【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子

ゴールデンフィッシュメダル

文字の大きさ
2 / 6

第二話 フィーと国守樹の乙女

しおりを挟む
あの夜会以降もレイフとは会えない日が続いた。
夜会の次の顔合わせの時には言い訳の一つでもしにてくれるかと期待をしていたのに、あのレイフがそんな事をしにくるわけがなかった。

これまで、レイフに好かれてもいないが嫌われてもいないと思っていた。それでも、フィーが頑張って来れたのは人に興味のないレイフに他に好きな令嬢が出来る事などないと思っていたからだ。
しかし、レイフはジャニスのことを好きなのだ。
夜会の仲睦まじい姿を見た人々は口々にそう・・噂した。


同じ王宮内であるが魔法の研究棟は遠い。
フィーが居る教育の間からは研究棟の尖塔だけが見えていた。

(今もジャニス様と一緒に研究なさっているのかしら。研究仲間ですもの。わたくしと違って話も合うのでしょうね。)


これまでは教育のために王宮に来ていてもレイフと会うことはまずなかった。レイフは研究に熱心で誰かがついていないと寝食も忘れて研究に没頭するタイプだ。
だから、無駄に王宮をウロウロすることなど考えられなかった。それなのに、最近はジャニスと庭園をデートしているらしい。

その話はすぐに王宮内を駆け巡った。
そして、向こうはフィーに気付かなかったがフィーは何度かレイフとジャニスの逢瀬を見てしまった。
フィーと会う時はいつも時間を惜しんでいて髪もボサボサでたまに臭うこともあったのにジャニスと庭園を歩いているレイフは王子らしいきちんとした格好をしていた。

やはりジャニスと会う時はきちんとした格好をするのね。
フィーはこれまで自分がいかにレイフに蔑ろにされていたのかを思い知った。

そして、そんな二人が相思相愛だという噂は王宮のみならず貴族社会全体を疾風の如く駆け抜けた。

そうしてフィーの心は折れてしまったのだ。


「王がお呼びです。謁見の間にお越しください。」

王子妃教育のために王宮に着くと、従者が教育の間ではなく、謁見の間に行くよう促した。フィーは数日前から謁見を申し出ており、それが叶ったのだ。


「お久しぶりでございます。」

「あぁ。よい。おもてを上げよ。レイフとの事じゃな。」

「はい。」

「レイフとは上手くいっておらんようじゃの。」

こうはっきりと面と向かって言われると少しショックである。ドレスを掴むフィーの指先は震えていた。

「申し訳ありません。わたくしの力不足でございます。」

「まぁ、あれも人の気持ちなどわからぬ男だからの。それで、今日はいかがした?婚約を解消したいか?」

王は優しく聞いてくれる。

「いえ、わたくし第四十二代国守樹くにもりのきの乙女に立候補しとうございます。」

「くに・もりの・・き・・・の乙女?しかし、そなた・・・」

国守樹の乙女とはこの国を守る大樹に捧げる乙女のことである。捧げる・・・つまり生贄である。

国守樹の乙女に選ばれることは名誉なこととされている。

「最近、魔獣の動きが活発になっていると伺いました。乙女が選ばれる日も近いと。このままでは、いずれ私とレイフ殿下との婚約は解消されましょう?さすれば、わたくしは殿下愛想を尽かされた傷物の令嬢となります。良い縁談は期待できません。であれば、せめて名誉だけでも手に入れとうございます。」

レイフの今の態度ではいずれにせよ婚約は解消されるだろう。
レイフがほかの女性をエスコートするのも結婚するのも幸せな家庭を築くのもフィーは見たく無かった。

少し考えた後、王はフィーを見据えた。
その瞳からは決意の跡が見て取れた。

「意思は固いか・・・わかった。確かに今すぐにでも乙女を選ばねばならんかった。そちに国守樹くにもりのきの乙女となる名誉を授けよう」

「ありがたき幸せにございます。」

王はフィーの願いを聞き入れた。
本当であればレイフに相談して決めなければならないのだろう。しかし、王の認識としてもレイフはフィーに興味がないと考えていた。
レイフにフィーが乙女になることを望んでいると相談しても「あぁ、そう。それで?本人が望むならそうすればいいんじゃない?」と言われるのがオチなような気がした。
相談をしてひきとめてもらえなかったとなれば、フィーはさらに傷つくだろう。



フィーは最後にレイフに挨拶しようかと思ったが、みっともなく泣いて縋ってしまいそうでやめておいた。


王宮での夜会から半年後の冬至の日にフィーは国守樹と呼ばれる人を喰う魔植物にその身を捧げた。
それまでおどろおどろしい雰囲気を出していた魔植物はフィーを喰らい落ち着いたのか聖なる空気を出すようになった。

国守樹が聖なる空気を出している間、国に魔獣は侵入できなくなる。

フィーの犠牲により国は数十年は魔獣から守られるのだ。


-----------------

当初王から乙女になることを命じられる方向で話を書いていたのですが、フィーから申し出る形にしました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。

彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。 目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。

身代わりの恋だと思っていました〜記憶を失った私に、元婚約者が泣いて縋る理由〜

恋せよ恋
恋愛
「君を愛している。一目惚れだったんだ」 18歳の伯爵令嬢エリカは、9歳年上のリヒャルト伯爵から 情熱的な求婚を受け、幸せの絶頂にいた。 しかし、親族顔合わせの席で運命が狂い出す。 彼の視線の先にいたのは、エリカの伯母であり、 彼の学生時代の恋人で「初めての女性」だった……ミレイユ。 「あの子は私の身代わりでしょう」「私はあなただけなの」 伯母ミレイユの甘い誘惑と、裏切りの密会。 衝撃の事実を目撃したエリカは、階段から転落し、 彼と過ごした愛しくも残酷な二年間の記憶だけを失ってしまう。 「……あの、どちら様でしょうか?」 無垢な瞳で問いかけるエリカに、絶望し泣き崩れるリヒャルト。 裏切った男と、略奪を企てた伯母。 二人に待ち受けるのは、甘い報復と取り返しのつかない後悔だった。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

【完結】真実の愛のキスで呪い解いたの私ですけど、婚約破棄の上断罪されて処刑されました。時間が戻ったので全力で逃げます。

かのん
恋愛
 真実の愛のキスで、婚約者の王子の呪いを解いたエレナ。  けれど、何故か王子は別の女性が呪いを解いたと勘違い。そしてあれよあれよという間にエレナは見知らぬ罪を着せられて処刑されてしまう。 「ぎゃあぁぁぁぁ!」 これは。処刑台にて首チョンパされた瞬間、王子にキスした時間が巻き戻った少女が、全力で王子から逃げた物語。  ゆるふわ設定です。ご容赦ください。全16話。本日より毎日更新です。短めのお話ですので、気楽に頭ふわっと読んでもらえると嬉しいです。※王子とは結ばれません。 作者かのん .+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.ホットランキング8位→3位にあがりました!ひゃっほーー!!!ありがとうございます!

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。 この度改編した(ストーリーは変わらず)をなろうさんに投稿しました。

「婚約の約束を取り消しませんか」と言われ、涙が零れてしまったら

古堂すいう
恋愛
今日は待ちに待った婚約発表の日。 アベリア王国の公爵令嬢─ルルは、心を躍らせ王城のパーティーへと向かった。 けれど、パーティーで見たのは想い人である第二王子─ユシスと、その横に立つ妖艶で美人な隣国の王女。 王女がユシスにべったりとして離れないその様子を見て、ルルは切ない想いに胸を焦がして──。

【完結】わたしの欲しい言葉

彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。 双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。 はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。 わたしは・・・。 数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。 *ドロッとしています。 念のためティッシュをご用意ください。

「義妹に譲れ」と言われたので、公爵家で幸せになります

恋せよ恋
恋愛
「しっかり者の姉なら、婚約者を妹に譲ってあげなさい」 「そうだよ、バネッサ。君なら、わかるだろう」 十五歳の冬。父と婚約者パトリックから放たれた無慈悲な言葉。 再婚相手の連れ子・ナタリアの図々しさに耐えてきたバネッサは、 その瞬間に決意した。 「ええ、喜んで差し上げますわ」 将来性のない男も、私を軽んじる家族も、もういらない。 跡継ぎの重責から解放されたバネッサは、その類まれなる知性を見込まれ、 王国の重鎮・ヴィンセント公爵家へ嫁ぐことに。 「私は、私を一番に愛してくれる場所で幸せになります!」 聡明すぎる令嬢による、自立と逆転のハッピーエンド。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

【完結】花冠をあなたに ―信じ尽くした彼女の、最期の言葉―

桜野なつみ
恋愛
病弱な婚約者を支え続けた令嬢ミリアーナ。 幼いころから彼を想い、薬草を学び、研究し、元気になったら花畑で花冠を編ごう」と約束していた。 けれど、叔母と従妹の影がその誓いをゆがめ、やがて誤解と病に蝕まれていく。 最期に彼女が残したのは――ただ一つの言葉。 全十話 完結予定です。 (最初は全四話と言っていました。どんどん長くなってしまい、申し訳ありません。)

処理中です...