俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

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第十八章 VS傀儡君主

第220話 チュートリアル:実は弱かったり…

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「アッハハハハハハ!!」

 大きく振りかぶった出刃包丁が肉を裂き。

「ハハハハハ!!」

 軟体物へと変化させた腕を鞭の様にしならせ攻撃。

「それそれー!!」

 人形の胴体で形成された両翼で無理やり殴打。

「ぐわあああああ!?!?」

 カルーディの圧倒的攻撃力の前に、名も知れないルーラーが悲鳴をあげ大きな岩に激突。ルーラーが叩きつけられた岩は大きく砕かれ、その衝撃の大きさを物語る。

「――っく!!」

 岩からズレ落ちたルーラー。遅れてパラパラと岩の破片が足元に転がる。

 カルーディの圧倒的強さに抗ったものの、力及ばず。

「――はあ、はあ、ハア!」

 頭から血を流し、衣類は細切れになり擦り傷切り傷が多数。肩で息をする程に体力を消耗し、既に満身創痍。右手に握りこんだソードは既に刃毀《はこぼ》れのボロボロ。離しそうになるソードを負けじと握りこむので精一杯だった。

 そんな彼がにらみを利かし、目の前の傀儡師にこう言うのだ。

「俺は、俺たちは静かに暮らしたかったッ!! 暮していたんだ!!」

「ん~♪」

「ひょんなことでルーラーに成った俺を恐れず、共に生きようとみんなが言ってくれたッ!! なのに、なのに!! なんでみんなを殺したんだッ!!」

 彼の背後、いや、岩の背後はオレンジ色に色づいていた。それは暖かな夕暮れでは無く、黒い煙、焼き崩れる家屋、燃え盛る炎、彼のすべてが燃えていた。

 睨みながら涙を流すルーラー。そんな彼の心情を逆なでする様に、頬を吊り上げ傀儡師は笑った。

「なんで殺したかって? 答えは簡単さ♪」

 傀儡師はロッドを軽く振り回しながらルーラーに近づき、力なく座り込む彼に目線を合わせた。

 そして真っ直ぐ瞳を見つめると。

「君の絶望した顔が見たかったから」

 真顔でスッと切り出した。

「絶……望……だと……」

 その言葉を聞き、ルーラーの眼がより一層にカルーディを睨んだ。

「ッッそんな理由でみんなを殺したのか!! 俺の絶望した顔が見たいがために殺したのか!!」

 ルーラーは激怒した。

 自分の感情を満たすためだけに、無益な人々を巻き込んだんだと。とてつもない悪趣味さに絶望を眼に宿すどころか、怒りと憎しみが目に宿るのだった。

 何もできないが死ぬなら恨んで死ぬ。その意気が彼にはあった。

 思い通りに成らない展開に、カルーディは嫌気を感じていると。

「お前はロクな死に方をしない……」

「……」

 ニヤつくルーラー。

「あの世でお前を待ってるぞ。精々余生を過ごすんだ――」

 言葉が続かない。

 彼の首が地面に落ちたからだ。

 そして徐々にルーラーの体が崩壊し、砂となって消えた。

 幾度となく見てきたその光景を、特別面白くも無いと思うカルーディ。

 彼は幾度も幾度も理性のルーラーを屠ってきた。今回もイヌが散歩がてらに小便するように、カルーディも吹っかけたに過ぎない。

 同じルーラーの存在を倒し続けた結果、ある程度の自信は付いていた。

「ボクが死ぬわけないだろ。ボクは強いんだから……」

 やがて炎が世界を破界した。

 そして今。
 
 カルーディは焦っていた。

「――ック!?」

 砂の爆発により身を焦がされたのは既に何度目か。

 密集した人型の傀儡で形成された体。その硬度たるや隕石が衝突した際の熱と圧力にも劣らない。そんな体は今やひび割れ、欠け、壊された。

(バカな!)

 自慢の両翼は羽ばたくだけでなく力を込めて殴打も可能。そっと触れると翼を形成する胴体の集合体に付属された腕により、有機物を剥がす事も可能。

 打って良し、剥がして良し、羽ばたいて良し。いいことづくめの三拍子だが、今は見る影もなく破壊しつくされ、既に風穴がいくつも空けられていた。

(バカな!!)

 出刃包丁――『傀儡師パペッティア断頭刃ギヨチーヌ

 その刃が揺れると空間が揺蕩い、攻撃の意志を見せれば空間を絶つ。その一撃をまともに受ければ一溜まりも無い事は説明不要だろう。

 この出刃包丁で屠ってきたルーラーの数は両手でも足らない。今回も同じだと踏んでいたが、あわや予想外の想定外。

 次元を絶つ程の剣捌きが通用せず。刃毀れどころか剣先がぽっきりと折れている。

(バカな!!!)

 隕石による攻撃でも傷が付かなかった体が壊れ、初めて経験した翼に穴が空く感覚。そして何度も何度も首を撥ねたギヨチーヌが逆に首先を撥ねられた事実。

(バカなああああああああああああああ!!!??」

 追い詰めるどころか逆に追い詰められている。

 すでに余裕の笑みは無くなり、頬が壊されたヘブンズカルーディは半狂乱。思っていた叫びが声として発せられた。

 ソニックブーム――音の速度を超えエルドラドに向け突撃したカルーディ。

 ――ッドと衝撃波が生まれる程の攻撃だが、焦りながら刃を突き立てるカルーディに対し、黄金の鎧を着こむエルドラドは砂の壁で余裕のガード。

「デザート・ボム――」

 ガードしていた砂がスライムの様に伸びカルーディに急接近。砂の先端が腕に触れると。

「――フラワー」

「――――」

 ッドと大爆発。瞬く間に砂嵐がヘブンズカルーディの巨体を包み込んだ。

 この攻撃は既に何度も受けたカルーディ。場所を変え、形を変え、意識しても意識外からも爆発。変幻自在な砂の爆発は容赦なくカルーディを襲ったのだ。

 しかし此度は大爆発では終わらない。

 大きな爆発により生まれた砂嵐。その内部から砂嵐の形に添って何度も何度も小爆発。オレンジ色を覗かせる。最初の大きな爆発により耳がやられていれば、無数の小さな爆発は一斉聞こえないのだろう。

 ――――ッドワ!!

 砂嵐の尾を引きながら堪らず逃げ出す様に出てきたカルーディ。

 その姿はさらにボロボロになり、翼が生えた死天使の姿はもうそこには無かった。

 ブワっと片翼だけ躍動させ大きく跳躍。口部分が破壊され歯茎と歯を覗かせながらもエルドラドを睨むカルーディ。

(ここまでやるなんて知らなかった……!! いいねぇ久しぶりだよこういうの!!)

 焦ったものの、久しぶりに追い詰められ内部のカルーディに笑みがこぼれる。

 スタッと着地すると、少し遠くの方でエルドラドが腕を組んでいるのを見た。

「おいおい。イキリ散らかした割には弱すぎじゃないか? 肩慣らしにもならんぞー」

「……ふふ」

 点の様な赤い眼がカルーディを射貫く。挑発とも取れるエルドラドの言葉に、カルーディは内心笑った。

「いやぁここまで追い詰められたのは久しぶりだよ♪ 思わず取り乱しちゃったけど、そこはご愛嬌という事で♪」

「はいはい」

 頬を吊り上げ白い歯を見せるヘブンズカルーディだが、吊り上げる頬が無い。

「あとさ、謝らなきゃいけない事があるんだ♪」

「……」

 無言の黄金。

「無傷のキミに傷だらけのボク。誰が見てもボクが不利なのは明白だけど、それは間違いなんだ♪」

 そう。間違い。間違いなのだ、この状況こそ。

 どこの誰が見ても軍配が上がるのはエルドラド。それはかくあるべしと言うところ。

 しかし既に、この空間に足を運んだ時点で、は確定していたのだ。

「――ん?」

 突如うようよと動き出す空間。否、世界を形作った糸の束。エルドラドは異変に気付くも時すでに遅し。

 脈動する様に、条件反射でビクつく様に、集合恐怖症で鳥肌が立つ様に、空間が紐切れ糸先がエルドラドに向けられた。

「――」

 無言のエルドラド。

「キヒヒヒイイイイ!!」

 ニヤケが止まらないカルーディ。

 糸先が触れればおしまい。

 だというのに。後数センチのところで糸が止まった。

「――――――は?」

 糸が止まった。

 何故だと疑問に思ったが、一瞬で理解した。

「――おいおい、戦ってるのは俺だけじゃないだろぉ」

 やれやれと赤い眼を細めるエルドラド。

 瞼と涙袋を痙攣させたカルーディ。

「クソがあああああああああああああ!?!?」

 歯を剥き出す程の怒りが幻霊に向けられた。
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