【完結】捨てられ令嬢の冒険譚 〜婚約破棄されたので、伝説の精霊女王として生きていきます〜

きゅちゃん

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第28話 「危機」

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「...信じてもらえるかはわかりませんが、私が精霊術に目覚めたのごく最近のことなのです。その力をたまたまカイル団長が目にされて、北部防衛のために力を貸して欲しいと頼まれました」

...我ながら荒唐無稽な話だが、これが真実なのだから仕方がない。
案の定、ミリアは馬鹿にしたような口調でたちまち反駁してきた。

「遥か古代に失われた精霊術が?たまたまあなたに宿って覚醒した?それを偶然にも居合わせたカイル団長が認めた?なんとまぁ、そんな都合のいい展開があるものでしょうか。....陛下、お立ち合いの皆様、この女は婚約破棄の屈辱で精神を病み、そのような妄想に浸っているに違いありません。実に哀れですが、だからといって許せるものではない!」

「...も、妄想などではありません!天地に誓って真実です!!」

「へぇ...では、今ここで精霊術の力を見せてみなさい。精霊術を以ってすれば、その手に嵌った拘束具ぐらい簡単に壊せるでしょう。もしそれをやってのけたなら、皆納得するかもしれませんよ」

冷静さを装いながら、どこまでも嘲るような口調でミリアが挑発してくる。
しかしその言葉は巧みに計算されていて、私への疑念を巧みに煽るように誘導している。
敵ながらその手腕は見事と言う他はない。
それに見事に誘導されて、周囲の貴族たちも私にいっそう冷ややかな視線を送ってくるのだった。

誰もが忘れかけた精霊術を、突如として使えるようになったなどという哀れな妄想に取り憑かれた小娘。
婚約破棄がよほど悔しくて、頭がどうにかなってしまってこんな大それた悪事に走ったのだろうか?
みな声にこそ出さないが、彼らの視線はそのような疑念と侮蔑に満ちているのを感じる。
あまりの悔しさに目頭が熱くなり、涙が溢れそうになる
だが、泣いている場合ではない。
...とにもかくにも、ここはやってみるしかない。

(...やれるかしら?)

(ああ、力は既に私の中にある)

アキュラとの力の接続を意識し、昨夜のうちに備えておいた魔力を引き出そうとしたその瞬間だった。
全身がたちまち猛烈な吐き気と悪寒に襲われ、私はその場にくず折れてしまう。

「うぐっ...こ...これはっ...」

(どうしたんだエレナ?!)

突然の私の昏倒に、アキュラも焦っていた。
どうやら精霊術の問題ではなく、私の肉体の方に何か深刻な問題が生じているようだった。
アキュラとの接続を確立できないばかりか、まともに口を開くことも難しい。
頭が猛烈にぐらぐらし、身体にも力が入らず何かを考えることもできない...

「あらあら...精霊術なんて大風呂敷を広げすぎたので、次は仮病でしょうか」

見かねたムーン公が「これは何か事情が...」と割って入ろうとしたが、ミリアが鋭く遮った。

「精霊術などという見え透いた戯言に、栄誉ある宮廷がこれ以上付き合う必要はございません。陛下、ご裁可を」

「...俗事はそちたちに任せる。無実を証明できないならば、ミリア副長の求刑通りにするがよい」

国王陛下はいかにも大義だといった様子でそれだけを口にした。
ムーン公が何かを言う前に、ミリアが勝ち誇った様子でたちまち大音声で宣言した。

「王命により、エレナ・ローズウッドの爵位剥奪及び死刑の執行を確定判決とします!これに異議あるものは、陛下のご裁可に逆らうものと心得られよ!」

見事に機先を制した発言に、ムーン公をはじめとする良識派の貴族たちも沈黙を余儀なくされてしまう。
ましてや、全身を覆う苦しみにもがく私は、何かを言うどころではなかった。
そんな私を冷然と見下ろしながら、ミリアが更なる追い討ちをかけてくる。

「処刑は3日後の朝、王都正門前広場にて公開のもと執り行うものとします。見せしめのため、王国中にあまねく布告を出します。このような悪事を企むものが二度と現れぬように...」

くそっ、私の命はあと3日か...
苦しみと悔しさ、襲い来る絶望の中で、次第に意識が遠いのていく...

「処刑まで、そこの女を牢に放り込んでおくように」

憎々しげにそう部下に告げるミリアの声が微かに聞こえたのを最後に、私の意識は深い深い暗闇へと落ちていった。
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