黒獅子の愛でる花

なこ

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第六章

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ザギエラが立ち去って間もなく、ルイの元を訪ねていたエリクが戻ってきた。

手には白い箱を抱え、なにやら顔色が悪い。

「その箱は何だ。また、蝶の羽か?」

「…いえ、違います。その、王妃からの…サフィア様への贈り物です。」

エリクにしては、珍しく歯切れが悪い。

「それをなぜお前が持っているのだ。」

黙り込んだまま、エリクがその箱をライの目の前に差し出す。

蝶の羽が出てきた時も、ライはさほど驚くことはなかった。

ライに近付こうとする者たちへのカリンの牽制は、昔から見慣れた光景だったからだ。

虫一匹すら殺せぬような顔をして、平然と蝶の羽を毟り取ることができる。

昔からカリンはそういった女だった。

「今度は何だ?」

「直接ご覧になって下さい。」

そう言って、エリクは蓋を開けた。

「…ほう。また随分と贈り物だな。」

ライからは乾いた笑みが漏れる。

「幸いルイ王子が目にすることは御座いませんでした。…サフィア様は平静を装っているようでしたが、内心は…」

触れることもせず、ライはじっと箱の中身を見つめている。

乾いた笑みは消え、無の表情をしたライの姿に、エリクは背筋が凍るような恐怖を感じた。

普段のライも基本は無表情だが、今はその影に苛立ちや怒りのようなものを滲ませている。

「今すぐカリンを此処へ。」 

「はい。只今すぐにお呼びして参ります。」

王妃の元へ向かう途中、エリクは初めて自分が冷や汗をかいていたことに気が付いた。




「陛下がお呼びと聞いて、このような身なりのまま慌てて参りました。」

そう言う割には、カリンは着飾った出立で現れた。

「何故呼び出されたのか、分かっているだろう。」

「陛下にお会いしたいと言う、私の想いが届いたからでしょうか?」

にこにことしたカリンには悪びれる様子など全くない。

ライから呼び出されたことが余程嬉しいのか、終始にこやかなままだ。

「お前の贈り物は、毎回随分とものだな。」

ライがそう言うと、エリクは蓋の開いたままの白い箱を、カリンの前に差し出した。

「あら、どうして此処に?ルイの世話係に差し上げた物ですのに。」

箱を目の前にしても、カリンが動揺する様子は欠片もない。

「世話係は男だと、確かにそう伝えた筈だが?」

くすくすとカリンが笑い出す。

「もちろん。存じ上げておりますわ。ですから、わざわざ下女に城下まで買いに行かせたと言うのに、お気に召して頂けなかったのかしら?残念ですわね。」

発言とは裏腹に、王妃の浮かべる笑みは清らかなものだ。

王に対する恐れは畏怖だが、王妃に対する恐れは、この底知れぬ不気味さにあると、エリクはごくりと唾を飲み込んだ。

城下で囁かれる、王が王妃を寵愛していると言う噂は、一体どこから出たのだろう。

この二人の間に、そんな雰囲気はまるで皆無だ。

何も言わずにただカリンのことを見据えるだけのライに向かって、カリンはさらに続ける。

「恐れ多くも陛下の御前に、下着姿一枚で現れたとお聞きしました。初めからそれが目的だったのでしょう?ですが、所詮は殿方です。陛下を愉しませるには、これぐらいの演出が必要ではありませんか?」

箱の中身を広げると、カリンは首を傾げた。

「わたくしにはよく分かりませんが、もしかしたら物足りなかったのかしら?」

ひらひらと薄い下着を指先で持ち上げると、興味がなさそうにカリンはそれを投げ捨てた。
















































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