正義が勝たないデスゲームから脱出しよう。【R15】

かざみはら まなか

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338.俺は、ケンゴより前に、ラキちゃんと出会っていたかった。

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俺の見た美形の目は、青くなかった。

瞳を見て、カラコンかどうか見分けがつくか、と言われると。

俺に見分けられるかは不明だ。

カラコンを入れていることを公言していて、裸眼と見比べてみるかと俺に勧めてくるような隣人は身近にいなかった。

知らないものを比較して違いを指摘できるという趣旨の断言を俺はしない。

興味がわかないゆえに知らなかったなら、慎重な姿勢でフラットに向き合う方がいい。

俺と会って話をしていたときの美形が、青系ではなく黒系や茶系のカラコンを入れていた可能性は、ある。

美形が正義が勝たないデスゲームの参加者に説明する役を担っていたなら。

正義が勝たないデスゲームの参加者には、生来の瞳を見せないようにしたのではないか。

美形の瞳などに関心がなかった俺は、カラコンの有無に気づかなかった。

カラコンを装着した人物が俺の前に立つことがあるという事態を俺は想定していなかった。

正義が勝たないデスゲームに参加する前は、よく見ていなかったが、正義が勝たないデスゲームを脱出したときは、美形の瞳をよく見てみるか。

正義が勝たないデスゲームを脱出する参加者への説明をするのが美形の仕事なら。

俺は、正義が勝たないデスゲームを脱出する前に、また美形と会うことになる。

正義が勝たないデスゲーム運営が寄越した人物の一人として、食人チャンネルの話にからめ、正義が勝たないデスゲームの参加中に女の子と二人きりになる危険性を俺に説いた美形。

俺は、今の今まで、その存在を記憶に彼方にやっていた。

ラキちゃんによって記憶を呼び起こされることがなければ。

正義が勝たないデスゲームを脱出する手前まで、思い出すことはなかった。

ああ。会う順序が逆だったら良かったのに。

美形に会う前に、俺とラキちゃんが出会っていたら?

ラキちゃんは、俺を頼りにしたか?

頼りなる人というところから、一歩踏み込んで。

興味をひけたか?

男として。

ラキちゃんの中で。

俺は、刑事として守らなくてはならない一市民から格上げされなかった。

ラキちゃんは。

助けてほしいときでも、助けを呼ばなかった。

男なら、俺がいたのに。

ラキちゃんの助けを求める声を聞いたなら。

ラキちゃんの元へ駆けつけるような男がいることをラキちゃんは知っていたのに。

俺に助けてもらおうとは考えなかったラキちゃん。

助けて、と俺の名前を呼ばなかったラキちゃん。

どうにもならない状況になった今。

ラキちゃんが最後に会いたいのは。

顔を見て話をしたいのは。

俺ではない。

これが、最後なのに。

俺とラキちゃんが言葉を交わす機会はもうないのに。

最後の最後まで、俺はラキちゃんにとっての何者にもなれなかった。

最後まで、ラキちゃんに愛おしげに名前を呼ばれない俺は。

この世界のどこにでもいる名もなき者と同じだ。

ラキちゃんにとって名無しの俺。

ここにきて。

俺は、ラキちゃんの眼中にないことを改めて思い知らされることになった。

俺は、これまでのラキちゃんの俺への態度や言動を振り返る。

ラキちゃんが俺に心を寄せることがなかったのは。

ラキちゃんの希望となり、ラキちゃんの不安に寄り添い、ラキちゃんの生活を助けてきたやつが、ラキちゃんの胸の中に既に棲んでいたからか。

俺とラキちゃんが出会う前に、そいつはラキちゃんと出会っていた。

俺は。

期待していた。

希望を持っていた。

今は何も思っていなくても。

俺がラキちゃんを迎えに来るときには。

きっと。

正義が勝たないデスゲームの中で俺を待っているラキちゃんは。

俺を待ちわびているうちに。

俺のことを。

好きになっているのではないか。

そんな風な企みを隠して。

俺は、ラキちゃんに提案したんだ。

正義が勝たないデスゲームに参加してから、オウカに手をかけたことで、正義が勝たないデスゲームからの脱出が不可能だと確定したラキちゃん。

『俺は、ラキちゃんが正義が勝たないデスゲームを脱出できる環境を整える。

俺は、正義が勝たないデスゲームに参加しているラキちゃんを迎えに来る。

俺が迎えに来るまで、ラキちゃんは正義が勝たないデスゲームで生き延びてほしい。』
と。

元気だったラキちゃんは、俺の提案に同意していたが。

俺に期待していたか?

俺が、約束通り、ラキちゃんを迎えに来たとして。

正義が勝たないデスゲームを脱出したラキちゃんは。

俺といようとしたか?

そもそも。

俺とは脱出しないのではないか。

正義が勝たないデスゲームを脱出する前に、俺と別れて探し回るのではないか。

『ケンゴ、ケンゴ。』
と呼びながら、俺から遠ざかるラキちゃんの姿が目に浮かぶ。

俺から遠ざかっていくラキちゃんの姿は、俺の妄想ではない。

現に。

俺の目の前で。

俺の目の前にいながら。

ラキちゃんは、全身から声を集めてきたかのように、俺ではない名前を呼んで、泣いている。

「ケンゴ。ケンゴ。

ケンゴに会いたい。

ケンゴ、会いに来て。

私から会いにいきたかったけれど。

私は会いにいけない。

もう、会いにはいけない。

だって、私は、もう。

会いたい、会いたい、会いたい。

あなたに会いたい。

ケンゴ。会いに来て。」
とラキちゃん。
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