いてたから、勘違いしちゃってたよ。
「じゃあ、生身の部分が増えましたけど、セヨンさん自身が危なくなってませんか?」
「『念動』使う分、初動遅れる。今までは1人、だったから、防御固める優先。これからは、トンボも守る、速さ必要、だから生身。攻撃、着けた手甲で弾く、動きやすいのが、安全」
なるほど、完全防御型から、パリィ型にチェンジするって事か、いざとなったら弐式手甲を盾代わりにして防ぐと。
「そう言えば『念動』って、どれぐらいの出力でるんですか? 重さ制限とかって、あるんですか?」
「自分の、腕力位の力、出る」
「セヨンさんの腕力……」
見た目だけだと、私の方が力強そうなんだよなぁ。
「フィー、片手で、持ち上がる」
「なにその馬力。リアルアンパ◯マンかよ!」
「ドワーフ、力持ち、楽勝」
「ドワーフ、スゲー!」
久しぶりに出た、セヨンさんのドワーフ自慢で盛り上がる。実は私、密かにドワーフも人外認定しはじめている。
「で、名前は?」
「うっ、覚えてましたか……うーん」
セヨンさんが見定めるように、キツめの視線をぶつけてくる。ドワーフからは逃げられない。
私は改めてセヨンさんの鎧姿を見る。
腕が4本の鎧かぁ。
こういう時って、よく神話とか、伝説から名前を持ってくるよね。
私が知ってる4本腕のキャラなんて、宇宙大戦争のグ◯ーヴァス将軍ぐらいだよ。しかし、それは色々マズイしなぁ。
他に4本の腕と言えば、なんかインドの神様にいたような。名前なんだっけ?
ヴィ……ヴィシュ……。
「ヴィッシュ?」
だっけ? なんか違うような。なんか、もう少し呼びづらい名前だったような?
「……カッコいい」
「へ?」
「ヴィッシュ。強そうだし、気高い感じする響き……悔しいけど、いい名前。トンボ、言うだけ、ある」
「お、おう、せやろ?」
ごめんセヨンさん。モトネタの名前すらわからないんだ、それ。
「この鎧の名前、『ヴィッシュ2号』!」
「何故2号?! 2号はいらないんだよ! ヴィッシュは初代でしょ!」
「ヴィッシュ……1号?」
「号から離れよう?! そのままのヴィッシュが好きだなぁ、私は!」
「むぅ、まったく、トンボは仕方ない、『ヴィッシュ』でいい」
「おかしいなー、私が我が儘言ったみたいになってるぞぉ?」
セヨンさんの謎センスに振り回されつつも、セヨンさんの新型鎧『ヴィッシュ』の御披露目は終わった。
ーーーーーーーーーー
名前の元ネタは、インドの守護神ヴィシュヌ様でした。
しかし、どう見ても手甲という名のロケットパンチ。
ナレーション「次回、『装甲戦姫セヨン』「無能チート暁に死す」」
セヨン「トンボの仇はワタシが討つ!」
という嘘予告やりたくなった。
10
あなたにおすすめの小説
神託が下りまして、今日から神の愛し子です! 最強チート承りました。では、我慢はいたしません!
しののめ あき
ファンタジー
旧題:最強チート承りました。では、我慢はいたしません!
神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜
と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます!
3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。
ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです!
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
非常に申し訳ない…
と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか?
色々手違いがあって…
と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ?
代わりにといってはなんだけど…
と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン?
私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。
なんの謝罪だっけ?
そして、最後に言われた言葉
どうか、幸せになって(くれ)
んん?
弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。
※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします
完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします
土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~
にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。
「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。
主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる