俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

文字の大きさ
239 / 288
第十八章 VS傀儡君主

第239話 チュートリアル:心の整理

しおりを挟む
「ッフ! ッフ! ッフ!」

 日が昇る時間に起床し、すぐさま顔を洗いジャージに着替える。もちろん日課のチュートリアルをするためだ。

『チュートリアル:朝日を浴びてランニングしよう!』

 この日課のランニング。チュートリアルの題名が度々変わる謎現象だけど、やってる事は変わらない。

 この暑い夏の季節。ランニングのし過ぎはもちろん体の毒だし、汗のかきすぎで脱水症状なんて未来も見えている。最初の頃は己の限界に挑戦する日々だったけど、今では無理のないペースでランニングしている。

「っと。少し休憩するか……」

 公園に設置された木製の椅子。二人用の広い椅子に座り、自販機で買ったスポドリをゴクゴクと飲むのが俺の密かな楽しみだったり。

 ――ガタン

 いやはや、世の中は便利になったもんだ。今ではサイフ要らずでスマートウォッチをかざすだけで買えるんだから。

「ンク。ふぅ……」

 セミの鳴き声も段々と少なくなった今日この頃。冷たいスポドリが喉を通て体に染みこんでいくのを感じながら、背もたれに沿って空を仰いだ。

「……あれからもう一週間かぁ」

 そう。傀儡君主《マリオネットルーラー》カルーディの襲来から既に一瞬間が経った。

 巷では、というより、世間では今回の事件を『マリオネットレイド』と呼称されている。

 去年の今の次期に起きた『泡沫事件』に加え、ハロウィンに起きた『マーメイドレイド』に続き、実に三度目の大きな事件だ。

 今回の『マリオネットレイド』は日本だけではなく、それこそ世界中に甚大な人的被害や建物が崩壊すると言った事も起きていた。

 人的被害。それは単純に死傷者を指す事だけど、その実モンスターの爆発によりマリオネットと化した人々をも指す。

 ゲートが開いた場所で無尽蔵のモンスターを蹴散らし、あまつさえボス級のモンスターまでも攻略。攻略者や免許持ち、そして国連部隊の協力の末、見事勝利を勝ち取った。

 それによってゲートが閉じられ、ゲートの先へと連れていかれた人たちは各々が居た場所に少し遅れて無事帰還された。

 と言うのは国連による印象操作だ。

 実際のところゲートを閉じたのは俺たち理性のルーラーだし、マリオネットに変えられた人々を帰還させたのはエルドラドだ。

 理性たちと協力関係を築いているのは国連の一部である"混血派"だ。もちろんその事はバレてはいけないし、世間様と純血派のおっさん達に四苦八苦し奔走している母さんには頭が下がる。

「――ンク」

 泡沫事件で攫われた人々に対し行ったカウンセリングも今回実施。国連主導で動くカウンセリングやヒアリング。マリオネットに変えられた人々を中心に行ってるけど、どうやら攫われた後、つまりマリオネットに変えられてからは記憶がほとんど無いらしく、形だけ行って終わる人が続出しているらしい。

 日本だけは無くて海外も実践されていて、こじれた性格なのか、中には訴訟問題にまで発展しているケースもあるらしい。

 さすが訴訟大国と言うだけあってマジで怖いけど、隙あらば訴えてくるのはどうかとは思う。

 まぁ? 世間で話題の大物芸人セクハラ訴訟だったりサッカー選手への訴訟だったりと、物騒な世の中になったもんだと思う今日この頃です。

「ッフ! ッフ! ッフ!」

「っほ、っほ」

 朝のランニングをして長いけど、ジャージ姿で走っている人が最初の頃より明らかに多い気がする。

 それもこれも、マーメイドレイドや傀儡事件による影響なのかもしれない。

 有事には体力が必要……。それは誰にでも言える事だし、今では攻略者だけでなく免許持ちと言ったカテゴリーもある。一般人も走り込んでるとは思うけど、戦う術の選択肢が増えて、己を鍛えているのだろう。

 ――鍛えてますから。

 かの有名な鬼も言ってた言葉だ。その鬼も大層鍛えて培った肉体。音叉を用いて鬼に変身するけど、俺も鍛えまくってる自信が有る。そろそろ音叉をデコにかざして鬼になっても良い頃だと思うんだけど……。

 さすがに怒られるか!

 知らんけど!

「……そう言えば変身者って変身解くと全裸になるから、顔だけ変身解くんだっけ?」

 鬼になる人は全裸になる……。それは当然男でも女でも関係ない……。って事はつまり……。

 ひらめいた!!

「エッッッッッッッッ!!!!」

 ヤバイ!! 愛しさと切なさと心強さを兼ね備えた俺の股間に装備された変身音叉が反応してる!! クソ!! 高校生男児が持て余す有り余る性欲がヤバイ!!

 我射爆不可避!!

 なんちゃって中国語に訳すとこんな感じだ。

 でも俺は射爆してはいけない。何故なら今回の事件で里帰りしたお瀬那さんに、永続魔法 禁止令を発動させられたからだ。

「パパとママがしばらく帰って来いってさー。心配しすぎだしー。私大活躍したんだよ?」

「まぁまぁ、可愛い一人娘なんだし、ここは甘えに行ったら?」

「む~致し方なし!! 大人しく帰るとしますかぁ~」

(よし! これで積んでるゲームに集中できるぞ!)

「あ、ムラムラして一人で済ませたらダメだからね。帰ってきたらちゃんと中に出して力に変えるんだから!!」ッビシ

「ひょ?」

 と言った感じで禁止令を発動された。

 いやさぁ。俺も男な訳だから求められて嬉しい訳よ。でもさぁ、少しは一人でも楽しみたいじゃん……。杉田〇和も猥歌、歌ってたろ? 『嫁が出かけたバーンバーン! 秘蔵のファイルガンガガン!!』てさ。

 初回限定版の円盤も捨てられるし、エロフィギュアも捨てられる……。そりゃ新婚でも一人の時間は欲しいもんだろうさ。

「でもまっ! 一人は一人でも、カルーディの奴も最後は独りぼっちだったんだ……」

 口をあんぐりと開け、流れる雲を見ながらそう言った。

 あいつに止めを刺したのは俺……。今でもソードから伝わる肉を切る感触が忘れられない……。

 ――人を殺した。

 人ではなく、モンスターを倒したと思う人も居るだろうけど、ハッキリ人を殺したと、俺はそれを否定する。

 イエスや仏陀ですら中指を立てる程の極悪非道な生物。

 だけども、そんな彼でも、笑顔を向け合う人、愛した人は居たはずのちゃんと生きていた人だったんだ……。

 自分の手で止めを刺した事に、後悔はない。

 やらなきゃいけなかったらだし、やるしかなかった……。

 だってウルアーラさんの仇だったから……。

「――はあ。口を開けば言い訳がましいな」

 実のところ、俺はまだ心の整理は付いていないらしい。

 こればかりは、堪えてしまうな……。

「……さてと、そろそろ再開するか」

 立ち上がって飲み干したペットボトルを回収箱に入れ、俺はいつもの様に走り出した。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...