【完結】モブなのに最強?

らんか

文字の大きさ
31 / 43

31

しおりを挟む
 ダミアン達は王都に帰還後、すぐに陛下にリセラの力の発現について、詳細を伝えた。
 そしてリセラは陛下の指示のもと、教会にて聖なる力の一つである治癒魔法を発動し、確認出来た事で正式に聖女と認定を受けた。 
 
 聖女の出現は300年以来ということもあり、王都はお祝いムードで沸いていた。
 聖女歓迎パレードも催され、一目聖女を見ようと各地域から王都に人々が押し寄せ、大層な賑わいだ。聖女グッズもすぐに売り出され、誰もが聖女誕生を祝った。

 しかし学園では、リセラが聖女であるということに戸惑いを見せる者、リセラの今までの行動を気にせず媚びる者など様々だ。

 そんな中、ダミアン始めオルガやミゼルは、いかにも自分達の功績であるかのように、鼻高々とした振る舞いでリセラに付き従っていた。

 学園に復帰していたミーシャは、遠目でその様子を眺め、これで自分は表に出ることがないと安心していた。

 (だけど、やり方が気に入らないのよね。
 絶対あのヒロイン、聖なる力を発現する為にわざと魔物のいるところにいって、オルガが襲われるように仕向けたはず。
 ユーリ様がヒロインを狙わないからって、自作自演するなんて、本当に逆ザマァされる小説のお花畑ヒロインそのものじゃない)
 
 前回の野外演習の時に出現したマンティコアも実は、ヒロインがゲーム知識を駆使して変態魔物収集家に近づき、闇ギルドから買い付ける際に安全なルートであると嘘の情報を伝えて、演習で使う森の中を運搬に使わせて、わざと檻から逃げ出せるように細工したのだろう。
 影を使った使い魔に調べさせ、ヒロインが変態魔物収集家に近づいていたことを知った時、一連の流れを確信した。
 しかし、いまだにその変態魔物収集家は捕まっておらず、リセラとの繋がりも判明していない。
 リセラが聖女になった今となっては、もうあの変態魔物収集家が見つかったとしても、リセラとの繋がりは信じてもらえないか、闇に葬られるかになるだろう。
 ヒロインに聖なる力が出現することを願っていたはずだったのに、なにか釈然としないミーシャであった。

 
 その頃、リセラは浮かれていた。
 今日は聖女誕生を祝って、王宮で舞踏会が開かれる。主賓であるリセラは、贅を凝らしたドレスをダミアンからプレゼントされ、ミゼルやオルガからも、宝石をふんだんに使用したアクセサリーや、ショールなど身に着ける物が贈られ、それらをつけて舞踏会に参加することにした。

 本当はシオンにパートナーになってもらいたかったが、シオンに自分では役不足だと断られてしまい、パートナーに立候補してきたダミアンと共に参加するのは不本意ではあったが、それでも今までにない厚遇にリセラは満足していた。

 (シオン様とはまだ親しくなれてないけど、これから少しずつお近づきになれば大丈夫よね。なんたって私は聖女。国を守る象徴ですもの。シオン様も私の存在の重要性に気づいて、きっと私を大切に思うはず。
 あ、もしかして、パートナーを断ったのは、本当に自分では恐れ多いとか思ったからかしら? だったら気にしないで大丈夫だと教えてあげなきゃね)

 リセラはそんな事を思いながら、ダミアンと共に舞踏会の会場となる大広間に入って行った。
 
 大広間は煌めく豪華なシャンデリアが眩しく、色とりどりのドレスを着こなした貴婦人たちや、紳士たちで溢れかえっていた。
 
 会場入りしたリセラとダミアンに一斉に視線が注がれ、リセラは一気に緊張するが、ダミアンが優しく
 「僕が支えるから大丈夫だよ」
と言ってくれたおかげで、何とか気を取り直す事が出来たようだ。
 
 最後に陛下と王妃様が入場した。
 陛下が舞踏会開幕の挨拶と共に、300年ぶりに聖女に認定されたリセラを、みんなの前で紹介する。

 「では、ダミアンとリセラ嬢に、最初のダンスを披露してもらおう」
 
 陛下の言葉を皮切りに、広場の中央までリセラとダミアンが移動して、ダンスを披露した。
しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。

鏑木 うりこ
恋愛
 クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!  茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。  ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?    (´・ω・`)普通……。 でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!

山田 バルス
恋愛
 王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。  名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。 だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。 ――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。  同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。  そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。  そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。  レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。  そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

【完結】土壇場で交代は困ります [おまけ1話更新]

himahima
恋愛
婚約破棄⁈いじめ?いやいや、お子様の茶番劇に付き合ってる暇ないから!まだ決算終わってないし、部下腹ペコで待ってるから会社に戻して〜〜 経理一筋25年、社畜女課長が悪役令嬢と入れ替わり⁈ 主人公は口が悪いです(笑) はじめての投稿です♪本編13話完結、その後おまけ2話の予定です。

婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?

ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」  華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。  目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。  ──あら、デジャヴ? 「……なるほど」

処理中です...