【完結】二十五の誓い ― 傷物令嬢の私と銀の騎士 ―

朝日みらい

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第十二章 流星の夜 ― 真実の告白

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 その夜、離宮の空はひときわ澄んでいました。  
 雲一つない深い紺色の空に、無数の星が瞬いています。  
 風はやわらかで、花々の香りが夜露とともに流れ、静寂さえも穏やかな音楽のようでした。

 庭のテラスに出ると、アレンさまが夜空を見上げていらっしゃいました。  
 甲冑ではなく、淡い銀の上着に身を包んだその姿は、まるで月光の化身のように見えました。

「……起きていたのですね、リリアナ」  
「はい。眠れなくて。今夜は空がとても綺麗ですね」  
「ええ。年に一度だけ訪れる“白薔薇の流星雨”の夜です」  
「流星……?」

 アレンさまが微笑み、空を指さされました。  
 その瞬間、夜空の端から一筋の光が流れたのです。  
 やがて二筋、三筋と増えて、まるで天の川が動いているように輝きました。

「まあ……なんて素敵……!」  
「25本の流れ星を数えれば、永遠の愛が叶うという伝説があります」  
「25本……」  
「君と出会った数字です。そして、俺が君に誓った回数でもあります」

 彼の静かな声に、胸の奥が温かくなりました。  
 風が頬を撫でて、白薔薇の香りがかすかに漂います。  
 その香りの中で、アレンさまが一歩こちらへ近づかれました。

「リリアナ。俺はずっと君に伝えたいことがあったんです」  
「伝えたいこと……?」  
「あの日から、何年経っても変わらない想いです」

 彼の灰色の瞳が、真っすぐにわたしを映していました。  
 炎の夜も、涙の夜も、すべてを越えてここへ辿り着いたその目が――あまりにも優しくて。  
 息をするのさえ、ためらわれました。

「アレン……」  
「君は、俺の光なんです。25歳の今日まで、君の存在だけが俺を支えてくれた」  
「そんな……わたしなんて――」  
「違います。君がどんな傷を抱えていても、君は俺の誇りです」

 その言葉が夜空よりも深く胸に響きました。  
 気づけば、涙が頬を伝っていました。  
 けれど、それは悲しみでも弱さでもない、ひとつの安らぎでした。

「アレン……私も、ずっと同じ気持ちですの。  
 あの日、あなたが丘を去ったあの瞬間から、ずっとあなたの無事を願って生きてきました」  
「リリアナ……」

 言葉を交わした次の瞬間、もう何もいらないと思いました。  
 アレンさまがそっと手を伸ばし、わたしの頬に触れてくださいました。  
 その温もりに自然と目を閉じ、わずかに顔を上げました。

「――25回分、君を愛しています」  

 その囁きとともに、唇が重なりました。  
 夜空の流星が音もなく降り注ぎ、世界が止まったように静まりかえります。  
 心臓の鼓動だけが、ふたりの間に響いていました。

 

 どれほどの時間が経ったでしょうか。  
 唇が離れたあとも、アレンさまの灰色の瞳には涙の光が宿っていました。  
 彼は少し照れくさそうに笑い、そっとわたしの頭を撫でました。

「……君を泣かせるつもりじゃなかったのに」  
「涙が出てしまうほど、嬉しかったんです」  
「そう言われたら、俺のほうが泣きそうになります」

 わたしは笑って首を振りました。  
 流星の光がふたりを包み込み、夜が銀色に染まっていきます。  

「アレン、見て……最後の流れ星です」  
「ええ。25本目ですね」  
「ええ……25本目の、誓いの星」

 その光が消えるまでの間、わたしたちはただ静かに見上げていました。  
 互いの手を握りしめながら、もう絶対に離れないと心の中で誓いながら。

 

 流星が降り止んだあと、空にはひとつだけ光が残りました。  
 それは誰よりも強く、白く輝きながら――まるで新たな時代を告げる星のようでした。

「アレン……」  
「はい?」  
「これからも、何があっても共に歩いてくださいますか?」  
「もちろんです。この命の限り守り抜きます」  

 アレンさまが手を差し伸べました。  
 その手を取った瞬間、冷たい夜風が春の風へと変わってゆくのを感じました。  
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