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終章 エピローグ ― 二十五年後の丘
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春の陽射しが穏やかに白薔薇の丘を照らしていました。
風は相変わらずやさしく、香りは変わらず甘く、鳥たちは歌いながら青空を渡っていきます。
丘の中央には一本の古いベンチがあり、そこに二人の男女が肩を並べて座っていました。
銀糸のような髪に穏やかな微笑みを浮かべる男性――アレン。
そして、白いヴェールをまとい、薔薇の花籠を膝に抱える女性――リリアナ。
ふたりの前には、満開の白薔薇が25本、まぶしく輝いて咲いていました。
その花々の間では、ひとりの小さな少年が駆け回っています。
「お母さま、ねぇ、“25”ってどういう意味なの?」
小さな声が無邪気に問いかけます。
リリアナは笑みを浮かべ、息子の金色の髪をやさしく撫でました。
「25というのはね、永遠に離れない二人の数のことなのです」
「ふたり……?」
「ええ。お父さまとわたしが、ずっと昔に交わした約束の数字なのですよ」
アレンが笑いながら、少し照れたように少年の肩に手を置きました。
「お母さまはな、25歳でお父さまと出会い直したんだ。そして――25本の薔薇に誓って結ばれた」
「ふーん、なんだかすごく大事な数なんだね!」
「ええ、とてもね」
リリアナは頷き、アレンのほうを見上げました。
25年という年月が流れても、彼の灰色の瞳の優しさは少しも変わっていませんでした。
むしろ、そこに刻まれた皺のひとつひとつが、共に歩んできた日々の証でした。
「ねぇ、アレン。思い出しますか? あの日の丘の風を」
「もちろんです。君が白薔薇を抱えて笑っていた姿を、今でも鮮明に覚えています」
「ふふっ……あの時は子供でしたのに、ずいぶん立派な約束をしましたよね」
「でも、その約束があったからこそ、今の俺たちがいるんですよ」
アレンの言葉に、リリアナは目を細めました。
しばらくの沈黙のあと、彼女は膝の花籠から一輪の白薔薇を取り、そっと彼の胸元に挿しました。
「また25年たったら、もう一度ここに来ましょうね」
「その時も、一緒にいてくれますか?」
「ええ。わたしが先に行っても、この丘で待っていますわ」
「約束ですよ、リリアナ」
ふたりは微笑みを交わし、静かに手を重ねました。
風が薔薇の花びらを舞い上げ、空一面に白い光を描きます。
小さな少年が無邪気にそれを追いかけ、笑い声が風に溶けていきました。
「25年前、君を迎えに来てよかった」
アレンがそっとつぶやきました。
リリアナはその腕の中で微笑み、頬を寄せました。
「ええ。あの日、あなたが来てくれたから、今のわたしたちがあるのです」
「――ありがとう、リリアナ」
「こちらこそ、アレン」
丘の風が二人の間を通り抜け、白薔薇の花弁がふわりと宙を舞いました。
その数はまるで25枚。ひとひらごとに光を受けてきらめき、空に溶けていきます。
「お父さま! お母さま! 見て、花びらが空まで昇っていくよ!」
少年の声が響き、ふたりは顔を見合わせて笑いました。
「それはきっと、薔薇たちが喜んでいるのですわ」
「25年分の、感謝の風ですよ」
アレンはそっと妻の肩を抱き、穏やかに丘の風を見送ります。
その姿は25年前と変わらないほどに静かで、あたたかで、そして幸せそうでした。
――完
風は相変わらずやさしく、香りは変わらず甘く、鳥たちは歌いながら青空を渡っていきます。
丘の中央には一本の古いベンチがあり、そこに二人の男女が肩を並べて座っていました。
銀糸のような髪に穏やかな微笑みを浮かべる男性――アレン。
そして、白いヴェールをまとい、薔薇の花籠を膝に抱える女性――リリアナ。
ふたりの前には、満開の白薔薇が25本、まぶしく輝いて咲いていました。
その花々の間では、ひとりの小さな少年が駆け回っています。
「お母さま、ねぇ、“25”ってどういう意味なの?」
小さな声が無邪気に問いかけます。
リリアナは笑みを浮かべ、息子の金色の髪をやさしく撫でました。
「25というのはね、永遠に離れない二人の数のことなのです」
「ふたり……?」
「ええ。お父さまとわたしが、ずっと昔に交わした約束の数字なのですよ」
アレンが笑いながら、少し照れたように少年の肩に手を置きました。
「お母さまはな、25歳でお父さまと出会い直したんだ。そして――25本の薔薇に誓って結ばれた」
「ふーん、なんだかすごく大事な数なんだね!」
「ええ、とてもね」
リリアナは頷き、アレンのほうを見上げました。
25年という年月が流れても、彼の灰色の瞳の優しさは少しも変わっていませんでした。
むしろ、そこに刻まれた皺のひとつひとつが、共に歩んできた日々の証でした。
「ねぇ、アレン。思い出しますか? あの日の丘の風を」
「もちろんです。君が白薔薇を抱えて笑っていた姿を、今でも鮮明に覚えています」
「ふふっ……あの時は子供でしたのに、ずいぶん立派な約束をしましたよね」
「でも、その約束があったからこそ、今の俺たちがいるんですよ」
アレンの言葉に、リリアナは目を細めました。
しばらくの沈黙のあと、彼女は膝の花籠から一輪の白薔薇を取り、そっと彼の胸元に挿しました。
「また25年たったら、もう一度ここに来ましょうね」
「その時も、一緒にいてくれますか?」
「ええ。わたしが先に行っても、この丘で待っていますわ」
「約束ですよ、リリアナ」
ふたりは微笑みを交わし、静かに手を重ねました。
風が薔薇の花びらを舞い上げ、空一面に白い光を描きます。
小さな少年が無邪気にそれを追いかけ、笑い声が風に溶けていきました。
「25年前、君を迎えに来てよかった」
アレンがそっとつぶやきました。
リリアナはその腕の中で微笑み、頬を寄せました。
「ええ。あの日、あなたが来てくれたから、今のわたしたちがあるのです」
「――ありがとう、リリアナ」
「こちらこそ、アレン」
丘の風が二人の間を通り抜け、白薔薇の花弁がふわりと宙を舞いました。
その数はまるで25枚。ひとひらごとに光を受けてきらめき、空に溶けていきます。
「お父さま! お母さま! 見て、花びらが空まで昇っていくよ!」
少年の声が響き、ふたりは顔を見合わせて笑いました。
「それはきっと、薔薇たちが喜んでいるのですわ」
「25年分の、感謝の風ですよ」
アレンはそっと妻の肩を抱き、穏やかに丘の風を見送ります。
その姿は25年前と変わらないほどに静かで、あたたかで、そして幸せそうでした。
――完
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