俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

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第十一章 本戦

第107話 チュートリアル:ニルヴァーナ

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 ――攻略者の道を選んだのはどうしてですか?――

「西園寺家の家訓に"座して死を待つよりも戦いに生きる"と言う言葉がありましてね。まぁ挑戦し続けろってニュアンスですけど、それがずっと僕の中に根付いてて……。――自分で道を選べるようになったんです。本気ですよ」

 ――第二試合への意気込みをお答えください――

「嬉しい事に二回戦からの登板で、対戦相手の月野くんを見れました。……勇猛果敢。それが僕が今言える彼への言葉です。……全力でバトルしますよ」

 ――あなたにとって強さとは何ですか?――

「強さ、ですか。……家族を守る、友達を守る、恋人を守る、人類を守る。……当然それらを成すためにはダンジョンを攻略する強さが求められます。……僕は――世界を守る。ですかね、ッハハ。世界を守る事を求めれば、強さにも直結すると思います」


 それがテレビに流れた西園寺のインタビュー映像だった。

「世界を守るって地上波で言っちゃったからね! ここからギアを上げて行くよ!」

「……インタビューですか。こっちは愛する人を守るって公言しましたからね……! 俺もギア上げて行きます!!」

 そう言った進太郎は片方だけだった脚の装甲――ソルレットをもう片方の脚に生成し、両手にはガントレット、両脚にはソルレットを武装する姿となった。

《これは……》

 目を見張る西田メンバー。

「マジかよ!!」

 目を輝かせる萌。

「いいぞーー見せつけて行けええええ!!」

 テンションが上がった想い人。

《浮いたあああああ!! 月野が浮いたあああああクゥ^~~!!》

 黄色い線から外へと織りなす様に形作る装甲。前腕部と肘の間から装甲が展開。ふくらはぎの装甲も同様に展開。双方可視化したエネルギーが轟々と噴射し、進太郎を少しだけ浮かせた。

「ッハハ! カッコいいね!」

「……ッ」

 西園寺 L 颯の素直な感想。

「じゃあ僕も見せちゃおうかな!!」

 おもむろにソードを地面に突き立てると、剣先から波紋が小さく発生し、ッスッと地面にソードが消えた。

 ――ッヴォン

 とエフェクト音が鳴ると、颯両腕に無数の光の粒子が覆う様に回転していた。

 ――キャアアアアア!!!!

《で、でましたああ! 西園寺の無双伝説の象徴! スキルゥ・刀剣乱舞ソードゥズ・ダンスぅうううううう!!》

《生で見るのは初めてですねぇ》

 沸くオーディエンス。叫ぶカビラに冷静な西田。

「……フフ」

 両者から一定の位置で審判を務める獅童はニヤリと笑う。

(類を見ないオンリーワンのスキル、刀剣乱舞ソードゥズ・ダンス。その脅威に挑むのは、同じ装甲スキル持ちの俺すらこれまた聞き覚えの無い涅槃装甲ニルヴァーナ・アーマー……。楽しくなってきたな……!)

 両者、覚悟完了。

「「ッッ~~!!」」

 互いの呼吸を無意識ながら合わせた瞬間。速攻に出たのは縦に右腕を振った者。

「ッフ!」

 空中で人の何倍もあるソードの刃が半透明で出現し、腕を振ったコンマ秒の遅れで実体。
 
「ッ!?」

 そのまま縦に斬る様に進太郎を襲ったが、ジェット噴射を器用に使い回避。

(――動画を見た知識として知らなかったら今ので終わっていたッ!!)

 ズドンと床を破壊する実体した刃は直ぐに消えた。

《大剣を回避ィイイ!!》

 床の欠片が煙と共に舞う中、進太郎は宙に浮いたままスラスターと化した脚部のジェットを使い前進。颯に迫る形となる。

 無論それを良しとしない颯は涼しい顔で光子を纏う腕を横に振った。

 次は刃を横にした巨大な実体剣が出現。

 ッブオ!! と薙ぎ払われた。

「――」

 巻き込まれた形となるが、レフェリーの獅童はジャンプして余裕の回避。

「ック!?」

 進太郎は腕とソルレットの噴射を利用し、超低空中で何とか回避。

《横に斬った範囲攻撃! レフェリーの獅童も難なく避ける!》

《伊達に選ばれてないですからねぇ》

 風を切り止まることなく迫る進太郎。

 当たれば容易くバリアが割れるであろう攻撃を二撃も避けられた颯だが、迫られながらも余裕の表情は崩さない。

(そのスカシタ顔、歪ませるッ!!)

 刹那の急接近。

 地面すれすれの低空で颯の顔を見上げる進太郎。

 内心攻撃をよく掻い潜ったと称賛した颯は目だけ下を向け彼を見た。

「――」

 轟々と噴射したガントレットの真下からの昇竜拳アッパーは颯の顎を捕らえる。

「――」

 しかし半歩だけ後ろに下がった西園寺は、下から上へ昇って行く腕を口元を歪ませて目で追った。

 肩まで上がった所で両者の視線が合わさる。

 瞬時に進太郎は回転し、その要領で回し蹴りを放った。

 半歩下がった事で空いた空間を利用した回し蹴りだが、伸びきったソルレットの足裏を手でしっかりとキャッチした颯。

「――!?」

 回し蹴りを容易く受け止められた事と、右から左へ腕を振った颯の攻撃が出現した事、二つに驚愕した進太郎だった。

(――優しくないか!!)

 背中に迫る大剣を大気を斬る音と気配で感じる進太郎。このまま背中で受けてしまってはバリアに大ダメージ、もしくは割れて負けてしまう。

 無論、彼がこのまま易々と攻撃を受ける事はしなかった。

「――ッック」

 掴まれた方のソルレットを消し、無事に颯から脱出。

 そのまま両手と片脚の噴射口を轟々と噴かせ宙で回転。

「ッッガントレットオオオオオ!!!!」

 拳を握りこみ、回転した力を利用し出現した大剣に一発。

 ッバガッッ

 と吼えた一撃が大剣を粉砕した音が進太郎に鼓膜を震わす。

 そして、涅槃装甲ニルヴァーナ・アーマーを装備した彼に、影が落とされた。

(――え)

 ――これはなに。

 脳の思考が進太郎の意識に到達する前だった。

「それはブラフだよ♪」

 影の正体は眩しい笑顔の西園寺。そして彼が綺麗に上げた魔力を纏う脚だった。

 隙ありだと言わんばかりに振り下ろされた踵。

 それは宙でゆっくりと刹那に回転する進太郎の腹部に突き刺さり。

「ッッッ~~~!!!」

 床に激突し背中のバリアが砕けた床と同時にひび割れる。

 威力が分散されずそのままバウンド。

「ッハ!!」

 ッボクゥ!

「――――ッ」

 後ろ回し蹴りを胸部に刺さり、威力のままに進太郎は吹き飛んだ。

《強烈うううううううううううう!!!! 言葉を発せないほど一瞬のうちに攻防を繰り広げ!! ダメージを負ったのは月野だあああああああ!!》

「ガフッ!?」

 床に激突しながらも所々バリアにダメージを負う進太郎。

 起き上がった拍子に追撃をしてこない西園寺を見た。

「……強い」

 強すぎる。

《西園寺くんは月野くんの動きを目で追えてますね。それに加え冷静に対処し、決めるところは決める迷いない胆力もあります。俺でも対処に難しい動きでしたが、月野くんは気持ちが先走って攻撃してる様子……。ここは複雑な駆け引きは得策ではないかもしれません》

 西田の見解と同じ思考をした進太郎。

  故に。

「ッハ!!」

 解除した脚にソルレットを生成し、四か所の噴射口を噴かせ進太郎は空高く舞い上がった。

《飛んで行ったあああああ!! 月野が空へ飛んでいくううううううう!!》

 対戦相手の颯はもちろんレフェリーの獅童、実況席の二人、オーディエンス、ほぼすべてのカメラが空に飛んでいく進太郎を追った。

 空に上がって行く進太郎。段々と見えてきたバリアが機能する範囲の半透明のアラート。そのすれすれで慣性を利用して速度を落とし、無重力へ。

(西園寺先輩。貴方は本当に強い。柔道で闘った相手よりも、ダンジョンで襲ってきたモンスターよりも、冷静でしたたか)

 瞼を瞑り背中から反る様にゆっくりと回転。

(貴方と同等かそれ以上に強い友達が俺の側にいます)

 彼の顔が脳裏に浮かぶ。

(貴方と友達、どっちが強いか男として知りたい……)

 ――でもそれは叶わない。

「――俺がアナタを倒すからだッ!!」

 瞬間、ガントレットとソルレットに施された黄色の線が激しく発光。

 ガントレット、ソルレット、共に発光し、進太郎は右脚をターゲットに向けた。

「!」

「おおおおおおおおお!!!!」

 噴射したエネルギーは大きく波打ち、進太郎のライダーキックに迸るエフェクトを発生させた。

「おもしろい!! 受けて立つよ!!」

 颯は両手を合わせるように握ると、物々しい大剣が出現。

「ッハァ!!」

 それを手に握り、跳躍。

「ソード・ピアース!!」

 大剣で穿つ突き。

「ニルヴァーナ・インパクトオオオオオオオオ!!!!」

 進太郎の渾身の一撃。

 両者の攻撃が今、ぶつかり合う。

 ドワオッ

 ――ッッッガガガガ!!!!

《大剣が剣先から砕かれていクゥ^~~~!!!!》

 迸る威力で打ち勝ったのはニルヴァーナ・インパクト。

 ソード・ピアースがみるみる粉砕。

「――おおおおおおおおお!!!!」

 大剣を砕き切った進太郎。

 砕かれた西園寺。

 両者が接触すると、インパクトの衝撃とエフェクト、大剣の威力によりエネルギーの煙が両者を包んだ。

 会場にいる全員が黙り込む。

《……》

《……煙が晴れると、勝者が決まっているはず……》

 実況のカビラが何とか言葉を発せた。

 レフェリーの獅童は神妙な顔つきで伺う。

 そして煙が晴れると。

「――」

 膝を着き右腕のバリアにヒビが入った颯。

「――」

 そして――

 バリッィ!!

 と、右脚のバリアが割れた進太郎が立っていた。

「――負けたか」

 消えゆくバリアと共に、彼は満足した表情で消えていった。

「ッ勝者!! 西園寺  L 颯ええええええええ!!」

《決ちゃクゥ^~~!!!! バトルに勝ったのは、西園寺ィ!!》

 黄色い歓声と野太い歓声が敗者を讃え、勝者をも讃えた。

「……月野くん。楽しかったよ」

 起き上がった西園寺はヒビの入った手のバリアを見て、その手を振ってこの場を後にした。
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