生まれる前から好きでした。

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48.温もり。

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 相澤和真は三峰汐音にされるがままになっていた。
 汐音は手際よく和真の頭を洗い上げると、シャワーで丁寧に濯いでいく。それが終わると、すぐさまボディソープを泡立てはじめた。

「あ……」

 泡でモコモコになったボディタオルを和真に奪い取られ、汐音が小さく声を上げる。

「自分で洗う」

 残念そうに見つめてくる汐音の視線を無視し、和真は泡の付いたタオルで自分の体を洗いはじめた。
 汐音は諦めたのか、隣で大人しく自分の頭を洗い始めた。和真が体に付いた泡をシャワーで洗い流し終える頃には、汐音も浴槽にはった湯で体を濯ぎ終える。

「暴れないでくださいね。危ないですよ」
「え?」

 汐音の言葉の意味が理解出来ずに、キョトンと見上げた和真の手から待ってましたとばかりにシャワーを取り上げ、あっという間に和真の体を軽々と抱き上げてしまった。
 そして、そのまま有無を言わさぬ速さで和真を汐音の前に座らせるように浴槽に浸かる。その時、ちゃっかりと腫れ上がった和真の右足を浴槽の縁に置いた。どこまでも気の利く男だった。
 だが、この体勢では背中が後ろにいる汐音にどうしても密着してしまう。

「広い浴槽っていいですね~。二人でも余裕で入れましたね~」

 のんきな感想が耳のすぐそばから聞こえてきた。

(意識していたのはおれだけだったのか……?)

 そう思うと逆に自分の方が恥ずかしくなってくる。かといって、この状況から自力で抜け出すことも出来ない。

(どうとでもなれ!)

 なかば投げやりな気持ちで、和真は体の力を抜いた。途端、背後が汐音にピッタリとくっつく。
 一瞬、汐音の体がビクッと揺れたのが分かった。
 だが、そのままじっとしていてそれ以上動く様子もない。

(重いと言ってくれば、その時こそ湯から出してもらおう)


 和真は背後の汐音に凭れたまま目を閉じた。
 時折、どこかで水滴が落ちる音が室内に響く。それ以外に聞こえる音はなく、浴室はとても静かだった。

(……温かいな)

 もちろん湯に浸かっているのだから体が温まるのは当然なのだが、不思議な事に、胸の奥の冷たい氷のように固く閉ざされていた場所まで緩んでいくような感じがして、ついまどろんでしまった。
 今までに感じたことが無い穏やかな時間が流れていく。
 ザバッっと大きな音立て、突然汐音が和真を抱えて立ち上がった。

「え?」

 うとうとしていた和真は驚き、目をパチクリと開いた。

「すみません! もう限界です……」

 辛そうな声で汐音は呟くと、そのまま浴室から出る。和真をそっと床に立たせると、背後からバスタオルで体を包み込んだ。

「自分で拭けますか?」
「え? ああ、もちろん……」
「後で、着替えはお手伝いいたします」

 そう言い残すと、汐音は再び浴室へ戻っていく。勢いよく閉じられた浴室の扉を見つめ、呆然と立ちつくす和真だった。
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