【完結】婚約者を奪われましたが、彼が愛していたのは私でした

珊瑚

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「今回の発端となった事故について。」
君がティールームから落ちてしまった事故で合っているか?」
「はい。 あれが『事故ではなかった』と言ったら?」

目の前のギルバートがヒュッと息を飲む音が聞こえる。
彼の目は驚愕に見開かれていた。流石の彼も、その可能性は考えていなかったのだ。
今すぐにでもアイリーンを急かしたい気持ちをねじふせて彼女の次の言葉を待つ。
彼女がこのタイミングで話し始めたことには、何かしらの意味があるはずなのだ。
それに水を差したことによって口をつぐまれてしまっても困る。
不安気に揺れる彼女の瞳を濡らしたくはなかった。
ただ静かにアイリーンを見つめて、続く彼女の言葉を待った。

アイリーンもまた、彼が開く姿勢を見せてくれたことに、とりあえず安堵していた。
ギルバートの事を信頼しているとはいえ、こんな荒唐無稽な話をして、一笑に付される可能性も0ではなかったのだ。
彼が聞きの姿勢に徹する事を態度で示してくれた事を確認すると、アイリーンは再び恐る恐る口を開いた。


「……殿下がお見舞いに来て下さった時、クラリスは私にだけ見えるように私を嘲笑いました。そして何故か、その顔に既視感があったのです。私はティールームから転落した、と聞かされました。でもどうしてか、転落した記憶がありません。でも、直前まで何をしていたかは覚えていました。そこでクラリスに誘われてお茶を飲んでいたのです。そこから先の記憶が曖昧で、気がついた時にはベッドの上で1ヶ月が過ぎていました。」
「ふむ……つまり、その記憶がない期間に何かがあった可能性がある、という事か?」
「はい。……正確にはいいえ、でしょうか?何かがあった『可能性がある』のでは無くて、『何かがあった』のです。」
「……君を疑いたい訳では無いが、証拠はあるのか?もしくはそれに代わる何かが。君のことだ、想像だけで話している訳では無いのだろう?なにか確信に足るものがあったはずだ。」
「勿論です。そもそも、我が家のティールームは、
ちょっとやそっとで人間が転落したりするような作りではありません。殿下もご覧になった事があるかと思います。私の身長で首の辺りまで落下事故帽防止のための柵があるのですから。例え私が錯乱していたりしたとしたって落ちることはまず無いでしょう。」
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