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秋 帰宅
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北の修道院からチェーザレの国、コラーク国までは遠い。チェーザレが国に戻った頃にはすっかり秋も深まり冬が近づこうとしていた。
国を出たのが春だったのでおおよそ半年もの間チェーザレは行方しれずになっていたことになる。
家に戻り、久しぶりに湯浴みをした。湯浴み後に髭を綺麗に整えてもらっていた時、乱暴に扉が開くと弟のロドリーゴが足早に近付いてきた。
そうして流れるようにロドリーゴはチェーザレの頬を力一杯打ったのだ。
髭を整えていた理髪師が咄嗟に髭剃りナイフを上にあげたため、チェーザレの顔に刃物の傷は付かなかったが、それでも殴られたチェーザレは椅子から転げ落ち鼻から血を流したし、口の中いっぱいに血の匂いが広がった。
口を閉じるとジャリという音がして、歯が何本か欠けたのがわかった。
「何をする!」
チェーザレは打たれた頬を庇いながらロドリーゴを睨んだ。
「本当にわからないのですか?」
ロドリーゴはチェーザレを見下ろした。その口はわなわなと震えていた。
「貴方に貴族としての矜持はあるのですか?王命で結婚したクラリーチェ嬢を蔑ろにし、結婚を機に父から受け継いだカヴァグーチェ領の経営を押し付け、社交もせずに遊びまわっていましたね。一年で身勝手に離縁。そうかと思えば半年近くもフラフラと。」
「遊び歩いてなど・・・屋敷には戻らなかったが仕事は行っていたさ!俺はエリィを迎えに行っていたのだ。」
チェーザレがそう言うとロドリーゴは目を見開いた。
「まさか!北の修道院へ?」
ロドリーゴの驚きに気を良くしたチェーザレは得意気に笑って「あぁ」と言った。
その顔を見てロドリーゴは目を白黒させた。
「褒めてません!あぁ、大変なことになった。父上にお伝えしないと。」
そう言うとロドリーゴは足早に部屋を出て行った。
チェーザレが帰ってきた屋敷は彼が領地経営を任されたカヴァグーチェ領の屋敷である。ここに弟が居るとは思わなかった。
カヴァグーチェはカーミヤ公爵が治める他の領地からは飛地となっていて、王都からもカーミヤの本来の領地からも距離がある。
しかし、肥沃な土地で上質なオリーブが取れるためカーミヤ公爵家にとってはなくてはならない土地だった。
そのため、近しい親戚筋の者を領主に任命するのが慣例で、チェーザレは結婚と同時に叔父から領主の座を引き継いだのだ。
一連のやり取りをぼんやり眺めていた執事のジョバンニに医者を呼ぶように言う。しかし彼は首を振ってこう言った。
「あなたのために呼ぶ医者はおりません。」
ジョバンニはどこまでも無表情だった。
「何故だ!俺は領主だぞ!」
チェーザレは咄嗟に叫んだが口の中に痛みが走った。
「領主?これは笑わせることをおっしゃる。あなたは屋敷にも近づかず、小さなアパートでずっとこもっていらっしゃった。あそこでできることなどそれほど多くないことくらい分かっていらしたでしょう?」
無表情なジョバンニの目にはどこか侮蔑の色が浮かんでいた。
「それは・・・俺はエリィと結婚してこの地を治めるつもりだった。あんな女と一緒になるなど我慢できなかったのだ。」
「だからこの屋敷にも寄り付かなかったと?」
ジョバンニにそう言われてチェーザレは何も言えなくなった。口をつぐんでいるチェーザレにジョバンニはなおも畳み掛ける。
「それに、クラリーチェ様のことをあんな女と仰いますが、貴方様はクラリーチェ様の何をご存知なのです?一度でも面と向かって話したことはありましたか?」
そう問われてクラリーチェと向き合った事などなかったと思い出す。チェーザレは結婚前も結婚後もずっとクラリーチェから逃げていたのだから。
「それは・・・ない。しかし!」
そう言った時、メイドの一人がジョバンニを呼びに来た。急ぎの用だったのかジョバンニはチェーザレを見ることもなく部屋から出ていった。
「何だよっ!」
部屋に取り残されたチェーザレは情けなく一人になりたい気分だった。
部屋の中にはまだ理髪師もメイドも残っていたが彼らを部屋から叩き出すと不貞腐れてベッドに突っ伏した。
国を出たのが春だったのでおおよそ半年もの間チェーザレは行方しれずになっていたことになる。
家に戻り、久しぶりに湯浴みをした。湯浴み後に髭を綺麗に整えてもらっていた時、乱暴に扉が開くと弟のロドリーゴが足早に近付いてきた。
そうして流れるようにロドリーゴはチェーザレの頬を力一杯打ったのだ。
髭を整えていた理髪師が咄嗟に髭剃りナイフを上にあげたため、チェーザレの顔に刃物の傷は付かなかったが、それでも殴られたチェーザレは椅子から転げ落ち鼻から血を流したし、口の中いっぱいに血の匂いが広がった。
口を閉じるとジャリという音がして、歯が何本か欠けたのがわかった。
「何をする!」
チェーザレは打たれた頬を庇いながらロドリーゴを睨んだ。
「本当にわからないのですか?」
ロドリーゴはチェーザレを見下ろした。その口はわなわなと震えていた。
「貴方に貴族としての矜持はあるのですか?王命で結婚したクラリーチェ嬢を蔑ろにし、結婚を機に父から受け継いだカヴァグーチェ領の経営を押し付け、社交もせずに遊びまわっていましたね。一年で身勝手に離縁。そうかと思えば半年近くもフラフラと。」
「遊び歩いてなど・・・屋敷には戻らなかったが仕事は行っていたさ!俺はエリィを迎えに行っていたのだ。」
チェーザレがそう言うとロドリーゴは目を見開いた。
「まさか!北の修道院へ?」
ロドリーゴの驚きに気を良くしたチェーザレは得意気に笑って「あぁ」と言った。
その顔を見てロドリーゴは目を白黒させた。
「褒めてません!あぁ、大変なことになった。父上にお伝えしないと。」
そう言うとロドリーゴは足早に部屋を出て行った。
チェーザレが帰ってきた屋敷は彼が領地経営を任されたカヴァグーチェ領の屋敷である。ここに弟が居るとは思わなかった。
カヴァグーチェはカーミヤ公爵が治める他の領地からは飛地となっていて、王都からもカーミヤの本来の領地からも距離がある。
しかし、肥沃な土地で上質なオリーブが取れるためカーミヤ公爵家にとってはなくてはならない土地だった。
そのため、近しい親戚筋の者を領主に任命するのが慣例で、チェーザレは結婚と同時に叔父から領主の座を引き継いだのだ。
一連のやり取りをぼんやり眺めていた執事のジョバンニに医者を呼ぶように言う。しかし彼は首を振ってこう言った。
「あなたのために呼ぶ医者はおりません。」
ジョバンニはどこまでも無表情だった。
「何故だ!俺は領主だぞ!」
チェーザレは咄嗟に叫んだが口の中に痛みが走った。
「領主?これは笑わせることをおっしゃる。あなたは屋敷にも近づかず、小さなアパートでずっとこもっていらっしゃった。あそこでできることなどそれほど多くないことくらい分かっていらしたでしょう?」
無表情なジョバンニの目にはどこか侮蔑の色が浮かんでいた。
「それは・・・俺はエリィと結婚してこの地を治めるつもりだった。あんな女と一緒になるなど我慢できなかったのだ。」
「だからこの屋敷にも寄り付かなかったと?」
ジョバンニにそう言われてチェーザレは何も言えなくなった。口をつぐんでいるチェーザレにジョバンニはなおも畳み掛ける。
「それに、クラリーチェ様のことをあんな女と仰いますが、貴方様はクラリーチェ様の何をご存知なのです?一度でも面と向かって話したことはありましたか?」
そう問われてクラリーチェと向き合った事などなかったと思い出す。チェーザレは結婚前も結婚後もずっとクラリーチェから逃げていたのだから。
「それは・・・ない。しかし!」
そう言った時、メイドの一人がジョバンニを呼びに来た。急ぎの用だったのかジョバンニはチェーザレを見ることもなく部屋から出ていった。
「何だよっ!」
部屋に取り残されたチェーザレは情けなく一人になりたい気分だった。
部屋の中にはまだ理髪師もメイドも残っていたが彼らを部屋から叩き出すと不貞腐れてベッドに突っ伏した。
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