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第十八章 VS傀儡君主
第234話 傀儡師物語12
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「いやぁ久しぶりだね~! 二人とも元気そうで何よりだよ~」
応接用のソファに深く座って一座の座長とその奥方を笑顔で見た。
ボク、おやっさん、そしてギャブレー。紅茶を淹れてくれたアメリーは涙をこぼさない様に振る舞っている。
「カルールも元気そうで……。手紙の一つくらいくれたっていいじゃない……。いったい何所で何をしていたのよ……」
「おやっさんにも同じ事言われたよ。そこは反省するけど、便りがないのは良い便りっていうじゃん」
「まぁそうだけど……」
十年も経てば景色も変われば人も変わる。あの子供っぽさを残したバタフライは今では三児の母。水色の髪もしなやかで綺麗だ。本当に綺麗になった……。
それに比べてチラチラと目を合わせてくるギャブレーは昔の引き締まった身体では無くて、座長仕事が忙しいのか少しだけ太っている印象。
「ふふ。アメリーはすっかり綺麗に成ったけど、逆にギャブレーは太ったね」
「し、仕事が忙しいからだ……。前座長が太ってた理由を身に染みてる途中だ……」
「苦労してるんだね」
ぶっきらぼうに言い放ったギャブレー。確かに彼の言う通り前の座長も太っていたし、運動不足は否めないんだろうなぁ。
って言うか、幼馴染が戻って来たとアメリーは目をキラキラさせてボクを見るけど、幸せ太りのギャブレーは早く帰れオーラを出してる。
隣に居るのにそれを感じないアメリー。そこが彼女の良い所だけど、ボクの隣のおやっさんは各々の違った空気に戸惑っている様子だ。
ここはおやっさんのために早く帰って――という選択肢は無く、ギャブレーの意に沿わない形で居座る事にする。
当然だろ。こいつクズなんだから♪
「この十年とちょっと、カルールはどこで何してたの?」
紅茶の香りを舌と香りで楽しんでいると、優しく微笑んだアメリーが質問してきた。
「いろいろあったよぉ~」
ボクはわざとらしくうんうんと頷いて演技した。
「出てった最初はそれはもうひもじい生活でさ、食うに困るわ野盗に襲われるわで毎日が波乱万丈だった」
「そうなの……。苦労したのね」
「まぁね~」
眉をハノ字にしたアメリー。隣のギャブレーはどこか具合が悪そうにボクを見ていた。
「マリオネット芸で路銀を稼いで街から街へ移動する生活。そんな生活をしていた時にさ、ある街で女性に出会ったんだ」
「女性?」
「うん。グレーゼルって名前だよ」
女の話になると興味ありますと言った風。う〇こに集るハエみたいに食いついたギャブレーは相変わらずだ。
「彼女との出会いはそう、運命的だった……。オレンジ色の瞳がすっごくキュートでね、一目惚れしちゃったんだ」
「まぁ!」
自分の事の様にアメリーがぱっと笑顔になる。
「兄のヘンテルと一緒に暮らしててさ、そこでお邪魔になって生活してた」
「……生活してた? 今はしてないって言い方だな」
「そうだね」
キョトンとした顔でギャブレーを見たボク。気づくと隣のおやっさんが目頭を押さえていた。
正直ネタバレ感半端ない。
「グレーゼルと愛し合ってた……。でもある日、ヘンテルとグレーゼルは帰らぬ人になった……。ボクの腕の中で逝ったよ……」
眉をハノ字にして笑った。もちろん無理した作り笑顔を表に出し、笑い話だろと言いたげな雰囲気を出す。
「カルール……」
「……」
アミリーは可哀そうな目でボクを見て、あのクソ野郎のギャブレーですらボクに同情の眼差しを向けている。
効果てきめんだ。
「ううぅうカルール!! お前って苦労したんだなぁ~ズビズビ!! じゅるり!!」
「そ、そうだね……」
効果てきめんだ。マジで鼻水汚いからどっか行って欲しい。
「っと! なんだかしんみりしちゃったけど、色んな世界回っていろいろ経験したボクの方はこんな感じ。それよりさぁ、二人に子供が居るんだって? しかも三人! おやっさんから聞いたよぉ~」
「そ、そうなの! みんな手がかかる子でねぇー」
気を取り直したアメリー。
「――そうだ俺三人を呼んでくるよ。会ってみたいだろカルール」
突然饒舌になったギャブレー。居心地悪い空間から出たいと言った風に立ち上がって呼びに行こうとした。
「おいギャブレー、俺が呼びに行くからお前は座っとけ」
「え、でも――」
「少し風にも当たりたいんだよ俺は」
肩に手を置いて強制的に座らせたおやっさん。歳をとると涙もろくなるとか何とか言いながら部屋から出て行った。
ここでボクは笑顔になる。
「二人の子供かぁ。きっと美男美女ぞろいなんだろなぁ」
「目に入れても痛くないくらい可愛いんだからね!」
「……そうだな」
胸を張るアメリーに同意したギャブレー。他所に出しても恥ずかしくないと得意げな二人だ。
そこでボクは笑顔で質問した。
「で? 長男は誰の子なんだい、アメリー」
「――え?」
冷える空気。
さっきまで笑顔だった二人は急に真顔になってボクを見た。
「いやいやいや! そこは気になるでしょ普通。色んな○○をあんなに嬉しそうに腰振って欲しがってたんだよ? 親ガチャじゃなくて子ガチャだね、うん」
「……何言ってるの……カルール」
ハイライトの無い眼がボクを見る。
「男数人にギャブレーと座長……。さぞかし楽しんだだろうねえうん」
にこやかに話すボクに対しアメリーは信じられないと言った風にボクを見ている。すると、俯いていた隣のギャブレーボクを睨んだ。
「帰ってくれカルール!! 今ので分かった。お前はそうやって嫌がらせしに来たんだろ!!」
「嫌がらせだなんてまっさかぁ~」
テーブルを乗り越えてギャブレーがボクの胸元を掴んだ。
「俺たちは今、幸せなんだ!!」
「ふ~ん幸せなんだ」
「そうだ!! お前の薄ら笑いを見て嫌な予感がしていたんだ! 俺のカンが当たって正解だよ!!」
そう言ってボクをソファに突き飛ばしたギャブレー。怒りをあらわにして睨む彼と、わなわなと震えるアメリーは印象的で……。
ふぅ……。と溜息をついて乱れた服をはたいた。
「好きだった幼馴染を寝取られた男は退散しますか!」
そう言って足を組んだ。
「なんだ! 出て行かないのか!」
「まぁまぁ最後に一言だけ聞いてよ」
「さっさと出て行け!!」
「座長を殺したのはボクだ♪」
――――静まり返る。
「心臓発作で死んだってのはボクが工作したでたらめさ♪ あのクソブタが更にデブになっててめちゃくちゃ気持ち悪かったよぉ♪」
「――なに言ってんだお前……」
声を震わして動揺するギャブレー。
「あ、それとさ、二人にプレゼントがあるんだ♪」
テーブルの上にゲートを開くと中からゴロっと転がり落ちた。
瞬間。
「きゃあああああああああああああ!?!?」
アメリーの悲鳴がボクの耳に心地いい。
ゴロっと転がったの他でもない。水色の髪をした三つの頭部だ♪
そして場面は変わり、ボクはスポットライトのシャワーを浴びながらこう叫んだ。
「ハッハー! レディース&ジェントルメェェェェン!!」
盛大な歓声がマリオネットたちにが湧かせた。
広い広い公演場。その地には既に血が噴き出す死体でいっぱいだった。
その中に二つぽつんと立った柱に二人が括り付けられている。
「さあ皆さんお待ちかね!! 性病マシマシど腐れガングロ○○に○○を十本一気にツッコミたいと思いまーす♪」
――――ワー!!
盛大湧くマリオネットたち。
「――」
「――ぁぁ」
なのにアメリーとギャブレーは既に精神崩壊して喋らなくなっちゃった。
「あーあ。壊れっちゃったかぁ♪」
悲しいね♪
古い世界やら未来の世界とルーラーとして移動し、ボクは自分の感情の赴くまま、ひたすら楽しいと感じた事を思いのままに実行し、のびのびと支配欲を満たしていった。
だから時々立ちふさがる敵に支配欲を満たすことを邪魔されたら、ボクは辛抱が堪らなくなる。
まさに今がそうだ。
「ほらほらほあ!!」
「っく!!」
残像を残す程のスピードで翻弄し。
「これでも喰らえ!!」
「ッグワ!?」
有り余るパワーで押し切る。
散々ボクをコケにした黄金君主エルドラド。
余裕をかましてイキリ散らかしたおっさんが今はどうだ?
――ドワオ!!
「鎧も砕け♪」
「――」
「兜も砕け♪」
「――」
「防戦一方!!」
「――」
束ねた糸で作った剣で斬り、糸を変化させハンマーで殴り、槍で脇腹を貫いた。
「あれれーどうしたのかなぁー! ボクがやる気を出した瞬間よわよわになったねぇー! あ、違うかぁ! ボクが強すぎるんだぁー♪」
戦闘特化形態になったボク。まさかボクがここまで追い詰められたのは久しぶりだったりする。
でもやっぱりこの形態になると、一方的に虐殺が始まるからあんまり楽しくなかったり♪
「――ッケ! 調子に乗りやがってサイコパス! 俺はまだ本気を出しちゃいないぞー」
「あれれー? 負け惜しみに聞こえるなぁー」
ボロボロ状態でしんどいのを必死に誤魔化す奴を煽るのメッチャ楽しい!!
これだから弱いやつをいじめるのやめらんない!!
でもま、万が一に備えて……。
「ホイ! これなーんだ♪」
「……」
ボクが手に出したのは胎動する力の源。それは半透明な渦巻く光だ。
するとどうだろうか。これを見たエルドラドは黙り込んでしまった。
「……面白くない物出しやがって」
「あ、わかっちゃう? これがキミを消滅させるに値する物だってさ♪」
「それアレだろ。氷結界の里でお前がちょっかい出した本丸だろ」
「正解♪」
人食いおじさんから抽出した物だけど、これはボクの隠し札の一つだったり。
「効力をフルで使う事は叶わなかったケド、それでもお前を消滅させるには十分だったり」
「まぁ死んでる俺だから効果てきめんだろうな」
瞬間、エルドラドは砂を纏って小細工を企てるけど、ボクはすかさず糸を操ってエルドラドをがんじがらめに拘束した。
「はいおわりー」
「――ックソ」
トコトコと歩いてエルドラドの目の前に移動した。
そして腕を引いた。
「最後の言葉なんて聞かないから♪」
「――――――」
ボクはそのままコレをエルドラドに押し当て、彼は消滅した。
ハズなのに。
「――ッ!!」
これを体で受け止めたのは――
――幽霊の様に現れた幻霊君主だった。
応接用のソファに深く座って一座の座長とその奥方を笑顔で見た。
ボク、おやっさん、そしてギャブレー。紅茶を淹れてくれたアメリーは涙をこぼさない様に振る舞っている。
「カルールも元気そうで……。手紙の一つくらいくれたっていいじゃない……。いったい何所で何をしていたのよ……」
「おやっさんにも同じ事言われたよ。そこは反省するけど、便りがないのは良い便りっていうじゃん」
「まぁそうだけど……」
十年も経てば景色も変われば人も変わる。あの子供っぽさを残したバタフライは今では三児の母。水色の髪もしなやかで綺麗だ。本当に綺麗になった……。
それに比べてチラチラと目を合わせてくるギャブレーは昔の引き締まった身体では無くて、座長仕事が忙しいのか少しだけ太っている印象。
「ふふ。アメリーはすっかり綺麗に成ったけど、逆にギャブレーは太ったね」
「し、仕事が忙しいからだ……。前座長が太ってた理由を身に染みてる途中だ……」
「苦労してるんだね」
ぶっきらぼうに言い放ったギャブレー。確かに彼の言う通り前の座長も太っていたし、運動不足は否めないんだろうなぁ。
って言うか、幼馴染が戻って来たとアメリーは目をキラキラさせてボクを見るけど、幸せ太りのギャブレーは早く帰れオーラを出してる。
隣に居るのにそれを感じないアメリー。そこが彼女の良い所だけど、ボクの隣のおやっさんは各々の違った空気に戸惑っている様子だ。
ここはおやっさんのために早く帰って――という選択肢は無く、ギャブレーの意に沿わない形で居座る事にする。
当然だろ。こいつクズなんだから♪
「この十年とちょっと、カルールはどこで何してたの?」
紅茶の香りを舌と香りで楽しんでいると、優しく微笑んだアメリーが質問してきた。
「いろいろあったよぉ~」
ボクはわざとらしくうんうんと頷いて演技した。
「出てった最初はそれはもうひもじい生活でさ、食うに困るわ野盗に襲われるわで毎日が波乱万丈だった」
「そうなの……。苦労したのね」
「まぁね~」
眉をハノ字にしたアメリー。隣のギャブレーはどこか具合が悪そうにボクを見ていた。
「マリオネット芸で路銀を稼いで街から街へ移動する生活。そんな生活をしていた時にさ、ある街で女性に出会ったんだ」
「女性?」
「うん。グレーゼルって名前だよ」
女の話になると興味ありますと言った風。う〇こに集るハエみたいに食いついたギャブレーは相変わらずだ。
「彼女との出会いはそう、運命的だった……。オレンジ色の瞳がすっごくキュートでね、一目惚れしちゃったんだ」
「まぁ!」
自分の事の様にアメリーがぱっと笑顔になる。
「兄のヘンテルと一緒に暮らしててさ、そこでお邪魔になって生活してた」
「……生活してた? 今はしてないって言い方だな」
「そうだね」
キョトンとした顔でギャブレーを見たボク。気づくと隣のおやっさんが目頭を押さえていた。
正直ネタバレ感半端ない。
「グレーゼルと愛し合ってた……。でもある日、ヘンテルとグレーゼルは帰らぬ人になった……。ボクの腕の中で逝ったよ……」
眉をハノ字にして笑った。もちろん無理した作り笑顔を表に出し、笑い話だろと言いたげな雰囲気を出す。
「カルール……」
「……」
アミリーは可哀そうな目でボクを見て、あのクソ野郎のギャブレーですらボクに同情の眼差しを向けている。
効果てきめんだ。
「ううぅうカルール!! お前って苦労したんだなぁ~ズビズビ!! じゅるり!!」
「そ、そうだね……」
効果てきめんだ。マジで鼻水汚いからどっか行って欲しい。
「っと! なんだかしんみりしちゃったけど、色んな世界回っていろいろ経験したボクの方はこんな感じ。それよりさぁ、二人に子供が居るんだって? しかも三人! おやっさんから聞いたよぉ~」
「そ、そうなの! みんな手がかかる子でねぇー」
気を取り直したアメリー。
「――そうだ俺三人を呼んでくるよ。会ってみたいだろカルール」
突然饒舌になったギャブレー。居心地悪い空間から出たいと言った風に立ち上がって呼びに行こうとした。
「おいギャブレー、俺が呼びに行くからお前は座っとけ」
「え、でも――」
「少し風にも当たりたいんだよ俺は」
肩に手を置いて強制的に座らせたおやっさん。歳をとると涙もろくなるとか何とか言いながら部屋から出て行った。
ここでボクは笑顔になる。
「二人の子供かぁ。きっと美男美女ぞろいなんだろなぁ」
「目に入れても痛くないくらい可愛いんだからね!」
「……そうだな」
胸を張るアメリーに同意したギャブレー。他所に出しても恥ずかしくないと得意げな二人だ。
そこでボクは笑顔で質問した。
「で? 長男は誰の子なんだい、アメリー」
「――え?」
冷える空気。
さっきまで笑顔だった二人は急に真顔になってボクを見た。
「いやいやいや! そこは気になるでしょ普通。色んな○○をあんなに嬉しそうに腰振って欲しがってたんだよ? 親ガチャじゃなくて子ガチャだね、うん」
「……何言ってるの……カルール」
ハイライトの無い眼がボクを見る。
「男数人にギャブレーと座長……。さぞかし楽しんだだろうねえうん」
にこやかに話すボクに対しアメリーは信じられないと言った風にボクを見ている。すると、俯いていた隣のギャブレーボクを睨んだ。
「帰ってくれカルール!! 今ので分かった。お前はそうやって嫌がらせしに来たんだろ!!」
「嫌がらせだなんてまっさかぁ~」
テーブルを乗り越えてギャブレーがボクの胸元を掴んだ。
「俺たちは今、幸せなんだ!!」
「ふ~ん幸せなんだ」
「そうだ!! お前の薄ら笑いを見て嫌な予感がしていたんだ! 俺のカンが当たって正解だよ!!」
そう言ってボクをソファに突き飛ばしたギャブレー。怒りをあらわにして睨む彼と、わなわなと震えるアメリーは印象的で……。
ふぅ……。と溜息をついて乱れた服をはたいた。
「好きだった幼馴染を寝取られた男は退散しますか!」
そう言って足を組んだ。
「なんだ! 出て行かないのか!」
「まぁまぁ最後に一言だけ聞いてよ」
「さっさと出て行け!!」
「座長を殺したのはボクだ♪」
――――静まり返る。
「心臓発作で死んだってのはボクが工作したでたらめさ♪ あのクソブタが更にデブになっててめちゃくちゃ気持ち悪かったよぉ♪」
「――なに言ってんだお前……」
声を震わして動揺するギャブレー。
「あ、それとさ、二人にプレゼントがあるんだ♪」
テーブルの上にゲートを開くと中からゴロっと転がり落ちた。
瞬間。
「きゃあああああああああああああ!?!?」
アメリーの悲鳴がボクの耳に心地いい。
ゴロっと転がったの他でもない。水色の髪をした三つの頭部だ♪
そして場面は変わり、ボクはスポットライトのシャワーを浴びながらこう叫んだ。
「ハッハー! レディース&ジェントルメェェェェン!!」
盛大な歓声がマリオネットたちにが湧かせた。
広い広い公演場。その地には既に血が噴き出す死体でいっぱいだった。
その中に二つぽつんと立った柱に二人が括り付けられている。
「さあ皆さんお待ちかね!! 性病マシマシど腐れガングロ○○に○○を十本一気にツッコミたいと思いまーす♪」
――――ワー!!
盛大湧くマリオネットたち。
「――」
「――ぁぁ」
なのにアメリーとギャブレーは既に精神崩壊して喋らなくなっちゃった。
「あーあ。壊れっちゃったかぁ♪」
悲しいね♪
古い世界やら未来の世界とルーラーとして移動し、ボクは自分の感情の赴くまま、ひたすら楽しいと感じた事を思いのままに実行し、のびのびと支配欲を満たしていった。
だから時々立ちふさがる敵に支配欲を満たすことを邪魔されたら、ボクは辛抱が堪らなくなる。
まさに今がそうだ。
「ほらほらほあ!!」
「っく!!」
残像を残す程のスピードで翻弄し。
「これでも喰らえ!!」
「ッグワ!?」
有り余るパワーで押し切る。
散々ボクをコケにした黄金君主エルドラド。
余裕をかましてイキリ散らかしたおっさんが今はどうだ?
――ドワオ!!
「鎧も砕け♪」
「――」
「兜も砕け♪」
「――」
「防戦一方!!」
「――」
束ねた糸で作った剣で斬り、糸を変化させハンマーで殴り、槍で脇腹を貫いた。
「あれれーどうしたのかなぁー! ボクがやる気を出した瞬間よわよわになったねぇー! あ、違うかぁ! ボクが強すぎるんだぁー♪」
戦闘特化形態になったボク。まさかボクがここまで追い詰められたのは久しぶりだったりする。
でもやっぱりこの形態になると、一方的に虐殺が始まるからあんまり楽しくなかったり♪
「――ッケ! 調子に乗りやがってサイコパス! 俺はまだ本気を出しちゃいないぞー」
「あれれー? 負け惜しみに聞こえるなぁー」
ボロボロ状態でしんどいのを必死に誤魔化す奴を煽るのメッチャ楽しい!!
これだから弱いやつをいじめるのやめらんない!!
でもま、万が一に備えて……。
「ホイ! これなーんだ♪」
「……」
ボクが手に出したのは胎動する力の源。それは半透明な渦巻く光だ。
するとどうだろうか。これを見たエルドラドは黙り込んでしまった。
「……面白くない物出しやがって」
「あ、わかっちゃう? これがキミを消滅させるに値する物だってさ♪」
「それアレだろ。氷結界の里でお前がちょっかい出した本丸だろ」
「正解♪」
人食いおじさんから抽出した物だけど、これはボクの隠し札の一つだったり。
「効力をフルで使う事は叶わなかったケド、それでもお前を消滅させるには十分だったり」
「まぁ死んでる俺だから効果てきめんだろうな」
瞬間、エルドラドは砂を纏って小細工を企てるけど、ボクはすかさず糸を操ってエルドラドをがんじがらめに拘束した。
「はいおわりー」
「――ックソ」
トコトコと歩いてエルドラドの目の前に移動した。
そして腕を引いた。
「最後の言葉なんて聞かないから♪」
「――――――」
ボクはそのままコレをエルドラドに押し当て、彼は消滅した。
ハズなのに。
「――ッ!!」
これを体で受け止めたのは――
――幽霊の様に現れた幻霊君主だった。
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