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第五章
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翌朝もすっきりと目覚める。
酒はもう抜けているはずなのに、サフィアはまだ、どこかふわふわとしていた。
冷たい水で顔を洗う。
昨晩ライが微かに触れた目元は、どうしてか熱を帯びている。
熱を冷ますように、サフィアはもう一度冷水で顔を洗った。
見慣れない女官が訪ねて来たのは、ルイがうとうととし始める午後のことだった。
「…お変わりありませんか?ルイ王子。」
白い箱を抱えた糸目の女官が現れると、ルイはすっとサフィアの影に隠れた。
小さな手は、サフィアの袖をぎゅっと握りしめている。
「噂通り、王子は随分と懐かれている様ですね。」
糸目はあからさまに、サフィアの頭からつま先までを、舐める様に見回した。
それはあまり気分の良いものではない。
「こちらは、王妃殿下から貴方様への贈り物でございます。」
「…わたくしに、ですか?」
「ええ。尊い王妃様からの労いです。有り難く受け取りますよう。」
王妃との接触は一度もない。
サフィアは少しだけそれを不思議に思っていたが、ルイからも、ライからも王妃の話しが出たためしは一度もなかった。
かつて遠目に見ただけの王妃は、小柄で華奢な少女のような姿をしていた。
「いらない!」
手渡された白い箱を受け取ろうとすると、背後からルイが声を張り上げた。
「…王子?どうされたのですか?」
サフィアの背後に隠れているルイは、強い拒否を示しながらも、どこか怯えているように見える。
「ルイ王子、これは王子の世話係への贈り物です。王子への物では御座いません。王子への贈り物ではなかったからと、そのように臍を曲げてはなりませんよ。」
糸目の女官は平然としたものだ。
むしろ、くすりと笑ってさえいる。
「…いらない!サフィアは、いらない!其方は母上の元へすぐに帰れ!」
「あらまあ、王子。そのように声を張り上げてはなりません。世話係の教育が良くないようですねえ。」
「ちがう!ちがう!」
「…王妃様にも報告させて頂きます。」
机の上に白い箱を置くと、女官はまた平然とした様子で部屋を出て行った。
女官が部屋を出た後も、ルイが落ち着きを取り戻すまでは、数刻の時間が必要だった。
机の上の白い箱には、何が入っているのだろう。
小さな背をとんとんと宥めるようにさすり続けていると、その内にルイは眠ってしまった。
「…サフィア様?」
とんとんと肩を叩かれ、はっと起き上がると、見慣れたエリクの姿が目に入る。
隣のルイは、いまだすうすうと寝入ったままだ。
いつの間にかサフィアも、うとうととしていたらしい。
「…申し訳ございません!わたくしまで、つい、うとうとと…」
「いえいえ、咎めた訳ではありません。この時間は私もよく、うとうとしてしまいますから。」
何度か顔を合わせる内に、サフィアとエリクは気心が知れるようになっていた。
「この箱は?」
机の上の箱をエリクが指差す。
「…あ、それは。」
ルイが眠っているのを、もう一度確認する。
「王妃様から、わたくしが頂戴した物なのですが…。」
サフィアは小声でエリクに伝えた。
「…王妃から、ですか?」
エリクも何か察したのだろう。
小さくそう呟くと、眉を顰めた。
「ルイ王子がいらないと拒否されたので、開けていいものか…」
「…サフィア様への贈り物なのですよね?」
「ええ、持って来られた女官の方はそう仰っていました。」
「…開けてみましょう。」
エリクがそう言ってくれるのならと、サフィアは白い箱に手を掛けた。
一度持ち上げてみると、思いの外軽い。
蓋を開け、中身を確認すると、サフィアはすぐに蓋を閉じた。
「…サフィア様?」
これはきっと、何かの間違いだ。
「何が入っていたのですか?」
サフィアは首を横に振る。
ルイの前で開けなかったことに、安堵した。
「…サフィア様、失礼します。」
エリクが横から箱を取り上げる。
「これは……」
中身は女性ものの下着だった。
しかも、ただの下着ではない。
それはそういう仕事を生業とした女性が身に纏う、見るからに卑猥なものだった。
酒はもう抜けているはずなのに、サフィアはまだ、どこかふわふわとしていた。
冷たい水で顔を洗う。
昨晩ライが微かに触れた目元は、どうしてか熱を帯びている。
熱を冷ますように、サフィアはもう一度冷水で顔を洗った。
見慣れない女官が訪ねて来たのは、ルイがうとうととし始める午後のことだった。
「…お変わりありませんか?ルイ王子。」
白い箱を抱えた糸目の女官が現れると、ルイはすっとサフィアの影に隠れた。
小さな手は、サフィアの袖をぎゅっと握りしめている。
「噂通り、王子は随分と懐かれている様ですね。」
糸目はあからさまに、サフィアの頭からつま先までを、舐める様に見回した。
それはあまり気分の良いものではない。
「こちらは、王妃殿下から貴方様への贈り物でございます。」
「…わたくしに、ですか?」
「ええ。尊い王妃様からの労いです。有り難く受け取りますよう。」
王妃との接触は一度もない。
サフィアは少しだけそれを不思議に思っていたが、ルイからも、ライからも王妃の話しが出たためしは一度もなかった。
かつて遠目に見ただけの王妃は、小柄で華奢な少女のような姿をしていた。
「いらない!」
手渡された白い箱を受け取ろうとすると、背後からルイが声を張り上げた。
「…王子?どうされたのですか?」
サフィアの背後に隠れているルイは、強い拒否を示しながらも、どこか怯えているように見える。
「ルイ王子、これは王子の世話係への贈り物です。王子への物では御座いません。王子への贈り物ではなかったからと、そのように臍を曲げてはなりませんよ。」
糸目の女官は平然としたものだ。
むしろ、くすりと笑ってさえいる。
「…いらない!サフィアは、いらない!其方は母上の元へすぐに帰れ!」
「あらまあ、王子。そのように声を張り上げてはなりません。世話係の教育が良くないようですねえ。」
「ちがう!ちがう!」
「…王妃様にも報告させて頂きます。」
机の上に白い箱を置くと、女官はまた平然とした様子で部屋を出て行った。
女官が部屋を出た後も、ルイが落ち着きを取り戻すまでは、数刻の時間が必要だった。
机の上の白い箱には、何が入っているのだろう。
小さな背をとんとんと宥めるようにさすり続けていると、その内にルイは眠ってしまった。
「…サフィア様?」
とんとんと肩を叩かれ、はっと起き上がると、見慣れたエリクの姿が目に入る。
隣のルイは、いまだすうすうと寝入ったままだ。
いつの間にかサフィアも、うとうととしていたらしい。
「…申し訳ございません!わたくしまで、つい、うとうとと…」
「いえいえ、咎めた訳ではありません。この時間は私もよく、うとうとしてしまいますから。」
何度か顔を合わせる内に、サフィアとエリクは気心が知れるようになっていた。
「この箱は?」
机の上の箱をエリクが指差す。
「…あ、それは。」
ルイが眠っているのを、もう一度確認する。
「王妃様から、わたくしが頂戴した物なのですが…。」
サフィアは小声でエリクに伝えた。
「…王妃から、ですか?」
エリクも何か察したのだろう。
小さくそう呟くと、眉を顰めた。
「ルイ王子がいらないと拒否されたので、開けていいものか…」
「…サフィア様への贈り物なのですよね?」
「ええ、持って来られた女官の方はそう仰っていました。」
「…開けてみましょう。」
エリクがそう言ってくれるのならと、サフィアは白い箱に手を掛けた。
一度持ち上げてみると、思いの外軽い。
蓋を開け、中身を確認すると、サフィアはすぐに蓋を閉じた。
「…サフィア様?」
これはきっと、何かの間違いだ。
「何が入っていたのですか?」
サフィアは首を横に振る。
ルイの前で開けなかったことに、安堵した。
「…サフィア様、失礼します。」
エリクが横から箱を取り上げる。
「これは……」
中身は女性ものの下着だった。
しかも、ただの下着ではない。
それはそういう仕事を生業とした女性が身に纏う、見るからに卑猥なものだった。
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