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第3章
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花火大会が終わる直前に私達は会場から離れることにした。
終わってから帰るとなると混雑するから早めに出た方がいいと思って出てきたけど、歩いている途中でも、後ろの方で鳴る花火の音と眩しさが気になって何度も振り返ってしまう。
「やっと今年、夏らしいことできた」
「あぁ、これ? 就活ってそんなに忙しいの? いつもなにしてんの」
「え、……エントリーシート書いたり、企業説明会行ったりとか。早いとこはもう選考も始まってて」
「ふーん」
本当は学生課に張り出されている企業説明会の日程を見ているだけで、どれもまだ行動に移していない。さっき聞いた同期の話をそのまま言っているだけだ。
ユウマくんは興味のない話を「ふーん」の一言で片付けるから、深く突っ込まれなくてよかった。
会話が途切れて、忘れていた足の痛みに顔をしかめる。
元々、歩幅に差があるからユウマくんは常に私の先へ行ってしまう。足の痛さもプラスされると、走らないと差がどんどん広がってしまう。
カランコロンと渇いた音が、テンポを上げたり下げたりを繰り返す。
「もしかして足痛い?」
「うん、ごめん、歩くの遅くて」
「いや、こっちこそごめん、気づくの遅れた。タクシー拾えたらいいんだけど、……走ってないな」
「大丈夫。なんだけど、少しゆっくり歩いてもらえたら助かる」
「ん。無理そうだったらおんぶするから言って。あ、腕つかむ?」
「あ、ありがとう……」
緊張しながら、差し出された腕に手を回す。指が当たる皮膚の薄い二の腕が少し冷たい。
「あー、はは、くすぐったい」
焼きそばと焼き鳥が入った袋をガサガサさせて、ユウマくんが笑う。緊張や恥ずかしさが混ざりながら「逃げないでよ」と腕を引っ張って誤魔化した。
こんなに冗談を言い合えるくらいなら、ユウマくんにとって私はサークルの中でも仲のいい部類に入ると思う。自惚れなんかじゃないと思いたい。
やっぱり好き。どうしたら彼女になれるんだろう。ユウマくんの彼女になりたい。
「はぁ~、やっと着いた」
暑くて汗だくだし、足は痛いし、浴衣は着崩れてるし、ボロボロになりながらやっと部屋の鍵を開けた。
下駄を剥ぐように脱いでその流れでエアコンをつけて、ベッドに直行する。
「先輩、足大丈夫?」
「んー」
ベッドに腰かけて見てみる。
指の方は大丈夫だったけど、鼻緒が当たる足の甲は擦れて赤く血が滲んでいた。見ると余計痛く感じる。
「うわ、痛そ」
「いたーい」
軽い調子で言いながら、テーブルの上にガサガサと買ってきたものを並べているユウマくんをすり抜けて、冷蔵庫から麦茶と買い置きのエナジードリンクを取りに行く。
ユウマくんはお酒を飲まない。飲めないわけじゃないけど弱いから、私の冷蔵庫には彼用の炭酸入りのジュースやエナジードリンクが常備してある。
「あとは適当に、足りなくなったら自分で取りに行って」
ユウマくんにエナジードリンクを手渡して、テーブルを挟んで対角線上に座る。
「着替えないの?」
「うん、先に食べよう。冷めちゃったかな、温め直そうか」
「いいよ、このままで」
箸を入れてみると、冷めて固まった焼きそばが一斉に出てきて、お互い顔を見合わせて笑った。
結局温め直すことにして、私達が中学くらいのときに流行ったお笑い芸人のコントをテレビで観ながら、ユウマくんに買ってもらったビールを飲んで焼き鳥をつまんだ。
買ったものをすべて食べ終わる頃には、エアコンがすっかり効いて部屋もちょうどいい感じに涼しくなってきた。
歩きまくって汗をかいたのと冷たい飲み物ばかり飲んでいるから、むしろ少し肌寒い気もする。
「先輩、酔っ払う前にシャワー浴びてきたら?」
浴衣姿のまま三本目のビールを持ってきて開けようしたら、ユウマくんに遮られた。
「俺、コンビニ行ってくるからその間に」
「私も行きたい」
「足痛いんでしょ? 他に食べたいものあったら、言えば買ってくるから」
「えー」
「えーじゃねえ」
押し問答の末、お言葉に甘えることにして足りなくなったお酒とお菓子を頼んだ。しょっぱいものと甘いもの。お菓子の種類はなんでもいいと伝えて、「いってらっしゃーい」と見送ってから立ち上がると、足元がフラフラした。そういえば、お酒以外の水分を取っていない気がする。
ベッドに投げっぱなしにしていた巾着袋から、コンビニで買っておいたお茶を取りだして一気に飲み干す。それでも足りない感じがしてテーブルの麦茶をコップに注いだ。
なにげなく頭のおだんごに触れるとごわごわと固く嫌な触り心地がした。セットするときにスプレーで固めすぎたのかも。慣れないことはするもんじゃない。
ヘアアクセサリーを取ってお風呂場へ向かう。これも、結構悩んで買ったんだけどな。
浴衣を脱衣カゴに放り込んで、ぬるめに設定し直したシャワーを頭から浴びると、忘れていた足の傷がしみて声が出た。
もう少し、私が周りの目を気にせずに飲み会やイベントに参加できていたら、もっとユウマくんと一緒にいられたのかな。長いと思っていた夏休みはあと二週間しかない。金曜日以外にこんな簡単に家に来てくれるなんて思わなかった。
(……今日も、するのかな)
そういうことを考えていたら、また顔から熱が出てきた。
「あ、おかえり、早かったね」
私がシャワーを浴び終わって出てくる頃にはユウマくんはすでに帰ってきていて、散らかしたままの焼きそばのパックや缶を片付けてくれていた。
「ただいま。お菓子と酒、適当に買ってきたけど、これでよかった?」
「うん、ちゃんと甘いのとしょっぱいのあるー。ありがとう。レシートちょうだい」
「就活って金かかるんでしょ? いいよ、いらない」
割り勘にしようと財布を出したらまた断られて、代わりに冷えた缶ビールを手渡された。反射的に受け取ってプルタブを引っ張る。
「でもさっきも屋台奢ってもらったし、ユウマくん、サークルばかりでバイトはしてないんだよね?」
「言ってなかったっけ。俺、塾で講師のバイトしてる」
「え、知らない。いつから?」
「入学してすぐかな。サークルって金曜しかないから、それ以外暇だなって」
「えぇ、すごいね」
「すごいの? 普通じゃない」
私が入学してすぐの頃は一人暮らしや課題でいっぱいいっぱいになって、そんな余裕はなかった。
今は派遣会社に登録して、リモートのコールセンター業務を週に三、四回、自分の好きな曜日と時間にしているくらいだ。
一応、食費と光熱費を賄える程度には稼いでいるけど、家賃も授業料も親に払ってもらっていて、やらなきゃという気持ちで嫌々始めたから「暇だったから」で始めるユウマくんはすごい。
そういえば元々、サークルも一番最初にビラを配られたから入ったんだっけ。人と関わるのが苦手なのに、行動力はあるんだよな。
「先輩、足出して」
「ん?」
「絆創膏、でかいの買ってきた」
ユウマくんはそう言うとラグの上に座る私に向かい合った。コンビニの袋からほぼ正方形の白い絆創膏を取り出して、ペリペリと包装をはがす。
目の前におずおずと両足を差し出すと、鼻緒の形に細長く擦りむいた足の甲を覆うように絆創膏が貼られた。ユウマくんの指が白い絆創膏の上をするりと撫でる。それだけなのに緊張して、持っていたビールの缶を落としそうになる。
「あ、ありがとう」
「うん」
ユウマくんは私から離れると、コンビニに行く前と同じようにテレビの正面に座ってお菓子の袋を開けた。私も持っていたビールを一気に飲み干して、新しい缶チューハイに手をつけた。
私の部屋でユウマくんがくつろいでいるのを見るのは、いつも慣れなくて心臓がむずがゆい感じがする。初めて会ったときは全然そっけなかったのに、飲み会でも夏祭りでも、離れていても私を探して一緒にいてくれて、怪我したら絆創膏まで貼ってくれて、そういう優しいところばかり見えてもっと好きになる。
缶に口をつけたまま、テレビではなくユウマくんの横顔ばかり眺めていたら、唐突に目が合った。
「先輩、酔ってる?」
「……ん?」
「顔赤いし反応鈍い。寝落ちする前にベッド行きなよ」
「んー」
生返事をして、缶を持ったままもそもそと後ろのベッドに這い上がる。普段の飲み会のときより量を飲んだつもりはないんだけど、確かに酔っているのかも。お酒のまわりが早い。
水かお茶を持ってこようかと、ユウマくんがベッドの前まで来て私の手から缶を抜き取った。フラフラとおぼつかない体を起こして、これ以上、水分は入らないからと丁重にお断りした。
「……ユウマくんは、シャワー浴びないの」
「入るよ」
「じゃあ行っておいで。ほら、ばんざーい」
「ちょ、なにっ」
ユウマくんのシャツを力ずくで引っ張って脱がせる。上半身裸で、髪がボサボサになったユウマくんがメガネを外しながら睨んできた。全然怖くない。
「ふは、いつもと逆だねぇ」
「……タオル借りる」
「どうぞー」
私の膝にポイっとメガネを放り投げて、ユウマくんがお風呂場へ向かった。
いつものようにメガネをダッシュボードに置いて、ユウマくんのシャツを抱きしめたまま横になる。
このシャツ、ユウマくんの匂いする……。これ、家に置いていってくれないかな。そしたらいつでも泊まりに来てって言えるのに。……言えるかな。ビビリだから無理かも。
そんな妄想をしながらも、アルコールが回った頭とまぶたは重くてつい眠ってしまいそうになる。
つけっぱなしのテレビからは、いつの間にか快眠用BGMのようなピアノ曲が流れていて、シャワーの音も遠くからぼんやり聞こえる。
終わってから帰るとなると混雑するから早めに出た方がいいと思って出てきたけど、歩いている途中でも、後ろの方で鳴る花火の音と眩しさが気になって何度も振り返ってしまう。
「やっと今年、夏らしいことできた」
「あぁ、これ? 就活ってそんなに忙しいの? いつもなにしてんの」
「え、……エントリーシート書いたり、企業説明会行ったりとか。早いとこはもう選考も始まってて」
「ふーん」
本当は学生課に張り出されている企業説明会の日程を見ているだけで、どれもまだ行動に移していない。さっき聞いた同期の話をそのまま言っているだけだ。
ユウマくんは興味のない話を「ふーん」の一言で片付けるから、深く突っ込まれなくてよかった。
会話が途切れて、忘れていた足の痛みに顔をしかめる。
元々、歩幅に差があるからユウマくんは常に私の先へ行ってしまう。足の痛さもプラスされると、走らないと差がどんどん広がってしまう。
カランコロンと渇いた音が、テンポを上げたり下げたりを繰り返す。
「もしかして足痛い?」
「うん、ごめん、歩くの遅くて」
「いや、こっちこそごめん、気づくの遅れた。タクシー拾えたらいいんだけど、……走ってないな」
「大丈夫。なんだけど、少しゆっくり歩いてもらえたら助かる」
「ん。無理そうだったらおんぶするから言って。あ、腕つかむ?」
「あ、ありがとう……」
緊張しながら、差し出された腕に手を回す。指が当たる皮膚の薄い二の腕が少し冷たい。
「あー、はは、くすぐったい」
焼きそばと焼き鳥が入った袋をガサガサさせて、ユウマくんが笑う。緊張や恥ずかしさが混ざりながら「逃げないでよ」と腕を引っ張って誤魔化した。
こんなに冗談を言い合えるくらいなら、ユウマくんにとって私はサークルの中でも仲のいい部類に入ると思う。自惚れなんかじゃないと思いたい。
やっぱり好き。どうしたら彼女になれるんだろう。ユウマくんの彼女になりたい。
「はぁ~、やっと着いた」
暑くて汗だくだし、足は痛いし、浴衣は着崩れてるし、ボロボロになりながらやっと部屋の鍵を開けた。
下駄を剥ぐように脱いでその流れでエアコンをつけて、ベッドに直行する。
「先輩、足大丈夫?」
「んー」
ベッドに腰かけて見てみる。
指の方は大丈夫だったけど、鼻緒が当たる足の甲は擦れて赤く血が滲んでいた。見ると余計痛く感じる。
「うわ、痛そ」
「いたーい」
軽い調子で言いながら、テーブルの上にガサガサと買ってきたものを並べているユウマくんをすり抜けて、冷蔵庫から麦茶と買い置きのエナジードリンクを取りに行く。
ユウマくんはお酒を飲まない。飲めないわけじゃないけど弱いから、私の冷蔵庫には彼用の炭酸入りのジュースやエナジードリンクが常備してある。
「あとは適当に、足りなくなったら自分で取りに行って」
ユウマくんにエナジードリンクを手渡して、テーブルを挟んで対角線上に座る。
「着替えないの?」
「うん、先に食べよう。冷めちゃったかな、温め直そうか」
「いいよ、このままで」
箸を入れてみると、冷めて固まった焼きそばが一斉に出てきて、お互い顔を見合わせて笑った。
結局温め直すことにして、私達が中学くらいのときに流行ったお笑い芸人のコントをテレビで観ながら、ユウマくんに買ってもらったビールを飲んで焼き鳥をつまんだ。
買ったものをすべて食べ終わる頃には、エアコンがすっかり効いて部屋もちょうどいい感じに涼しくなってきた。
歩きまくって汗をかいたのと冷たい飲み物ばかり飲んでいるから、むしろ少し肌寒い気もする。
「先輩、酔っ払う前にシャワー浴びてきたら?」
浴衣姿のまま三本目のビールを持ってきて開けようしたら、ユウマくんに遮られた。
「俺、コンビニ行ってくるからその間に」
「私も行きたい」
「足痛いんでしょ? 他に食べたいものあったら、言えば買ってくるから」
「えー」
「えーじゃねえ」
押し問答の末、お言葉に甘えることにして足りなくなったお酒とお菓子を頼んだ。しょっぱいものと甘いもの。お菓子の種類はなんでもいいと伝えて、「いってらっしゃーい」と見送ってから立ち上がると、足元がフラフラした。そういえば、お酒以外の水分を取っていない気がする。
ベッドに投げっぱなしにしていた巾着袋から、コンビニで買っておいたお茶を取りだして一気に飲み干す。それでも足りない感じがしてテーブルの麦茶をコップに注いだ。
なにげなく頭のおだんごに触れるとごわごわと固く嫌な触り心地がした。セットするときにスプレーで固めすぎたのかも。慣れないことはするもんじゃない。
ヘアアクセサリーを取ってお風呂場へ向かう。これも、結構悩んで買ったんだけどな。
浴衣を脱衣カゴに放り込んで、ぬるめに設定し直したシャワーを頭から浴びると、忘れていた足の傷がしみて声が出た。
もう少し、私が周りの目を気にせずに飲み会やイベントに参加できていたら、もっとユウマくんと一緒にいられたのかな。長いと思っていた夏休みはあと二週間しかない。金曜日以外にこんな簡単に家に来てくれるなんて思わなかった。
(……今日も、するのかな)
そういうことを考えていたら、また顔から熱が出てきた。
「あ、おかえり、早かったね」
私がシャワーを浴び終わって出てくる頃にはユウマくんはすでに帰ってきていて、散らかしたままの焼きそばのパックや缶を片付けてくれていた。
「ただいま。お菓子と酒、適当に買ってきたけど、これでよかった?」
「うん、ちゃんと甘いのとしょっぱいのあるー。ありがとう。レシートちょうだい」
「就活って金かかるんでしょ? いいよ、いらない」
割り勘にしようと財布を出したらまた断られて、代わりに冷えた缶ビールを手渡された。反射的に受け取ってプルタブを引っ張る。
「でもさっきも屋台奢ってもらったし、ユウマくん、サークルばかりでバイトはしてないんだよね?」
「言ってなかったっけ。俺、塾で講師のバイトしてる」
「え、知らない。いつから?」
「入学してすぐかな。サークルって金曜しかないから、それ以外暇だなって」
「えぇ、すごいね」
「すごいの? 普通じゃない」
私が入学してすぐの頃は一人暮らしや課題でいっぱいいっぱいになって、そんな余裕はなかった。
今は派遣会社に登録して、リモートのコールセンター業務を週に三、四回、自分の好きな曜日と時間にしているくらいだ。
一応、食費と光熱費を賄える程度には稼いでいるけど、家賃も授業料も親に払ってもらっていて、やらなきゃという気持ちで嫌々始めたから「暇だったから」で始めるユウマくんはすごい。
そういえば元々、サークルも一番最初にビラを配られたから入ったんだっけ。人と関わるのが苦手なのに、行動力はあるんだよな。
「先輩、足出して」
「ん?」
「絆創膏、でかいの買ってきた」
ユウマくんはそう言うとラグの上に座る私に向かい合った。コンビニの袋からほぼ正方形の白い絆創膏を取り出して、ペリペリと包装をはがす。
目の前におずおずと両足を差し出すと、鼻緒の形に細長く擦りむいた足の甲を覆うように絆創膏が貼られた。ユウマくんの指が白い絆創膏の上をするりと撫でる。それだけなのに緊張して、持っていたビールの缶を落としそうになる。
「あ、ありがとう」
「うん」
ユウマくんは私から離れると、コンビニに行く前と同じようにテレビの正面に座ってお菓子の袋を開けた。私も持っていたビールを一気に飲み干して、新しい缶チューハイに手をつけた。
私の部屋でユウマくんがくつろいでいるのを見るのは、いつも慣れなくて心臓がむずがゆい感じがする。初めて会ったときは全然そっけなかったのに、飲み会でも夏祭りでも、離れていても私を探して一緒にいてくれて、怪我したら絆創膏まで貼ってくれて、そういう優しいところばかり見えてもっと好きになる。
缶に口をつけたまま、テレビではなくユウマくんの横顔ばかり眺めていたら、唐突に目が合った。
「先輩、酔ってる?」
「……ん?」
「顔赤いし反応鈍い。寝落ちする前にベッド行きなよ」
「んー」
生返事をして、缶を持ったままもそもそと後ろのベッドに這い上がる。普段の飲み会のときより量を飲んだつもりはないんだけど、確かに酔っているのかも。お酒のまわりが早い。
水かお茶を持ってこようかと、ユウマくんがベッドの前まで来て私の手から缶を抜き取った。フラフラとおぼつかない体を起こして、これ以上、水分は入らないからと丁重にお断りした。
「……ユウマくんは、シャワー浴びないの」
「入るよ」
「じゃあ行っておいで。ほら、ばんざーい」
「ちょ、なにっ」
ユウマくんのシャツを力ずくで引っ張って脱がせる。上半身裸で、髪がボサボサになったユウマくんがメガネを外しながら睨んできた。全然怖くない。
「ふは、いつもと逆だねぇ」
「……タオル借りる」
「どうぞー」
私の膝にポイっとメガネを放り投げて、ユウマくんがお風呂場へ向かった。
いつものようにメガネをダッシュボードに置いて、ユウマくんのシャツを抱きしめたまま横になる。
このシャツ、ユウマくんの匂いする……。これ、家に置いていってくれないかな。そしたらいつでも泊まりに来てって言えるのに。……言えるかな。ビビリだから無理かも。
そんな妄想をしながらも、アルコールが回った頭とまぶたは重くてつい眠ってしまいそうになる。
つけっぱなしのテレビからは、いつの間にか快眠用BGMのようなピアノ曲が流れていて、シャワーの音も遠くからぼんやり聞こえる。
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