ひめさまはおうちにかえりたい

あかね

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聖女と魔王と魔女編

魔女は口説く1

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side 魔女

「……どこいってたわけ?」

「お仕事」

「そう」

 彼は機嫌が悪い。
 とても悪い。

「少し眠ったら?」

「必要ない」

 イライラしたような口調と態度に少し、嬉しくなる。重傷だ。
 いや、致命傷だ。

 この先にあるのは、閉じ込められるしかない。
 自由に飲み歩くことはもう二度とできなくなる。それは困る。酔っぱらいが、不満をいいながらも楽しげなのは、国が平穏なのだと思える。

 すこし腰をかがめて目線を会わせる。黄金色の目は多少つりぎみだが、形良い。

「なにをそんなに怒っている?」

「僕を置いていくのが悪い」

 ぷんすこしているのが可愛い。
 そう、かわいい。

「……とりあえず、なんで小さくなってるんだい?」

 出かける前はもうちょっと大人だった気がする。

「抑制がきかないから」

「猫で良くない?」

「人の形じゃないとダメ」

 ぎゅうと抱きついてくるのはいいけど中腰でそれをやられると後ろに倒れそうだ。

「寝ろって言うなら、一緒に寝よう?」

 ……決して、真っ赤になって逃げていった男とは思えない。
 少年の赤い頬も可愛いは、可愛い。

 弟みたいな、と言うと怒られそうだ。
 格好いいあの人は帰ってきそうにない。口説くって言ったって、子供はちょっとな。

 人は見た目に左右される生き物と思ったけど、自分も含まれるとは。新たな発見だ。

「まあ、いいけど」

 ぶかぶかのパジャマとナイトキャップが、大変愛らしかった。
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