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ミーシャはまた、前回同様の貴族牢にいた。
遡ること、数時間前。
学園の授業が終わり、馬車乗り場に向かうティナと別れて、ミーシャは図書室に向かっていた。魔の森の植物について、もっと色々調べてみたかったからだ。
図書室に向かう途中に出会ったアズレンも、図書室で調べものがあると、一緒に向かう事となった。
「アズレン様は、最近変わられましたね。その、前までは、聖女様となったリセラ様や、第二王子殿下などの方達と懇意になさってたように思われたのですが、近頃は全然別行動をとってらっしゃるし」
ミーシャがそう話すと、アズレンは少しバツの悪い表情をしながら、
「僕も自分で自分が不思議でならないよ。
急に周りが見えてきたんだ。あの頃は全く周りが見えてなかった。
でも、僕は今のぼくで満足してるよ」
意味深な返答をしながらも、スッキリとした表情でアズレンは話していた。
そんな時、廊下の向こう側から、ミゼルが現れた。
「あ! こんな所にいた!」
ミゼルが叫んだあとに続き、オルガも現れた。
「おい! 貴様! 貴様が聖女を騙っている事は分かってるんだぞ! そんなにリセラが疎ましいのか!」
と、オルガも叫んだ。
「何を言っているんだ? 誰が聖女を騙ったって?」
何のことだか全く理解が追いつけないアズレンが言うも、
「お前には関係ない。アズレン、お前はリセラや僕たちを裏切るのか? 何故その女と一緒にいる?」
今度はダミアンが衛兵たちと現れた。
「ミーシャ・ラバンティ辺境伯令嬢。非常に残念だ。よもや、聖女を騙る人間が現れるとは。
衛兵! ミーシャ・ラバンティを拘束せよ!」
ダミアンは叫び、そして冒頭に至る。
(あー、シオン様が言ってた事って、これかぁ。って、どう気をつければいいのよ。
また有無を言わさずに捕まえられたじゃない。
あの人達は、どうしても私を捕まえたいのね)
貴族牢の中のベッドで横になって考えていると、衛兵が牢前に来て告げた。
「ミーシャ・ラバンティ辺境伯令嬢。申し訳ございません。どうぞ、お出になってください。陛下が応接室でお待ちになっております」
と礼節を保ちながら牢を開けた。
「此度はまことに申し訳ないことをした。
ダミアンは今、自室で軟禁しておる。
あれには、ミーシャ嬢の力のことを伝えてなかったのだ。
だから、あらぬ方向から、そなたの力の事を聞き、勝手な判断でこのような暴挙に出たのだ。
あれの中の正義感で行なった行為ゆえ、許してはくれまいか」
陛下に応接室でそう言われたが、ミーシャはすぐに返答が出来なかった。
そこに、シオンが息を切らしながらやってきた。
「失礼します。こちらに陛下とミーシャ嬢がおいでになっていると聞き及んだため、勝手ながら、私も同行させていただきたく参上させていただきました」
「おお、シオンか。よい。そなたからもミーシャ嬢に許しをこうてくれぬか。
今回はダミアンが独断で行なった行為。あれには後からしっかりと説明しておこう。
シオン。お前もこちらに座れ」
陛下はシオンを呼び寄せ、シオンからの援護射撃で、今回の件は無かったことにしたい様子だった。
「陛下、それよりも早急に今回の件で箝口令を敷き、ミーシャ嬢の名誉と力を守らないといけません。
ミーシャ嬢には、人に知られない事を条件に結界修復の協力をしてもらっております」
「そ、そうじゃな。そうであった。さっそく今回関わった者達に、他言無用と箝口令を敷こう」
そんな事を2人が話しているのを黙って見ていたミーシャであったが、静かに言葉を発した。
「あの、よろしいでしょうか」
2人はハッとした様子でミーシャを見た。
「確かにわたくしは、わたくしの力を秘密にするという約束の元、王家に協力して参りました。
しかし、同時にどうしても結界修復するには、各地へ赴き、人目に晒される事もあり、いつかは知れ渡る事も覚悟しておりました。
しかし、それも聖女様が現れる前までの事。
聖女様が現れた今、力の微々たるわたくしの修復魔法など、足元にも及びません。
このまま、聖女様とは別に結界穴修復をしては、また今回の様にあらぬ疑いが持たれる事でしょう。
これを機にわたくしは、そのお役目を辞退させて頂きたいのです」
しっかりと2人を見据え、自分の思いを伝えた。
(リセラがしっかり聖女の役目を果たしてくれればいいだけの事。シオン様には悪いけど、さすがに勘弁してもらいたいわ)
2回も有無を言わせず捕まえられ、辟易していたミーシャは静かに怒っていた。
ダミアンにも、やたらと目の敵にされ、ミゼルやオルガにも言いたい放題されるのは、本来勝気な性格のミーシャには我慢ならない事だ。
(これからも、私を陥れようとするなら……。もう、我慢するのやめるわ!)
遡ること、数時間前。
学園の授業が終わり、馬車乗り場に向かうティナと別れて、ミーシャは図書室に向かっていた。魔の森の植物について、もっと色々調べてみたかったからだ。
図書室に向かう途中に出会ったアズレンも、図書室で調べものがあると、一緒に向かう事となった。
「アズレン様は、最近変わられましたね。その、前までは、聖女様となったリセラ様や、第二王子殿下などの方達と懇意になさってたように思われたのですが、近頃は全然別行動をとってらっしゃるし」
ミーシャがそう話すと、アズレンは少しバツの悪い表情をしながら、
「僕も自分で自分が不思議でならないよ。
急に周りが見えてきたんだ。あの頃は全く周りが見えてなかった。
でも、僕は今のぼくで満足してるよ」
意味深な返答をしながらも、スッキリとした表情でアズレンは話していた。
そんな時、廊下の向こう側から、ミゼルが現れた。
「あ! こんな所にいた!」
ミゼルが叫んだあとに続き、オルガも現れた。
「おい! 貴様! 貴様が聖女を騙っている事は分かってるんだぞ! そんなにリセラが疎ましいのか!」
と、オルガも叫んだ。
「何を言っているんだ? 誰が聖女を騙ったって?」
何のことだか全く理解が追いつけないアズレンが言うも、
「お前には関係ない。アズレン、お前はリセラや僕たちを裏切るのか? 何故その女と一緒にいる?」
今度はダミアンが衛兵たちと現れた。
「ミーシャ・ラバンティ辺境伯令嬢。非常に残念だ。よもや、聖女を騙る人間が現れるとは。
衛兵! ミーシャ・ラバンティを拘束せよ!」
ダミアンは叫び、そして冒頭に至る。
(あー、シオン様が言ってた事って、これかぁ。って、どう気をつければいいのよ。
また有無を言わさずに捕まえられたじゃない。
あの人達は、どうしても私を捕まえたいのね)
貴族牢の中のベッドで横になって考えていると、衛兵が牢前に来て告げた。
「ミーシャ・ラバンティ辺境伯令嬢。申し訳ございません。どうぞ、お出になってください。陛下が応接室でお待ちになっております」
と礼節を保ちながら牢を開けた。
「此度はまことに申し訳ないことをした。
ダミアンは今、自室で軟禁しておる。
あれには、ミーシャ嬢の力のことを伝えてなかったのだ。
だから、あらぬ方向から、そなたの力の事を聞き、勝手な判断でこのような暴挙に出たのだ。
あれの中の正義感で行なった行為ゆえ、許してはくれまいか」
陛下に応接室でそう言われたが、ミーシャはすぐに返答が出来なかった。
そこに、シオンが息を切らしながらやってきた。
「失礼します。こちらに陛下とミーシャ嬢がおいでになっていると聞き及んだため、勝手ながら、私も同行させていただきたく参上させていただきました」
「おお、シオンか。よい。そなたからもミーシャ嬢に許しをこうてくれぬか。
今回はダミアンが独断で行なった行為。あれには後からしっかりと説明しておこう。
シオン。お前もこちらに座れ」
陛下はシオンを呼び寄せ、シオンからの援護射撃で、今回の件は無かったことにしたい様子だった。
「陛下、それよりも早急に今回の件で箝口令を敷き、ミーシャ嬢の名誉と力を守らないといけません。
ミーシャ嬢には、人に知られない事を条件に結界修復の協力をしてもらっております」
「そ、そうじゃな。そうであった。さっそく今回関わった者達に、他言無用と箝口令を敷こう」
そんな事を2人が話しているのを黙って見ていたミーシャであったが、静かに言葉を発した。
「あの、よろしいでしょうか」
2人はハッとした様子でミーシャを見た。
「確かにわたくしは、わたくしの力を秘密にするという約束の元、王家に協力して参りました。
しかし、同時にどうしても結界修復するには、各地へ赴き、人目に晒される事もあり、いつかは知れ渡る事も覚悟しておりました。
しかし、それも聖女様が現れる前までの事。
聖女様が現れた今、力の微々たるわたくしの修復魔法など、足元にも及びません。
このまま、聖女様とは別に結界穴修復をしては、また今回の様にあらぬ疑いが持たれる事でしょう。
これを機にわたくしは、そのお役目を辞退させて頂きたいのです」
しっかりと2人を見据え、自分の思いを伝えた。
(リセラがしっかり聖女の役目を果たしてくれればいいだけの事。シオン様には悪いけど、さすがに勘弁してもらいたいわ)
2回も有無を言わせず捕まえられ、辟易していたミーシャは静かに怒っていた。
ダミアンにも、やたらと目の敵にされ、ミゼルやオルガにも言いたい放題されるのは、本来勝気な性格のミーシャには我慢ならない事だ。
(これからも、私を陥れようとするなら……。もう、我慢するのやめるわ!)
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