無能チートで冒険者! ~壁魔法も使いよう~

白鯨

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 1章.無能チート冒険者になる

23.無能チートと新たな依頼

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「オークの件での新情報……ですか?」


 セヨンさんの新型鎧『ヴィッシュ』が完成した次の日、例のオークの件で新情報がないかの確認と、ヴィッシュの試運転を兼ねて、冒険者ギルドで、依頼を受けようと、セヨンさんに提案された。
 森に入るのは禁止されていても、街の中の依頼なら問題ない。

 私達は早速冒険者ギルドで、エルティスさんに話を聞きに来たのだ。


「申し訳ありません、まだオークの拠点と思わしき場所の発見には、至っておりません。それどころか、オークの発見すらできておりません」


 エルティスさんの話に、少なからず驚いた。
 まさかオークの1匹すら見つからないなんて、これではまるで。


「領軍の軍団長様は、オークの見つからない状況に、虚偽の報告を疑っています。持ち帰ったオークも、褒賞金目当ての自作ではないか。と」
「まぁ、そうなりますよね」


 スタンピードが起こるって言われて、何も見つからないんじゃ、警察に電話して、爆弾を仕掛けた。とか言って騙すのと、同じようなもんだよね。


「申し訳ありません、トンボ様。私達ギルドが、確たる証拠を提示できず、疑われるような事態になってしまいました」


 そう言って、深々と頭を下げて、謝罪をするエルティスさん。
 私は驚いた。だって謝罪をするって事は。


「エルティスさんは、疑ってないんですか?」
「はい、ギルドの見解は、オークロードがよほど頭の良い個体で、斥候が殺された段階で、情報の秘匿に方針を切り替えたからではないかと、考えております。それに私の見た限り、オークの防具には、人が手を加えた器用さが感じられませんでした。間違いなくオーク自身が手を加えたものでしょう」


 なんだ、ギルドの方針とエルティスさんの観察力から来てるだけか。
 いや、疑われていないのは良いことなんだけど、なんか違うんだよなぁ。
 そんな私の気持ちを読み取ったのか、エルティスさんは、小さく微笑んだ。


「短い付き合いですが、トンボ様が真っ直ぐな性格なのは存じておりますので、嘘を吐いているとは思わなかった、というのも理由ですね」


 さすがエルティスさん。私の欲しかった言葉をくれる、できる受付嬢だ。


「なにより、ドワーフのセヨン様が付いていて、装備を偽るなど、許すはずがありませんから」
「ぐぅ」


 ちゃっかりオチを用意しているエルティスさん。上げてから落とすとは、完璧じゃないか。
 ぐぅの音しかでないぜ!


「ギルドでは、領軍に準備を進めるよう促しつつ、引き続き探索に力を入れていきますので、もうしばらくお待ちください」
「わかりました。ありがとうございますエルティスさん!」
「はい……そういえばセヨン様は、何時もの鎧姿ではないのですね」
「そう、新型鎧の『ヴィッシュ』。これで、オーク、楽勝」


 元々、セヨンさんの中身を知っていたらしく、エルティスさんは、セヨンさんの鎧についてに話を変えた。

 瞬間、ギルド内がざわつきはじめた。
 実は冒険者ギルドに入った時から、セヨンさんに視線が集中していたのだ。
 ゴツい手甲をしているが、見た目は美少女なのだ。しかも今は私が結ってツインテールになって可愛さが増している。見られないはずがない。
 鎧の中にいた時は気にならなかったみたいだけど、これからは生身に近くなるから、伸ばしっぱなしの髪を結うことにした。ツインテールなのは、完全に私の趣味だ!
 ちなみに、弐式手甲はマジックバッグの中だ。

 そんな注目の美少女が、以前騒ぎを起こしたトンボと一緒にいる。トンボはセヨンとパーティーを組んだはず。まさかあれは……。
 なんて疑ってたら、エルティスさんが名前を呼び、案の定美少女がセヨンさんだった訳で、それでこのざわつきよ。
 まぁあの全身鎧に、こんな美少女が入ってるなんて、想像できないよね。声渋かったし。
 私が優越感に浸っている間に、セヨンさんとエルティスさんは、依頼について話をはじめていた。


「街の中で、鎧を動かすのに最適な依頼ですか……」
「そう、なにか、ない?」
「それでしたら……確かこ」
「それならば! 良い依頼があるぞ!」


 突然、真後ろからデカイ声で、話に乱入してきた奴がいた。
 耳が、キーンってなった。
 私は耳を押さえ、背後を振り向いた。すると、壁が出現していたのだ。


「違う! 俺様だ! フィレオ・ゴールドバーグ様だ! がっはっはっ!」
「げぇ、おっちゃん!」

 デカーイ! 説明不要! ではないので、説明すると、壁だと思っていたのは『フィレオの道具屋』店長で巨人族の、フィレオ・ゴールドバーグ。通称おっちゃんだったのだ。


「がっはっはっ! 娘っ子よ! ちゃんと元気に冒険しているか?!」
「それが、初依頼で厄介な事になっちゃってさぁ……あんま冒険できてないんだよ」
「知っている! オークの件だろう? ギルマスの小僧から、ポーションを大量に準備して欲しいと、要請があったわ」


 そうだった。この細かい事は気にしなさそうなおっちゃんは、実は大量のポーション調合ができるんだった。


「そうだ! 私この前、薬草採取してきたよ! 道具ありがとね、おっちゃん!」
「そうかそうか! 薬草を大量に採取したアホがいると聞いたが、娘っ子の事だったか! あの大量の薬草のお陰で、要請された回復ポーションは用意できたぞ! よくやった!」
「ん、トンボ、よくやった」
「へっへーん! でしょ! 頑張ったからね!」


 アホは余計だけど、素直に褒められ、嬉しくなってテンション上がってしまった。ちょっと子どもっぽかったかな。恥ずかしい。


「なんだセヨン、お前居たのか? いつも以上に小さくて、マジで気づかんかったわ! がっはっはっ!」
「フィーが大き過ぎるだけ。これ新しい鎧。格好いい」
「ふむ、ミスリル製か……、ふふっ、セヨンも成長しているようだな! 見た目はちんちくりんなままだがな! がっはっはっ!」
「いけ、弐式」


 セヨンさんが暗い笑みを浮かべた顔で、腰に付けたマジックバッグを開いた。すると、大笑いするおっちゃんの顔面に、弐式手甲が飛んでいき、その頭を締め上げた。


「いだだだだ! なんだこれは! あっマジで痛い! ミシミシ言ってるぞ!」
「余計なことばっかり言ってるからだよ、おっちゃん」
「そう、反省、するべき」


 昔見たカンフー映画で、胡桃を摘まんで潰す訓練があったけど、巨大な手甲が、おっちゃんの頭を摘まんで力を込めている姿は、正にそのシーンを彷彿とさせた。
 割っちゃう? 割っちゃうの?


「待て待て! 良い依頼を持ってきてやったんだ! 話を聞きたいだろ?! だから放せー!」
「えぇ~どうかなぁ~、セヨンさん聞きたい~?」
「別に」
「くくくっ、だってさおっちゃん。セヨンさんは先に謝罪が聞きたいんじゃな~い?」
「そう、まず、謝るべき」
「ヒィ……、トンボ様は、やはり恐ろしい」
「わかった! 俺様が悪かった! 」


 根負けしたおっちゃんの謝罪を聞き、ようやくおっちゃんの頭を解放し、弐式手甲をマジックバッグに戻したセヨンさん。
 解放されたおっちゃんは、頭を抑えながら「なんで俺様がこんな目に……」なんて呟いている。
 本当に反省してるのかな?


「しっ、してる! してるから!」
「で、良い依頼、なに?」
「そうだ! 聞かせろー!」
「くっ! 小娘共めっ……! いや! なんでもないから、マジックバッグを開けようとするな! まったく、依頼というのはだな」


 おっちゃんの話だと、回復ポーションと解毒ポーションは、数を揃えられそうだけど、魔力ポーションは、素材の在庫が少なく、数がギリギリになりそうなんだとか。
 だから追加の素材採取を、冒険者ギルドに依頼しに来たらしい。


「だから、おっちゃん居たんだ。てっきり道具屋が潰れたのかと」
「縁起でもないことを言うな! この前も新人冒険者が4人も来たのだぞ! がっはっはっ!」
「……それってパーティーだった?」
「おう! なんでも、凄い冒険者がオススメしてくれたんだとか、言っていたな!」


 そうか、あの子達、ちゃんとアドバイス聞いてくれたんだ。
 なんだか嬉しい気持ちが胸に広がり、思わずにやけた私を、おっちゃんが真面目な顔で見てきた。


「後進を導くのも、冒険者の役目だ。これからも“その”気持ちを忘れるな。がっはっはっ!」


 見透かしたようにそう言って、ニヤリと笑うと、いつもの豪快な笑い声をあげるおっちゃん。
 嬉しそうに笑うこの巨人が、何故住みにくい街に住んでまで、新人冒険者の支援をしているのかが、少しわかった気がする。


「それより依頼だ! 下水道に行ってこい! スライム狩りだ!」
「くそっ! ちょっといい話風になったのに、それよりで流された! しかも下水道かよ!」
「スライムの核が魔力ポーションの材料でな! それが不足している! 取ってくるのだ! いいか! スライムの核は素手で触るな! 稀に酸性の液体が付着している! 採取セットの手袋を身に付けろ!」
「話聞けよ?! 行くなんて行ってないでしょ!」


 ひとりで話を進めるおっちゃんが、以前のように注意事項を捲し立てる。
 思わずツッコンだ私を、さも心外そうに見てくるおっちゃん。


「新人は薬草採取からはじめるといい! なんて先輩面するなら、魔力ポーションの素材集めぐらい、楽勝だと思ったんだけどなぁ。あれ~? おかしいなぁ~」
「くっ」


 なんて腹の立つ顔をするのか、口調も変わりすぎだろ、このクソ親父! さっきの仕返しか!


「トンボの負け、スライムの核、採取する」
「セヨンさん……くやしいです」
「なら、スライムの核、いっぱい集める。ポーション作り、大変にして、フィー、ヒィヒィ言わせる」
「なるほど! 略してフィーヒヒ作戦ですね!」
「なんか気持ち悪い笑い声みたいになったぞ?! だが、もしもそんな大量に取ってこれたら、ポーション作りは苦労しそうではあるな!」


 おっちゃんのその予想が決め手になり、私達『グル・グルヴ』の次の依頼は、下水道でのスライム討伐及び核回収になっーー。

「お待ち下さい、まだ依頼として受理していませんので、もう少し掛かります」
「あっはい」


 エルティスさんの作業を少し待ち、改めてグル・グルヴの次の依頼が決まったのだ!





 しかし、もしオークロードが戦力の秘匿をしたのなら、秘匿すべき理由があると、この時の私は気付いていなかったのだ。
 例えばこの街に攻め込む時までに、敵に戦力を悟らせないためだとか。





ーーーーーーーーーー

 口下手全身鎧と女子高生のパーティーから、口下手褐色銀髪ツインテール巨大手甲怪力ロリと女子高生のパーティーに進化したぜ!

 属性盛りすぎぃ! 押し潰されて女子高生が息してないよ! でも後悔してない!
 チビキャラがデカイ武器ぶん回すのはロマンだから!
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