【完結】婚約者を奪われましたが、彼が愛していたのは私でした

珊瑚

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その夜、アイリーンは何故か眠れなかった。別にギルバートとクラリスのあの後が気になった訳ではない。彼らが部屋から出て数分後、クラリスの悔しがる声が聞こえた。どうやらギルバートは、本当にアイリーンの見舞いに来ただけだったようだ。『仕事があるので遠慮する。』と、取り付く島もなかったという。アイリーンにとってはもうどうでもいい事のはずだったのだが、クラリスの悔しそうな様子を思い出すと、自然と口角があがった。

今まで寝る間も惜しんで努力してきたせいもあるだろう。その後暫く眠気は訪れず、今夜は諦めて本でも読もうかと体を起こしたその時、こんこん、と小さく窓を叩く音が聞こえた。気味の悪さも感じたため、最初は無視しようとしていた。窓をノックする音も1度きりで、無視していると止まったので、気のせいかとも思ったのだが、しばらくするともう一度今度は控えめに、外側から窓が叩かれた。
もう日付も回っている。こんな時間に誰だろうと思いながらも、窓から来ると言うことはろくでもない者だろうと思っていたのだが、ねそけてしまって暇だったのが原因か、様子を伺ってみることにした。とりあえず窓は開けずともカーテンを開ければ誰がノックしているのかは分かる。ならず者がそこにいたのなら、その場で人を呼んで取り抑えればいいまで。
普段のアイリーンなら絶対に考えないであろう事を思いついた彼女は、恐る恐るカーテンを開けた。

すると、そこに居たのはギルバートだったのだ。
最初にノックしてきた時から半刻近く経っている。
外は寒く、彼の唇は紫色に染まり、小さく震えているのが見て取れた。
悲鳴を上げそうになったアイリーンだったが、正式なルートで訪れることの出来る彼が共も付けずに忍んで来るなど只事では無いと瞬時に察知する。
だがとりあえずは、自分が無視したせいで冷えきってしまった身体を暖めて貰おうと急いで窓を開けた。
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