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第27話 「告発」
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何もかも全部出鱈目だ。お前が仕組んだ卑劣な罠だ!
そう叫びたい衝動をぐっと堪え、アキュラの忠告に従って心を落ち着ける。
口元の血潮をそっと拭い、それから目を伏せてどうにか沈黙を保つことに集中した。
それに伴って周りのざわめきも収まっていく。
その様を愉しげに見ていたミリアが、再び口を開いた。
「以上のことより、ローズウッド家の叛意は明らかです。また、その後は私自身がアイアンメイデンと共に北の騎士団を調査に行ったところ、これも同様に武力抵抗の意思を示したことから、やむなく交戦に至り制圧いたしました。何名かは取り逃しましたが、首魁のカイル・ノーザンハートは現在も逃亡中で、全力で捜索に当たっております」
(良かった...カイルは捕まっていないのね)
(ああ...不幸中の幸いだな)
(サキやエリックも無事だといいのだけれど...)
(何名か取り逃がしたと言っていたから、希望を捨てるな)
暗闇の中に放り込まれたような孤独と不安の中で、とりあえずはカイルがまだ無事なことを知って、微かな光明が灯ったように感じた。その気配を感じ取ったのか、ミリアがこちらを見てにっこりと微笑んだ。
それは嗜虐的で、邪悪な蛇を思わせるものだった。
「そしてこのローズウッド伯爵令嬢が父親の意を受けてカイル団長を誘惑し、叛乱に抱き込んだのです。そうでなければ、北の護りとして栄誉ある北の騎士団とカイル団長がこのような愚挙に及ぶはずがありません」
ミリアの鋭い告発に、声にならぬ騒めきが再び法廷中をさざなみのように広がっていく。
ムーン公が複雑な表情をしていたが、法務大臣といえど迂闊に口は出せないのか、沈黙を守っていた。
あまりに理不尽な告発内容に、私は何もいえずただ俯くしかなかった。
激情というものは、あるレベルを超えるといっそ虚無に等しいものになると初めて知る。
(エレナ...全部戯言だ。反論の機会が与えられるまで、とにかく耐えろ)
そんなアキュラの励ましも、虚しく耳を打つばかりだった。
「...ローズウッド伯爵令嬢は、過日婚約者より婚約を破棄されております。それ自体は誠にお気の毒なことでありますが、それを恨みに思って身勝手な怨讐の念に捉われ、父親の謀反に加担したーあるいは、父親を唆したのかもしれません。いずれにせよ、これは王国秩序への重大な挑戦であり、王国の防衛を担うアイアンメイデンの一員として看過するわけには参りません。よってここに私はー」
そこで言葉を切ったミリアが勝ち誇ったように私を睨んだ。
口元には抑え難く喜びが溢れ、邪悪に歪んでいた。
それでいてその表情にはある種の官能的な美しさがあり、私は憤激を一瞬忘れて見入ってしまった。
この女はなぜーかくも憎々しげに、それでいて私をそのように情熱的に見つめるのだろうか。
「エレナ・ローズウッド伯爵令嬢の爵位剥奪及び死刑を求刑いたします!」
おおおお...とこれまでで最大の騒めきが宮廷を席巻した。
内紛による武力行使の結果の落命や暗殺は数多くあれど、宮廷裁判での死刑求刑などこれまではありえなかったからだろう。騒めきがより大きな喧騒へと転化しそうな中、ムーン公が挙手して前へ進み出た。
「皆様、どうかご静粛に...ミリア副長の告発は以上です。...陛下、公正を期する宮廷裁判においては告発を受けたものにも反論の機会が許されております。ローズウッド伯爵令嬢にもどうか発言のお許しを」
視線が一斉に国王陛下に集まった。
陛下は眠たげな表情のまま、面倒そうに「よい、許す」とだけ答える。
ムーン公が一礼して、私に視線を向ける。
その視線に微かに込められた励ましが、どれほど心強いことか。
私は大きく息を吸い込んで、声が震えないように気をつけながら話し始める。
「...恐れながら申し上げます。ミリア副長の告発はいずれもまったく身に覚えのないこと。私がカイル団長に同行して北の騎士団のところへ向かったのは、魔獣の被害が頻発しており手を貸して欲しいと頼まれたからです。実際に魔獣と戦っていたところ、突然アイアンメイデンが問答無用で私たちを襲ってきたのです!そこのミリア副長こそ、王陛下の親衛隊であるアイアンメイデンを勝手に動かし、清廉潔白な我が父の命を奪った大罪人ではありませんか!」
私の真っ向からの反論に、再び王宮が騒めきに包まれた。
私とミリアの主張は当然ながら完全に食い違っている。
ミリアが愉しげに目を細めながら、私の主張に食らいついてきた。
「私の調査によれば、エレナ嬢に魔法の才能はなく、武勇に秀でてもいません。そんなあなたが、いったい北部防衛のどんな役に立つと?」
「それは...」
ぐっと言葉に詰まる。やはりそこを突いてきたか。
ミリアの言う通り、公式的には私は魔法の才能もないただの凡庸な貴族令嬢にすぎない。
突如として精霊の力に目覚めたといって、信じてもらえるだろうか?
(ここは...力を見せるしかないかもしれない)
(わかった...)
覚悟を決め、ミリアと貴族たちの方に向き直る。
そう叫びたい衝動をぐっと堪え、アキュラの忠告に従って心を落ち着ける。
口元の血潮をそっと拭い、それから目を伏せてどうにか沈黙を保つことに集中した。
それに伴って周りのざわめきも収まっていく。
その様を愉しげに見ていたミリアが、再び口を開いた。
「以上のことより、ローズウッド家の叛意は明らかです。また、その後は私自身がアイアンメイデンと共に北の騎士団を調査に行ったところ、これも同様に武力抵抗の意思を示したことから、やむなく交戦に至り制圧いたしました。何名かは取り逃しましたが、首魁のカイル・ノーザンハートは現在も逃亡中で、全力で捜索に当たっております」
(良かった...カイルは捕まっていないのね)
(ああ...不幸中の幸いだな)
(サキやエリックも無事だといいのだけれど...)
(何名か取り逃がしたと言っていたから、希望を捨てるな)
暗闇の中に放り込まれたような孤独と不安の中で、とりあえずはカイルがまだ無事なことを知って、微かな光明が灯ったように感じた。その気配を感じ取ったのか、ミリアがこちらを見てにっこりと微笑んだ。
それは嗜虐的で、邪悪な蛇を思わせるものだった。
「そしてこのローズウッド伯爵令嬢が父親の意を受けてカイル団長を誘惑し、叛乱に抱き込んだのです。そうでなければ、北の護りとして栄誉ある北の騎士団とカイル団長がこのような愚挙に及ぶはずがありません」
ミリアの鋭い告発に、声にならぬ騒めきが再び法廷中をさざなみのように広がっていく。
ムーン公が複雑な表情をしていたが、法務大臣といえど迂闊に口は出せないのか、沈黙を守っていた。
あまりに理不尽な告発内容に、私は何もいえずただ俯くしかなかった。
激情というものは、あるレベルを超えるといっそ虚無に等しいものになると初めて知る。
(エレナ...全部戯言だ。反論の機会が与えられるまで、とにかく耐えろ)
そんなアキュラの励ましも、虚しく耳を打つばかりだった。
「...ローズウッド伯爵令嬢は、過日婚約者より婚約を破棄されております。それ自体は誠にお気の毒なことでありますが、それを恨みに思って身勝手な怨讐の念に捉われ、父親の謀反に加担したーあるいは、父親を唆したのかもしれません。いずれにせよ、これは王国秩序への重大な挑戦であり、王国の防衛を担うアイアンメイデンの一員として看過するわけには参りません。よってここに私はー」
そこで言葉を切ったミリアが勝ち誇ったように私を睨んだ。
口元には抑え難く喜びが溢れ、邪悪に歪んでいた。
それでいてその表情にはある種の官能的な美しさがあり、私は憤激を一瞬忘れて見入ってしまった。
この女はなぜーかくも憎々しげに、それでいて私をそのように情熱的に見つめるのだろうか。
「エレナ・ローズウッド伯爵令嬢の爵位剥奪及び死刑を求刑いたします!」
おおおお...とこれまでで最大の騒めきが宮廷を席巻した。
内紛による武力行使の結果の落命や暗殺は数多くあれど、宮廷裁判での死刑求刑などこれまではありえなかったからだろう。騒めきがより大きな喧騒へと転化しそうな中、ムーン公が挙手して前へ進み出た。
「皆様、どうかご静粛に...ミリア副長の告発は以上です。...陛下、公正を期する宮廷裁判においては告発を受けたものにも反論の機会が許されております。ローズウッド伯爵令嬢にもどうか発言のお許しを」
視線が一斉に国王陛下に集まった。
陛下は眠たげな表情のまま、面倒そうに「よい、許す」とだけ答える。
ムーン公が一礼して、私に視線を向ける。
その視線に微かに込められた励ましが、どれほど心強いことか。
私は大きく息を吸い込んで、声が震えないように気をつけながら話し始める。
「...恐れながら申し上げます。ミリア副長の告発はいずれもまったく身に覚えのないこと。私がカイル団長に同行して北の騎士団のところへ向かったのは、魔獣の被害が頻発しており手を貸して欲しいと頼まれたからです。実際に魔獣と戦っていたところ、突然アイアンメイデンが問答無用で私たちを襲ってきたのです!そこのミリア副長こそ、王陛下の親衛隊であるアイアンメイデンを勝手に動かし、清廉潔白な我が父の命を奪った大罪人ではありませんか!」
私の真っ向からの反論に、再び王宮が騒めきに包まれた。
私とミリアの主張は当然ながら完全に食い違っている。
ミリアが愉しげに目を細めながら、私の主張に食らいついてきた。
「私の調査によれば、エレナ嬢に魔法の才能はなく、武勇に秀でてもいません。そんなあなたが、いったい北部防衛のどんな役に立つと?」
「それは...」
ぐっと言葉に詰まる。やはりそこを突いてきたか。
ミリアの言う通り、公式的には私は魔法の才能もないただの凡庸な貴族令嬢にすぎない。
突如として精霊の力に目覚めたといって、信じてもらえるだろうか?
(ここは...力を見せるしかないかもしれない)
(わかった...)
覚悟を決め、ミリアと貴族たちの方に向き直る。
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