生まれる前から好きでした。

文字の大きさ
15 / 77

15. 友達。

しおりを挟む
 体育の授業で、相澤和真は福井奏とペアを組んで柔軟体操をしていた。

「和真、あの一年坊主を甘やかすなよ」

 和真の背中を押しながら奏が苦言を洩らす。

「……甘やかしているわけじゃ無い。ただ、あいつはまっすぐだからさ、ほっとけないんだよ」
「ほっとけない……ね。で、なぜあいつはあんなに和真に執着しているんだ?」
「……なぜと言われても、おれの事を慕ってくれているとしか──」

 和真はなぜか奏には足立に話したように前世の事を言い出せなかった。
 
(奏の事は信頼しているし、頼りになる男だからきっと話したら呆れたりしないで相談に乗ってくれるはずだ。まあ、今話す内容ではないしな……)

 しかし、改めて考えると三峰汐音の事は不思議でならない。
 いくら生まれ変わりだといっても和真はフィーリアでは無いし、姿はもちろん、性別がまず違う。きっと思考も性格も違うはずだ。一緒に居れば、すでに違和感を感じ始めていてもおかしくない。
 だが、汐音の和真への執着の度合いが弱まる気配が全く感じられない。『好き』だと言ってくれたが、『好き』も色々ある。

(あいつの『好き』はどんな『好き』なのだろうか? 汐音はおれとどうなりたいんだ?)

 考え込んでいた和真の関節が、突然悲鳴をあげた。

「……! いたい! 痛いって! 奏‼」

 首をそらして、和真は背後にいる奏へ訴える。

「あれ? 痛かったか? すまん」

 あまり悪いと思っていなさそうな顔で、奏が謝ってきた。

「奏のように部活で鍛えている特別な体じゃ無いんだ。手加減してくれ」

 文句を言いながら和真が立ち上がると、背後から覆いかぶさって来た奏に羽交締めにされる。

「ずっと心ここにあらずって顔してるぞ。俺が触れている時は、俺だけに集中してくれよ。和真」

 耳元で囁かれ、和真は耳を押さえて振り返った。

「……い、言い方!」
「え? 何? 何を赤くなってんの? エロい事、考えちゃった? ぐふっ……」

 速攻で奏のみぞおちに一撃を食らわせる。
 だが、相手は鍛えられた鋼のような筋肉を持つ男だ。あまりダメージを与えられた気がしない。

「調子に乗るな」

 むっとしながら睨む和真の肩に奏は片腕を回し、『くくく』と喉の奥で笑っている。

(何が楽しんだ?)

「俺、おまえの事が、本当に好きだわ」
「そうか」

 本気で取り合わない和真の横顔を奏はしばらくの間じっと見つめていた。
 だが、ふっと優し気な笑みを浮かべると和真の肩から腕を外した。そのまま流れるような動きで腕を上にあげ、全身を伸ばすと、右へ体を倒していく。一人で柔軟体操を続けながら奏はまるで天気の話でもするように話し始めた。

「俺さ、欲しいものは絶対手に入れるって決めてるんだ。というか、手に入れてきている」
「……それぐらいの気合がないと一年からレギュラーになんかなれないもんな」
「良くご存じで」
「他の奴が見ていないところでもすごく努力している。朝練も早めに来て走ってたりするだろ?」
「……何で、知ってるんだ?」
「知ってるさ。俺達は、友達なんだろ?」

 和真が肩越しに僅かに笑みを浮かべ応じると、奏は眩しそうに目を細めた。

「ああ、そうだな」

 まるで和真の発した言葉を確かめるように奏が呟く。

 ピーッ!

 柔軟体操の終了を知らせる笛の音が運動場に響く。和真と奏は共に駆け出した。
 その様子を教室の窓から汐音がじっと見つめていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!

ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!? 「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??

ワケありくんの愛され転生

鬼塚ベジータ
BL
彼は”勇敢な魂"として、彼が望むままに男同士の恋愛が当たり前の世界に転生させてもらえることになった。しかし彼が宿った体は、婚活をバリバリにしていた平凡なベータの伯爵家の次男。さらにお見合いの直前に転生してしまい、やけに顔のいい執事に連れられて3人の男(イケメン)と顔合わせをさせられた。見合いは辞退してイケメン同士の恋愛を拝もうと思っていたのだが、なぜかそれが上手くいかず……。 アルファ4人とオメガ1人に愛される、かなり変わった世界から来た彼のお話。 ※オメガバース設定です。

うまく笑えない君へと捧ぐ

西友
BL
 本編+おまけ話、完結です。  ありがとうございました!  中学二年の夏、彰太(しょうた)は恋愛を諦めた。でも、一人でも恋は出来るから。そんな想いを秘めたまま、彰太は一翔(かずと)に片想いをする。やがて、ハグから始まった二人の恋愛は、三年で幕を閉じることになる。  一翔の左手の薬指には、微かに光る指輪がある。綺麗な奥さんと、一歳になる娘がいるという一翔。あの三年間は、幻だった。一翔はそんな風に思っているかもしれない。  ──でも。おれにとっては、確かに現実だったよ。  もう二度と交差することのない想いを秘め、彰太は遠い場所で笑う一翔に背を向けた。

ノエルの結婚

仁茂田もに
BL
オメガのノエルは顔も知らないアルファと結婚することになった。 お相手のヴィンセントは旦那さまの部下で、階級は中尉。東方司令部に勤めているらしい。 生まれ育った帝都を離れ、ノエルはヴィンセントとふたり東部の街で新婚生活を送ることになる。 無表情だが穏やかで優しい帝国軍人(アルファ)×明るいがトラウマ持ちのオメガ 過去につらい経験をしたオメガのノエルが、ヴィンセントと結婚して幸せになる話です。 J.GARDEN58にて本編+書き下ろしで頒布する予定です。 詳しくは後日、活動報告またはXにてご告知します。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

あなたのいちばんすきなひと

名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。 ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。 有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。 俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。 実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。 そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。 また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。 自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は―― 隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。

サンタからの贈り物

未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。 ※別小説のセルフリメイクです。

処理中です...