【完結】婚約者を奪われましたが、彼が愛していたのは私でした

珊瑚

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アイリーンが窓を開けると、ほんの少しほっとした表情を浮かべたギルバートだったが、一瞬の後、それを引っ込めて表情を引き締め直した。


「こんな夜中に押しかけて申し訳ない。だが、どうしても君に聞いて欲しい事があったんだ。少しだけ、時間を頂けないだろうか?」

そう言うギルバートの声は少し震えていて、みるみるうちに顔色も悪くなっていく。当然だ。時折雪もチラつくこの季節、夜中は冷え込むのだ。一刻も早く暖まってもらわないと、風邪を引いてしまうに決まっている。


「勿論です。ですが、そのままでは風邪を引いてしまわれます。どうか中に入ってお話を……。」
「いや……それには及ばない。君は未婚の女性なんだ。男が入り込んでいる所が万が一見られたら君にとって良くないだろう?」
「ですが、お体に良くありません!それに、相手は殿下です。そのような間違いは……。」

気丈に振舞っているが、この気温の中外に居続けて平気なわけがないのだ。それに、婚約者同士であった時、ギルバートは何度かアイリーンの部屋に入ったことがある。彼はもしかするとアイリーンと、同時に今の婚約者であるクラリスにも気を使っているのかもしれない。確かに今、アイリーンはギルバートの婚約者では無い。だが、そんなことをごちゃごちゃ言ってられるほど、彼の様子を心配するアイリーンに余裕は無かった。このままでは翌日の体調に響くどころか、低体温症待ったなしである。自分が無視したせいだ、と罪悪感を抱え、引き下がらないアイリーンがそう言うと、ギルバートは少し考える素振りを見せた。そして間もなく、アイリーンに手を差し出してきたのだった。


「それならば、僕に少しだけついてきてくれないか?」
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