天真爛漫な婚約者様は笑顔で私の顔に唾を吐く

りこりー

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学園

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 貴族学園に入学すると三年間。淑女、紳士のマナーやダンス、社交の教育が受けられる。もちろん、家庭教師でもいいのだが、社交界にデビューする前準備と言った感じだろうか。だから、軽い夜会やお茶会などもあるし、下位や高位の貴族の交流の場所でもある。一回社交に出てしまえば、位がネックになりあまり話しかけられない。学園ならば、位を気にせず交流を楽しみ、新しい発見などもある。すべて位に縛られた貴族社会に少しの風を通そうとした陛下の恩情で考えられた学園なのだ。

「ねぇ…あれがリル様の婚約者なの?」

「えぇ、地味よねぇ…」

「あんなのが婚約者だなんてお可哀想に…」

 こんな声はいつもことだ。その声を無視して、私の愛しい婚約者の姿を探す。学園はそんなに広くないが、三階まであるから探すのは結構大変である。急ぎたい所だが、淑女らしく歩きで探す。

 お昼時だからか、皆食堂や広場で友達とご飯を共にしている。私もリルといつもお昼を共にしているこの時間が大好きだ。デートや観劇などはたまに行くが、うちの騎士団に鍛錬に来ているせいかいつも眠そうだ。そんなリルに無理はして欲しくないから、自分を優先して欲しいとお願いをした。それから二人の時間は減ってしまったが、お昼のこのランチタイムだけは一緒に居られる。一秒でも一緒に居たい私は物凄い急いでいるのにリルが見つからない。いつもだったら、教室に迎えにやってくるんだけど…。

「はぁ…どこ行っちゃったの?」

「あれ?姉上様~誰かお探しですか?」

 この気だるげな声を拒否するように不愉快さを体が訴えてくる。

「リム…まだ婚約者だから姉ではないわ」

「もう卒業まで一年。卒業したら結婚ですよね?そしたら晴れて姉上じゃないですか。何か間違ってます?」

「間違ってはないけど…」

 私はこの男が嫌いだ。嫌い?いや、生理的に無理。リルの双子の弟のくせに生意気で、女を下に見ている節があるし、なんせこの容姿を揶揄って自分を馬鹿にしてくる。本当は愛人の子なのでは?といった噂が出るほど似てないし、誰にでも愛想の良いリルとは違い、リムは基本他人には一歩引いている。いつも眉間に皺を寄せてて、怖いと令嬢には嫌われているし、令息には物事を包み隠さずズバリと言ってしまう性格で友人も少ない。

「じゃ、いいじゃん。姉上?」

「私より剣術弱いくせに…」

「な!?はぁ!?今だけだって!すぐ追いつくし!」

「はは、いつでも挑戦受け付けるわ!」

「シェリー?」

「あ、リル」

 揶揄われてそれを揶揄い返していると馴染んだ声に目線を迎える。相変わらず透き通った橙色の髪が似合う整った容姿に息を呑む。もう九年も婚約者なのにいまだにドキドキと胸が高鳴る。

「リム、シェリーが世話になったな」

「いや、兄上は色々とみたいだから」

「……」

 ぴくりとリルの眉が反応を見せたが、すぐにいつもの笑みに戻る。何かあったのかと聞いてみても、教師の所にいっていただけだと言われた。
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