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しおりを挟むセーリーヌは心の中で呟いた後で、もう一度唇を重ねる。
今度は先程よりも強く長く──。
お互いの唾液を交換し合うかのような濃厚な口付けだ。
唇を離すと銀色の糸を引いた……。
それを見ているだけでドキドキしてしまうほどに、淫靡な雰囲気を醸し出していた。
(あぁん……早く抱いて欲しい……)
そう思いつつ視線を送ると、それに気付いたのか彼は優しく微笑みかけてきた。
「愛しているよ、セーリーヌ……」
その言葉に胸が高鳴るのを感じた。
思わず抱きつきたくなる衝動に駆られたが、何とか我慢することができた──。
何故なら今は神聖な結婚式の最中だからだ。
いくら相手が夫とはいえ、節度を弁えなければならないだろう。
(でも……少しだけなら大丈夫かしら?)
一瞬、誘惑に負けそうになったがすぐに思い直した──。
セーリーヌは己の欲望を抑え込むとアドニス侯爵に微笑みかけた。
「私もですわ……」
そして、もう一度キスをする……。
今度は軽く触れるだけのキスだった。
だが、それだけで十分すぎるほどに満足感を得ることができたようだ──。
(ふふっ……わたくしったらいけない子ね……でも、これでいいの!)
そう自分に言い聞かせると、セーリーヌは再び幸せそうな笑みを浮かべたのであった……。
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