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六頁 サンビタリアに染まって
84話 やっぱり一筋縄ではいかなかった
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目の前にある物体に俺の気分は最底辺になっていた。
買い物へ出かけてから数日後、俺宛てに届いた小包。贈ってきた相手の紋章はリコリス——あのクソ女・アラグリアからの物だ。まあそれだけなら百歩……いや一万歩譲ってまだいい。問題なのは中身である。そこに入っていたのはリコリス一つとサンビタリアの花が三つあしらわれたハンカチだった。それが意味するところはひとつ。
「あのクソ女どもが手ぇ組みやがったか」
サリクスもいない部屋の中、俺はひとり悪態をつく。わざわざこんなものを贈ってきたということはアラグリアにも俺がセレーナのエスコートをすることが伝わっているんだろうな。あの日、俺が参加したパーティーであの子娘どもが俺にエスコートしてもらえる云々と言っていた。俺がセレーナを預かることを提案していた時、夫妻は言った。このことは三人には話していないと。それなのに娘たちは知っていた。ということは両親の話を盗み聞いていたか、第三者によって情報がもたらされたかのどちらかだろう。もし後者だとすれば動機は? メリットは? ……なんで第四王子の祝宴に出るだけでこんなに面倒な問題を抱えなきゃならんのだ。セレーナのことは妹たちがどうにかするから多分大丈夫だろう。今の時期に余計な情報は不要だから。だが絶対にあの三姉妹はこのままで終わるわけがないからカルに依頼してまで周辺を探っていたんだけど、まさかこう来るとはね。しかもこのタイミングで、だ。絶対に生誕祭を終えるまでになにかをやらかしてくれそうだ。……だけど。
「ほんと……あの男は敵に回したくねえなぁ……」
カルからもらった資料を手に取る。そこには俺の推測を裏付ける証拠がばっちり記載されていた。さすがは情報ギルドというわけか。アラグリアと組むということはおそらく生地のほうに手を回してくるだろう。本当に馬鹿な連中だな。あのバカ女は身分を理解しているのか? いや多分理解していたら俺に喧嘩を売るなんて真似はしない。あの女の中で俺は従兄妹なんだろうからな。だからたやすく喧嘩を売れるのだ。ったくクソ婆まで出てきたりしねえよな?
「どっちも大人しくしているとは思っていなかったし、どうにかいっぺんに片づけたいところだけど……二兎を追う者は一兎をも得ず。まずはサンビタリアの馬鹿三姉妹を始末しよう」
もっともいい子で案山子になっていてくれれば俺が手を出す必要もないんだけど、十中八九無理だろうな。あ~あ、サンビタリアの長男が心底可哀想。シエル兄さんとも仲がいいらしいからあんまり派手にはやりたくないなぁ。まあでも王族の祝宴で滅多なことはできないはずだ。そんなことをすれば一発で王家の不興を買う。サンビタリアは侯爵家で王族との婚姻も可能な家。あの三人の性格的に王族との婚姻は狙っているはず。王子たちは揃いも揃って独身という非常に奇妙な現象が起こっているからチャンスはかなりあると思う。そんな中悪い意味で彼らの目に留まる行為に及ぶか? と考えなくもないけど馬鹿はなにするかわからないからな。今のうちにルアルとも対策を練っておこう。
なんて考えていたところでノックの音が響き、サリクスが顔を出す。
「いったいどうした?」
「シュヴァリエ様~、オルニス公子様がお見えです」
買い物に出かけた日にアウルから来訪の知らせが届いていた。今回はアウルに然程関係ないはずなのになんでか知らないけど協力してくれるらしい。本来なら巻き込むべきではないし情報を話す事も許されないんだけど。
「本当に頻繁に来るな君は」
「別に問題ないだろう。第四王子殿下の祝宴には俺も参加するんだ。それなのにつまらないことで水を差されるのはごめん被る」
「……本当に物好きな人間だな。まあいい、それよりも、だ。ルアルとともに当日の話し合いをしたい」
「ルアル嬢はセレーナ嬢についているんだろう?」
「ああ。あれに任せておけばよほどのことがない限り大丈夫だろうからな。何かあってもダズルがいる。そうそう問題は起きないさ」
「しかも彼女にレッスンをしているのはあのエステティカ夫人だろう? 随分と気合が入っているじゃないか」
「エステティカを知っているのか?」
「もちろんだ。彼女は社交界でも有名人の一人だぞ? 我が国の貴族も何人も求婚したのにすべて袖にされてカランコエ伯爵と恋愛結婚。まったく……いったいどれだけの人が涙を流したことか」
「ああ……」
さすが社交界の華。公爵もよくそんな人物を侍女頭として連れてきたものだ。確かに信用のおける人物だけどさ、まじでサリクスから経歴を聞いてどれだけ衝撃を受けたことか。……最初から彼女を連れてくればよかったのに、と思うのは俺だけ?
「まあ彼女のことは置いておいて、シュヴァリエはどう動くつもりだ?」
「別にファーストダンスさえ終えてしまえばこっちのものだ。黙らせるのはそのあとでもいいだろう。むしろそのほうが始末がしやすい」
「摘み取る気か?」
「言っておくがそちらに関して君は一切の関与を認めない」
「ああ、それは理解している。俺は他国の人間だからな。だが俺が勝手に動く分には問題ないはずだ」
「……それもほどほどにしてほしいものだがな」
「善処しよう」
うん、期待しないでおこう。善処という言葉は信じちゃダメ。
だけどアウルにだって立場があるからこの国に不利になるような真似はしないだろう。なんとなくどんな風に手伝うつもりなのか想像つくし。
けどなぁ……アラグリアってかなり性格アレだし、悪知恵だけは働くからひとまずゲームで出てきた嫌がらせは全部警戒するとしてアラグリアが仕掛けてきそうな内容も一通り纏めて情報共有しておくか。一応買い物へ行った日に書いた嫌がらせとそれの対策をまとめたノートは共有しているけど、まあ対策方法は多いに越したことはないはずだ。
はあ……なんでアラグリアが出てきたんだ? もうね六章の内容がここまで拗れまくっているのはこの際おいておきます。だってゲームで三姉妹に手を貸すのはシュヴァリエだったから。王族が主催の祝宴で不祥事が起きればデビュタントである令嬢だけでなく王族の顔に泥を塗ることもできるから。
だが今回シュヴァリエはセレーナの協力者になった。つまり前回や前々回と違って初めから内容が大きく変わるだろうことは予想がつくのだ。
……ほんと勘弁してほしいよねぇ。なんでこう次から次へと平穏が壊れていくのか。ちょっと世界に呪われすぎだと思うんですけど、なあシュヴァリエ・アクナイトさんよ?
「はあ……」
「どうした?」
「なんでもない。あとで借りていたノートを君のところへ送るから確認してくれ」
「わかった。確認したら一筆書いて送る」
あ~あ、この世界は夏休みが休みじゃないっていうのはつらいよなぁ。いやあっちも夏期講習とかあったけどさ。少なくとも部活がない人は結構楽だったと思うよ? でもこっちは部活とかなくても貴族であれば漏れなく社交活動というものが発生するのだ。社交界であっちこっち行っている人たちを見ていると学校の宿題をやっている方が遥かにマシだと思えるから不思議。というわけで今も宿題を後回しにしている少年少女たちよ。君たちは後回しにできるほど時間に恵まれているってことを伝えておくぞ~。宿題後回し癖が染み付いている俺は宿題をさっさと終わらせるという習慣を死んでから初めて身につけましたからね! 世の中の面倒くさがりな学生たちよ! 君たちは今のうちに身につけておくことをオススメするぞ。いや、マジで。
……まあいいや。それよりも攻略対象の一人である第四王子の元へ乗り込むまであと僅か。それまでにどれだけ動けるかわからないが、絶対に失敗なんかさせてなるものか。待ってろよ生誕祭! 待ってろよバカ娘共! 俺の今後のためにも絶対絶対絶対に、成功させてやるぜ!!!
買い物へ出かけてから数日後、俺宛てに届いた小包。贈ってきた相手の紋章はリコリス——あのクソ女・アラグリアからの物だ。まあそれだけなら百歩……いや一万歩譲ってまだいい。問題なのは中身である。そこに入っていたのはリコリス一つとサンビタリアの花が三つあしらわれたハンカチだった。それが意味するところはひとつ。
「あのクソ女どもが手ぇ組みやがったか」
サリクスもいない部屋の中、俺はひとり悪態をつく。わざわざこんなものを贈ってきたということはアラグリアにも俺がセレーナのエスコートをすることが伝わっているんだろうな。あの日、俺が参加したパーティーであの子娘どもが俺にエスコートしてもらえる云々と言っていた。俺がセレーナを預かることを提案していた時、夫妻は言った。このことは三人には話していないと。それなのに娘たちは知っていた。ということは両親の話を盗み聞いていたか、第三者によって情報がもたらされたかのどちらかだろう。もし後者だとすれば動機は? メリットは? ……なんで第四王子の祝宴に出るだけでこんなに面倒な問題を抱えなきゃならんのだ。セレーナのことは妹たちがどうにかするから多分大丈夫だろう。今の時期に余計な情報は不要だから。だが絶対にあの三姉妹はこのままで終わるわけがないからカルに依頼してまで周辺を探っていたんだけど、まさかこう来るとはね。しかもこのタイミングで、だ。絶対に生誕祭を終えるまでになにかをやらかしてくれそうだ。……だけど。
「ほんと……あの男は敵に回したくねえなぁ……」
カルからもらった資料を手に取る。そこには俺の推測を裏付ける証拠がばっちり記載されていた。さすがは情報ギルドというわけか。アラグリアと組むということはおそらく生地のほうに手を回してくるだろう。本当に馬鹿な連中だな。あのバカ女は身分を理解しているのか? いや多分理解していたら俺に喧嘩を売るなんて真似はしない。あの女の中で俺は従兄妹なんだろうからな。だからたやすく喧嘩を売れるのだ。ったくクソ婆まで出てきたりしねえよな?
「どっちも大人しくしているとは思っていなかったし、どうにかいっぺんに片づけたいところだけど……二兎を追う者は一兎をも得ず。まずはサンビタリアの馬鹿三姉妹を始末しよう」
もっともいい子で案山子になっていてくれれば俺が手を出す必要もないんだけど、十中八九無理だろうな。あ~あ、サンビタリアの長男が心底可哀想。シエル兄さんとも仲がいいらしいからあんまり派手にはやりたくないなぁ。まあでも王族の祝宴で滅多なことはできないはずだ。そんなことをすれば一発で王家の不興を買う。サンビタリアは侯爵家で王族との婚姻も可能な家。あの三人の性格的に王族との婚姻は狙っているはず。王子たちは揃いも揃って独身という非常に奇妙な現象が起こっているからチャンスはかなりあると思う。そんな中悪い意味で彼らの目に留まる行為に及ぶか? と考えなくもないけど馬鹿はなにするかわからないからな。今のうちにルアルとも対策を練っておこう。
なんて考えていたところでノックの音が響き、サリクスが顔を出す。
「いったいどうした?」
「シュヴァリエ様~、オルニス公子様がお見えです」
買い物に出かけた日にアウルから来訪の知らせが届いていた。今回はアウルに然程関係ないはずなのになんでか知らないけど協力してくれるらしい。本来なら巻き込むべきではないし情報を話す事も許されないんだけど。
「本当に頻繁に来るな君は」
「別に問題ないだろう。第四王子殿下の祝宴には俺も参加するんだ。それなのにつまらないことで水を差されるのはごめん被る」
「……本当に物好きな人間だな。まあいい、それよりも、だ。ルアルとともに当日の話し合いをしたい」
「ルアル嬢はセレーナ嬢についているんだろう?」
「ああ。あれに任せておけばよほどのことがない限り大丈夫だろうからな。何かあってもダズルがいる。そうそう問題は起きないさ」
「しかも彼女にレッスンをしているのはあのエステティカ夫人だろう? 随分と気合が入っているじゃないか」
「エステティカを知っているのか?」
「もちろんだ。彼女は社交界でも有名人の一人だぞ? 我が国の貴族も何人も求婚したのにすべて袖にされてカランコエ伯爵と恋愛結婚。まったく……いったいどれだけの人が涙を流したことか」
「ああ……」
さすが社交界の華。公爵もよくそんな人物を侍女頭として連れてきたものだ。確かに信用のおける人物だけどさ、まじでサリクスから経歴を聞いてどれだけ衝撃を受けたことか。……最初から彼女を連れてくればよかったのに、と思うのは俺だけ?
「まあ彼女のことは置いておいて、シュヴァリエはどう動くつもりだ?」
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はあ……なんでアラグリアが出てきたんだ? もうね六章の内容がここまで拗れまくっているのはこの際おいておきます。だってゲームで三姉妹に手を貸すのはシュヴァリエだったから。王族が主催の祝宴で不祥事が起きればデビュタントである令嬢だけでなく王族の顔に泥を塗ることもできるから。
だが今回シュヴァリエはセレーナの協力者になった。つまり前回や前々回と違って初めから内容が大きく変わるだろうことは予想がつくのだ。
……ほんと勘弁してほしいよねぇ。なんでこう次から次へと平穏が壊れていくのか。ちょっと世界に呪われすぎだと思うんですけど、なあシュヴァリエ・アクナイトさんよ?
「はあ……」
「どうした?」
「なんでもない。あとで借りていたノートを君のところへ送るから確認してくれ」
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あ~あ、この世界は夏休みが休みじゃないっていうのはつらいよなぁ。いやあっちも夏期講習とかあったけどさ。少なくとも部活がない人は結構楽だったと思うよ? でもこっちは部活とかなくても貴族であれば漏れなく社交活動というものが発生するのだ。社交界であっちこっち行っている人たちを見ていると学校の宿題をやっている方が遥かにマシだと思えるから不思議。というわけで今も宿題を後回しにしている少年少女たちよ。君たちは後回しにできるほど時間に恵まれているってことを伝えておくぞ~。宿題後回し癖が染み付いている俺は宿題をさっさと終わらせるという習慣を死んでから初めて身につけましたからね! 世の中の面倒くさがりな学生たちよ! 君たちは今のうちに身につけておくことをオススメするぞ。いや、マジで。
……まあいいや。それよりも攻略対象の一人である第四王子の元へ乗り込むまであと僅か。それまでにどれだけ動けるかわからないが、絶対に失敗なんかさせてなるものか。待ってろよ生誕祭! 待ってろよバカ娘共! 俺の今後のためにも絶対絶対絶対に、成功させてやるぜ!!!
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