無能チートで冒険者! ~壁魔法も使いよう~

白鯨

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 1章.無能チート冒険者になる

21.無能チートと魔法発動

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 ミウちゃんは、絵描き歌が気に入ったらしく、結局、全ての基本的な魔方陣の絵描き歌を、考えるはめになった。

 ミウちゃんは、沢山歌って疲れたのか、今は木陰でお昼寝中だ。歌って案外カロリー消費するっていうしね。
 そして、残された私の足下の地面には、私とミウちゃんの描いた魔方陣が、大量に描かれていた。
 セヨンさんは、集中しているのか、黙々と鎧のパーツに魔方陣を刻み続けている。


「試して……みる?」


 私はぼそりと呟くと、私の描いた水の魔方陣に手をかざした。


「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、我は求め訴えたり……」


 ちょっとそれっぽい事も言って、雰囲気出してみた。
 しかし、魔方陣はうんともすんともいわない。


「トンボ、なに言ってる、魔力流さないと、意味ない」
「セ、セヨンさん、き、聞いてたんですか?」


 なんだか、無性に恥ずかしい。
 人がいないと思って、歌を口ずさんでいたら、見えない所にいた人に、全て聞かれていた時に似ている。


「魔力。魔力ねぇ」


 頬の熱さを誤魔化すように、私は再び魔方陣に手をかざす。
 思い出すのは、薬草採取の時に魔力ポーションを飲んだ時。身体に満ちていった力。
 それを動かして、手から魔方陣に流し入れる感覚。


「水の魔方陣、発動!」


 言葉と共に魔方陣を発動させる!
 魔力を流された魔方陣は、淡い光を発……さない。


「トンボ……」
「ち、違いますよ?! 私は真剣です!」


 なに遊んでるの? って顔で見られても、私だって真剣にやってるんですよ、セヨンさん!


「違う、魔方陣、地面に描いても、駄目。地面でこぼこ、魔方陣歪む。魔方陣刻む、それ計算する、難しい。それに、地面描いて発動する、なら、ミウに教える、許可しない」


 確かに、子どもが描いた魔方陣で魔法が発動したら、危ないなんてもんじゃないからね。


「そうなると、地面に魔方陣描いて、召喚! ってのは無理そうですね」
「召喚の魔方陣、複雑すぎ。描けるの、世界にSランク冒険者のひとりだけ」


 出た、私の中では、すでに人外認定しているSランク冒険者。世界にひとりって、どこの主人公だよ。


「そもそも、トンボ、魔力出てない」
「うぐっ」


 そうなんだよね。ぶっちゃけ、魔力が流れた感覚はなかった。まぁ、身体の中に魔力を感じられたからって、素人がいきなり自在に動かせる訳ないよね。
 そういうのは、世のチート主人公に任せます。


「トンボ、これ、使う」
「なんですこれ、金属の……板?」
「それ、火種の魔道具」


 セヨンさんがマジックバッグの中から、魔方陣が刻まれた金属板を取り出して、私に手渡した。
 火種の魔道具は、私とミウちゃんが描いた、火の基本魔方陣が刻まれた金属板で、魔力込めると火が出るので、薪の下に敷き、火を点けるのに使う道具らしい。
 

「トンボ、壁魔法使う、魔力どうしてる?」
「壁魔法は発動させようとすると、手の先から、勝手に魔力が徴収される感じですね」


 例えるなら、ゲームのシステムに似ているかな。
 『魔法を使う』コマンドを入力し、『なんの魔法』かを選択(壁魔法でいう厚さや形)、最後に『ターゲット』を選択すると、魔力が消費されて、魔法が発動する。
 『なんの魔法』かのイメージが難しく、ターゲットに関しては、手を使わないといまいち安定しない。
 それでも、このセミオートの魔法発動は、有能だと思う。うっかり神のくせにやるじゃない。
 私の魔力量が低くていまいち使えないけどな!


「トンボ、冒険者カード、魔力流せた。直接触れば、魔力流れる?」
「なるほど、やってみます! ん~、せいっ!」


 火種の魔道具の両端を両手で掴み、冒険者カードの登録時みたいに力を込めた。
 魔力が吸われる感覚に、おおっ、と思った瞬間。ライターの火と同じ位の大きさの火が、魔方陣の中心に点った。


「おお! スゲー! セヨンさん、火! 火が点きました! うわー! やったー!」
「……………」


 はじめて火を手にしたクロマニヨン人のように、興奮してはしゃぐ私に、セヨンさんが失望の視線を送ってきた。
 えっ? なに?!


「はぁ、トンボには、がっかり。魔力込めたのに、掛け声違う、ちぇりゃ、聴きたかった」
「ちょ! それ、別に私の決め台詞じゃないし!」


 気に入り過ぎたろセヨンさん。
 そんなに気に入ったなら、セヨンさんにあげますよ。模擬戦でも使ってたし。


「いいの?! なら、貰う! トンボありがとう!」
「えぇ……」


 うっわ、テンション爆上がりじゃないですか。
 キラキラした目を向けられ戸惑う私。
 なにがセヨンさんの琴線に触れたのか。
 私の事を変人みたいに言うけど、セヨンさんも大概変人だよね。

 そんな事を考えていると、親指に熱を感じた。


「っわちゃ!」


 ずっと点けていた火の熱に炙られ、私は思わずカンフー映画の主人公みたいな声を出して、火種の魔道具を落としてしまった。


「トンボ、大丈夫か? 魔道具使う時、注意する。基本の魔方陣でも、使い方ひとつ、とても危ない」
「……火傷はしてないみたいですけど、誰の所為で注意散漫になったと思ってるんですか。もう!」
「むっ、大丈夫なら、よかった。ワタシ、魔方陣刻む仕事、戻る」

 目を逸らせながら、鎧のパーツに手を伸ばし、魔方陣を刻む作業に戻るセヨンさん。
 逃げやがったよこの人。


「ん~? な~に~?」
「あっ、ミウちゃん。うるさくしてゴメンね、起こしちゃった?」
「んーっ! だいじょうぶ。とんぼ、またまほーじんかく?」


 起き上がってきたミウちゃんが、両手を上げて伸びをすると、お尻の尻尾もピンと上を向いた。可愛い!


「じゃあ、また魔方陣の絵描き歌しよっか」
「するー! まーるいおぼんがありましてー」


 早速口ずさみはじめたミウちゃんと一緒に、魔方陣の絵描き歌を歌う。

 今度は少し、真剣に覚えるつもりで。






ーーーーーーーーーー

 Sランク冒険者は、果たして登場することはあるのか? いつか出るのかなー? 設定全然考えてないよ。

 Sランク冒険者7人全員をみると、何故か発狂死するって設定とかどう?
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