【完結】モブなのに最強?

らんか

文字の大きさ
28 / 43

28

しおりを挟む
 ミーシャは、王都のタウンハウスに戻っていた。
    両親は後処理と、王家や官僚たちが、どのような方法でミーシャの汚名をそそぐのかを見定めるため、今しばらくは王都に滞在するそうだ。
 ミーシャも、しばらく噂が収まるまで学園は休み、両親とタウンハウスで過ごすことにした。

 そして今、ラバンティのタウンハウスの応接室にて、いつにない緊張が走っている。

 「ようこそお越しいただきました。王国の未来の太陽、シオンライト第一王子殿下にご挨拶申し上げます。この度はお力をお貸し頂き、恐悦至極に存じます」

 「とんでもありません。ミーシャ嬢の一大事に、私が駆けつけるのは当然の事です」

 父ユクラディアスと、シオンがにこやかに応対している。
 なのに、この緊張感は何だろうか。
 母のレイラは、終始笑顔で、どこかこの状況を楽しんでいるようにも見える。


 「おや? 当然とは、どういった意味ですかな? ミーシャとは、ただの学友。しかも、王家の未来の象徴である第一王子殿下が、1人の女性に肩入れしたとあれば、無粋な詮索をする者も現れましょう。
    今回の件は深く感謝致しますが、今後はお控え願いたい」

 ユクラディアスは笑顔のまま、シオンを牽制した。
    しかしシオンは動じず、笑顔のまま返す。

 「無粋な詮索など気にしない方であると思っておりますが?
    ミーシャ嬢は、私の命の恩人であると共に、とても大切な人だと思っております。力になるのは当然ですよ」

 また当然と、にこやかに繰り返して言っているシオンに苦笑するしかない。
 それを見てユクラディアスは、ますます渋い顔になる。
 
 「シオンライト殿下。うちの娘を大切に思っていただけるのはありがたいのですが、うちとしては、今回の王家のやり方には、思うところがあるのです。
    我が家は王家に忠誠を捧げておりますが、今後の王家の考え方次第では、袂を分つ覚悟もあります。
    殿下は王家の方だ。我が家と懇意にするのは、いささかまずいのではないでしょうか」

 ユクラディアスの言葉にシオンは真剣な表情になり、
 「今回の王家の対応は、失態であったと理解しているつもりです。私も陛下たちの考えには同調出来ません。
 陛下や官僚たちは、始めからミーシャ嬢は冤罪であること、魔物を扱う闇ギルドが関係している事を、薄々気づいていながらも、捜査の手を緩めていたのでしょう。
 ですので、私はこれから、陛下や陛下に連なる方々の概念を変えていこうと考えています。
    時間はかかるかと思いますが、まずは王太子となる事を視野に入れて動きたいと思います。
 その為にも、ユクラディアス殿には、ぜひお力をお貸し願いたい。必ず、ユクラディアス殿を失望させるような事は行わないと誓いましょう」
と、告げた。
 

 シオンは今まで魔力過多症を患っていた為、第一王子ではあるが、長生きは出来ないであろうと王太子に任命されることはなかった。
    だが、病気であることを差し引いても、第二王子のダミアンより優秀であること、シオンの生母である前王妃は、他国の姫であった事から、他国への配慮として、第二王子を王太子に任命せず、空席のまま様子を見ていた。

 しかし、ここにきてシオンの病が治り、健康になった為に、王太子にしてはどうかという意見と、現王妃の実家の侯爵家や、それに連なる者たちの、第二王子を押す意見とで分かれているのである。
 今回の件で第二王子の評判は下がっており、ミホーク公爵家は第二王子との婚約破棄を視野に入れているとの情報も入っている。      
    もし婚約破棄が成立すれば、ミホーク公爵家は第一王子派になってくれる可能性が高いだろう。
 頭の固い、保守的で自分の利益を一番に考える官僚たち。
    シオンはそれらの一掃を視野に入れて、国の改革を行おうと考えていた。


 「シオンライト殿下の意思は、しかと受け取りました。
    前向きに考えさせていただきます」

 静かにユクラディアスは返答し、レイラとミーシャも、それに同調した。
 
しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。

鏑木 うりこ
恋愛
 クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!  茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。  ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?    (´・ω・`)普通……。 でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!

山田 バルス
恋愛
 王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。  名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。 だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。 ――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。  同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。  そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。  そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。  レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。  そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

【完結】土壇場で交代は困ります [おまけ1話更新]

himahima
恋愛
婚約破棄⁈いじめ?いやいや、お子様の茶番劇に付き合ってる暇ないから!まだ決算終わってないし、部下腹ペコで待ってるから会社に戻して〜〜 経理一筋25年、社畜女課長が悪役令嬢と入れ替わり⁈ 主人公は口が悪いです(笑) はじめての投稿です♪本編13話完結、その後おまけ2話の予定です。

婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?

ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」  華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。  目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。  ──あら、デジャヴ? 「……なるほど」

処理中です...