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石榴の月 第二話⑭
石榴の月~愛され求められ奪われて~
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これもお稲荷さまのご利益かもしれないなどと、場違いというか、何とも手前勝手解釈でとにかく小さな祠に向かって両手をわせる。
ここは祠といっても、別に神社のようにい境内地があるわけではなく、一角に小さお社がぽつねんと建てられているだけだ。の側に一本だけ植わった桜の古樹はまた何も貧相で、春になるとそれでも薄紅色の花ちらほらとつけるのが不思議なほどであた。
この桜もあと十日もすれば、また可愛らい花を咲かせる。その日暮らしの貧乏人にっては、花見としゃれ込むゆとりも金もなくせめてこの桜を見て通る度に、花を見て〝あ、今年もまた春が来た〟と慌ただしく感るくらいのものだ。
小さな祠の真後ろはわずかな空き地となているが、灯りとてなく、闇が凝って更にい闇を作っているようである。月明かりもこまで届いていないらしく、それこそお狐までも出てきそうな暗闇に、気丈なお民も気味悪く思いながら立ち上がった。
これでまた遅くなってしまった。源治は配しているだろうか、それともまた帰りがいと怒られるだろうか。
良人の怒った顔を思い出し、首を竦めた時前方の闇がユラリと動いたように見えた。 眼の錯覚だろうか、疲れているのかもしない。やはり、早く帰って今夜は寝た方がさそうだ。お民が踵を返そうとしたのと、前にぬっと大きな黒い影が立ちはだかったはほぼ同時のことだった。
「きゃっ」
お民はあまりの愕きに、悲鳴を上げた。 影がゆっくりと動く。次第にこちらへと動してくるのを、お民は茫然として眺めてた。
ふいに月光がその影の主を照らした。月かりに浮かびあがったその正体を見て、おは更に声にならない声を上げる。
「そんな」
端整な顔には何の感情も浮かんではいなった。ただ黄泉の国から甦ったという死者ように、虚ろな表情でお民を凝視しているしかし、その眼だけは異様な輝きを放ち、民を射竦めるような眼光は以前より更に鋭を増している。
「あなたがどうして」
どうして、こんなところに。
お民は夢中で後ずさった。
怖い、無性にこの男が怖かった。半月前町人町の縹やの前で声をかけられた時、あ男―石澤嘉門はお民をずっと付けていたのと言った。
では、やはり、あれから後も嘉門はお民ずっと付け回していたのだろうか。
この男のすることが尋常だとは思えなかた。最早、どこか狂っているとしか思えない。「何故、逃げる」
嘉門が低い声で呟いた。
「俺はそなたを忘れられず、ずっとこうし心は虚ろだというに、そなたは何故、そのうに生き生きと美しう輝いておるのだ」
お民は首を振った。
「止めて、来ないで」
お願いだから、もう自由にして。いつまも私につきまとわないで、これ以上、あなと過ごした昔を思い出せないで。
お民が心で叫んだ時、突如として鳩尾にい衝撃と痛みを憶えた。
「どうして―、こんなことをするの」
絶望の呟きと共に、お民の身体が花が落するようにくずおれる。地面に倒れる寸前嘉門がその身体を抱き止めた。
花ふくの岩次が持たせてくれた重箱がおの手から音を立てて落ちた。心づくしの料が地面に散らばり、無惨に泥にまみれる。「やっと捕まえた」
嘉門が軽々とお民を抱え上げる。その重もやわらかな膚も嘉門にとっては、すべて愛おしい、懐かしいものに思える。
「もう、離さぬ。そなたは未来永劫、俺ののだ。そなたは最早、俺から逃れることはきぬ」
嘉門が魔界から響いてくる亡者のようなで笑う。くっくっと不気味な声を上げながら嘉門は腕にかかる愛しい女の重みを確かな応えとして実感していた。
ここは祠といっても、別に神社のようにい境内地があるわけではなく、一角に小さお社がぽつねんと建てられているだけだ。の側に一本だけ植わった桜の古樹はまた何も貧相で、春になるとそれでも薄紅色の花ちらほらとつけるのが不思議なほどであた。
この桜もあと十日もすれば、また可愛らい花を咲かせる。その日暮らしの貧乏人にっては、花見としゃれ込むゆとりも金もなくせめてこの桜を見て通る度に、花を見て〝あ、今年もまた春が来た〟と慌ただしく感るくらいのものだ。
小さな祠の真後ろはわずかな空き地となているが、灯りとてなく、闇が凝って更にい闇を作っているようである。月明かりもこまで届いていないらしく、それこそお狐までも出てきそうな暗闇に、気丈なお民も気味悪く思いながら立ち上がった。
これでまた遅くなってしまった。源治は配しているだろうか、それともまた帰りがいと怒られるだろうか。
良人の怒った顔を思い出し、首を竦めた時前方の闇がユラリと動いたように見えた。 眼の錯覚だろうか、疲れているのかもしない。やはり、早く帰って今夜は寝た方がさそうだ。お民が踵を返そうとしたのと、前にぬっと大きな黒い影が立ちはだかったはほぼ同時のことだった。
「きゃっ」
お民はあまりの愕きに、悲鳴を上げた。 影がゆっくりと動く。次第にこちらへと動してくるのを、お民は茫然として眺めてた。
ふいに月光がその影の主を照らした。月かりに浮かびあがったその正体を見て、おは更に声にならない声を上げる。
「そんな」
端整な顔には何の感情も浮かんではいなった。ただ黄泉の国から甦ったという死者ように、虚ろな表情でお民を凝視しているしかし、その眼だけは異様な輝きを放ち、民を射竦めるような眼光は以前より更に鋭を増している。
「あなたがどうして」
どうして、こんなところに。
お民は夢中で後ずさった。
怖い、無性にこの男が怖かった。半月前町人町の縹やの前で声をかけられた時、あ男―石澤嘉門はお民をずっと付けていたのと言った。
では、やはり、あれから後も嘉門はお民ずっと付け回していたのだろうか。
この男のすることが尋常だとは思えなかた。最早、どこか狂っているとしか思えない。「何故、逃げる」
嘉門が低い声で呟いた。
「俺はそなたを忘れられず、ずっとこうし心は虚ろだというに、そなたは何故、そのうに生き生きと美しう輝いておるのだ」
お民は首を振った。
「止めて、来ないで」
お願いだから、もう自由にして。いつまも私につきまとわないで、これ以上、あなと過ごした昔を思い出せないで。
お民が心で叫んだ時、突如として鳩尾にい衝撃と痛みを憶えた。
「どうして―、こんなことをするの」
絶望の呟きと共に、お民の身体が花が落するようにくずおれる。地面に倒れる寸前嘉門がその身体を抱き止めた。
花ふくの岩次が持たせてくれた重箱がおの手から音を立てて落ちた。心づくしの料が地面に散らばり、無惨に泥にまみれる。「やっと捕まえた」
嘉門が軽々とお民を抱え上げる。その重もやわらかな膚も嘉門にとっては、すべて愛おしい、懐かしいものに思える。
「もう、離さぬ。そなたは未来永劫、俺ののだ。そなたは最早、俺から逃れることはきぬ」
嘉門が魔界から響いてくる亡者のようなで笑う。くっくっと不気味な声を上げながら嘉門は腕にかかる愛しい女の重みを確かな応えとして実感していた。
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と、現在のように「たそかれ」で時間帯を表す用例が現れる。
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