【完結】婚約者を奪われましたが、彼が愛していたのは私でした

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「ふむ……。確かにそうだ。先程君は、気を失う直前の記憶は妹と共に居た、と言ったな？それは、妹が君を突き落とした、という事か？だが、君の妹と君は、ほぼ同じくらいの体格のはずだ。君が抵抗しないなどとても思えない。だが、君たちのどちらにもその様子が伺えるような生傷も見当たらなかったし、そもそも使用人が見ているはずだと思うのだが……。」
「使用人の目撃情報などあるはずかございません。クラリスに呼び出されたのは、彼女が『お姉様が嫁がれる前に、お姉様とおなじくらい上手にお茶を入れれるようになりましたの！』と言って手ずから入れた紅茶を私に飲ませるためでしたもの。クラリスが私に張り合ってくるのはいつもの事ですが、私を少しでも認めるような事を仄めかすなんて不自然だと思いましたわ。……少しばかり警戒していたのに、まんまと嵌められるだなんて……！少しでも分かり合えるかもしれないと期待した私が馬鹿でしたわ！｣

悔しそうに感情を昂らせたアイリーンは、はっと我に返るとふ～……と大きく深呼吸して荒らげた声を収めた。


「つまり……君の事故は転落では無かった、という事か？」
「…………いいえ、確かに転落は致しました。でもその前に、あの子の入れたお茶に大量の眠剤が入っていましたのよ……！あの顔の妙な既視感は、意識が朦朧としている中、ほくそ笑んでいたあの子を見たからですわ……！！」
「そうか……。そうやって君を無抵抗な状態にした上で突き落とした、という事だな？」
「……ええ。残念ながら、時間が経ちすぎてしまいました。その日、私が使ったティーカップでも残っていれば物的証拠になったでしょうが、当然そんなものは残っておりません。」
「当然、そうだろうな。君の妹とて1番に隠したいもののはずだ。」
「……でも、クラリスが、あの子一人で何一つ証拠を残さずこんな大それた事をやってのけるだなんて有り得ません。実際、私を殺し損ねたのですから。」