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第二話 フィーと国守樹の乙女
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あの夜会以降もレイフとは会えない日が続いた。
夜会の次の顔合わせの時には言い訳の一つでもしにてくれるかと期待をしていたのに、あのレイフがそんな事をしにくるわけがなかった。
これまで、レイフに好かれてもいないが嫌われてもいないと思っていた。それでも、フィーが頑張って来れたのは人に興味のないレイフに他に好きな令嬢が出来る事などないと思っていたからだ。
しかし、レイフはジャニスのことを好きなのだ。
夜会の仲睦まじい姿を見た人々は口々にそう噂した。
同じ王宮内であるが魔法の研究棟は遠い。
フィーが居る教育の間からは研究棟の尖塔だけが見えていた。
(今もジャニス様と一緒に研究なさっているのかしら。研究仲間ですもの。わたくしと違って話も合うのでしょうね。)
これまでは教育のために王宮に来ていてもレイフと会うことはまずなかった。レイフは研究に熱心で誰かがついていないと寝食も忘れて研究に没頭するタイプだ。
だから、無駄に王宮をウロウロすることなど考えられなかった。それなのに、最近はジャニスと庭園をデートしているらしい。
その話はすぐに王宮内を駆け巡った。
そして、向こうはフィーに気付かなかったがフィーは何度かレイフとジャニスの逢瀬を見てしまった。
フィーと会う時はいつも時間を惜しんでいて髪もボサボサでたまに臭うこともあったのにジャニスと庭園を歩いているレイフは王子らしいきちんとした格好をしていた。
やはりジャニスと会う時はきちんとした格好をするのね。
フィーはこれまで自分がいかにレイフに蔑ろにされていたのかを思い知った。
そして、そんな二人が相思相愛だという噂は王宮のみならず貴族社会全体を疾風の如く駆け抜けた。
そうしてフィーの心は折れてしまったのだ。
「王がお呼びです。謁見の間にお越しください。」
王子妃教育のために王宮に着くと、従者が教育の間ではなく、謁見の間に行くよう促した。フィーは数日前から謁見を申し出ており、それが叶ったのだ。
「お久しぶりでございます。」
「あぁ。よい。顔を上げよ。レイフとの事じゃな。」
「はい。」
「レイフとは上手くいっておらんようじゃの。」
こうはっきりと面と向かって言われると少しショックである。ドレスを掴むフィーの指先は震えていた。
「申し訳ありません。わたくしの力不足でございます。」
「まぁ、あれも人の気持ちなどわからぬ男だからの。それで、今日はいかがした?婚約を解消したいか?」
王は優しく聞いてくれる。
「いえ、わたくし第四十二代国守樹の乙女に立候補しとうございます。」
「くに・もりの・・き・・・の乙女?しかし、そなた・・・」
国守樹の乙女とはこの国を守る大樹に捧げる乙女のことである。捧げる・・・つまり生贄である。
国守樹の乙女に選ばれることは名誉なこととされている。
「最近、魔獣の動きが活発になっていると伺いました。乙女が選ばれる日も近いと。このままでは、いずれ私とレイフ殿下との婚約は解消されましょう?さすれば、わたくしは殿下愛想を尽かされた傷物の令嬢となります。良い縁談は期待できません。であれば、せめて名誉だけでも手に入れとうございます。」
レイフの今の態度ではいずれにせよ婚約は解消されるだろう。
レイフがほかの女性をエスコートするのも結婚するのも幸せな家庭を築くのもフィーは見たく無かった。
少し考えた後、王はフィーを見据えた。
その瞳からは決意の跡が見て取れた。
「意思は固いか・・・わかった。確かに今すぐにでも乙女を選ばねばならんかった。そちに国守樹の乙女となる名誉を授けよう」
「ありがたき幸せにございます。」
王はフィーの願いを聞き入れた。
本当であればレイフに相談して決めなければならないのだろう。しかし、王の認識としてもレイフはフィーに興味がないと考えていた。
レイフにフィーが乙女になることを望んでいると相談しても「あぁ、そう。それで?本人が望むならそうすればいいんじゃない?」と言われるのがオチなような気がした。
相談をしてひきとめてもらえなかったとなれば、フィーはさらに傷つくだろう。
フィーは最後にレイフに挨拶しようかと思ったが、みっともなく泣いて縋ってしまいそうでやめておいた。
王宮での夜会から半年後の冬至の日にフィーは国守樹と呼ばれる人を喰う魔植物にその身を捧げた。
それまでおどろおどろしい雰囲気を出していた魔植物はフィーを喰らい落ち着いたのか聖なる空気を出すようになった。
国守樹が聖なる空気を出している間、国に魔獣は侵入できなくなる。
フィーの犠牲により国は数十年は魔獣から守られるのだ。
-----------------
当初王から乙女になることを命じられる方向で話を書いていたのですが、フィーから申し出る形にしました。
夜会の次の顔合わせの時には言い訳の一つでもしにてくれるかと期待をしていたのに、あのレイフがそんな事をしにくるわけがなかった。
これまで、レイフに好かれてもいないが嫌われてもいないと思っていた。それでも、フィーが頑張って来れたのは人に興味のないレイフに他に好きな令嬢が出来る事などないと思っていたからだ。
しかし、レイフはジャニスのことを好きなのだ。
夜会の仲睦まじい姿を見た人々は口々にそう噂した。
同じ王宮内であるが魔法の研究棟は遠い。
フィーが居る教育の間からは研究棟の尖塔だけが見えていた。
(今もジャニス様と一緒に研究なさっているのかしら。研究仲間ですもの。わたくしと違って話も合うのでしょうね。)
これまでは教育のために王宮に来ていてもレイフと会うことはまずなかった。レイフは研究に熱心で誰かがついていないと寝食も忘れて研究に没頭するタイプだ。
だから、無駄に王宮をウロウロすることなど考えられなかった。それなのに、最近はジャニスと庭園をデートしているらしい。
その話はすぐに王宮内を駆け巡った。
そして、向こうはフィーに気付かなかったがフィーは何度かレイフとジャニスの逢瀬を見てしまった。
フィーと会う時はいつも時間を惜しんでいて髪もボサボサでたまに臭うこともあったのにジャニスと庭園を歩いているレイフは王子らしいきちんとした格好をしていた。
やはりジャニスと会う時はきちんとした格好をするのね。
フィーはこれまで自分がいかにレイフに蔑ろにされていたのかを思い知った。
そして、そんな二人が相思相愛だという噂は王宮のみならず貴族社会全体を疾風の如く駆け抜けた。
そうしてフィーの心は折れてしまったのだ。
「王がお呼びです。謁見の間にお越しください。」
王子妃教育のために王宮に着くと、従者が教育の間ではなく、謁見の間に行くよう促した。フィーは数日前から謁見を申し出ており、それが叶ったのだ。
「お久しぶりでございます。」
「あぁ。よい。顔を上げよ。レイフとの事じゃな。」
「はい。」
「レイフとは上手くいっておらんようじゃの。」
こうはっきりと面と向かって言われると少しショックである。ドレスを掴むフィーの指先は震えていた。
「申し訳ありません。わたくしの力不足でございます。」
「まぁ、あれも人の気持ちなどわからぬ男だからの。それで、今日はいかがした?婚約を解消したいか?」
王は優しく聞いてくれる。
「いえ、わたくし第四十二代国守樹の乙女に立候補しとうございます。」
「くに・もりの・・き・・・の乙女?しかし、そなた・・・」
国守樹の乙女とはこの国を守る大樹に捧げる乙女のことである。捧げる・・・つまり生贄である。
国守樹の乙女に選ばれることは名誉なこととされている。
「最近、魔獣の動きが活発になっていると伺いました。乙女が選ばれる日も近いと。このままでは、いずれ私とレイフ殿下との婚約は解消されましょう?さすれば、わたくしは殿下愛想を尽かされた傷物の令嬢となります。良い縁談は期待できません。であれば、せめて名誉だけでも手に入れとうございます。」
レイフの今の態度ではいずれにせよ婚約は解消されるだろう。
レイフがほかの女性をエスコートするのも結婚するのも幸せな家庭を築くのもフィーは見たく無かった。
少し考えた後、王はフィーを見据えた。
その瞳からは決意の跡が見て取れた。
「意思は固いか・・・わかった。確かに今すぐにでも乙女を選ばねばならんかった。そちに国守樹の乙女となる名誉を授けよう」
「ありがたき幸せにございます。」
王はフィーの願いを聞き入れた。
本当であればレイフに相談して決めなければならないのだろう。しかし、王の認識としてもレイフはフィーに興味がないと考えていた。
レイフにフィーが乙女になることを望んでいると相談しても「あぁ、そう。それで?本人が望むならそうすればいいんじゃない?」と言われるのがオチなような気がした。
相談をしてひきとめてもらえなかったとなれば、フィーはさらに傷つくだろう。
フィーは最後にレイフに挨拶しようかと思ったが、みっともなく泣いて縋ってしまいそうでやめておいた。
王宮での夜会から半年後の冬至の日にフィーは国守樹と呼ばれる人を喰う魔植物にその身を捧げた。
それまでおどろおどろしい雰囲気を出していた魔植物はフィーを喰らい落ち着いたのか聖なる空気を出すようになった。
国守樹が聖なる空気を出している間、国に魔獣は侵入できなくなる。
フィーの犠牲により国は数十年は魔獣から守られるのだ。
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当初王から乙女になることを命じられる方向で話を書いていたのですが、フィーから申し出る形にしました。
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