黒獅子の愛でる花

なこ

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第五章

19

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翌朝もすっきりと目覚める。

酒はもう抜けているはずなのに、サフィアはまだ、どこかふわふわとしていた。

冷たい水で顔を洗う。

昨晩ライが微かに触れた目元は、どうしてか熱を帯びている。

熱を冷ますように、サフィアはもう一度冷水で顔を洗った。




見慣れない女官が訪ねて来たのは、ルイがうとうととし始める午後のことだった。

「…お変わりありませんか?ルイ王子。」

白い箱を抱えた糸目の女官が現れると、ルイはすっとサフィアの影に隠れた。

小さな手は、サフィアの袖をぎゅっと握りしめている。

「噂通り、王子は随分と懐かれている様ですね。」

糸目はあからさまに、サフィアの頭からつま先までを、舐める様に見回した。

それはあまり気分の良いものではない。

「こちらは、王妃殿下から貴方様への贈り物でございます。」

「…わたくしに、ですか?」

「ええ。尊い王妃様からの労いです。有り難く受け取りますよう。」

王妃との接触は一度もない。

サフィアは少しだけそれを不思議に思っていたが、ルイからも、ライからも王妃の話しが出たためしは一度もなかった。

かつて遠目に見ただけの王妃は、小柄で華奢な少女のような姿をしていた。

「いらない!」

手渡された白い箱を受け取ろうとすると、背後からルイが声を張り上げた。

「…王子?どうされたのですか?」

サフィアの背後に隠れているルイは、強い拒否を示しながらも、どこか怯えているように見える。

「ルイ王子、これは王子の世話係への贈り物です。王子への物では御座いません。王子への贈り物ではなかったからと、そのように臍を曲げてはなりませんよ。」

糸目の女官は平然としたものだ。

むしろ、くすりと笑ってさえいる。

「…いらない!サフィアは、いらない!其方は母上の元へすぐに帰れ!」

「あらまあ、王子。そのように声を張り上げてはなりません。世話係の教育が良くないようですねえ。」

「ちがう!ちがう!」

「…王妃様にも報告させて頂きます。」

机の上に白い箱を置くと、女官はまた平然とした様子で部屋を出て行った。

女官が部屋を出た後も、ルイが落ち着きを取り戻すまでは、数刻の時間が必要だった。

机の上の白い箱には、何が入っているのだろう。

小さな背をとんとんと宥めるようにさすり続けていると、その内にルイは眠ってしまった。



「…サフィア様?」

とんとんと肩を叩かれ、はっと起き上がると、見慣れたエリクの姿が目に入る。

隣のルイは、いまだすうすうと寝入ったままだ。

いつの間にかサフィアも、うとうととしていたらしい。

「…申し訳ございません!わたくしまで、つい、うとうとと…」

「いえいえ、咎めた訳ではありません。この時間は私もよく、うとうとしてしまいますから。」

何度か顔を合わせる内に、サフィアとエリクは気心が知れるようになっていた。

「この箱は?」

机の上の箱をエリクが指差す。

「…あ、それは。」

ルイが眠っているのを、もう一度確認する。

「王妃様から、わたくしが頂戴した物なのですが…。」

サフィアは小声でエリクに伝えた。

「…王妃から、ですか?」

エリクも何か察したのだろう。

小さくそう呟くと、眉を顰めた。

「ルイ王子がいらないと拒否されたので、開けていいものか…」

「…サフィア様への贈り物なのですよね?」

「ええ、持って来られた女官の方はそう仰っていました。」

「…開けてみましょう。」

エリクがそう言ってくれるのならと、サフィアは白い箱に手を掛けた。

一度持ち上げてみると、思いの外軽い。

蓋を開け、中身を確認すると、サフィアはすぐに蓋を閉じた。

「…サフィア様?」

これはきっと、何かの間違いだ。

「何が入っていたのですか?」

サフィアは首を横に振る。

ルイの前で開けなかったことに、安堵した。

「…サフィア様、失礼します。」

エリクが横から箱を取り上げる。

「これは……」

中身は女性ものの下着だった。

しかも、ただの下着ではない。

それはを生業とした女性が身に纏う、見るからに卑猥なものだった。






























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