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第十三章 25本の薔薇 ― 騎士と花嫁
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そして季節はめぐり、春が丘を彩る頃となりました。
朝霧の中、白薔薇の丘を吹き抜ける風が、花びらをやさしく舞い上げていました。
それはあの日、幼い約束を交わした日の光景とまるで同じで、
まるで時が再びその瞬間へとめぐってきたかのようでした。
「アレン、見てください。25本、ちゃんと咲いていますわ!」
わたしは裾をつまんで駆け出し、満開の白薔薇の列の前で足を止めました。
花たちはまるで微笑むように陽射しを反射し、朝露をきらめかせています。
頬を撫でる風もあの日と同じ――けれど、隣にいるアレンさまの姿は、もう幼い少年ではありませんでした。
「見事です。あのときの約束が、本当にこうして形になるとは」
アレンさまは微笑みながら手を差し出してくださり、
その手に導かれるまま、わたしは彼の隣に並びました。
「立派な騎士になられましたね……」
「君が見守ってくれたおかげです。
あの日の子供の約束を、笑わずに覚えていてくれたから、俺は歩いてこられた」
わたしは頷き、花々を見渡しました。
25本の白薔薇。一本一本が、ふたりの年月を象徴しているように美しく立っています。
風に揺れるたびに、あたたかい思い出が心に広がっていきました。
「リリアナ」
名前を呼ばれ、わたしは振り返りました。
アレンさまの手には、ひとつの小箱がありました。
その中で光を放っているのは、銀の指輪――かつて彼に贈った、あの小さな輪の対となるものでした。
「ずっと、これを渡す日のことを考えていました。
悲しいことも、辛いこともあったけれど、ようやく今日、言えます」
アレンさまは膝をつき、わたしに向けて穏やかに微笑まれました。
その瞳には、七年分の想いと、これからの未来への誓いが宿っているように見えました。
「リリアナ。君こそ、俺の25番目の薔薇です。
この世界で誰よりも大切で、誰よりも美しいひと。どうか俺の花嫁になってください」
風が薔薇を揺らし、花びらがふわりと舞い上がりました。
まるでその言葉に祝福するかのように、丘いっぱいに白い光がこぼれます。
胸の奥にこみ上げる喜びと涙をこらえながら、わたしは微笑みました。
「ええ、もちろんよ」
アレンさまの瞳がわずかに潤みました。
そして、わたしの指に銀の指輪をそっと通してくださいました。
あたたかい金属の感触が、永遠の約束のように指先を包みます。
「これからは、共に道を歩きましょう。
悲しいことも、嬉しいことも……全部、あなたと一緒に」
「頼もしい言葉です。必ず、君を笑顔にする毎日を約束します」
アレンさまが立ち上がり、わたしの両手を包みました。
鐘の音が遠くで鳴り響き、白い雲の間から陽が差してきます。
空に広がるその光が、ふたりを包み込んでいました。
「ねぇ、アレン」
「はい?」
「これが“終わり”ではなく、“はじまり”なんですよね?」
「ええ。ここからが、ようやく僕たちの物語の本当の始まりです」
そう言って、アレンさまがそっとわたしを抱き寄せました。
わたしはその胸に顔を埋め、柔らかな風の音を聞きました。
遠くで鳥がさえずり、25本の薔薇が風にゆれながら微笑むように揺れています。
「リリアナ」
「はい、アレン」
「――愛しています」
「わたしも、あなたを愛してます!」
まぶしい陽射しの中で、わたしたちは唇を重ねました。
鐘の音が祝福のように響き、花びらが金の光を受けて舞い散ります。
朝霧の中、白薔薇の丘を吹き抜ける風が、花びらをやさしく舞い上げていました。
それはあの日、幼い約束を交わした日の光景とまるで同じで、
まるで時が再びその瞬間へとめぐってきたかのようでした。
「アレン、見てください。25本、ちゃんと咲いていますわ!」
わたしは裾をつまんで駆け出し、満開の白薔薇の列の前で足を止めました。
花たちはまるで微笑むように陽射しを反射し、朝露をきらめかせています。
頬を撫でる風もあの日と同じ――けれど、隣にいるアレンさまの姿は、もう幼い少年ではありませんでした。
「見事です。あのときの約束が、本当にこうして形になるとは」
アレンさまは微笑みながら手を差し出してくださり、
その手に導かれるまま、わたしは彼の隣に並びました。
「立派な騎士になられましたね……」
「君が見守ってくれたおかげです。
あの日の子供の約束を、笑わずに覚えていてくれたから、俺は歩いてこられた」
わたしは頷き、花々を見渡しました。
25本の白薔薇。一本一本が、ふたりの年月を象徴しているように美しく立っています。
風に揺れるたびに、あたたかい思い出が心に広がっていきました。
「リリアナ」
名前を呼ばれ、わたしは振り返りました。
アレンさまの手には、ひとつの小箱がありました。
その中で光を放っているのは、銀の指輪――かつて彼に贈った、あの小さな輪の対となるものでした。
「ずっと、これを渡す日のことを考えていました。
悲しいことも、辛いこともあったけれど、ようやく今日、言えます」
アレンさまは膝をつき、わたしに向けて穏やかに微笑まれました。
その瞳には、七年分の想いと、これからの未来への誓いが宿っているように見えました。
「リリアナ。君こそ、俺の25番目の薔薇です。
この世界で誰よりも大切で、誰よりも美しいひと。どうか俺の花嫁になってください」
風が薔薇を揺らし、花びらがふわりと舞い上がりました。
まるでその言葉に祝福するかのように、丘いっぱいに白い光がこぼれます。
胸の奥にこみ上げる喜びと涙をこらえながら、わたしは微笑みました。
「ええ、もちろんよ」
アレンさまの瞳がわずかに潤みました。
そして、わたしの指に銀の指輪をそっと通してくださいました。
あたたかい金属の感触が、永遠の約束のように指先を包みます。
「これからは、共に道を歩きましょう。
悲しいことも、嬉しいことも……全部、あなたと一緒に」
「頼もしい言葉です。必ず、君を笑顔にする毎日を約束します」
アレンさまが立ち上がり、わたしの両手を包みました。
鐘の音が遠くで鳴り響き、白い雲の間から陽が差してきます。
空に広がるその光が、ふたりを包み込んでいました。
「ねぇ、アレン」
「はい?」
「これが“終わり”ではなく、“はじまり”なんですよね?」
「ええ。ここからが、ようやく僕たちの物語の本当の始まりです」
そう言って、アレンさまがそっとわたしを抱き寄せました。
わたしはその胸に顔を埋め、柔らかな風の音を聞きました。
遠くで鳥がさえずり、25本の薔薇が風にゆれながら微笑むように揺れています。
「リリアナ」
「はい、アレン」
「――愛しています」
「わたしも、あなたを愛してます!」
まぶしい陽射しの中で、わたしたちは唇を重ねました。
鐘の音が祝福のように響き、花びらが金の光を受けて舞い散ります。
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