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おうちにかえりたい編
魔女は選択する
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フィンレーは晩餐会は欠席することにしたらしい。
マナーがというよりその場がちょっと無理と言われれば無理強いもされない。繊細と誤解されていたが、それはちょっと違う。
嫌なことを思い出して、能力が制御を失う。
「大人しくしているのよ」
くどいくらい言ったけど、無駄なんだろうな。皆が忙しいこの日など、絶好の探検の機会だ。一人で歩き回るに違いない。
護衛する側が大変だ。
使者の残り五人の護衛は顔見知りだった。手練れというより、色々そつなくこなすタイプばかりをそろえた印象が強い。
それぞれに別々の任務とかがありそうな気もする。
「我々がお守りをするのでご安心してください」
……なぜだろう。逆に不安になったのは。
なにしてくるの? お姉ちゃんにちゃんと教えて?
絶対、言わないだろうけどさ。
「姉様が、絶対しないこと。大丈夫、悪いことにはならないよ」
ご機嫌なのが怖いのよ?
後ろ髪引かれる思いで、晩餐会に出席する。表面上は穏やかにしかしぴりぴりとした晩餐会での食事は味がわからなかった。
主にアイザック兄様が暴れないかひやひやして。
ご令嬢方、その人、見た目と中身違うから。優雅な会話なんて期待しないで。うっかりスプラッタな話しかしないから。
その夜も謎の扉は開かなかった。後で聞いたらアイザック兄様が酔い潰したと自慢げに言っていた。
……なにか、邪魔することに達成感でもあるの? いや、いいんだけど。
その夜、魔女が夢にまた現れた。
「こんな感じって、これまたアバウトな」
魔女は、はじめる。利害の一致と言えなくもないけど。相変わらず人の話を聞かない。
ぼんやりと準備を任せているとフィンレーが尋ねてきた。
きちんと準備が終わるまで待ってもらった。故郷じゃあ気にしなかったのにと不満顔を宥めてお茶を勧める。
朝食を一緒にとることにした。準備をしていればアイザック兄様もやってきて、三人でこの部屋で取ることになった。
準備だけしてもらって、侍女や護衛は悪いけど外に出てもらう。兄弟水入らずでなんて言えば断りづらいだろう。
「姉様」
パンを片手にフィンレーが思い出したようにいいだした。
「なに?」
「王弟って眼鏡の背の高い方?」
「そうだけど」
彼はちぎって食べようか迷ってそのままかじることにしたらしい。もぎゅもぎゅと頬張るのは可愛いけど、不作法ではある。
フィンレーでも気をつけているが、何かに気を取られている今はその癖がそのまま出ていた。
「気を付けなよ。会うなら僕が付いていくから」
結局なにか言い出したのは一個パンを食べ終わってからだった。
「うん? わかったけど、どうして?」
「男の勘? さて、姉様、今日はお約束のプリンの話を聞く日です」
納得はしないけど、これ以上は話してくれそうにない。見ていないところで何かあったかな。
秘密が多いな。
姉様、ちょっと寂しい。
兄様もこれはわからないようで首をかしげている。
「兄様は、今日は?」
「兵舎を覗きに行って良い許可を取った」
あ、わかりました。
実力でも試しにいくんですね。
朝食後は二人で黙って手を振って見送ることにした。鬼教官にはお会いしたくない。フィンレーにはなにか言いたげだったが、私が首を横に振ると諦めたようだった。
「連れてかれるかと思った。姉様、大好き」
これだから甘いと言われるんだろうけど。
「あ、昨日、ローガンがこなかったから、今日は、くると思うよ」
「そう。ユリアは?」
「何日か前に会ったけど、今は側にいない方が、安心されるでしょう? とか言ってた何か頼んだの?」
「頼んではいたけど、そこまで頼んではいなかったかな。手元に来ないと言うことは、そういうことね」
選んだかどうかはわからない。
もう知らないんだ。
結果もなにも聞かない。
「本当にみんな勝手だよね」
ほおづえをついて、悟ったような顔でフィンレーは言う。……まあ、人の深淵を覗いたこの子については達観していてもおかしくはない。
昼ぐらいまで、動揺する料理長と給仕役にメイド長を拉致し、厨房の片隅にお茶のスペースを作り、熱く語るフィンレーを眺める仕事をしていた。
午後からは共同で何か作ると言いだし、熱い友情が芽生えていたようだ。
……同じ流れ、イーサンの時も見た気がする。
午後からはローガンがやってきて、アイザック兄様と私が相手をした。
場所は王妃の部屋ではなく、客間である。
荷物を広げる都合上、移動した。
「ご無事に到着して何よりです」
「荷物がめんどくさかった」
歯に衣着せぬ物言いだけど、それは荷物という名の人だよね? フード男の残り二人は紹介されないままだ。
たぶん、一人は、あの人だと思うんだけど。
「あー、それは、陛下に苦情を言ってください」
露骨に顔をしかめるローガン。あわせて私たちも嫌な顔になるのは間違いない。
それ、厄介ごと。
「こちらの陛下から何か用意しろと言われたので、持ってきたんですけど。いります?」
「……いらない」
「でしょうね。じゃあ、買ったことにして持ち帰ります。服も仕立ての予定だけ入れておきますね」
「こっちは?」
「ええと、お土産? でよいんですか?」
「ヴァージニアに、と色々押しつけられた。面倒だから後で馬車で送るように手配していた。思ったより早かったな」
「信者が結構いるんですよ。ねぎらいの言葉でももらえば、やる気が出るとか」
「……どこにいても湧いてくるな」
決して褒められていない。ぜんっぜん褒められていない。なに誑し込んでるんだくらいの勢いなんだけど、私が悪いの? おかしくない?
「礼を言っておいて」
無の境地と思いながらも微笑みを浮かべる。
お土産と称された色々はそのまま部屋へ運ばれた。空の大箱だけを持ち帰るらしい。これはこれで使い道があるそうだ。
「あ、そうそう。オスカーを借りますね」
「いいわよ。というか今は私に雇われていないんでしょう?」
「かまわん。護衛は足りている」
二人の了承に機嫌良くローガンは帰って行った。なんだったんだろうか。
その知らせが、訪れたのは夕闇迫るころだった。
「魔王の覚醒、ね」
慌てた様子で侍女が駆け込んで来た。それは、秘するものではないのだろうか。こうもおおっぴらに話されるようなことではない。
どこまでが本当かはわからない。騒然とはするが、どこか人ごとのようだった。北方は遠い。ここまでの脅威は感じられないのだろう。
しかし、城内に魔物が現れ、話はそれどころではなくなった。
「姉様は落ち着いているんですね」
そわそわとしているフィンレーの隣に座る。部屋中をうろうろしていたのでソファに座らせたのに。全く落ち着きがない。
侍女たちも部屋の端で震えている。
遠く悲鳴が聞こえた。
「たぶん、魔女の仕込みだから。でも、そうね。久しぶりにジニーになるのも良いかも」
「え、いや、僕は遠慮しま、ええ、お供します……」
「良い子ね?」
にこりと笑う。
寝室に戻り、着替える。ローガンが昼にやってきて良かった。
「脅されたって言うんですよ」
フィンレーには程よい長剣があってよかった。全く、我が兄弟は用意周到だな。きちんと武器もあるし、動きやすい服もある。
「……姉様、それでいくの?」
「もう隠す必要ないからね」
頭痛いと言われたけどね。個人のスタイルってもんがあるじゃない?
「短剣マニア」
「んー? 実用的じゃない?」
厳選六本くらいで済ましてるんだから。ついでに長剣も一本持つけど。
侍女たちには驚かれたけど、余裕のある顔で手を振っておいた。
部屋の外には兄様たちが連れてきた護衛だけがいた。
んー、でも三人か。残り一人は兄様に付いてったかな。
「兄様はご機嫌だった?」
「それはもう、同行を仰せつかりました」
「一人で良いわ。誰かここに残ってあげて」
さすがに部屋が大惨事になるのはね。
魔物というものを見たのは初めてだ。
大きな動物といった感じではあるが、知性のようなものもある個体もいるらしい。サルと狼ばっかり! と魔女が嘆いていた通り、建物の中はサルばかりだった。
すばしっこくていらっとしていれば、さっと散っていった。
「あー、魔物も姉様の殺気には逃げるんだ」
フィンレーが納得したように肯いていたけど、納得できない。
返り血は緑だ。ただ、空気に溶けるように煙をあげて消える。
「外に出るか」
サルは食べないんだけど、狼は食べるらしい。生きてても死んでても。
先に掃討しないといろんな意味でグロテスクだ。
「やあ、大変そうだね」
見慣れぬ銀髪の男を見つけた。
振り返った姿を見てやはりと思った。
「久しぶりだね。ウィリアム」
違和感はあったけれど、見間違うほどではない。逆にウィルの方が驚いたようだった。
「え、ジニー?」
「教えてなかったのか。私は、私よ」
わかりやすく、声音と仕草を変える。それで、合点がいったようだ。
「……あの野郎」
そうすると少年たちも黙っていたのよね。そこには気がつかないみたいだから、黙っておこう。
「ところで兄様、見なかった? あの戦闘狂、うきうきしてそうな気しかしないけど」
ウィルに無言で指を指された。
……あー、うん。楽しそうね。
殺戮という言葉が似合うわ。高笑いも。
近くの魔物は兄様が集めているらしく、ウィルは他の者たちの指示を出す方に回っているようだ。
近衛じゃないな。黄の騎士団の連中じゃない? 制服がさ。
ならば。
「そこの少年はいいのか」
「あ、僕のことはお構いなく。自衛くらいできるので」
「子供を連れてくるな」
……わりと当たり前のことを怒られた。自由にしとくとなにするかわかんないんだけども。
護衛の一人と共に下がらせる。他の騎士の中に紛れ込めば少しは安全だろう。たぶん。
「魔女にあったことは?」
「あるな。夜の魔女に酔い潰された」
「魔女を呼べるの?」
「無理だ。先代を呼ぶしかないだろう。それも行方不明となれば、誰にもこれを解決することはできない」
「今からの契約は」
「戴冠の一度しか許されない」
なるほど。
王は退くしかない。
「そう。増えないうちに片付ければいいのよね」
兄様には怒られそうだけど、お手伝いしてくるか。
長剣のほうを使う。しばらくぶりだから鈍ってないといいけど。
「なに?」
ウィルにじっと見られていたことに気がついた。
「いや、節穴だったなと」
本当にね。思わず苦笑が浮かぶ。
最初に会って、全ての私を見たはずなのに、一つもわからなかった。
「こんな場で言うべきではないだろうが、一時的でいいから、俺を選んでくれないか」
「そうね。一番マシな気はするわ」
誰かを選べと言うのならばね。
「ちょっと考えさせて」
さて、魔女は、誰を選ぶのか。
私の一存だけでは決められないからね。
被害は皆無ではなかった。
中枢を狙ったようで、外周部や下級の使用人のまわりには全く現れていなかったらしい。運悪くそちらで仕事があったものだけが被害にあっている。
対人に特化している近衛はほぼ無力化されている。黄の騎士団だけが負傷しながらも残っている。幸い町中には魔物は出ていないため、人員の入れ替えが進んでいる。
さて、入れ替え出来るほどに非番の人間がいたのだろうか。今、それに気がつくほどの余裕がある人はいなそうだ。
中々攻めやすい状況だ。
「兄様、楽しかった?」
「うーん。物足りない」
……安定の戦闘狂だ。
自分が死なないと思っているんじゃない。
死んでも構わないと思っている。
奥さんと子供たちが泣くと言えば、少しは落ち着くんだけど、最近平和になってきたから色々溜まってたみたい。
ある日、戦死といわれても仕方ないと諦めている。
本当は嫌なんだけど、こればかりはどうにもならなかった。
会議室として通された広間は騒がしいだけの場所だった。統率を取れるものが今いない。その中で王が責め立てられるのは仕方ないことだろう。
本来なら、魔女の助けを借りて魔物は排除されるはずだ。今も魔女は現れない。
「フィンレー?」
「んー?」
「怪我したの?」
「あ。大丈夫」
……怪しい。途中で一瞬いなくなったようだ。
ようだというのはちょっと兄様を止めるのに忙しくて意識していなかったからなのだけど。
「ちょっと返り討ち? 大丈夫、相手の方がひどい怪我してるから」
二人分のげんこつくらいは甘んじてうけなさい。なにしてきたの。
「僕だって思うところあるんだよ」
おまえが言うなと言うことかも知れないが、アイザック兄様のほうが説教をしてくれるようだ。こんな話聞いたら兄様が卒倒するわ。
「王はその座にふさわしくない」
そんな声が上がりはじめる。
味方が全て、敵にかわり、残ったものを取り上げようとする。
救いを求めるように王妃を求めても姿は見えない。
「始まった」
最悪の場合に魔女がいない方が困る。それに今の王は失点の方が多い。いっそ変えてしまえば良いと。
一つずつ、知らない間に失って、気がついたら一人。
首尾は上々、かしら?
王弟は、得意げに笑う。自らが王位に就けると夢想するのは少し早い。
少し離れたところに立つ、ウィリアムはフードで顔を隠したままだ。
困ったな。隣のフードの男を見る。正体が本気でわからなかった最後の一人。
「どうするんだい?」
面白がるような口調に呆れしかおぼえない。
覚えている。
あの日も戦場のど真ん中で、こんなことを言った。後にも先にもそのおっさんしかいない。
「あなたが、書いた筋書きでしょう?」
「ここまで大事になる予定ではなかったな。お嬢さんたちの怒りというのは」
「……おっさん、いい加減にしろよ。
蹴り出さないのは都合が悪いだけだからな」
日頃出さないようにしている低い声が出てくる。
兄様もどうしてこんなの拾ってきたの。ぽいしなさい。
くつくつと笑われると本気でフードを剥いでやろうかと思う。
ただ一人高みの見物をする先王。
「好きにしたまえ。役割を終えたじじいだからな」
覚えてろよ。
魔女と相談して、処分してやる。
王弟は私を見つけた。
「私の手を取ってください」
ウィリアムは躊躇ってから、フードを外す。白銀の髪がさらされた。
「俺こそが正統な血統だ」
ふと、望みを叶えて上げるべきだろうかとよぎった。
しかし、私は、彼らを選ばない。
「さて、お困りかね」
嗤って魔女は現れる。
わたしの前に、さながら私を守るように。
「遅い」
王は苛立ちをあらわにした。今、魔女が来たのならば王位は安泰のはずだ。そう思うのも間違いではない。
「そう、遅い。一番目は、私と契約していない。だから、国を守る義理はない」
魔女はさらなる地獄に突き落とすための言葉をおかしそうに紡ぐ。
「三番目も遅かったね。まず、私を探すべきだった」
王弟が愕然とした顔をしている。
「やあ、従兄殿。あなたは私を見つけた。でも、彼女を手に入れ損ねた。残念だったね」
ウィリアムは苦笑いだ。
「だから、こうしようと思う。兄様、あなたには王冠はいらない」
王冠が何かの意志を持つようにふわりと浮いて消えた。
「私こそが、正統な後継者にして、魔女だ。王冠をもつのは私以外にいないだろう? なぁ、父よ」
魔女の手の上に王冠が浮いている。
先代にも王冠を戻しはしない。
私こそが王になると魔女が宣言するはずだ。
「確かにな。娘よ」
フードの男は既に外し、先代の王であることを皆に示している。
くるりと魔女は私の方をむいた。
にやりと笑うことに嫌な予感しかしない。
「私の国を守ってくれるかい? 我が友よ」
魔女は、私の頭に王冠を乗せた。
……話が、違う。
「いやだなぁ。聖女の問題置いて帰るなんて、許すわけないじゃない」
小さく囁く声が笑っていた。そうだね。そうだった。
まだ、帰れない。
「謹んで、お受けいたしますわ」
茶番だ。
しかし、今は覆しようもない。
私たちに光と闇の花びらが降り注ぐ。
本当に、暇な方たちだな。
今は夢のように美しいだろう。
マナーがというよりその場がちょっと無理と言われれば無理強いもされない。繊細と誤解されていたが、それはちょっと違う。
嫌なことを思い出して、能力が制御を失う。
「大人しくしているのよ」
くどいくらい言ったけど、無駄なんだろうな。皆が忙しいこの日など、絶好の探検の機会だ。一人で歩き回るに違いない。
護衛する側が大変だ。
使者の残り五人の護衛は顔見知りだった。手練れというより、色々そつなくこなすタイプばかりをそろえた印象が強い。
それぞれに別々の任務とかがありそうな気もする。
「我々がお守りをするのでご安心してください」
……なぜだろう。逆に不安になったのは。
なにしてくるの? お姉ちゃんにちゃんと教えて?
絶対、言わないだろうけどさ。
「姉様が、絶対しないこと。大丈夫、悪いことにはならないよ」
ご機嫌なのが怖いのよ?
後ろ髪引かれる思いで、晩餐会に出席する。表面上は穏やかにしかしぴりぴりとした晩餐会での食事は味がわからなかった。
主にアイザック兄様が暴れないかひやひやして。
ご令嬢方、その人、見た目と中身違うから。優雅な会話なんて期待しないで。うっかりスプラッタな話しかしないから。
その夜も謎の扉は開かなかった。後で聞いたらアイザック兄様が酔い潰したと自慢げに言っていた。
……なにか、邪魔することに達成感でもあるの? いや、いいんだけど。
その夜、魔女が夢にまた現れた。
「こんな感じって、これまたアバウトな」
魔女は、はじめる。利害の一致と言えなくもないけど。相変わらず人の話を聞かない。
ぼんやりと準備を任せているとフィンレーが尋ねてきた。
きちんと準備が終わるまで待ってもらった。故郷じゃあ気にしなかったのにと不満顔を宥めてお茶を勧める。
朝食を一緒にとることにした。準備をしていればアイザック兄様もやってきて、三人でこの部屋で取ることになった。
準備だけしてもらって、侍女や護衛は悪いけど外に出てもらう。兄弟水入らずでなんて言えば断りづらいだろう。
「姉様」
パンを片手にフィンレーが思い出したようにいいだした。
「なに?」
「王弟って眼鏡の背の高い方?」
「そうだけど」
彼はちぎって食べようか迷ってそのままかじることにしたらしい。もぎゅもぎゅと頬張るのは可愛いけど、不作法ではある。
フィンレーでも気をつけているが、何かに気を取られている今はその癖がそのまま出ていた。
「気を付けなよ。会うなら僕が付いていくから」
結局なにか言い出したのは一個パンを食べ終わってからだった。
「うん? わかったけど、どうして?」
「男の勘? さて、姉様、今日はお約束のプリンの話を聞く日です」
納得はしないけど、これ以上は話してくれそうにない。見ていないところで何かあったかな。
秘密が多いな。
姉様、ちょっと寂しい。
兄様もこれはわからないようで首をかしげている。
「兄様は、今日は?」
「兵舎を覗きに行って良い許可を取った」
あ、わかりました。
実力でも試しにいくんですね。
朝食後は二人で黙って手を振って見送ることにした。鬼教官にはお会いしたくない。フィンレーにはなにか言いたげだったが、私が首を横に振ると諦めたようだった。
「連れてかれるかと思った。姉様、大好き」
これだから甘いと言われるんだろうけど。
「あ、昨日、ローガンがこなかったから、今日は、くると思うよ」
「そう。ユリアは?」
「何日か前に会ったけど、今は側にいない方が、安心されるでしょう? とか言ってた何か頼んだの?」
「頼んではいたけど、そこまで頼んではいなかったかな。手元に来ないと言うことは、そういうことね」
選んだかどうかはわからない。
もう知らないんだ。
結果もなにも聞かない。
「本当にみんな勝手だよね」
ほおづえをついて、悟ったような顔でフィンレーは言う。……まあ、人の深淵を覗いたこの子については達観していてもおかしくはない。
昼ぐらいまで、動揺する料理長と給仕役にメイド長を拉致し、厨房の片隅にお茶のスペースを作り、熱く語るフィンレーを眺める仕事をしていた。
午後からは共同で何か作ると言いだし、熱い友情が芽生えていたようだ。
……同じ流れ、イーサンの時も見た気がする。
午後からはローガンがやってきて、アイザック兄様と私が相手をした。
場所は王妃の部屋ではなく、客間である。
荷物を広げる都合上、移動した。
「ご無事に到着して何よりです」
「荷物がめんどくさかった」
歯に衣着せぬ物言いだけど、それは荷物という名の人だよね? フード男の残り二人は紹介されないままだ。
たぶん、一人は、あの人だと思うんだけど。
「あー、それは、陛下に苦情を言ってください」
露骨に顔をしかめるローガン。あわせて私たちも嫌な顔になるのは間違いない。
それ、厄介ごと。
「こちらの陛下から何か用意しろと言われたので、持ってきたんですけど。いります?」
「……いらない」
「でしょうね。じゃあ、買ったことにして持ち帰ります。服も仕立ての予定だけ入れておきますね」
「こっちは?」
「ええと、お土産? でよいんですか?」
「ヴァージニアに、と色々押しつけられた。面倒だから後で馬車で送るように手配していた。思ったより早かったな」
「信者が結構いるんですよ。ねぎらいの言葉でももらえば、やる気が出るとか」
「……どこにいても湧いてくるな」
決して褒められていない。ぜんっぜん褒められていない。なに誑し込んでるんだくらいの勢いなんだけど、私が悪いの? おかしくない?
「礼を言っておいて」
無の境地と思いながらも微笑みを浮かべる。
お土産と称された色々はそのまま部屋へ運ばれた。空の大箱だけを持ち帰るらしい。これはこれで使い道があるそうだ。
「あ、そうそう。オスカーを借りますね」
「いいわよ。というか今は私に雇われていないんでしょう?」
「かまわん。護衛は足りている」
二人の了承に機嫌良くローガンは帰って行った。なんだったんだろうか。
その知らせが、訪れたのは夕闇迫るころだった。
「魔王の覚醒、ね」
慌てた様子で侍女が駆け込んで来た。それは、秘するものではないのだろうか。こうもおおっぴらに話されるようなことではない。
どこまでが本当かはわからない。騒然とはするが、どこか人ごとのようだった。北方は遠い。ここまでの脅威は感じられないのだろう。
しかし、城内に魔物が現れ、話はそれどころではなくなった。
「姉様は落ち着いているんですね」
そわそわとしているフィンレーの隣に座る。部屋中をうろうろしていたのでソファに座らせたのに。全く落ち着きがない。
侍女たちも部屋の端で震えている。
遠く悲鳴が聞こえた。
「たぶん、魔女の仕込みだから。でも、そうね。久しぶりにジニーになるのも良いかも」
「え、いや、僕は遠慮しま、ええ、お供します……」
「良い子ね?」
にこりと笑う。
寝室に戻り、着替える。ローガンが昼にやってきて良かった。
「脅されたって言うんですよ」
フィンレーには程よい長剣があってよかった。全く、我が兄弟は用意周到だな。きちんと武器もあるし、動きやすい服もある。
「……姉様、それでいくの?」
「もう隠す必要ないからね」
頭痛いと言われたけどね。個人のスタイルってもんがあるじゃない?
「短剣マニア」
「んー? 実用的じゃない?」
厳選六本くらいで済ましてるんだから。ついでに長剣も一本持つけど。
侍女たちには驚かれたけど、余裕のある顔で手を振っておいた。
部屋の外には兄様たちが連れてきた護衛だけがいた。
んー、でも三人か。残り一人は兄様に付いてったかな。
「兄様はご機嫌だった?」
「それはもう、同行を仰せつかりました」
「一人で良いわ。誰かここに残ってあげて」
さすがに部屋が大惨事になるのはね。
魔物というものを見たのは初めてだ。
大きな動物といった感じではあるが、知性のようなものもある個体もいるらしい。サルと狼ばっかり! と魔女が嘆いていた通り、建物の中はサルばかりだった。
すばしっこくていらっとしていれば、さっと散っていった。
「あー、魔物も姉様の殺気には逃げるんだ」
フィンレーが納得したように肯いていたけど、納得できない。
返り血は緑だ。ただ、空気に溶けるように煙をあげて消える。
「外に出るか」
サルは食べないんだけど、狼は食べるらしい。生きてても死んでても。
先に掃討しないといろんな意味でグロテスクだ。
「やあ、大変そうだね」
見慣れぬ銀髪の男を見つけた。
振り返った姿を見てやはりと思った。
「久しぶりだね。ウィリアム」
違和感はあったけれど、見間違うほどではない。逆にウィルの方が驚いたようだった。
「え、ジニー?」
「教えてなかったのか。私は、私よ」
わかりやすく、声音と仕草を変える。それで、合点がいったようだ。
「……あの野郎」
そうすると少年たちも黙っていたのよね。そこには気がつかないみたいだから、黙っておこう。
「ところで兄様、見なかった? あの戦闘狂、うきうきしてそうな気しかしないけど」
ウィルに無言で指を指された。
……あー、うん。楽しそうね。
殺戮という言葉が似合うわ。高笑いも。
近くの魔物は兄様が集めているらしく、ウィルは他の者たちの指示を出す方に回っているようだ。
近衛じゃないな。黄の騎士団の連中じゃない? 制服がさ。
ならば。
「そこの少年はいいのか」
「あ、僕のことはお構いなく。自衛くらいできるので」
「子供を連れてくるな」
……わりと当たり前のことを怒られた。自由にしとくとなにするかわかんないんだけども。
護衛の一人と共に下がらせる。他の騎士の中に紛れ込めば少しは安全だろう。たぶん。
「魔女にあったことは?」
「あるな。夜の魔女に酔い潰された」
「魔女を呼べるの?」
「無理だ。先代を呼ぶしかないだろう。それも行方不明となれば、誰にもこれを解決することはできない」
「今からの契約は」
「戴冠の一度しか許されない」
なるほど。
王は退くしかない。
「そう。増えないうちに片付ければいいのよね」
兄様には怒られそうだけど、お手伝いしてくるか。
長剣のほうを使う。しばらくぶりだから鈍ってないといいけど。
「なに?」
ウィルにじっと見られていたことに気がついた。
「いや、節穴だったなと」
本当にね。思わず苦笑が浮かぶ。
最初に会って、全ての私を見たはずなのに、一つもわからなかった。
「こんな場で言うべきではないだろうが、一時的でいいから、俺を選んでくれないか」
「そうね。一番マシな気はするわ」
誰かを選べと言うのならばね。
「ちょっと考えさせて」
さて、魔女は、誰を選ぶのか。
私の一存だけでは決められないからね。
被害は皆無ではなかった。
中枢を狙ったようで、外周部や下級の使用人のまわりには全く現れていなかったらしい。運悪くそちらで仕事があったものだけが被害にあっている。
対人に特化している近衛はほぼ無力化されている。黄の騎士団だけが負傷しながらも残っている。幸い町中には魔物は出ていないため、人員の入れ替えが進んでいる。
さて、入れ替え出来るほどに非番の人間がいたのだろうか。今、それに気がつくほどの余裕がある人はいなそうだ。
中々攻めやすい状況だ。
「兄様、楽しかった?」
「うーん。物足りない」
……安定の戦闘狂だ。
自分が死なないと思っているんじゃない。
死んでも構わないと思っている。
奥さんと子供たちが泣くと言えば、少しは落ち着くんだけど、最近平和になってきたから色々溜まってたみたい。
ある日、戦死といわれても仕方ないと諦めている。
本当は嫌なんだけど、こればかりはどうにもならなかった。
会議室として通された広間は騒がしいだけの場所だった。統率を取れるものが今いない。その中で王が責め立てられるのは仕方ないことだろう。
本来なら、魔女の助けを借りて魔物は排除されるはずだ。今も魔女は現れない。
「フィンレー?」
「んー?」
「怪我したの?」
「あ。大丈夫」
……怪しい。途中で一瞬いなくなったようだ。
ようだというのはちょっと兄様を止めるのに忙しくて意識していなかったからなのだけど。
「ちょっと返り討ち? 大丈夫、相手の方がひどい怪我してるから」
二人分のげんこつくらいは甘んじてうけなさい。なにしてきたの。
「僕だって思うところあるんだよ」
おまえが言うなと言うことかも知れないが、アイザック兄様のほうが説教をしてくれるようだ。こんな話聞いたら兄様が卒倒するわ。
「王はその座にふさわしくない」
そんな声が上がりはじめる。
味方が全て、敵にかわり、残ったものを取り上げようとする。
救いを求めるように王妃を求めても姿は見えない。
「始まった」
最悪の場合に魔女がいない方が困る。それに今の王は失点の方が多い。いっそ変えてしまえば良いと。
一つずつ、知らない間に失って、気がついたら一人。
首尾は上々、かしら?
王弟は、得意げに笑う。自らが王位に就けると夢想するのは少し早い。
少し離れたところに立つ、ウィリアムはフードで顔を隠したままだ。
困ったな。隣のフードの男を見る。正体が本気でわからなかった最後の一人。
「どうするんだい?」
面白がるような口調に呆れしかおぼえない。
覚えている。
あの日も戦場のど真ん中で、こんなことを言った。後にも先にもそのおっさんしかいない。
「あなたが、書いた筋書きでしょう?」
「ここまで大事になる予定ではなかったな。お嬢さんたちの怒りというのは」
「……おっさん、いい加減にしろよ。
蹴り出さないのは都合が悪いだけだからな」
日頃出さないようにしている低い声が出てくる。
兄様もどうしてこんなの拾ってきたの。ぽいしなさい。
くつくつと笑われると本気でフードを剥いでやろうかと思う。
ただ一人高みの見物をする先王。
「好きにしたまえ。役割を終えたじじいだからな」
覚えてろよ。
魔女と相談して、処分してやる。
王弟は私を見つけた。
「私の手を取ってください」
ウィリアムは躊躇ってから、フードを外す。白銀の髪がさらされた。
「俺こそが正統な血統だ」
ふと、望みを叶えて上げるべきだろうかとよぎった。
しかし、私は、彼らを選ばない。
「さて、お困りかね」
嗤って魔女は現れる。
わたしの前に、さながら私を守るように。
「遅い」
王は苛立ちをあらわにした。今、魔女が来たのならば王位は安泰のはずだ。そう思うのも間違いではない。
「そう、遅い。一番目は、私と契約していない。だから、国を守る義理はない」
魔女はさらなる地獄に突き落とすための言葉をおかしそうに紡ぐ。
「三番目も遅かったね。まず、私を探すべきだった」
王弟が愕然とした顔をしている。
「やあ、従兄殿。あなたは私を見つけた。でも、彼女を手に入れ損ねた。残念だったね」
ウィリアムは苦笑いだ。
「だから、こうしようと思う。兄様、あなたには王冠はいらない」
王冠が何かの意志を持つようにふわりと浮いて消えた。
「私こそが、正統な後継者にして、魔女だ。王冠をもつのは私以外にいないだろう? なぁ、父よ」
魔女の手の上に王冠が浮いている。
先代にも王冠を戻しはしない。
私こそが王になると魔女が宣言するはずだ。
「確かにな。娘よ」
フードの男は既に外し、先代の王であることを皆に示している。
くるりと魔女は私の方をむいた。
にやりと笑うことに嫌な予感しかしない。
「私の国を守ってくれるかい? 我が友よ」
魔女は、私の頭に王冠を乗せた。
……話が、違う。
「いやだなぁ。聖女の問題置いて帰るなんて、許すわけないじゃない」
小さく囁く声が笑っていた。そうだね。そうだった。
まだ、帰れない。
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茶番だ。
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本当に、暇な方たちだな。
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