俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

文字の大きさ
240 / 288
第十九章 進路

第240話 チュートリアル:クソマン

しおりを挟む
「なん……だと……?」

 俺、戦慄。

 夏休みも残りわずか。

 夏休みを使ったダンジョン潜り。引率を許してくれた現役攻略者たちが組んでいるサークルにお邪魔するはずが、マリオネットレイドの影響で今日の予定も中止。それに瀬那が実家に帰り、積みゲーを消化していても虚無。

 イケメンの梶 大吾。ガタイMaxな月野 進太郎。中二病の戸島 司もといダーク=ノワールが電話一本で来てくれた。

 暇な奴集合!! とグループチャットで呟くといつメンが来た感じだ。

 揃いも揃って暇な連中だと口にしそうになったけど、よくよく考えたら俺も暇人だし呼びだした元凶……。

 お前ら彼女居るだろと聞いたけど、蕾さんと巨匠ツヤコは瀬那と同じ理由で家にいて、免許持ちのまことさんはマリオネットレイドに関する報告書やら何やらで忙しいらしい。

 女子たちは親に心配されて家に居るけど、男子の俺たちときたらいつも通りというね……。まぁ実力が買われてのことだろうけど、もうちょっと心配してもいいのではと思う。
 あ、俺には父さん母さんから電話一本貰った。普通に心配してくれたけど、リャンリャンが居るから大丈夫だと納得してくれた。

 まぁ今は仙人家にいないけど。

 と、ここで最初に戻るけど、俺が何故イチゴ色の漂白剤のセリフを言っているのかと言うと、少しだけ遡る。

「「「おじゃましまーす」」」

 午前十一時頃。野郎どもが雁首揃えて家にやって来た。

 クソ暑い夏日。もちろん部屋は冷房が利いていてすごく快適にしている。

 ソファに深く座り踏ん反り三人。一応客人なんで飲み物は何がいいかと聞いたところ。

「コーラ」

「ペプシ」

「♰ドクペ♰」

「俺ん家にそんなコーラの種類あると思うか!? お前ら分かって言ってるだろ!!」

 こいつら顎を前に出してバカ面をしてる辺り、ワザとふざけてる節がある。

「じゃあ聞くなよ萌ちゃ~ん」

 大吾が顎を突き出しながらそう言った。

 クッキン〇パパかよ。

「いや炭酸系とか、スポドリ系とか、普通にお茶とか言うと思ったから……。おちょくるの止めてください!」

「ちょろいぜ!」

「甘いぜ」

「♰ちょろ甘だな♰」

「テイ〇ズ好きすぎだろ!? 貴様らにはジェノサイドブレイバアアアアア!! をくれてやるぅ!!」

 と言いながらも冷やしたミネラル麦茶を出した。

 お菓子の在庫からおやつのカルパスを開いてテーブルに並べ、それを食べながら駄弁った。

 昨今の話題はマリオネットレイド。これに尽きる。

 ネットが回復し、一応グループチャットで互いの無事を確認し、詳細を省いた側面だけは話し合っている。だから今回はより深く聞きたい次第だが。

「――え、氷室くん居たの!?」

「ああ。免許持ちの協力もあったが、彼のおかげでビーチのモンスターはあらかた片付いたのと、ボスモンスターとも蹴りが付けれた。流石は天才と言われてるだけはある」

 人口密集地にゲートが開いたのは分かるけど、そもそも何で密集地でもないビーチにゲートが開いたかと世の中で疑問詞されているけど、たぶんカルーディの意趣返しなんだと思う。

 そんなビーチで屋台を出し焼きそばを売って金儲けしてるところにゲートが開き、止む無く進太郎が戦う羽目になった。そして驚きにもまことさんが免許持ちと言うミラクルで、共に戦い、無事撃退したと。

 しかもそれに加勢したのは二年のイケメン王子こと氷室くん。免許持ちの撤退のタイミングで進太郎のところに姿を現わしたのはマジで主人公だわ。

「……」

 つか、主人公だろとかそんな事どうでもいいんだよ……。

「……」イライラ

「ん? どうした萌」

「♰拳が震えている……♰」

「あッ」(察し)

 瞬間、俺は立ち上がった。

「二年の取り巻き女子に吉田さん同伴だと!? しかも吉田さんは幼馴染お姉ちゃんで二人ともまんざらでもないだと!? クソガキがいっちょ前にハーレムキメてんじゃねえええええ!!!!」

 俺は今、猛烈に嫉妬に駆られてる!!

 逆に言うと嫉妬していると分かるくらいには冷静だったり。

「イケメンだからってハーレムキメていいのかよ……!! そんなの不平等だ!!」

「お前彼女いるじゃ、いるではないか……♰」

「それとこれとは別なんだよ! いいか! 俺は男として! ハーレムを一度は経験したと思っている!!」

「一時期女子たちに追っかけをされていたが……」

「アレはノーカンだ! あの人たちは最終的に俺を殺しに来るからな!」

 進太郎の言う通り、確かに一時期俺はモテた。でもそれは毒殺不可避の死亡フラグまっしぐらの罠。あんなのハーレムじゃない。

「いいか想像しろ! 右手には褐色肌の巨乳女子であるお瀬那さん、左手にはケツのでかい美人女子、背中から抱いてくれるのは母性溢れるムチムチ女子……。他にもボーイッシュやお嬢様、妹系からモンスター娘までが後に控えている状態……! 最高だろうが!!」

 そう。俺の脳内には俺好みの様々なおんにゃの子が手をこまねいて待っている……!

「ん~マンダム……」

「……頭大丈夫か」

「ほっといてやれ。嫉妬に狂ってキチゲが解放されただけだ」

「♰カルパスうま♰」

 俺の崇高な思想が分からん愚民共。

 そんなこんなで話が続き、が終わったタイミングで大吾とダーク=ノワールの話になった。

 そして二人の口から語られた衝撃の事実。

「なん……だと……?」

 と、戦慄した最初に戻る。

 俺が戦慄した理由……。それは――

「デートしてたら偶然出会って……、女子たちの提案でそもままエッチな休憩所に直行したと……?」

「♰そうだな♰」

「まぁ結果的にそれどころじゃない事になったがな」

「――ッ!!」

 抱えていた嫉妬に妄想の影がかかる。

「それはそう――」

 ――高校生カップルの暑い夏。セミの鳴き声が消えゆく頃でも暑さは健在で、鎖骨に滴る汗が酷く情欲的に見えてしまうほど……。

 明るい気分に隠された官能的な欲が潜む中、出会ってしまった二組のカップル……。

 意気投合してしまう女子に誘われるがまま、握り返した手には汗と言う名の熱が顔を出していた。

「――それは儚くも悲しい青春の一ページ……。高揚する熱は凝縮された血となって露われ、からみにさかんな男女は――」

 ――嗚呼、想像に難くない青春のひととき。

 思わず目を瞑ってしまう……。

「……頭大丈夫か」

「ほっといてやれ。頭がおかしいだけだ」

「お茶うま♰」

 まさか真っ昼間からズンドコよっこいの4Pが始まりそうになったとは……。抜けるエロ同人みたいなシチュで嫉妬に狂いそうだけど、そこは我慢した。

 ……え? 既に狂ってる? んなアホな……。

「んで? 俺たちが必死に戦ってる間ぁ、萌ちゃんは何してたんだっけ? ップ!」

 俺が妄想していると、不意に大吾がニヤつき吹き出しながら問いかけてきた。

「……してました」

「ん? なんだって?」

「く、食い物にあたってゲリピーまみれの超体調不良で寝込んでました!!」

「ップ!?」

 頬を膨らませて我慢する大吾。

「ぶりぶりのう゛ん゛ゴしてましだッ!!」(やけくそ)

「ッブはははははははは!!」

 悔しそうに高々に宣言する俺。

 爆笑する大吾。

「……萌」

 白い目を向けてくる進太郎。

「♰クソ野郎だな♰」

 辛辣すぎるダーク=ノワール。

 そう。俺は嘘を付いた。

 食い物あたって動けなかったと嘘を付いた。

 まさか裏で戦っていたなんて口が裂けれも言えない苦肉の策だ。

 泡沫事件の時みたいに、うんこを槍玉にあげるくらいしか、俺には思いつかなかった……。

 そしてほとぼりが冷めるまで、俺はうんこマンと呼ばれ続けられた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...