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「シオン様ぁ~」
今日もリセラは元気にシオンに話しかけてくる。
「やぁ、聖女殿。僕に何か用かな?」
シオンはそっと溜息を溢しながら笑顔で応対するのも、ここ最近の日課だ。
「シオン様ぁ。そんな、リセラって呼んで下さいって、いつも言ってるのに~」
身体をクネクネさせながらシオンに触れようとするのを、素早くシオンは躱す。
「聖女様。いつもお伝えしておりますが、無闇に殿下に触れようとなさらない様、お願い致します」
ユージュが、これもいつもの通りの対応で間に割って入る。
「もう! ユージュ様のいじわる!」
プクッと頬を膨らませる仕草も見る人によっては可愛らしいが、シオンとユージュには全く通じない。
「それで、何か用があるのでは?」
再度の問いに思い出したかのようにリセラは言った。
「知ってますぅ? ミーシャさんって、また捕まるらしいですよ~。
私の真似をしたかったみたいで~自分も聖女の力が使えるって嘘をついたみたいなんですぅ。シオン様は、ミーシャさんとよくお話をしていらしたから、騙されていないか私、心配でぇ」
また身体をクネクネしながら近づいてきたが、そんな事に構ってはいられなかった。
「何故、嘘だと?」
シオンは思った以上の低い声が出て、自分で吃驚した。
その様子にちょっと驚きながらも、リセラはすぐに笑顔で自慢げに答えた。
「だってぇ、聖女の力はわたくしだけしか使えないはずですよぉ。300年間、誰1人聖女の力が発現されなかったのに~急に2人も出現するなんて、あり得ない事ですもの~」
確かに今まででは考えられなかった事だ。
しかし、シオンはミーシャが結界魔法をいとも簡単に使用しているところを見ている。
そして、その事は極秘扱いとして、国に協力してもらっていることは陛下も知っている事だ。
しかし、この事がきっかけで、ミーシャの力がみんなの知るところになり、極秘扱いの約束が反故されたとなれば、ミーシャやラバンティ辺境伯達が、この国を見限るのではないかと不安になった。
「聖女殿。今回の件は、内密にお願いしたい。これは陛下の意思であることも留め置きしてもらいたい」
それだけ伝えると、シオンはすぐにこの件が広まらないように、手を打たなければと急ぎその場を離れた。
「えええ~! 待ってくださいよ~。
今から慌てても、もう遅いんですよ~」
リセラは叫んだが、その声はシオンに届かなかった。
その頃、王宮ではダミアンが陛下に、重大な報告があると拝謁していた。
「陛下! 学園内に聖女を騙る不届者がいる事が判明しました! すでに処罰の対象としてこのダミアンが、その身柄を拘束して参りました!その後の対処も、ぜひお任せください!」
ダミアンは、これであの忌々しい女を排除出来ると、意気込んで報告した。
その言葉を聞いた陛下は、嫌な予感に表情をしかめながらダミアンに尋ねた。
「ダミアンよ。聖女を騙る者が学園内に居たとか? その者は誰なのか?」
「はい! この前も拘束した事のあるミーシャ・ラバンティです!」
陛下は予想通りの発言に溜息を零し、キツくダミアンを見据えた。
「この大馬鹿者が……!」
ダミアンに言い捨てた後、すぐに衛兵を呼んだ。
「誰か! 拘束中のミーシャ・ラバンティ辺境伯令嬢をすぐに釈放し、応接室に案内せよ! そして、代わりにこの馬鹿を自室で軟禁せよ! ダミアン、しばらく部屋で頭を冷やすがよい」
「陛下!? 何故ですか!」
訳が分からないダミアンは、必死で抵抗すが、陛下はその様子に目を背け、
「早く部屋に連れて行け」
と、そう言い捨てるのみであった。
今日もリセラは元気にシオンに話しかけてくる。
「やぁ、聖女殿。僕に何か用かな?」
シオンはそっと溜息を溢しながら笑顔で応対するのも、ここ最近の日課だ。
「シオン様ぁ。そんな、リセラって呼んで下さいって、いつも言ってるのに~」
身体をクネクネさせながらシオンに触れようとするのを、素早くシオンは躱す。
「聖女様。いつもお伝えしておりますが、無闇に殿下に触れようとなさらない様、お願い致します」
ユージュが、これもいつもの通りの対応で間に割って入る。
「もう! ユージュ様のいじわる!」
プクッと頬を膨らませる仕草も見る人によっては可愛らしいが、シオンとユージュには全く通じない。
「それで、何か用があるのでは?」
再度の問いに思い出したかのようにリセラは言った。
「知ってますぅ? ミーシャさんって、また捕まるらしいですよ~。
私の真似をしたかったみたいで~自分も聖女の力が使えるって嘘をついたみたいなんですぅ。シオン様は、ミーシャさんとよくお話をしていらしたから、騙されていないか私、心配でぇ」
また身体をクネクネしながら近づいてきたが、そんな事に構ってはいられなかった。
「何故、嘘だと?」
シオンは思った以上の低い声が出て、自分で吃驚した。
その様子にちょっと驚きながらも、リセラはすぐに笑顔で自慢げに答えた。
「だってぇ、聖女の力はわたくしだけしか使えないはずですよぉ。300年間、誰1人聖女の力が発現されなかったのに~急に2人も出現するなんて、あり得ない事ですもの~」
確かに今まででは考えられなかった事だ。
しかし、シオンはミーシャが結界魔法をいとも簡単に使用しているところを見ている。
そして、その事は極秘扱いとして、国に協力してもらっていることは陛下も知っている事だ。
しかし、この事がきっかけで、ミーシャの力がみんなの知るところになり、極秘扱いの約束が反故されたとなれば、ミーシャやラバンティ辺境伯達が、この国を見限るのではないかと不安になった。
「聖女殿。今回の件は、内密にお願いしたい。これは陛下の意思であることも留め置きしてもらいたい」
それだけ伝えると、シオンはすぐにこの件が広まらないように、手を打たなければと急ぎその場を離れた。
「えええ~! 待ってくださいよ~。
今から慌てても、もう遅いんですよ~」
リセラは叫んだが、その声はシオンに届かなかった。
その頃、王宮ではダミアンが陛下に、重大な報告があると拝謁していた。
「陛下! 学園内に聖女を騙る不届者がいる事が判明しました! すでに処罰の対象としてこのダミアンが、その身柄を拘束して参りました!その後の対処も、ぜひお任せください!」
ダミアンは、これであの忌々しい女を排除出来ると、意気込んで報告した。
その言葉を聞いた陛下は、嫌な予感に表情をしかめながらダミアンに尋ねた。
「ダミアンよ。聖女を騙る者が学園内に居たとか? その者は誰なのか?」
「はい! この前も拘束した事のあるミーシャ・ラバンティです!」
陛下は予想通りの発言に溜息を零し、キツくダミアンを見据えた。
「この大馬鹿者が……!」
ダミアンに言い捨てた後、すぐに衛兵を呼んだ。
「誰か! 拘束中のミーシャ・ラバンティ辺境伯令嬢をすぐに釈放し、応接室に案内せよ! そして、代わりにこの馬鹿を自室で軟禁せよ! ダミアン、しばらく部屋で頭を冷やすがよい」
「陛下!? 何故ですか!」
訳が分からないダミアンは、必死で抵抗すが、陛下はその様子に目を背け、
「早く部屋に連れて行け」
と、そう言い捨てるのみであった。
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