47 / 77
47.風呂。
しおりを挟む
浴室に泡が弾ける音が響く。
(どうしてこうなった?)
しばらくの間とはいえ、一緒に住む事になった三峰汐音に髪を洗ってもらいながら、相澤和真の思考は答えの無い問いを繰り返していた。
30分程前、和真を抱き上げて浴室へ運ぼうとする汐音を何とか説き伏せ、自力で浴室へ向かう。
マムシに噛まれて死ぬ事はなかったが、腫れ上がった右足は上手く膝を曲げる事が出来ず、心配顔の汐音を横目にフローリングの床を、足を引きずりながら歩いた。
「入って来るなよ」
洗面所へ当然のように一緒に入ろうとした汐音を締め出し、服を脱ぐ。
しかし、下着を脱ぐ時にバランスを崩し、壁に右肩を思い切りぶつけてしまった。
(転倒せず踏み留まった自分を褒めたい)
和真は痛みに顔を歪めながら思った。
もし床に倒れ込んでいたら、肩の打撲ではすまなかったはずだ。頭をどこかに打ちつけていたかもしれない。
だが、ぶつけた時の派手な音に汐音が血相を変えて飛び込んできた。きっと洗面所の前の廊下で待機していたのだろう。
「和真さん!」
慌てた様子の汐音が和真の両肩を掴んできた。悲鳴のような呻き声が和真の唇から迸る。熱いものにでも触れたかのように、汐音が手を離した。
顔を上げれば、青褪めた汐音の顔が和真の瞳に映る。汐音の方がかなりのダメージを受けたような表情をしていた。
「どこを怪我されたのですか?」
「……肩を壁にぶつけただけだ。そんなに心配するな」
「……一緒に入ります」
「は?」
「一緒に入らせてください」
「いや、ダメだ」
「何故、ダメなんですか? 浴室の方が危険なんですよ」
「恥ずかしいからだよ!」
和真は顔を真っ赤にして叫んだ。汐音にははっきりと言わないと分からないようだ。
「恥ずかしい?」
さも不思議な事を聞いたかのように、汐音が首を傾げながら和真の言葉を繰り返す。
「分かりました」
汐音が頷く。その姿に、やっと分かってくれたのかと、和真は内心ほっと胸を撫で下ろした。
ところが、汐音は洗面所から出るどころか、和真の目の前で徐に服を脱ぎ始めた。
「え? な、何をやってる?」
「服を脱いでます」
「それは、見たら分かる! なんで脱ぐのかと、聞いているんだ!」
「脱がないと濡れるじゃないですか」
応じながら汐音はどんどん脱いでいく。
あまりに見事な脱ぎっぷりに、圧倒される。あっとう間に服の下から現れたのは、男なら誰もが羨むような鍛えられた肉体美だった。突っ立ったまま呆然と見惚れている和真とは違い、汐音は一糸纏わぬ姿さえも恥ずかしがる様子もない。自分の腰にタオルを巻くと、和真の腰にもタオルを巻き、脱ぎかけになっていた和真の下着を一気に引き下ろした。
「〇×△□!」
突然だったため、声にならない声を発する和真に向かって汐音はにっこりと微笑んだ。
「これなら、恥ずかしくないですよね? さあ、早くお風呂に入らないと風邪を引いてしまいますよ」
そう告げると、和真の手を取り、浴室へといざなったのだった。
(どうしてこうなった?)
しばらくの間とはいえ、一緒に住む事になった三峰汐音に髪を洗ってもらいながら、相澤和真の思考は答えの無い問いを繰り返していた。
30分程前、和真を抱き上げて浴室へ運ぼうとする汐音を何とか説き伏せ、自力で浴室へ向かう。
マムシに噛まれて死ぬ事はなかったが、腫れ上がった右足は上手く膝を曲げる事が出来ず、心配顔の汐音を横目にフローリングの床を、足を引きずりながら歩いた。
「入って来るなよ」
洗面所へ当然のように一緒に入ろうとした汐音を締め出し、服を脱ぐ。
しかし、下着を脱ぐ時にバランスを崩し、壁に右肩を思い切りぶつけてしまった。
(転倒せず踏み留まった自分を褒めたい)
和真は痛みに顔を歪めながら思った。
もし床に倒れ込んでいたら、肩の打撲ではすまなかったはずだ。頭をどこかに打ちつけていたかもしれない。
だが、ぶつけた時の派手な音に汐音が血相を変えて飛び込んできた。きっと洗面所の前の廊下で待機していたのだろう。
「和真さん!」
慌てた様子の汐音が和真の両肩を掴んできた。悲鳴のような呻き声が和真の唇から迸る。熱いものにでも触れたかのように、汐音が手を離した。
顔を上げれば、青褪めた汐音の顔が和真の瞳に映る。汐音の方がかなりのダメージを受けたような表情をしていた。
「どこを怪我されたのですか?」
「……肩を壁にぶつけただけだ。そんなに心配するな」
「……一緒に入ります」
「は?」
「一緒に入らせてください」
「いや、ダメだ」
「何故、ダメなんですか? 浴室の方が危険なんですよ」
「恥ずかしいからだよ!」
和真は顔を真っ赤にして叫んだ。汐音にははっきりと言わないと分からないようだ。
「恥ずかしい?」
さも不思議な事を聞いたかのように、汐音が首を傾げながら和真の言葉を繰り返す。
「分かりました」
汐音が頷く。その姿に、やっと分かってくれたのかと、和真は内心ほっと胸を撫で下ろした。
ところが、汐音は洗面所から出るどころか、和真の目の前で徐に服を脱ぎ始めた。
「え? な、何をやってる?」
「服を脱いでます」
「それは、見たら分かる! なんで脱ぐのかと、聞いているんだ!」
「脱がないと濡れるじゃないですか」
応じながら汐音はどんどん脱いでいく。
あまりに見事な脱ぎっぷりに、圧倒される。あっとう間に服の下から現れたのは、男なら誰もが羨むような鍛えられた肉体美だった。突っ立ったまま呆然と見惚れている和真とは違い、汐音は一糸纏わぬ姿さえも恥ずかしがる様子もない。自分の腰にタオルを巻くと、和真の腰にもタオルを巻き、脱ぎかけになっていた和真の下着を一気に引き下ろした。
「〇×△□!」
突然だったため、声にならない声を発する和真に向かって汐音はにっこりと微笑んだ。
「これなら、恥ずかしくないですよね? さあ、早くお風呂に入らないと風邪を引いてしまいますよ」
そう告げると、和真の手を取り、浴室へといざなったのだった。
11
あなたにおすすめの小説
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!
ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!?
「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??
ワケありくんの愛され転生
鬼塚ベジータ
BL
彼は”勇敢な魂"として、彼が望むままに男同士の恋愛が当たり前の世界に転生させてもらえることになった。しかし彼が宿った体は、婚活をバリバリにしていた平凡なベータの伯爵家の次男。さらにお見合いの直前に転生してしまい、やけに顔のいい執事に連れられて3人の男(イケメン)と顔合わせをさせられた。見合いは辞退してイケメン同士の恋愛を拝もうと思っていたのだが、なぜかそれが上手くいかず……。
アルファ4人とオメガ1人に愛される、かなり変わった世界から来た彼のお話。
※オメガバース設定です。
うまく笑えない君へと捧ぐ
西友
BL
本編+おまけ話、完結です。
ありがとうございました!
中学二年の夏、彰太(しょうた)は恋愛を諦めた。でも、一人でも恋は出来るから。そんな想いを秘めたまま、彰太は一翔(かずと)に片想いをする。やがて、ハグから始まった二人の恋愛は、三年で幕を閉じることになる。
一翔の左手の薬指には、微かに光る指輪がある。綺麗な奥さんと、一歳になる娘がいるという一翔。あの三年間は、幻だった。一翔はそんな風に思っているかもしれない。
──でも。おれにとっては、確かに現実だったよ。
もう二度と交差することのない想いを秘め、彰太は遠い場所で笑う一翔に背を向けた。
ノエルの結婚
仁茂田もに
BL
オメガのノエルは顔も知らないアルファと結婚することになった。
お相手のヴィンセントは旦那さまの部下で、階級は中尉。東方司令部に勤めているらしい。
生まれ育った帝都を離れ、ノエルはヴィンセントとふたり東部の街で新婚生活を送ることになる。
無表情だが穏やかで優しい帝国軍人(アルファ)×明るいがトラウマ持ちのオメガ
過去につらい経験をしたオメガのノエルが、ヴィンセントと結婚して幸せになる話です。
J.GARDEN58にて本編+書き下ろしで頒布する予定です。
詳しくは後日、活動報告またはXにてご告知します。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
サンタからの贈り物
未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。
※別小説のセルフリメイクです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる