【完結】モブなのに最強?

らんか

文字の大きさ
36 / 43

36

しおりを挟む
 ミーシャはまた、前回同様の貴族牢にいた。
 
 遡ること、数時間前。
 学園の授業が終わり、馬車乗り場に向かうティナと別れて、ミーシャは図書室に向かっていた。魔の森の植物について、もっと色々調べてみたかったからだ。
 図書室に向かう途中に出会ったアズレンも、図書室で調べものがあると、一緒に向かう事となった。

「アズレン様は、最近変わられましたね。その、前までは、聖女様となったリセラ様や、第二王子殿下などの方達と懇意になさってたように思われたのですが、近頃は全然別行動をとってらっしゃるし」
 
 ミーシャがそう話すと、アズレンは少しバツの悪い表情をしながら、
「僕も自分で自分が不思議でならないよ。
 急に周りが見えてきたんだ。あの頃は全く周りが見えてなかった。
 でも、僕は今のぼくで満足してるよ」

 意味深な返答をしながらも、スッキリとした表情でアズレンは話していた。

 そんな時、廊下の向こう側から、ミゼルが現れた。

「あ! こんな所にいた!」

 ミゼルが叫んだあとに続き、オルガも現れた。

「おい! 貴様! 貴様が聖女を騙っている事は分かってるんだぞ! そんなにリセラが疎ましいのか!」
と、オルガも叫んだ。

「何を言っているんだ? 誰が聖女を騙ったって?」

 何のことだか全く理解が追いつけないアズレンが言うも、
「お前には関係ない。アズレン、お前はリセラや僕たちを裏切るのか? 何故その女と一緒にいる?」
 今度はダミアンが衛兵たちと現れた。

「ミーシャ・ラバンティ辺境伯令嬢。非常に残念だ。よもや、聖女を騙る人間が現れるとは。
 衛兵! ミーシャ・ラバンティを拘束せよ!」
 
 ダミアンは叫び、そして冒頭に至る。



 (あー、シオン様が言ってた事って、これかぁ。って、どう気をつければいいのよ。
また有無を言わさずに捕まえられたじゃない。
 あの人達は、どうしても私を捕まえたいのね)
 
 貴族牢の中のベッドで横になって考えていると、衛兵が牢前に来て告げた。
 
「ミーシャ・ラバンティ辺境伯令嬢。申し訳ございません。どうぞ、お出になってください。陛下が応接室でお待ちになっております」
と礼節を保ちながら牢を開けた。




 「此度はまことに申し訳ないことをした。
 ダミアンは今、自室で軟禁しておる。
あれには、ミーシャ嬢の力のことを伝えてなかったのだ。
 だから、あらぬ方向から、そなたの力の事を聞き、勝手な判断でこのような暴挙に出たのだ。
 あれの中の正義感で行なった行為ゆえ、許してはくれまいか」

 陛下に応接室でそう言われたが、ミーシャはすぐに返答が出来なかった。
 そこに、シオンが息を切らしながらやってきた。

「失礼します。こちらに陛下とミーシャ嬢がおいでになっていると聞き及んだため、勝手ながら、私も同行させていただきたく参上させていただきました」
 
「おお、シオンか。よい。そなたからもミーシャ嬢に許しをこうてくれぬか。
 今回はダミアンが独断で行なった行為。あれには後からしっかりと説明しておこう。
 シオン。お前もこちらに座れ」

 陛下はシオンを呼び寄せ、シオンからの援護射撃で、今回の件は無かったことにしたい様子だった。

「陛下、それよりも早急に今回の件で箝口令を敷き、ミーシャ嬢の名誉と力を守らないといけません。
 ミーシャ嬢には、人に知られない事を条件に結界修復の協力をしてもらっております」

「そ、そうじゃな。そうであった。さっそく今回関わった者達に、他言無用と箝口令を敷こう」


 そんな事を2人が話しているのを黙って見ていたミーシャであったが、静かに言葉を発した。


「あの、よろしいでしょうか」

 2人はハッとした様子でミーシャを見た。

「確かにわたくしは、わたくしの力を秘密にするという約束の元、王家に協力して参りました。
 しかし、同時にどうしても結界修復するには、各地へ赴き、人目に晒される事もあり、いつかは知れ渡る事も覚悟しておりました。
 しかし、それも聖女様が現れる前までの事。
 聖女様が現れた今、力の微々たるわたくしの修復魔法など、足元にも及びません。
 このまま、聖女様とは別に結界穴修復をしては、また今回の様にあらぬ疑いが持たれる事でしょう。
 これを機にわたくしは、そのお役目を辞退させて頂きたいのです」
 
 しっかりと2人を見据え、自分の思いを伝えた。

 (リセラがしっかり聖女の役目を果たしてくれればいいだけの事。シオン様には悪いけど、さすがに勘弁してもらいたいわ)


 2回も有無を言わせず捕まえられ、辟易していたミーシャは静かに怒っていた。
 ダミアンにも、やたらと目の敵にされ、ミゼルやオルガにも言いたい放題されるのは、本来勝気な性格のミーシャには我慢ならない事だ。

 (これからも、私を陥れようとするなら……。もう、我慢するのやめるわ!)


しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。

鏑木 うりこ
恋愛
 クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!  茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。  ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?    (´・ω・`)普通……。 でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!

山田 バルス
恋愛
 王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。  名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。 だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。 ――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。  同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。  そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。  そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。  レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。  そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

【完結】土壇場で交代は困ります [おまけ1話更新]

himahima
恋愛
婚約破棄⁈いじめ?いやいや、お子様の茶番劇に付き合ってる暇ないから!まだ決算終わってないし、部下腹ペコで待ってるから会社に戻して〜〜 経理一筋25年、社畜女課長が悪役令嬢と入れ替わり⁈ 主人公は口が悪いです(笑) はじめての投稿です♪本編13話完結、その後おまけ2話の予定です。

婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?

ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」  華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。  目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。  ──あら、デジャヴ? 「……なるほど」

処理中です...