生まれる前から好きでした。

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47.風呂。

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 浴室に泡が弾ける音が響く。

(どうしてこうなった?)

 しばらくの間とはいえ、一緒に住む事になった三峰汐音に髪を洗ってもらいながら、相澤和真の思考は答えの無い問いを繰り返していた。 

 30分程前、和真を抱き上げて浴室へ運ぼうとする汐音を何とか説き伏せ、自力で浴室へ向かう。
 マムシに噛まれて死ぬ事はなかったが、腫れ上がった右足は上手く膝を曲げる事が出来ず、心配顔の汐音を横目にフローリングの床を、足を引きずりながら歩いた。

「入って来るなよ」

 洗面所へ当然のように一緒に入ろうとした汐音を締め出し、服を脱ぐ。
 しかし、下着を脱ぐ時にバランスを崩し、壁に右肩を思い切りぶつけてしまった。

(転倒せず踏み留まった自分を褒めたい)

 和真は痛みに顔を歪めながら思った。
 もし床に倒れ込んでいたら、肩の打撲ではすまなかったはずだ。頭をどこかに打ちつけていたかもしれない。
 だが、ぶつけた時の派手な音に汐音が血相を変えて飛び込んできた。きっと洗面所の前の廊下で待機していたのだろう。

「和真さん!」

 慌てた様子の汐音が和真の両肩を掴んできた。悲鳴のような呻き声が和真の唇から迸る。熱いものにでも触れたかのように、汐音が手を離した。
 顔を上げれば、青褪めた汐音の顔が和真の瞳に映る。汐音の方がかなりのダメージを受けたような表情をしていた。

「どこを怪我されたのですか?」
「……肩を壁にぶつけただけだ。そんなに心配するな」
「……一緒に入ります」
「は?」
「一緒に入らせてください」
「いや、ダメだ」
「何故、ダメなんですか? 浴室の方が危険なんですよ」
「恥ずかしいからだよ!」

 和真は顔を真っ赤にして叫んだ。汐音にははっきりと言わないと分からないようだ。

「恥ずかしい?」

 さも不思議な事を聞いたかのように、汐音が首を傾げながら和真の言葉を繰り返す。

「分かりました」

 汐音が頷く。その姿に、やっと分かってくれたのかと、和真は内心ほっと胸を撫で下ろした。
 ところが、汐音は洗面所から出るどころか、和真の目の前で徐に服を脱ぎ始めた。

「え? な、何をやってる?」
「服を脱いでます」
「それは、見たら分かる! なんで脱ぐのかと、聞いているんだ!」
「脱がないと濡れるじゃないですか」

 応じながら汐音はどんどん脱いでいく。
 あまりに見事な脱ぎっぷりに、圧倒される。あっとう間に服の下から現れたのは、男なら誰もが羨むような鍛えられた肉体美だった。突っ立ったまま呆然と見惚れている和真とは違い、汐音は一糸纏わぬ姿さえも恥ずかしがる様子もない。自分の腰にタオルを巻くと、和真の腰にもタオルを巻き、脱ぎかけになっていた和真の下着を一気に引き下ろした。

「〇×△□!」

 突然だったため、声にならない声を発する和真に向かって汐音はにっこりと微笑んだ。

「これなら、恥ずかしくないですよね? さあ、早くお風呂に入らないと風邪を引いてしまいますよ」

 そう告げると、和真の手を取り、浴室へといざなったのだった。
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