俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

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第十八章 VS傀儡君主

第233話 傀儡師物語11

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 ――十年後。

 青い空。白い雲。

「スー! ハー!」

 息をいっぱいに吸って新鮮な空気を肺にため込んで吐き出す。

「今日もいい天気だ!」

 襟を立てていざ行かん!

 と言っても、目的地はすぐそこだけどね。

 踏みしめる土。澄んだ空気。青々と茂る木々たち。久しぶりに帰ってくると、何だかしんみりするなぁ。

 まぁ、ここ数年涙なんて流していない。ふふ、もしかしたらボクに涙は流れない! だってボクは世界一涙が似合わない男ナンバーワンなんだから!

 あ、これ自称ね。当然じゃん! 

「って事でぇ、帰って来ました一座のサーカス!! バンザーイ! バンザーイ!」

 大きく両腕を上げて全身で喜びを表現する。これってボクの中で流行りなんだよねぇ。

 大きな街で公演しているから人の往来が激しい。って言うか、サーカスの門を潜ったけど知ってる設備に知らないテントまである。やっぱり長年顔を出さないと変わりように驚いてしまうなぁ。

「そうは思わないかい? 重そうな荷物持ってる頭ハゲてるお兄さん!」

「何だよお前! 話しかけてくんな!! つか俺はハゲてねぇ!! スキンヘッドだ!!」

「あ、気を悪くしたらごめんね! ハゲてるかスキンヘッドかなんてボクにはどうでもいいから♪」

「さっきから何だよお前!! ケンカ売ってんのか!?」

「お~どうどう」

「おれは馬じゃねえ!?」

 もう、気が短いお兄さんだなぁ。クソデカ怒鳴り声で周りの人たちが集まり出したし、なんだかめんどくさくなっちゃった……。

「ごめんごめんお兄さん。実はさボク、元々ここで働いてたんだよ」

「なにぃ? にわかに信じられんなぁ」

「ホントホント! かれこれ十年前にここから出てってさ、故郷を想う一心で、顔を出しに来たってわけ。まぁボクが居た頃はお兄さんいなかったから知らないと思うけどね!」

「確かに俺が一座に入ったのはだいたい七年前……。まぁあんたが嘘言ってる風には見えない……が……」

 ボクはにんまりとお兄さんを見た。

「胡散臭い顔だなー。身なりがいいから金持ちのボンボンかと思った」

「やっぱり身だしなみは大切だからねぇ。特に故郷に帰ってきた今日みたいな日には、知り合いに会っても恥ずかしくない服装じゃないとねぇー」

 重そうな荷物を地面に置いたお兄さんと楽しくおしゃべりしていると、不意に。

「――カルール……か?」

 横からボクを呼ぶ声が。

 笑顔で呼声の方に顔を向けた。

「あ! おやっさん!!」

 声の主。それは雑用係だったボクの教育係――おやっさんだった。

 小太りな体型は相変わらずで、何とも懐かしい気持ちになった。ただその、頭が大変寂しい事になっている……。

「なんだおやっさんの知り合いかよ。ここで働いてたってのは本当だったんだな」

「もちろん!」

「じゃあ後はおやっさんに任せるわ。俺は仕事に戻る。知り合いに会って泣くんじゃねーぞー」

「うん。ありがとね!」

 おやっさんと入れ違いで去って行ったお兄さん。

 おやっさんは笑顔でトコトコと歩いて来た。

「カルール……お前……。立派になったなぁ……」

「へへ、そう?」

「たまには手紙くらい寄こせ……。突然一座から離れたから、これでも心配してたんだぞ」

「心配かけたね」

 ボクの肩を掴んだおやっさん。歳を食って涙もろくなったのか、目じりに涙を浮かべている。

 それからボクは十年前から変わった所、変わっていない所をおやっさんの案内で知った。

 そして特に変わった所を聞かされた。

「――お前の幼馴染のアメリーとブランコスターのギャブレー……。二人は婚約し、三人の子供が居るんだ」

「おお! 婚約して子供も居るんだぁー! まぁ二人は仲良かったから当然ちゃ当然だね! 成るべくして成ったって感じ♪」

 ボクは笑顔で心から祝福した。

 なのにおやっさんは暗い顔をしている。

「お前無理して笑ってないか? 誰も口にはしないが、お前が出てった原因はギャブレーだって誰もが分っていた。正直、言いづらかったんだが……」

「なーんだみんな知ってたんだ。でももう十年以上前の話だよ? ボクも大人だし、人生いろいろ色恋いろいろだって♪ こんなボクにも、大切だった人がいたんだ……」

 にこやかに笑ってそう言った。

 すると突然、おやっさんが驚いた顔をした。

「カルール、お前も婚約……。いや、"だった"て意味は……」

「ボクにも、愛した人がいた」

 哀愁漂う表情をしたボク。

「でもね、その人はボクの腕の中で冷たくなってしまった……。もう、彼女の笑顔を見る事はできないんだ……」

 そう。事実。

 その事実を聞いたおやっさんはと言うと。

「ううぅっ!! カルールお前ぇ~! 苦労したんだなぁーズビズビ――」

 クッソキモイくらい鼻水出して啜って泣いてた。

 まぁおもしろいからいっかぁ。

 そんなこんなでおやっさんの話を聞いていると、驚く事が判明した。

「え、ギャブレーが座長?」

「ああ。二年ほど前に突然座長が死んでな……。医者が言うには心臓発作だ。誰しもが一座の行く末を案じた時に、ギャブレーが旗を上げて座長の座に就いたのさ」

「へーあのギャブレーがねぇー」

 何とも感慨深いと何度も深くうんうんと顔を動かした。

「おやっさん! 今からギャブレーのところに案内してよ!」

「おいおい、ゆっくり回ってから会いに行くって言ってたろ? まさか殴り込みに行くんじゃないだろうなぁ……」

「殴り込みって……。その気なら一直線に殴りに行ってるよ。安心して、ボクたちはもう大人なんだ。昔話に花を咲かせに行くだけ♪」

 ボクの笑顔を見たおやっさんはう~んと首を傾けて考えた。三秒か五秒か。腕を組みながら考えた末――

「――わかった。ちょうど昼頃で他の連中は休憩するだろうしな。見ててもつまらんだろ」

「さっすがおやっさん!! っよ! 話が分かるオヤジ!」

「オヤジは余計だ! これでも二児のパパなんだぞ」

「えええええええ!?!? うっそだろ!?」

 今日一番驚愕したボク。目玉が飛び出すってこの事なんだと知った。

 したり顔なおやっさん。

「嘘じゃないぞ」

「いやありえない! こんなチビでハゲでデブでクッサイオヤジ臭撒き散らしてる役満なおやっさんに子供なんて……!! 奥さんに失礼だろ!! 子供たちにも謝れ!!」

「謝んのはお前だろうが!!!! 失礼にもほどがあるだろ!!」

 と、激怒したおやっさんに連れられて、座長であるギャブレーが居る座長室の前に着いた。

 大きな扉に煌びやかな装飾。何とも傲慢なギャブレーが好きそうな扉。その奥から、くぐもった声が微かに聞こえてきた。

「――アメリーも居たのか」

「――ええ。たまたま近くに寄ったから、ギャブレーがサボってないか見にね」

「――サボってないって。少し休憩してただけだ」

 どうやらアメリーがも居るらしい。そしてもちろん、ギャブレーも。

「――実は二人に会いたがってる奴が来てるんだ。久しぶりの顔だ」

「――え? どなたなの?」

「――どこに居るんだ」

「――扉の前だ」

 そろそろ登場かな。

「――おい、入ってこい」

「――」

 ボクはドアノブを捻って扉を開け、入室した。

 そしてボクは、笑顔を向ける。

「久しぶりだね。アミリー、ギャブレー」

 時が静止した。

 そう思う程、無の時間が流れた。

「――か、カルール……なの……」

「ああ♪」

 泣きそうになる彼女。

「……カルール」

「ハハ」

 動揺を隠せない彼。

 両者両様。嬉しさと戸惑いがまどろむ混沌を感じたボクは。

「――――」ニィィ

 思わず頬を吊り上げそうになったのを我慢した。

 ――楽しい時間になりそうだ……!!
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