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二頁 アジサイの涙
22話 不本意な邂逅
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なんでこいつがここにいるんだ。今は授業中のはずだろうが。
そう思ったのはアウルも同じだったらしく困惑を隠せていない。
お互い呆然としたまま見つめ合う。重苦しい沈黙に支配され始めた頃、先に空気を払ったのはアウルだった。
「教室にお姿がなかったのでどうしたのかと思っていましたが、まさかこのような場所にいらっしゃるとは」
「私としてはこの時間に貴方がここにおられることが不思議でなりません」
「野暮用ですよ。完全なる私事ですので、お気になさらないでください」
……つまりは詮索するな、と。まあ別にどうでもいいか。まだあまり情報は得られていないけど、立ち去ってくれる雰囲気じゃなさそうだしここは俺が消えた方が良さそうだ。
「そうでしたか。では私はお邪魔のようですのでこれにて失礼を」
「その前に貴方はここで何をしていらしたのですか?」
……逃げ、られるわけないよなこいつだし。主人公サイドはどうにか回避したい俺としてはお相手したくない。けどこいつを無視するのは後が面倒なことになる。こいつは他国からの留学生だ。たとえ身分が低くとも他国の貴族は無碍にできないので無視という選択は強制的に却下されてしまう。
本当に主人公サイド面倒くさい。
「私用です。少々気がかりなことがありまして」
「……私用、ですか。授業を抜け出すほどですからきっと特別なことなのでしょう。もっとも人のことは言えませんが」
わかっているようで何より。では俺は行かせていただきますので、話しかけんなよ!
「ところでアクナイト公子、ひとつお伺いしたいことがあるのですがよろしいですか? お時間は取らせません」
「……」
伝わってほしい心の声ほど伝わらないって世の中虚しくできているよな。俺に何を聞きたいんだか。……池に来ている時点で大体の予想は立つけど。
「実は昨日ここで奇妙なものが見つかったのです。私よりも先にこの場にいらしたのなら何か見ていませんか?」
やっぱりそれか。
アウル・オルニスはクラルテに内緒で情報収集や対処をすることがそれなりにあったがその詳細は本編では最後まで語られない。でも結構回収されていない部分もあった気がするし続編へのお預けなんだろうか? ……なんか引っかかるけどまあいいや。
とりあえず、こっちが優先だ。俺は犯人を知っているからそれを教えてもいいんだけど、でもクラルテたちに解決させた方が余計な波風立たない気がする。そもそも俺は関わらないって決めているじゃないか。……今の所何ひとつうまくいっていないけど。だが目標は見失ってはいないんだ。だから俺はか・か・わ・ら・な・い!
……ヒントだけ教えてさっさと消えよう。そうそれが無難だよし!
「……こちらへ」
俺はそれだけ言ってアウルを招き地面に視線を向ける。何も聞かずに俺の目線を先を見てアウルはかすかに眉を顰めた。まあそうなりますよね。綺麗な花なのに結構ひどいことになっているから。本当にもうよくやるよね~……!
……また殺意吹き出しそうだから思考は切るか。
「これは……聞いていたよりもだいぶひどいな」
「知っているような口ぶりですね」
「ええ、クラルテから少しだけ」
「クラルテ……ああ、あの編入生ですか。最近よく行動を共にされているようですね」
「まだこの学園に慣れていないのでサポートをする機会が多いだけですよ。エヴェイユ殿下にも頼まれていますしね」
「殿下直々にですか」
「学園初の途中編入生ともなれば気にかけるのも致し方ないかと」
「そのようですね。だいぶ気に入られているようで何よりです」
シュヴァリエとしての返しはこんなものでいいだろ。下手に関わるなとか言おうものなら俺の計画が台無しだ。変に誤解されても困るし、目をつけられるなんてもってのほか! ……時すでに遅しって気がしないでもないけど。
ひとまず情報は渡せたぞ! ちゃんとこれ見せたんだから見逃してよ! あとはそっちで推理大会でもなんでもやって真相に辿り着いてくれ。
とか思っていたらアウルがしゃがみ込んで茎の綺麗に切られたぐちゃぐちゃのアジサイを拾い上げて、そのまま振り返った。え、なんですかその顔は。
「シュヴァリエ公子はこの様子をどう思いますか?」
「私の意見など意味をなさないかと」
「ただの個人的興味ですよ」
「……嫌だと言ったらどうしますか?」
「どうもしませんよ。貴方は様々なことに無関心ですから。ですが花束を持っていたという噂も出回っているのでもしも花がお好きだというのならこの状況に一言あるかと思ったのですよ」
一言どころか千言でも足りませんが何か。というかあんたそんな好奇心旺盛な性格じゃないでしょ何言い出しているわけ? ぶっちゃけ答えたくないしどうでもいいんでさっさと失せさせてください。
「……面倒だな、アウル・オルニス」
「……それは君もだろ。シュヴァリエ・アクナイト」
「……」
「……」
黙ったまま見つめ合うことしばし、今度は俺が先に静寂を打ち消した。
「花にはそれぞれ意味がある。いわゆる花言葉と言われるそれは部位や色本数によって意味がかなり変わるものが多い」
「それは俺も知っている。この花にはこんな惨状にされるような意味があるというのか?」
「それは自分で調べるんだな。……まあ一つ言うならこれをやった犯人の恨みはかなり深いだろうと言うことだけだ」
「ほう……興味深い話を聞かせてくれたこと礼を言う」
「この程度で満足か。それはよかった」
本当に大した話はしていないのにお礼を言われてもなんか困るな。まあ満足なさったんならこれで解放してくれるだろ。
「なら私は今度こそ行かせてもらいます。貴方たちと違って私は馴れ合いは好きではないので」
そう言って俺はその場から歩き始める。もう充分付き合ってあげたでしょ。
「そうですか。随分と引き留めてしまいましたね。機会があれば次もお話を聞かせてください」
背後から寒気のするような言葉が聞こえてきた。次の機会だって? ……ふっ、絶っ対にごめんだ。
「私は二度とないことを祈ります」
振り返りもせず、俺はその池から立ち去った。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「はあ……」
昨日の今日でお気に入りとなったガゼボに着くなり、俺は机に突っ伏した。なんかどっと疲れた。なんであそこで出て来るんだあいつ。しかも授業サボってまで。エヴェイユの頼まれ事か個人の意思かは知らんけど会いたくなかった~。いや、スチルは生で見たい気もあるっちゃあるけど今はスチル関係ないところだし。なんでこう嬉しくない邂逅が続くんだろう。アウルと関わったらあの化石頭が出てきそうなんだよな、つーか出て来るだろうな確実に。はあ、いちいち相手するのも面倒くさいし、調べるのならどうにか見つからないようにしないと。あ~、花があんなことになっていなきゃ俺は絶対に手を出さなかった。そう花が関わったのが悪いんだよオレワルクナイ!
「……なんてアホな現実逃避はさておき、こっからどうするかな」
次に何が起こるかはわかる。まあ別にそこまで問題になるってわけでもないから、いやある意味問題か。俺には全く関係はないけど……うーん、でも、怖いもの見たさにちょーっとだけ、覗きに行こうかな。確かあのあたりにはこの辺じゃ見ない花があった気がするし、それの採取のついでに本当についでで見るくらいだ。
あ、でも今はまだその時じゃないから少しガゼボで時間潰すか。
「シュヴァリエ様」
「ん?」
突然声がかかり視線を向けるとベルデがいた。その手にはティーセットがある。おや? 随分とタイミングのよろしいことで。
「ベルデか。どうした」
「シュヴァリエ様のお姿が見えましたので、仕事の合間にお茶でもどうかと思ったのですよ。ご迷惑でしたでしょうか?」
「いや、私もちょうど暇を持て余していたところだ」
「左様でしたか。お役に立てたのであれば何よりでございます」
「授業を受けているはずの時間にこんなところにいるなんてと思っているか?」
「シュヴァリエ様は意味のないことはなさらないかと思いますので、私如きが一体何を申せましょう」
授業をサボっている不良学生によくもまあお茶なんか出せるよな。しかもこっちは仮にも公爵子息でベルデは所謂用務員のでしかないのに。まあでもこの人は元庭師だ。花の話題には事欠かないだろうし、単純にこの爺さんが結構好きだ。少なくともどこぞの古狸よりは何千倍もマシ。
……それに。
「口の回る老人だ」
「褒め言葉でございます。粗茶ですが、よろしければ」
「……いただこう」
数少ないシュヴァリエの味方のうちの一人、だしな。
せいぜい仲良くしましょうや。
そう思ったのはアウルも同じだったらしく困惑を隠せていない。
お互い呆然としたまま見つめ合う。重苦しい沈黙に支配され始めた頃、先に空気を払ったのはアウルだった。
「教室にお姿がなかったのでどうしたのかと思っていましたが、まさかこのような場所にいらっしゃるとは」
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「そうでしたか。では私はお邪魔のようですのでこれにて失礼を」
「その前に貴方はここで何をしていらしたのですか?」
……逃げ、られるわけないよなこいつだし。主人公サイドはどうにか回避したい俺としてはお相手したくない。けどこいつを無視するのは後が面倒なことになる。こいつは他国からの留学生だ。たとえ身分が低くとも他国の貴族は無碍にできないので無視という選択は強制的に却下されてしまう。
本当に主人公サイド面倒くさい。
「私用です。少々気がかりなことがありまして」
「……私用、ですか。授業を抜け出すほどですからきっと特別なことなのでしょう。もっとも人のことは言えませんが」
わかっているようで何より。では俺は行かせていただきますので、話しかけんなよ!
「ところでアクナイト公子、ひとつお伺いしたいことがあるのですがよろしいですか? お時間は取らせません」
「……」
伝わってほしい心の声ほど伝わらないって世の中虚しくできているよな。俺に何を聞きたいんだか。……池に来ている時点で大体の予想は立つけど。
「実は昨日ここで奇妙なものが見つかったのです。私よりも先にこの場にいらしたのなら何か見ていませんか?」
やっぱりそれか。
アウル・オルニスはクラルテに内緒で情報収集や対処をすることがそれなりにあったがその詳細は本編では最後まで語られない。でも結構回収されていない部分もあった気がするし続編へのお預けなんだろうか? ……なんか引っかかるけどまあいいや。
とりあえず、こっちが優先だ。俺は犯人を知っているからそれを教えてもいいんだけど、でもクラルテたちに解決させた方が余計な波風立たない気がする。そもそも俺は関わらないって決めているじゃないか。……今の所何ひとつうまくいっていないけど。だが目標は見失ってはいないんだ。だから俺はか・か・わ・ら・な・い!
……ヒントだけ教えてさっさと消えよう。そうそれが無難だよし!
「……こちらへ」
俺はそれだけ言ってアウルを招き地面に視線を向ける。何も聞かずに俺の目線を先を見てアウルはかすかに眉を顰めた。まあそうなりますよね。綺麗な花なのに結構ひどいことになっているから。本当にもうよくやるよね~……!
……また殺意吹き出しそうだから思考は切るか。
「これは……聞いていたよりもだいぶひどいな」
「知っているような口ぶりですね」
「ええ、クラルテから少しだけ」
「クラルテ……ああ、あの編入生ですか。最近よく行動を共にされているようですね」
「まだこの学園に慣れていないのでサポートをする機会が多いだけですよ。エヴェイユ殿下にも頼まれていますしね」
「殿下直々にですか」
「学園初の途中編入生ともなれば気にかけるのも致し方ないかと」
「そのようですね。だいぶ気に入られているようで何よりです」
シュヴァリエとしての返しはこんなものでいいだろ。下手に関わるなとか言おうものなら俺の計画が台無しだ。変に誤解されても困るし、目をつけられるなんてもってのほか! ……時すでに遅しって気がしないでもないけど。
ひとまず情報は渡せたぞ! ちゃんとこれ見せたんだから見逃してよ! あとはそっちで推理大会でもなんでもやって真相に辿り着いてくれ。
とか思っていたらアウルがしゃがみ込んで茎の綺麗に切られたぐちゃぐちゃのアジサイを拾い上げて、そのまま振り返った。え、なんですかその顔は。
「シュヴァリエ公子はこの様子をどう思いますか?」
「私の意見など意味をなさないかと」
「ただの個人的興味ですよ」
「……嫌だと言ったらどうしますか?」
「どうもしませんよ。貴方は様々なことに無関心ですから。ですが花束を持っていたという噂も出回っているのでもしも花がお好きだというのならこの状況に一言あるかと思ったのですよ」
一言どころか千言でも足りませんが何か。というかあんたそんな好奇心旺盛な性格じゃないでしょ何言い出しているわけ? ぶっちゃけ答えたくないしどうでもいいんでさっさと失せさせてください。
「……面倒だな、アウル・オルニス」
「……それは君もだろ。シュヴァリエ・アクナイト」
「……」
「……」
黙ったまま見つめ合うことしばし、今度は俺が先に静寂を打ち消した。
「花にはそれぞれ意味がある。いわゆる花言葉と言われるそれは部位や色本数によって意味がかなり変わるものが多い」
「それは俺も知っている。この花にはこんな惨状にされるような意味があるというのか?」
「それは自分で調べるんだな。……まあ一つ言うならこれをやった犯人の恨みはかなり深いだろうと言うことだけだ」
「ほう……興味深い話を聞かせてくれたこと礼を言う」
「この程度で満足か。それはよかった」
本当に大した話はしていないのにお礼を言われてもなんか困るな。まあ満足なさったんならこれで解放してくれるだろ。
「なら私は今度こそ行かせてもらいます。貴方たちと違って私は馴れ合いは好きではないので」
そう言って俺はその場から歩き始める。もう充分付き合ってあげたでしょ。
「そうですか。随分と引き留めてしまいましたね。機会があれば次もお話を聞かせてください」
背後から寒気のするような言葉が聞こえてきた。次の機会だって? ……ふっ、絶っ対にごめんだ。
「私は二度とないことを祈ります」
振り返りもせず、俺はその池から立ち去った。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「はあ……」
昨日の今日でお気に入りとなったガゼボに着くなり、俺は机に突っ伏した。なんかどっと疲れた。なんであそこで出て来るんだあいつ。しかも授業サボってまで。エヴェイユの頼まれ事か個人の意思かは知らんけど会いたくなかった~。いや、スチルは生で見たい気もあるっちゃあるけど今はスチル関係ないところだし。なんでこう嬉しくない邂逅が続くんだろう。アウルと関わったらあの化石頭が出てきそうなんだよな、つーか出て来るだろうな確実に。はあ、いちいち相手するのも面倒くさいし、調べるのならどうにか見つからないようにしないと。あ~、花があんなことになっていなきゃ俺は絶対に手を出さなかった。そう花が関わったのが悪いんだよオレワルクナイ!
「……なんてアホな現実逃避はさておき、こっからどうするかな」
次に何が起こるかはわかる。まあ別にそこまで問題になるってわけでもないから、いやある意味問題か。俺には全く関係はないけど……うーん、でも、怖いもの見たさにちょーっとだけ、覗きに行こうかな。確かあのあたりにはこの辺じゃ見ない花があった気がするし、それの採取のついでに本当についでで見るくらいだ。
あ、でも今はまだその時じゃないから少しガゼボで時間潰すか。
「シュヴァリエ様」
「ん?」
突然声がかかり視線を向けるとベルデがいた。その手にはティーセットがある。おや? 随分とタイミングのよろしいことで。
「ベルデか。どうした」
「シュヴァリエ様のお姿が見えましたので、仕事の合間にお茶でもどうかと思ったのですよ。ご迷惑でしたでしょうか?」
「いや、私もちょうど暇を持て余していたところだ」
「左様でしたか。お役に立てたのであれば何よりでございます」
「授業を受けているはずの時間にこんなところにいるなんてと思っているか?」
「シュヴァリエ様は意味のないことはなさらないかと思いますので、私如きが一体何を申せましょう」
授業をサボっている不良学生によくもまあお茶なんか出せるよな。しかもこっちは仮にも公爵子息でベルデは所謂用務員のでしかないのに。まあでもこの人は元庭師だ。花の話題には事欠かないだろうし、単純にこの爺さんが結構好きだ。少なくともどこぞの古狸よりは何千倍もマシ。
……それに。
「口の回る老人だ」
「褒め言葉でございます。粗茶ですが、よろしければ」
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せいぜい仲良くしましょうや。
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―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
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(名義を統合しこちらに移動することになりました)
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