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339.死の間際にいるラキちゃんから溢れ出す感情は、コルク栓を勢いよく抜いた後のワイン瓶から溢れ出す泡とワインのようで、飲み込めない俺は。
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ケンゴ、ケンゴと最後に会いたい男の名前を呼ぶラキちゃん。
カガネとメグたんは、ラキちゃんが楽な体勢をとろうと試行錯誤してから、ラキちゃんの体を地面におろす。
カガネとメグたんに運ばれるとき、ラキちゃんは、カガネとメグたんが運びやすいように、運ばれやすい体勢でいようとしていた。
運ばれるときの揺れで、体にくる痛みを訴えるほかは、静かにしていたラキちゃん。
俺が、ラキちゃんに言いたいことはないか、と尋ねたことは。
ラキちゃんの刑事として抑え込んでいた感情が詰まったワインの瓶のコルク栓を引き抜くことになった。
ラキちゃんの感情の発露と涙と心の奥底からケンゴと呼ぶ声は。
瓶から溢れるワインと泡のようだ。
俺には、飲み込めない。
ラキちゃんに話しかけた俺を見ようともしないラキちゃんに。
ケンゴに会いたいなら、会わせてやるという台詞は、俺のどこを探しても、俺から出てこない。
ラキちゃんを慰める言葉を持たない俺は、ラキちゃんがラキちゃん自身で落ち着くのを待とうとしている。
ラキちゃんの秘められてきた熱情を受け流すには、俺の感情がおさまらず。
刑事だからと隠し通してきたラキちゃんが、ぶち撒けていく心の中を受け止める気にもなれない。
俺の一方的な関心を軽く流していたラキちゃんは、ずっと、俺のことなど眼中になかった。
俺の一方通行の思いを気付いていたラキちゃんは、最後まで俺に一方通行のままでいさせた。
ラキちゃんは、ラキちゃんに関心がある俺を利用しようとはしなかった。
ラキちゃんに、何もしない俺がすることは。
ラキちゃんの興奮がおさまるまで、待つこと。
運ばれる体勢でいるよりも、地面に置いて、ラキちゃんに体の自由を与えた方が、ラキには楽だ。
カガネとメグたんの行動は、これまでとこの先を見据えた動きでもある。
瓶から溢れたワインが、瓶の中に戻ることはない。
ラキちゃんの感情の昂ぶりは、一時的なもので、長くは続かない。
何時間も泣いて悲しむだけの体力と気力は、もうラキちゃんのには残っていない。
ラキちゃんは、分かっている。
自分に未来がないことに。
生きる希望を持てないことに。
先がないと分かっているからこそ。
ラキちゃんは、愛しく思う男の名前を必死に呼んでいる。
最後に。
最後だから。
最後に一目。
最後に一言。
事切れる瞬間まで、側にいてほしいと願っているのだと思う。
ケンゴに。
ラキちゃんが最後の瞬間、抱きしめられたいと願うのは俺ではなく、ケンゴ。
俺なら、ここにいるのに。
ラキちゃんと同じ部屋にいる俺は。
ラキちゃんと会話することも。
手を握ることも。
抱きしめることもできる。
ラキちゃんがせがんでくれるなら、キスだって。
何度でも。
だけど。
ラキちゃんの一番近くにいて、ラキちゃんに最後まで寄り添い、ラキちゃんが望むならどんな強さでも抱き締められる俺は、ラキちゃんに望まれていない。
ラキちゃんは、折れ曲がった手足を動かそうとしては、思うように動かない手足と動かそうとするときにいや増す痛みについての感情を全部、口に出していく。
「ケンゴ、ケンゴ。どこにいる?
あなたは、ここには来ていなかった
まだあの場所にいる?」
とラキちゃん。
「ケンゴ、私を見ている?」
ラキちゃんの体の傷は一つも良くなっていないにもかかわらず。
ラキちゃんは、もう、痛い、とは言わなくなった。
ラキちゃんの口から発せられる言葉は、ケンゴ、という男の名前だけ。
ラキちゃんは、ケンゴに訴えかけるように、折れ曲がった手足を動かそうとして痛みに呻く。
ラキちゃんの出す音と声だけに支配されていた空間で。
ふんっと鼻息が聞こえた。
鼻息がした北白川サナの方を向くと。
北白川サナは、俺の斜め後ろからラキちゃんと俺を見ていた。
「ショウタは、私と同じ、です。」
と北白川サナ。
ラキちゃんの口から、悲鳴と涙交じりの呼ぶ声が交互に出てくるのを俺は、部外者の位置に立って見ている。
北白川サナの言わんとすることは察したが、同意する気は俺にはない。
「北白川サナと俺が同じだと判断する心当たりが俺には全くない。」
俺は、自分が思うよりも冷え冷えした声を出していた。
「ショウタは、自分の立ち位置を分かろうとしない、です。」
と北白川サナ。
北白川サナは、俺が冷たい声を出しても動じない。
冷たくあしらわれることに慣れているのかもしれない。
北白川サナに優しく受け答えしていた参加者は、ラキちゃん以外に見なかった。
「北白川サナは、俺の立ち位置が気になるか?」
俺は、声が冷たくならないように意識した。
北白川サナは、息を大きく吸う。
「ショウタは、私と同じで。
スポットライトの真下には立っていない、です。
ラキは、一度もショウタを好きにならなかった、です。」
と北白川サナ。
カガネとメグたんは、ラキちゃんが楽な体勢をとろうと試行錯誤してから、ラキちゃんの体を地面におろす。
カガネとメグたんに運ばれるとき、ラキちゃんは、カガネとメグたんが運びやすいように、運ばれやすい体勢でいようとしていた。
運ばれるときの揺れで、体にくる痛みを訴えるほかは、静かにしていたラキちゃん。
俺が、ラキちゃんに言いたいことはないか、と尋ねたことは。
ラキちゃんの刑事として抑え込んでいた感情が詰まったワインの瓶のコルク栓を引き抜くことになった。
ラキちゃんの感情の発露と涙と心の奥底からケンゴと呼ぶ声は。
瓶から溢れるワインと泡のようだ。
俺には、飲み込めない。
ラキちゃんに話しかけた俺を見ようともしないラキちゃんに。
ケンゴに会いたいなら、会わせてやるという台詞は、俺のどこを探しても、俺から出てこない。
ラキちゃんを慰める言葉を持たない俺は、ラキちゃんがラキちゃん自身で落ち着くのを待とうとしている。
ラキちゃんの秘められてきた熱情を受け流すには、俺の感情がおさまらず。
刑事だからと隠し通してきたラキちゃんが、ぶち撒けていく心の中を受け止める気にもなれない。
俺の一方的な関心を軽く流していたラキちゃんは、ずっと、俺のことなど眼中になかった。
俺の一方通行の思いを気付いていたラキちゃんは、最後まで俺に一方通行のままでいさせた。
ラキちゃんは、ラキちゃんに関心がある俺を利用しようとはしなかった。
ラキちゃんに、何もしない俺がすることは。
ラキちゃんの興奮がおさまるまで、待つこと。
運ばれる体勢でいるよりも、地面に置いて、ラキちゃんに体の自由を与えた方が、ラキには楽だ。
カガネとメグたんの行動は、これまでとこの先を見据えた動きでもある。
瓶から溢れたワインが、瓶の中に戻ることはない。
ラキちゃんの感情の昂ぶりは、一時的なもので、長くは続かない。
何時間も泣いて悲しむだけの体力と気力は、もうラキちゃんのには残っていない。
ラキちゃんは、分かっている。
自分に未来がないことに。
生きる希望を持てないことに。
先がないと分かっているからこそ。
ラキちゃんは、愛しく思う男の名前を必死に呼んでいる。
最後に。
最後だから。
最後に一目。
最後に一言。
事切れる瞬間まで、側にいてほしいと願っているのだと思う。
ケンゴに。
ラキちゃんが最後の瞬間、抱きしめられたいと願うのは俺ではなく、ケンゴ。
俺なら、ここにいるのに。
ラキちゃんと同じ部屋にいる俺は。
ラキちゃんと会話することも。
手を握ることも。
抱きしめることもできる。
ラキちゃんがせがんでくれるなら、キスだって。
何度でも。
だけど。
ラキちゃんの一番近くにいて、ラキちゃんに最後まで寄り添い、ラキちゃんが望むならどんな強さでも抱き締められる俺は、ラキちゃんに望まれていない。
ラキちゃんは、折れ曲がった手足を動かそうとしては、思うように動かない手足と動かそうとするときにいや増す痛みについての感情を全部、口に出していく。
「ケンゴ、ケンゴ。どこにいる?
あなたは、ここには来ていなかった
まだあの場所にいる?」
とラキちゃん。
「ケンゴ、私を見ている?」
ラキちゃんの体の傷は一つも良くなっていないにもかかわらず。
ラキちゃんは、もう、痛い、とは言わなくなった。
ラキちゃんの口から発せられる言葉は、ケンゴ、という男の名前だけ。
ラキちゃんは、ケンゴに訴えかけるように、折れ曲がった手足を動かそうとして痛みに呻く。
ラキちゃんの出す音と声だけに支配されていた空間で。
ふんっと鼻息が聞こえた。
鼻息がした北白川サナの方を向くと。
北白川サナは、俺の斜め後ろからラキちゃんと俺を見ていた。
「ショウタは、私と同じ、です。」
と北白川サナ。
ラキちゃんの口から、悲鳴と涙交じりの呼ぶ声が交互に出てくるのを俺は、部外者の位置に立って見ている。
北白川サナの言わんとすることは察したが、同意する気は俺にはない。
「北白川サナと俺が同じだと判断する心当たりが俺には全くない。」
俺は、自分が思うよりも冷え冷えした声を出していた。
「ショウタは、自分の立ち位置を分かろうとしない、です。」
と北白川サナ。
北白川サナは、俺が冷たい声を出しても動じない。
冷たくあしらわれることに慣れているのかもしれない。
北白川サナに優しく受け答えしていた参加者は、ラキちゃん以外に見なかった。
「北白川サナは、俺の立ち位置が気になるか?」
俺は、声が冷たくならないように意識した。
北白川サナは、息を大きく吸う。
「ショウタは、私と同じで。
スポットライトの真下には立っていない、です。
ラキは、一度もショウタを好きにならなかった、です。」
と北白川サナ。
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