【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

朝日みらい

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 翌日から、二人は恋人として会うようになった。

 昼間は人目を忍んで会い、夜にはこっそりとどちらかの家で逢瀬を重ねる……。

 それでもセーリーヌは幸せだった。

 彼と一緒にいられるだけで心が満たされるのだから──。



 しかし、ある日のこと──

 それは殿下とエリザベータの結婚式の前日のことだった──

 いつものようにアドニス侯爵が訪ねてきたときのことである。

 彼はいつも以上に厳しい表情でこう切り出したのだ。

「明日、殿下とエリザベータの結婚式が行われる」

「存じておりますわ」

「あなたはそれでいいのか?」

 その問いにセーリーヌは一瞬戸惑ったが、すぐに笑顔を浮かべて頷いた。

「もちろんですわ」

「本当に?」

 アドニス侯爵は眉を顰めた。

「あなたはずっと殿下を慕っていたではないか?」

 彼の言葉を聞いて、セーリーヌは思わず固まってしまった。

 まさかそんなことを言われるとは思わなかったのだ。

 彼女はゆっくりと深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、口を開いた。

「たしかに殿下のことはお慕いしておりました」

 でも──と続ける。

「今はあなたのことが好きなのです。子供のころからずっと私を見守ってくれていた、あなたが好きなの」

 アドニス侯爵は安堵した表情を浮かべた。

 そして、すぐに笑顔を浮かべる。

「嬉しいことを言ってくれるね」

「本当ですのよ?」

「わかっているよ」

 彼は優しく微笑んでくれた。

 セーリーヌはその笑顔を見てほっとした表情を浮かべると、さらに言葉を続ける。

「殿下とエリザベータ様がご結婚されるのは寂しいけれど、あなたと一緒にいられるなら平気ですわ」

 それを聞いてもアドニス侯爵の表情は変わらなかったが、心なしか頬が赤くなっているように見えた。

 その反応が可愛らしく思えて、思わず笑みがこぼれてしまう。

「もちろん、あなたもわたくしだけを愛してくださるのよね?」

 そう訊ねると、彼はゆっくりと頷いてくれた。

 そして、そっと抱き寄せてくれる。

 彼の胸の鼓動を感じることができた。

 とても心地よいリズムだ。このままずっとこうしていたい──
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