20 / 23
【外伝】恋愛ドラマの(残念)女王が爆誕した日⑤
しおりを挟む
ユカリさんの思わせぶりな発言に、思わず食いついたところで、別のスタッフさんから撮影再開の声がかかる。
「あーもう!せっかくのいいところで!!」
「いってらっしゃい怜奈ちゃん、理緒たんになったつもりでがんばってくるのよ!」
ユカリさんに見送られて、撮影現場にもどる。
でも、気持ちのうえでは全然もどれる気がしなかった。
だって、『公私ともに相棒』って、絶対タカリオのことを指してるんでしょ!?
それ、なかの人の話なのよね??
どういうことなのよユカリさん、めちゃくちゃ気になるわよバカーー!!
* * *
「───で、ユカリさん!さっきのあれはなんなんですか!?たしかにタカリオのふたり、めちゃくちゃ距離が近いですけどもっ!!やっぱりそれだけ、なかの人たち同士もそうとかなんですか?!」
次のカットがかかったとたんユカリさんのもとへと駆け寄ったあたしは、思わずいきおいづいてそうたずねる。
だって画面をとおして見るタカリオのふたりがかもし出す空気感は、すごく自然体に感じられるものだったから。
それこそ本物の幼なじみなんじゃないかってくらい、距離感も妙に近いし。
息があってるっていうのは、ああいうのを指すんだろうなって思う。
「でもあのふたり、実は今回の共演がはじめましてなのよ?」
思わず感じたことを述べれば、ユカリさんからそんなこたえがかえってくる。
「ウソ?!だってあんなに息があってるのに?!」
なんていうか、予想外すぎた。
だって、理緒たんを見る貴宏の瞳、あの大切なものを見るような慈しむようなやわらかい視線は、そんな初共演の間柄ごときで出せるものなんかじゃない。
理緒たんのなかの人は、まちがいなく演技がウマイとして、だから目線にその役としての感情をのせるなんてお手のものだとは思う。
でも、東城湊斗は───?
それはもう、かんがえるまでもなかった。
芸能人としても新人の彼は、今回のドラマが実質テレビデビュー作みたいなものだ。
そりゃそうか、新人なんだから理緒たんとだって、当然はじめましてになるはずよね?
それにプロフィールを見たかぎりでは根っからの体育会系みたいだし、身体能力こそ元から高そうだけど、演技の経験があるかと言ったら、決してそんなことはないと思う。
今回の貴宏という役が、たまたま彼の持つスポーツマンっぽさのあるさわやか系イケメンのキャラクター性と一致しているだけで、セリフを口にする彼の姿からは、そこまでの演技力は感じられなかった。
なら、ときおり見せる、あのやわらかい笑みは───??
「……貴宏が理緒たんのこと好きなのはあたりまえだとして、なんか最近、それが『本物』なんじゃないかって邪推したくなってきました……」
ぽつりと本音をこぼせば、ユカリさんは急に真剣な顔になる。
「そこがね、新たな沼なのよ。なかの人たちがね、また───ヤバいから」
「ヤバい、とは?」
声をひそめるユカリさんに、ゴクリとつばを飲み込みながらたずねかえした。
「ここに、東城くんがテレビ誌の取材にこたえたときのものがあるんだけど……」
ネット記事に転載されているからと、そっとタブレット端末を差し出される。
そこにはこのドラマがデビュー作になること、これまで演技なんてしたことがなくて苦労したこと、でも今はその苦労も楽しいと思えることなんかが書かれていた。
うん、まぁ……いかにもさわやかイケメンが言いそうなことが書き連ねてある。
「問題はこっちよ!」
ユカリさんがビシッと指を突きつけてくるところに注目すれば、インタビュアーから共演者について、なにかエピソードはあるかと質問されている箇所だった。
役柄上で相棒の理緒たんについてと、そのなかの人については当然最初に聞かれることだ。
あたしも連ドラに出るときは、決まっておなじような質問をされるからわかる。
東城湊斗も、業界大手のモリプロ所属なんだから、きっとこたえは台本があるとは思うんだけど……。
「えぇっと……『顔合わせ以降、いつも面倒を見てもらっていて、本当に感謝しかないです!今も撮影のあとはいっしょに帰るついでに自宅に押しかけて、毎日のように本読みとか稽古に付き合ってもらってます』……って、はいぃっ!?」
えっ、なに、どういうこと?!
「ポイントは『撮影のあとはいっしょに帰る』と『自宅に押しかけて』かしらね」
「それって……」
「この場合、『お持ち帰り』をしているのか、されているのか、どっちになるのかしらね?」
にんまりと目尻を波打たせたユカリさんは、実に楽しそうだ。
待って、脳ミソの理解が追いつかない。
撮影であれだけいっしょにいるのに、終了後も毎日のようにいっしょに帰宅とか、かわいすぎん??
こういうの、公式からの供給が過多っていうヤツでは!?
それにこの場合、わざわざ『押しかける』って表現をするってことは、当然ふたりが向かう先は理緒たんのなかの人の自宅ってことになる。
それを、毎日ですって!?
「はい、さらにこの先もポイント!」
「なになに、『その部屋はオーナーさんの音楽趣味のおかげで防音仕様だったから、遠慮なく練習させてもらえるので、助かってます』って、これ……」
声に出して読みながらも、あたしの手はぶるぶるとふるえていた。
───それって、部屋のなかでナニがあっても、外には聞こえないってことなんじゃないの───!??
逃げて、理緒たんのなかの人ーー!!
東城湊斗はとんだ送り狼じゃないのよー!!?
「フフ、皆まで言うな怜奈ちゃん。あなたの混乱と妄想は、今まさに大増殖中だと思うわよ?ナニがあっても、外には聞こえないんですものね、それこそヤリたい放題だわ!!」
クワッと目をかっぴらくユカリさんは、これ以上ないほどに楽しげなのが見てとれる。
「ゆ、ユカリさん……あたし目がおかしくなったのかな?おなじ事務所の先輩後輩ってわけでもないのに、撮影で疲れて帰宅したあとにまで、本読みに付き合ってくれる人なんていると思う?マネージャー相手ですら、たまにしか付き合ってくれないわよ、ふつうなら!!」
これを信じるなら、理緒たんのなかの人、どんだけ面倒見いいのよ!?
「いいえ、残念ながら事実よ。あとこの記事、最後の編集部からの注釈もポイント高いから、お見逃しなくね」
「え、えぇ……『編集部注:誌面の都合上、語り尽くせぬほどの熱い思いは断腸の思いで一部省略とさせていただきました。』って、えーと……」
そんな本文のなかで『(中略)』なんていう表記が出てきたのなんて、1ヶ所だけだったけど?
まぁ、ご多分にもれず理緒たんのなかの人についての質問のところだったけど。
しかも文脈から察するに、省略された内容は、まちがいなくどういうところがいいかという、具体的に相手を褒める内容だったように思える。
これでもあたしだって似たような取材を受けてきたから、誌面になる際にこちらのこたえた内容が編集されて、事務所チェックを経て体裁がととのえられることくらい知っている。
会議の議事録じゃないんだから、発言そのままを書くんじゃなくて、ある程度はカットされたり編集されたうえで掲載されることくらい、だれでもわかっていると思う。
だからふつうなら、わざわざそんな風に『編集しました』なんて書かないわよ!
でもこれには、あえて注釈として記載されている。
なんだかそこに、微妙な違和感をおぼえた。
───つまりそれって、誌面の都合でカットしたって、わざわざ書かなきゃいけないくらいカットした部分が多かったってことなんじゃないの!?
たとえば趣味について質問されて、映画鑑賞が趣味だとこたえたとする。
この場合、インタビュアーの意図としては、そのタレントがどういう人なのかを伝える目的で質問しているわけで、『趣味は映画鑑賞』ということだけが読者に伝わればいいわけだ。
でもたまに好きなことそのものについて、ヲタクと呼ばれる人種は熱く語ってしまうことがある。
具体的には『この映画のここがいい』だとか『この映画がどうおすすめなのか』だとか、そういう感じに。
インタビュアーが聞きたいのは、その人の人となりであって、映画の話じゃない。
とすれば、インタビュアーの意図からはずれた部分は、当然割愛されることになる。
しかし、そのいらないことを熱く語っていたというエピソード自体がおもしろいと判断されれば、その熱い語りの具体的な内容は省略して、ものすごい熱量をもって語ったという事実だけは掲載されることになる───今回の東城湊斗のように。
……うん、知ってた。
アイツが理緒たんのなかの人のこと、相当好きなんだってことは、画面をとおしてもなお、ビシバシと好き好きビームが目から出まくってるのが見えていたもの。
はい、本人からの供給過多でヤベエェェェ!!!
妄想がはかどる燃料投下、ありがとうございまーす!!
うわあぁぁ、クッッッソ尊てぇぇぇぇ!!!
「甘いわ、怜奈ちゃん!これ、このテレビ誌だけじゃないのよ。ほかにも……ほら、これとか、これとか、これとか!皆どれにも、似たような中略表記がされているのよ!!」
うっかり拝みそうに手を合わせたあたしに、ユカリさんがタブレット端末をいじりながら、いくつもの記事を見せてくる。
「同時に何誌もの取材を、まとめて受けてたってこと?」
「いいえ、よく読んで。本人の語ったエピソードの取り上げ方だとか、本文の構成がまったくちがうところを見るに、全部別のタイミングで受けたものと判断できるわ」
合同取材だったのかと問えば、すぐに反証材料が示される。
「なんてこと……!!ユカリさん、東城湊斗の愛が重い!!」
「それなのよ!清々しいくらい、大好きなのが伝わりまくってるのよ、編集された文面のはしばしからも!!」
それはなんというか、新たな沼以外のなにものでもなかった。
ドラマのなかじゃ、どちらかといえば理緒たんのほうが貴宏のことを好きみたいにも見えるのに、現実はその逆だったってこと?!
なによそれ、おいしすぎるでしょ!
「通りいっぺんの取材のはずなのに、東城湊斗からのものすごい熱い思いを行間から感じ取ったわ……」
さすがはイケメン、顔圧が高い。
デビュー直後なんて、まだ磨かれてない時期だろうに、すでにお顔がよすぎるせいでめちゃくちゃこちらに訴えてくる力が強い。
うん、でもおかげで東城湊斗の名前も顔もバッチリおぼえたわ。
もし彼がこのまま俳優としてのお仕事をつづけるなら、いつかあたしとも共演しそうだしね。
「───で、ここからが本番。業界内部の人間だからこそ、もれ伝わってくるエピソードがあるのよ、まだ」
ふたたび声をひそめてくるユカリさんに、耳をそばだてようとしたところで、またもや撮影再開の号令がかかる。
「あぁん、もういいところで!」
「ウフ、つづきはまたあとで、ゆっくりね♪」
さっきからなんなのよ、もう!
気になりすぎるじゃないのよぉぉぉ!!
心のなかで血の涙を流しながら、あたしは現場にもどることになったのだった。
「あーもう!せっかくのいいところで!!」
「いってらっしゃい怜奈ちゃん、理緒たんになったつもりでがんばってくるのよ!」
ユカリさんに見送られて、撮影現場にもどる。
でも、気持ちのうえでは全然もどれる気がしなかった。
だって、『公私ともに相棒』って、絶対タカリオのことを指してるんでしょ!?
それ、なかの人の話なのよね??
どういうことなのよユカリさん、めちゃくちゃ気になるわよバカーー!!
* * *
「───で、ユカリさん!さっきのあれはなんなんですか!?たしかにタカリオのふたり、めちゃくちゃ距離が近いですけどもっ!!やっぱりそれだけ、なかの人たち同士もそうとかなんですか?!」
次のカットがかかったとたんユカリさんのもとへと駆け寄ったあたしは、思わずいきおいづいてそうたずねる。
だって画面をとおして見るタカリオのふたりがかもし出す空気感は、すごく自然体に感じられるものだったから。
それこそ本物の幼なじみなんじゃないかってくらい、距離感も妙に近いし。
息があってるっていうのは、ああいうのを指すんだろうなって思う。
「でもあのふたり、実は今回の共演がはじめましてなのよ?」
思わず感じたことを述べれば、ユカリさんからそんなこたえがかえってくる。
「ウソ?!だってあんなに息があってるのに?!」
なんていうか、予想外すぎた。
だって、理緒たんを見る貴宏の瞳、あの大切なものを見るような慈しむようなやわらかい視線は、そんな初共演の間柄ごときで出せるものなんかじゃない。
理緒たんのなかの人は、まちがいなく演技がウマイとして、だから目線にその役としての感情をのせるなんてお手のものだとは思う。
でも、東城湊斗は───?
それはもう、かんがえるまでもなかった。
芸能人としても新人の彼は、今回のドラマが実質テレビデビュー作みたいなものだ。
そりゃそうか、新人なんだから理緒たんとだって、当然はじめましてになるはずよね?
それにプロフィールを見たかぎりでは根っからの体育会系みたいだし、身体能力こそ元から高そうだけど、演技の経験があるかと言ったら、決してそんなことはないと思う。
今回の貴宏という役が、たまたま彼の持つスポーツマンっぽさのあるさわやか系イケメンのキャラクター性と一致しているだけで、セリフを口にする彼の姿からは、そこまでの演技力は感じられなかった。
なら、ときおり見せる、あのやわらかい笑みは───??
「……貴宏が理緒たんのこと好きなのはあたりまえだとして、なんか最近、それが『本物』なんじゃないかって邪推したくなってきました……」
ぽつりと本音をこぼせば、ユカリさんは急に真剣な顔になる。
「そこがね、新たな沼なのよ。なかの人たちがね、また───ヤバいから」
「ヤバい、とは?」
声をひそめるユカリさんに、ゴクリとつばを飲み込みながらたずねかえした。
「ここに、東城くんがテレビ誌の取材にこたえたときのものがあるんだけど……」
ネット記事に転載されているからと、そっとタブレット端末を差し出される。
そこにはこのドラマがデビュー作になること、これまで演技なんてしたことがなくて苦労したこと、でも今はその苦労も楽しいと思えることなんかが書かれていた。
うん、まぁ……いかにもさわやかイケメンが言いそうなことが書き連ねてある。
「問題はこっちよ!」
ユカリさんがビシッと指を突きつけてくるところに注目すれば、インタビュアーから共演者について、なにかエピソードはあるかと質問されている箇所だった。
役柄上で相棒の理緒たんについてと、そのなかの人については当然最初に聞かれることだ。
あたしも連ドラに出るときは、決まっておなじような質問をされるからわかる。
東城湊斗も、業界大手のモリプロ所属なんだから、きっとこたえは台本があるとは思うんだけど……。
「えぇっと……『顔合わせ以降、いつも面倒を見てもらっていて、本当に感謝しかないです!今も撮影のあとはいっしょに帰るついでに自宅に押しかけて、毎日のように本読みとか稽古に付き合ってもらってます』……って、はいぃっ!?」
えっ、なに、どういうこと?!
「ポイントは『撮影のあとはいっしょに帰る』と『自宅に押しかけて』かしらね」
「それって……」
「この場合、『お持ち帰り』をしているのか、されているのか、どっちになるのかしらね?」
にんまりと目尻を波打たせたユカリさんは、実に楽しそうだ。
待って、脳ミソの理解が追いつかない。
撮影であれだけいっしょにいるのに、終了後も毎日のようにいっしょに帰宅とか、かわいすぎん??
こういうの、公式からの供給が過多っていうヤツでは!?
それにこの場合、わざわざ『押しかける』って表現をするってことは、当然ふたりが向かう先は理緒たんのなかの人の自宅ってことになる。
それを、毎日ですって!?
「はい、さらにこの先もポイント!」
「なになに、『その部屋はオーナーさんの音楽趣味のおかげで防音仕様だったから、遠慮なく練習させてもらえるので、助かってます』って、これ……」
声に出して読みながらも、あたしの手はぶるぶるとふるえていた。
───それって、部屋のなかでナニがあっても、外には聞こえないってことなんじゃないの───!??
逃げて、理緒たんのなかの人ーー!!
東城湊斗はとんだ送り狼じゃないのよー!!?
「フフ、皆まで言うな怜奈ちゃん。あなたの混乱と妄想は、今まさに大増殖中だと思うわよ?ナニがあっても、外には聞こえないんですものね、それこそヤリたい放題だわ!!」
クワッと目をかっぴらくユカリさんは、これ以上ないほどに楽しげなのが見てとれる。
「ゆ、ユカリさん……あたし目がおかしくなったのかな?おなじ事務所の先輩後輩ってわけでもないのに、撮影で疲れて帰宅したあとにまで、本読みに付き合ってくれる人なんていると思う?マネージャー相手ですら、たまにしか付き合ってくれないわよ、ふつうなら!!」
これを信じるなら、理緒たんのなかの人、どんだけ面倒見いいのよ!?
「いいえ、残念ながら事実よ。あとこの記事、最後の編集部からの注釈もポイント高いから、お見逃しなくね」
「え、えぇ……『編集部注:誌面の都合上、語り尽くせぬほどの熱い思いは断腸の思いで一部省略とさせていただきました。』って、えーと……」
そんな本文のなかで『(中略)』なんていう表記が出てきたのなんて、1ヶ所だけだったけど?
まぁ、ご多分にもれず理緒たんのなかの人についての質問のところだったけど。
しかも文脈から察するに、省略された内容は、まちがいなくどういうところがいいかという、具体的に相手を褒める内容だったように思える。
これでもあたしだって似たような取材を受けてきたから、誌面になる際にこちらのこたえた内容が編集されて、事務所チェックを経て体裁がととのえられることくらい知っている。
会議の議事録じゃないんだから、発言そのままを書くんじゃなくて、ある程度はカットされたり編集されたうえで掲載されることくらい、だれでもわかっていると思う。
だからふつうなら、わざわざそんな風に『編集しました』なんて書かないわよ!
でもこれには、あえて注釈として記載されている。
なんだかそこに、微妙な違和感をおぼえた。
───つまりそれって、誌面の都合でカットしたって、わざわざ書かなきゃいけないくらいカットした部分が多かったってことなんじゃないの!?
たとえば趣味について質問されて、映画鑑賞が趣味だとこたえたとする。
この場合、インタビュアーの意図としては、そのタレントがどういう人なのかを伝える目的で質問しているわけで、『趣味は映画鑑賞』ということだけが読者に伝わればいいわけだ。
でもたまに好きなことそのものについて、ヲタクと呼ばれる人種は熱く語ってしまうことがある。
具体的には『この映画のここがいい』だとか『この映画がどうおすすめなのか』だとか、そういう感じに。
インタビュアーが聞きたいのは、その人の人となりであって、映画の話じゃない。
とすれば、インタビュアーの意図からはずれた部分は、当然割愛されることになる。
しかし、そのいらないことを熱く語っていたというエピソード自体がおもしろいと判断されれば、その熱い語りの具体的な内容は省略して、ものすごい熱量をもって語ったという事実だけは掲載されることになる───今回の東城湊斗のように。
……うん、知ってた。
アイツが理緒たんのなかの人のこと、相当好きなんだってことは、画面をとおしてもなお、ビシバシと好き好きビームが目から出まくってるのが見えていたもの。
はい、本人からの供給過多でヤベエェェェ!!!
妄想がはかどる燃料投下、ありがとうございまーす!!
うわあぁぁ、クッッッソ尊てぇぇぇぇ!!!
「甘いわ、怜奈ちゃん!これ、このテレビ誌だけじゃないのよ。ほかにも……ほら、これとか、これとか、これとか!皆どれにも、似たような中略表記がされているのよ!!」
うっかり拝みそうに手を合わせたあたしに、ユカリさんがタブレット端末をいじりながら、いくつもの記事を見せてくる。
「同時に何誌もの取材を、まとめて受けてたってこと?」
「いいえ、よく読んで。本人の語ったエピソードの取り上げ方だとか、本文の構成がまったくちがうところを見るに、全部別のタイミングで受けたものと判断できるわ」
合同取材だったのかと問えば、すぐに反証材料が示される。
「なんてこと……!!ユカリさん、東城湊斗の愛が重い!!」
「それなのよ!清々しいくらい、大好きなのが伝わりまくってるのよ、編集された文面のはしばしからも!!」
それはなんというか、新たな沼以外のなにものでもなかった。
ドラマのなかじゃ、どちらかといえば理緒たんのほうが貴宏のことを好きみたいにも見えるのに、現実はその逆だったってこと?!
なによそれ、おいしすぎるでしょ!
「通りいっぺんの取材のはずなのに、東城湊斗からのものすごい熱い思いを行間から感じ取ったわ……」
さすがはイケメン、顔圧が高い。
デビュー直後なんて、まだ磨かれてない時期だろうに、すでにお顔がよすぎるせいでめちゃくちゃこちらに訴えてくる力が強い。
うん、でもおかげで東城湊斗の名前も顔もバッチリおぼえたわ。
もし彼がこのまま俳優としてのお仕事をつづけるなら、いつかあたしとも共演しそうだしね。
「───で、ここからが本番。業界内部の人間だからこそ、もれ伝わってくるエピソードがあるのよ、まだ」
ふたたび声をひそめてくるユカリさんに、耳をそばだてようとしたところで、またもや撮影再開の号令がかかる。
「あぁん、もういいところで!」
「ウフ、つづきはまたあとで、ゆっくりね♪」
さっきからなんなのよ、もう!
気になりすぎるじゃないのよぉぉぉ!!
心のなかで血の涙を流しながら、あたしは現場にもどることになったのだった。
96
あなたにおすすめの小説
転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~
トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。
突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。
有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。
約束の10年後。
俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。
どこからでもかかってこいや!
と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。
そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変?
急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。
慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし!
このまま、俺は、絆されてしまうのか!?
カイタ、エブリスタにも掲載しています。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。
春色悠
BL
多くの実力者を輩出したと云われる名門校【カナド学園】。
新入生としてその門を潜ったダンツ辺境伯家次男、ユーリスは転生者だった。
___まあ、残っている記憶など塵にも等しい程だったが。
ユーリスは兄と姉がいる為後継者として期待されていなかったが、二度目の人生の本人は冒険者にでもなろうかと気軽に考えていた。
しかし、ユーリスの運命は『冷血公爵』と名高いデンベル・フランネルとの出会いで全く思ってもいなかった方へと進みだす。
常に冷静沈着、実の父すら自身が公爵になる為に追い出したという冷酷非道、常に無表情で何を考えているのやらわからないデンベル___
「いやいやいやいや、全部顔に出てるんですけど…!!?」
ユーリスは思い出す。この世界は表情から全く感情を読み取ってくれないことを。いくら苦々しい表情をしていても誰も気づかなかったことを。
寡黙なだけで表情に全て感情の出ているデンベルは怖がられる度にこちらが悲しくなるほど落ち込み、ユーリスはついつい話しかけに行くことになる。
髪の毛の美しさで美醜が決まるというちょっと不思議な美醜観が加わる感情表現の複雑な世界で少し勘違いされながらの二人の行く末は!?
【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。
この噛み痕は、無効。
ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋
α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。
いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。
千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。
そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。
その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。
「やっと見つけた」
男は誰もが見惚れる顔でそう言った。
推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです
一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお)
同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。
時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。
僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。
本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。
だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。
なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。
「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」
ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。
僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。
その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。
悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。
え?葛城くんが目の前に!?
どうしよう、人生最大のピンチだ!!
✤✤
「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。
全年齢向けの作品となっています。
一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。
✤✤
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる